レビュー

サイズや性能のバランスが魅力の「dtab Compact d-02H」

NTTドコモ独自のタブレット「dtab」シリーズ。その最新モデルである「dtab Compact d-02H」(ファイーウェイ製。以下、dtab Compact)が、1月20日に発売された。アルミ製ボディにWUXGA対応の約8インチ液晶、そしてオクタコアCPUを備えたミドルハイクラスの製品だ。その特徴を解説しよう。

8インチ液晶を備えるdtab Compactは、どんな特徴を備えているのか?

8インチ液晶を備えるdtab Compactは、どんな特徴を備えているのか?

ドコモのコンテンツサービス向けだが、汎用的に使えるタブレット

dtabシリーズは、NTTドコモオリジナルのタブレットのブランド。2013年春に登場した初代「dtab 01」は、キャンペーン期間中なら1万円以下という当時としては破格の価格で話題になった。

そんなdtabの最新機種であるdtab Compactは、1920×1200のWUXGA表示に対応する約8インチ液晶を備えたコンパクトなAndroidタブレットだ。LTEの通信機能を備えおり、屋外でもインターネットを利用できる。

本体サイズは、約124(幅)×215(高さ)×7.9(厚さ)mm、重量は約345g。8インチクラスのタブレットとしては、標準的なサイズだが、7インチタブレットからの買い替えの場合、画面は広がりつつサイズの肥大は抑えられているのでバランスが取れているといえる。ボディを見ると、アルミの背面や側面のボタン周辺、SIMカードスロットのカバーなど細部の仕上がりが良好で、文句のない質感だ。dtab 01は、チープな印象がぬぐえなかったが、本機ならそうした心配は不要だ。

処理性能を見てみよう。CPUには、ファーウェイ傘下のHiSiliconのオクタコアCPU「Kirin 930(2.0GHz×4+1.5GHz×4)」を搭載する。メモリーは、RAMが2GB、ROMが16GB。128GBまで動作確認の取れたmicroSDXCメモリーカードスロットも備える。OSは「Android 5.1」で、ホームアプリはNTTドコモオリジナルの「docomo LIVE UX」だ。ハードウェアのスペックは、最高性能レベルには届かないが、ミドルクラスの中では上位に位置するミドルハイクラスと言える。

なお、本機はファーウェイのSIMフリータブレット「MediaPad M2 8.0」をベースにしいるが、対応するSIMカードのサイズや本体の重量、LTEの対応バンド、内蔵バッテリーの容量などが異なる。

初代iPadのようなアルミ製の背面。質感は申し分ない

初代iPadのようなアルミ製の背面。質感は申し分ない

側面を囲むフレームは、楽譜の五線からインスピレーションを受けたというスリットが入っている

側面を囲むフレームは、楽譜の五線からインスピレーションを受けたというスリットが入っている

最近減ってきている中型のmicroSIMカードを使用。ベースモデルのMediaPad M2 8.0はnanoSIMカードなので、NTTドコモ用にカスタマイズされている。microSDXCメモリーカードスロットは128GBまで動作確認が取れている

側面の細かな仕上がりも良好。ボタンはがたつきがなくカチッとした押し心地だ

側面の細かな仕上がりも良好。ボタンはがたつきがなくカチッとした押し心地だ

dtab 01は、NTTドコモのデジタルコンテンツ「dメニュー」や、ECサイト「dマーケット」にアクセスするためのツールという一面があり、それらのサイトに最適化された画面デザインだった。

それに対してdtab Compactはホーム画面にそれらへのサイトへアクセスするアイコンや大き目のウィジェットがある程度で、特殊なものという印象は薄い。むしろ、Google系アプリが1つのフォルダーにまとめられ、プリインストールアプリが比較的少なめなこともあって、シンプルな画面デザインだ。もちろん、「Google Play」にも対応しているのでゲームやアプリも手軽に利用できる。

ホーム画面に貼付されたdマーケットの巨大なウィジェット。使わないならもちろん削除できる

ホーム画面に貼付されたdマーケットの巨大なウィジェット。使わないならもちろん削除できる

プリインストールされるアプリはそれほど多くはない。Google系アプリはホーム画面のフォルダーにまとめられている

設定メニューはよく使うものとフル機能をタブで切り替えられる

設定メニューはよく使うものとフル機能をタブで切り替えられる

LTEは、バンド1(2.1GHz帯)、バンド3(1.7GHz帯)、バンド19(800MHz帯)の3バンドに対応している。キャリアアグリゲーションには対応しておらず、通信速度は下り最大150Mbpsにとどまっている。また、NTTドコモが増設を進めているバンド21(1.5GHz帯)にも対応していない。NTTドコモの最新世代のスマートフォンと比べると通信性能に差が生じるかもしれない。

低価格タブレットと比較した場合の優位性は高いAV性能

AV性能に注力されている点も本機の特徴だ。すでに触れたように、1920×1200のWUXGA表示に対応する液晶ディスプレイを備えており、フルHDのコンテンツをドットバイドットで表示できるほか、ボディの側面2か所にスピーカーを配置しており、本体だけでステレオ再生が行える。

