レビュー
処理性能が飽和した今、何を重視してスマホを選ぶか?

スリムなタフネスボディに高機能を詰め込む「arrows NX F-02H」

2015年12月4日に発売されたNTTドコモのAndroidスマートフォン「arrows NX F-02H」(富士通製。以下、F-02H)。従来モデルからガラリと変わった本モデルの実力を詳しくレポートしたい。なお、今シーズンから製品名が大文字のARROWSから小文字のarrowsに変わっているので、ここでは小文字のarrowsで表記する。

NTTドコモの2015年冬モデルとして後発の発売となったF02H。XperiaやAQUOS ZETAなどの強豪がひしめく激戦区に投入される

超ハイスペック主義と決別した、新しい時代の「arrows NX」

富士通のスマートフォン「arrows」シリーズの中でも、NTTドコモ版の「arrows NX」は、最高の処理性能と豊富な機能、そしてバッテリーの持続性が特徴で、同シリーズのフラッグシップモデルという位置付けだ。NTTドコモのラインアップでも常にハイエンド機グループの有力な一角を占めていた。

だが、このF-02Hは少々様子が違う。RAMは3GB、ROMは32GBという点は夏モデルの「F-04G」と同じだが、CPUは、オクタコアCPUからヘキサコア(6コア)「Snapdragon 808 MSM8992」にダウングレードされた。カタログにおどるキャッチコピーも、“美しさ”や“感動”といった感覚的な言葉が目立ち、今までのarrows NXらしさが薄い。

まず、基本となるボディを見てみよう。液晶は1440×2560のWQHD表示に対応する約5.4インチIPS-NEO液晶パネル。F-04Gの約5.2インチと比べるとひと回り大きく、今期の注目モデル「Xperia Z5 Premium」(ソニーモバイルコミュニケーションズ製)の約5.5インチに肉薄する。実際に使ってみると、さすがに5.4インチの画面は、操作性や視認性が高く機能的である。

IPS-NEO液晶パネルの採用も注目点だ。IPS-NEOは、ジャパンディスプレイの最新世代のIPS液晶パネルで、従来モデルでネックだった暗部の表現力が向上している。発色チューニングはarrowsシリーズのセオリーに従った、やや青みを持たせた高い色温度で違和感はない。

WQHDの高解像度かつ、5.4インチという大画面のIPS-NEO液晶ディスプレイ。やや青みを持たせたarrowsシリーズ独特のチューニングが受け継がれている

IPS-NEO液晶は視野角が広い。ドットピッチにも無理が少なく、明るさの落ち込みも特筆するものではない

IPS-NEO液晶は視野角が広い。ドットピッチにも無理が少なく、明るさの落ち込みも特筆するものではない

機能の充実ぶりは変わっていない。録画やデータ放送に対応するフルセグチューナー、今でもケータイとの連携に使える赤外線通信ポートなどに加えて、映像出力規格では有線のMHLと無線のMiracastに両対応している。加えて、USBメモリーなどをスマホから直接制御できる「USB On The Go」、かざすだけで対応機器とのあいだで最大転送レート375Mbpsという高速のデータ転送が行える「TransferJet」も前機種から継続して採用されている。

サウンドエンハンサーとして「Dolby Processing」を搭載。ハイレゾ音源の再生にも対応している

サウンドエンハンサーとして「Dolby Processing」を搭載。ハイレゾ音源の再生にも対応している

通信性能を見ると、NTTドコモがサービス展開中のFDD-LTEでは、2.1GHz帯(バンド1)、1.7GHz帯(バンド3)、800MHz帯(バンド19)、1.5GHz帯(バンド21)に対応している。なお、サービスが徐々に始まりつつある700MHz帯(バンド28)と、TDD-LTEへの対応は見送られている。

また、夏モデルに引き続いて、虹彩認証「Iris Passport(アイリスパスポート)」を搭載。基本的な機能に変更はなく、ボディ前面に備わる専用の赤外線カメラを使った認証は、スピーディで正確である。

Iris Passport専用の赤外線カメラ。サブカメラは別に表面下部に備わる

Iris Passport専用の赤外線カメラ。サブカメラは別に表面下部に備わる

メインカメラは、有効画素数約2150万のCMOSイメージセンサーを搭載。一眼カメラのようなハイブリッドAFを新採用している

サブカメラはボディの下部に備わる。有効画素数は約240万となっている

サブカメラはボディの下部に備わる。有効画素数は約240万となっている

実使用時間約100時間。発熱は少ない割に、ボディ表面に感じられる熱は高め

初代のARROWS NXである「F-06E」から続く特徴として、高性能機でありながらバッテリーの持続性が高いこともシリーズの魅力である。しかし、前機種の「F-04G」は、バッテリーの持続性がいまひとつだったことは否めない。そうした悪評を払拭するべく、バッテリー周辺の性能強化が図られている。

バッテリー容量3390mAhで、NTTドコモの今期モデルでは、3430mAhの「Xperia Z5 Premium」に近い大容量バッテリーを備える。スマートフォンのバッテリー消費では、CPU・グラフィックアクセラレーター・通信モデムなどを統合したCPUと、ディスプレイの影響が大きい。本機の場合、先に触れたように8コアから6コアへのダウングレードが実施されたが、それは電力消費と発熱問題への配慮によるところが大きい。