液晶ディスプレイの画質は良好で、低価格のタブレットではありがちな画面の色ムラもな。解像度も高く、テキスト表示も写真も美しい。また、周囲の環境や表示しているコンテンツを認識して、画質を最適化する機能を備えている。

サウンド機能では、バーチャルサラウンド機能の「Super Wide Sound 2.0」を備えており、2個のスピーカーだけで広がりのあるサラウンド再生が行える。ハーマンの圧縮音源を補完する機能「Clari-Fi」も備えており、音楽、ストリーミング、インターネットラジオなどを高音質で楽しめる。

なお、AV性能が魅力の本機ではあるが、ワンセグおよびフルセグのテレビチューナーが搭載されていない点は、少々注意したい。

WUXGA表示に対応するディスプレイ。フルHDコンテンツをドットバイドットで表示できる

WUXGA表示に対応するディスプレイ。フルHDコンテンツをドットバイドットで表示できる

左右短辺の側面2か所にスピーカーを備えており、ステレオ再生が可能

左右短辺の側面2か所にスピーカーを備えており、ステレオ再生が可能

こちらはもうひとつのスピーカー。搭載されるバーチャルサラウンド再生機能を使えば迫力ある音声を楽しめる

こちらはもうひとつのスピーカー。搭載されるバーチャルサラウンド再生機能を使えば迫力ある音声を楽しめる

電池の持続性はほどほどだが、不快な発熱はほとんどない

バッテリーの持続性や発熱を見てみよう。バッテリー容量は4650mAhで、連続待受時間が約740時間(LTE)/ 約930時間(3G)となっている。検証のためのベンチマークや動画再生などで酷使しながら、1日使い続けても、バッテリー残量が25%残っていた。もちろん利用スタイルの影響は無視できないが、ビジネスパーソンが、往復通勤、勤務中などで断続的に使い続けても1日1回の充電で事足りるだけのスタミナは備えているようだ。

しかし、本機で特筆するべきなのは、バッテリーの持続性よりも発熱の少なさだろう。フルHDのストリーミング動画やゲームを続けてもボディ表面はほとんど熱くならなかった。金属性ボディは、熱くなりやすいが、本機は例外的といっていいほど熱を感じにくい。使用時のCPU温度も31度程度を上限として推移し続け、最近の高性能スマートフォンのように40度に迫るようなことは検証中一度もなかった。

使用中のCPU温度のグラフ。最高でも31度止まりで、体温より高くなることはなかった

使用中のCPU温度のグラフ。最高でも31度止まりで、体温より高くなることはなかった

熱くなりにくい秘密は、搭載するオクタコアCPU、Kirin 930によるところが大きい。一般的なスマートデバイス用オクタコアCPUは、“big.LITTLE”といって、処理性能が高いが電力消費も大きなコアと、処理性能はいまひとつだが電力消費も少ない小さなコアを組み合わせている。しかし、本機のKirin 930は、動作クロックの違いはあっても小さなコアを8個組み合わせたもので、発熱の点で有利な構成なのだ。

ベンチマークアプリ「Antutuベンチマーク」を使った本機のスコアを見ると、ファーウェイが発表した最新フラッグシップモデル「Mate 8」の約半分程度にとどまっている。だが、最近のスマートデバイス用CPUは、全般的に処理性能が過多で、Kirin 930でも問題になりにくい。実際、本機の体感速度やアプリの起動などはスムーズで、ストレスなく利用できる。

Antutuベンチマークの結果。左が本機のスコア、2016年2月時点でおそらく世界最速の処理性能を備えるMate 8のスコアを右に表示した。スコアはそれほど高くないが、実際の動作はスムーズだ

SIMフリー機と比較して、導入コストとランニングコストどちらを重視するか

LTE対応モデルや、1万円以下の低価格モデル、OSに「Windows 10」を採用したモデルなど、タブレットは多様化している。その中で、dtab Compactの立ち位置は、ある程度性能にこだわって製品を選びたいユーザー向けのミドルハイモデルだ。

NTTドコモの直販サイト「ドコモオンラインショップ」の端末価格は一括で49,896円(税込)だが、新規でも機種変更でも各種割引が充実しており、条件によっては実質無料で購入できる。「お支払いシミュレーション」によると、月額料金は5,967円(税込)から。dtab 01と比べると高いが、その分、基本性能が高いので、高すぎるということない。

ちなみに、ベースとなったMediaPad M2 8.0の価格.com最安価格は37,192円(2016年2月2日時点)。SIMフリーモデルなので格安SIMと組み合わせて、安く運用できる。それに対して、dtab Compactは新規契約でも機種変更でも初期費用がかからない上に、NTTドコモの手厚いサポートも受けられるのがメリットだ。ランニングコストを重視するならMediaPad M2 8.0、導入コストやサポートを重視するならdtab Compactという選び方になるだろう。

田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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