本機の電力消費をスペック面から見ると、実際の利用パターンに近いNTTドコモの独自指標「実使用時間」が約99.6時間となっており、Xperia Z5 Premiumの約77時間や、F-04Gの約68.4時間と比較すると、かなり長くなっている。

約72時間の間で充電は1回行ったのみ。バッテリーの持続性は競合機種と比べるとかなり健闘している

うえのグラフは約72時間のバッテリ消費を示す。この間行った充電は1回行ったのみ。バッテリーの持続性は競合機種と比べるとかなり健闘している

今回の検証の印象だが、メイン端末としてフル活用したわけではないが、5日間の使用で充電は1回行っただけで済んだ。限られた条件ではあるものの、Xperia Z5シリーズより明らかにバッテリーは持続する。今期モデルで比較するなら「AQUOS ZETA SH-01H」(シャープ製)に迫る優秀な値だ。バッテリー3日持続も、さほど窮屈さを感じずに実現できるだろう。

そのいっぽうで、価格.comのユーザーレビューを見てみると、「バッテリー」の平均点は3.74(2015年12月11日現在)で、評価はあまり高くない。レビューを細かく見てみると、2年ほど前の「F-01F」や「F-05F」あたりからの買い替えユーザーが不満を持つことが多いようだ。これらのモデルは、数多いAndroidスマートフォンの中でも、かなり高いバッテリー持続性を誇る。あまりバッテリーが持たない製品から買い替えたユーザーの評価は、概して良好である。

もうひとつの問題である発熱であるが、8コア機と比べると、全般的にCPU自体が発する熱は少ない。検証期間中の発熱を記録したが、最高でも35度程度で、40度を越えることが珍しくない8コア機と比較すると5度くらい低い。だが、ボディが薄いことも影響しているのだろう、体感レベルではほとんど差がなかった。

使用中のCPUの温度ログ。最高が34.7度となっており、40度を越える8コア機よりも明らかに低い

使用中のCPUの温度ログ。最高が34.7度となっており、40度を越える8コア機よりも明らかに低い

大型アプリの起動にかかる時間や、負荷のかかる一部のゲーム以外では、すでにスマホの処理性能は飽和気味だ。そのため、最速という名目にこだわらないのであれば、6コアCPUを採用することは合理的な判断だと言えよう。

タフネス性能の真相は?

本機の特徴であるボディのタフネス性能に迫ろう。まず、従来どおりのIPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様をクリアしつつ、アメリカ国防総省の調達基準「MIL-STD-810G」のうち、落下、浸漬、粉塵、塩水噴霧、湿度、太陽光照射、振動、風雨、高温動作(60℃固定)、高温保管(70℃固定)、低温動作(マイナス20℃固定)、低温保管(マイナス30℃固定)、低圧保管、低圧動作という14項目をクリアしている。塩水噴霧に対応しているので、波打ち際で軽く海水がかかる程度であれば十分対応可能である。

なお、今期の富士通製スマートフォンは、本機のほかNTTドコモの「arrows FIT」や、SIMフリー機の「arrows M02」も、MIL-STD-810Gの14項目に対応しており、富士通スマートフォンの特徴のひとつになりつつある。

また、そうしたタフネス性能に加えて、ボディにキズが付きにくい点も特徴である。ボディ上面や電源ボタンに使われるアルミ素材の表面は、キズのつきにくいハードアルマイト処理が施されている。背面部分も塗装とコーティングを3層組み合わせた凝ったもので覆われているほか、ディスプレイの表面ガラスにコーニング社の強化ガラス「Gorilla Glass 3」が使われている。このように、本機の表面はほぼすべてが傷対策の装甲で覆われているのだ。

本機はかなりのタフネスモデルでありながら、厚さが約7.9mm(最厚部8.3mm)、重量は約167gと、重量やサイズの増加が抑えられている。見た目も洗練されていることが、一般的なタフネススマートフォンと大きく違うところだ。

タフだが薄いF-02Hのボディ。フォーマルなシーンでも使いやすいデザインだ

タフだが薄いF-02Hのボディ。フォーマルなシーンでも使いやすいデザインだ

microUSBポートはキャップで覆われている

microUSBポートはキャップで覆われている

ボディの背面に、飛行機のレドームなどに使われる電波を透過しやすい複合素材の「ナノテクファイバー」が使われている

電源ボタンは、ハードアルマイト処理されており、傷が付きにくい

電源ボタンは、ハードアルマイト処理されており、傷が付きにくい

ボディ上面にあるアルミの「ヘッドライン」。デザイン上のアクセントでありつつ、落とした場合のバンパーとしても機能する

ディスプレイの周囲がわずかに隆起しており、伏せて置いた場合にガラス面にダメージを受けないようにしている

時代がスマホに求める高性能。その片鱗が見える

スマートフォンのハードウェアは、ディスプレイの大型化と高精細化、処理性能の向上、バッテリー性能の向上という主に3つの軸を基本に進化してきた。その結果として、現在では4K対応ディスプレイや8コアCPUなど、一部のパソコンを上回るようなスペックを備えた製品さえ登場している。

そのいっぽうで、普通に使う分には処理性能と表示性能ともに飽和気味で、むしろひんぱんな充電によるバッテリーの劣化やボディの破損など、修理負担の小さいことのほうがより切実だろう。ユーザーの求める性能を追求した結果が、F-02Hに現れているように思われる。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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