日本HPがプレミアムPCとして展開している「Spectre(スペクトル)」シリーズ。そのSpectreシリーズの最新モデルとしてこの夏発売されたのが、13.3型液晶搭載で10.4mmという世界最薄ボディを採用した「Spectre 13」だ。Spectreシリーズといえばデザイン性の高さも特徴のひとつとなっているが、Spectre 13もダークグレーにブロンズゴールドをあしらった非常に高級感のあるデザインに仕上がっている。今回、スペック上位モデルの「Spectre 13-v007TU」をお借りすることができたので、デザインや使い勝手などを中心にレポートする。
Spectre 13の最大の特徴は、なんといっても目を惹く本体デザインと圧倒的な薄さだろう。特に本体デザインは、これまでのモバイルPCになかったかなり特徴的な仕上がりだ。Spectreシリーズといえば、これまでにもデザインコンシャスな製品を数々と世に出してきたが、今回のSpectre 13は同社が“ラグジュアリー・モバイルPC”と銘打っている通り、ダークグレーの落ち着いた雰囲気のベースカラーに、鏡面仕上げのブロンズゴールドをあしらった高級感のあるデザインとなっている。
これまでのモバイルノートPCは、ビジネスをする上で使う仕事道具の中のひとつであり、あえて主張しすぎないことが求められてきた感がある。もちろん、なかにはデザインに凝った個性的な製品もあったが、それらはカジュアルさやスタイリッシュさ、ほかとは違うカラーリングだったりしていた。Spectre 13のような、持っているだけで所有感を満たしてくれる、まるで高級腕時計のような存在感のある製品はこれまでにはなかった。この独特の存在感は、まさにオンリーワンのデザインといえる。
本体のベースカラーはダークグレーを採用。HPのロゴとヒンジ部分に、鏡面仕上げのブロンズゴールドをあしらっている。メタリックカラーは、樹脂に蒸着したのではなく塗装仕上げとなっており、輝きが非常に美しい
高級家具からインスピレーションをうけたというヒンジ部分。丸みを帯びた独特の造形が光を反射するメタリックの良さをさらに引き立てている
本体サイズは約325(幅)×229(奥行)×10.4〜11.2(高さ)mm。13.3型モバイルノートとしては、フットプリントが若干大きい
プレミアムPCにのみ付けられる「プレミアムマーク」。同社製品でSpectre 13が初めて採用された
Spectre 13には、標準でレザー製スリーブケースが付属。製品に合わせてアクセサリーにもしっかりと気を配っている点は好感がもてる
しかもSpectre 13は、これまでのモバイルPCになかった独創的なデザインを採用したうえで、13.3型液晶搭載で10.4mmという世界最薄ボディを採用しているというのだから驚きだ。もちろん、モバイルPCということで、堅牢性についても妥協はなく、天板にアルミニウム素材を、底面にカーボンファイバー素材を採用。これだけの薄型ボディながら、天面加圧試験300kgfをクリアしたタフさも兼ね備えている。本体重量は約1.11kgと、モバイルノートPCとしてみるとすごく軽いというわけではないが、薄型の本体のおかげで、約1.11kgという数字よりもだいぶ軽く感じる。筆者の経験上、モバイルPCの携帯性は、本体の軽さよりも本体の薄さやコンパクトさのほうがメリットを感じやすい。この薄さはSpectre 13の大きな武器と言えるだろう。
本体中央部で10.4mm、もっとも厚い部分でも11.2mmという極薄ボディを採用。クラムシェル型のWindowsノートPCでここまで薄い製品は初めてだ
重さを計測してみたところ、カタログスペックよりも若干軽い1.091kgだった。本体の薄さからか、手に持った感じはさらに軽く感じる
インターフェイスについては、液晶ディスプレイを支えるヒンジ部分に集約されており、本体を薄型化するためか、USB Type-Cポート3つとヘッドホン端子1つのみとかなりシンプルな構成となっている。AppleのMacBook最新モデルも、本体の薄型化のために厚みの増す余計なポートをすべて無くした潔い設計となっているが、Spectre 13も基本的な考え方はこれと同じといえる。USB Type-Cポートは電源ポートも兼用となっており、3つあるポートのどの場所に挿入しても、電源供給が行えるというなかなか面白いギミックだ。
USB Type-Cポートは3つ用意。これまでのUSB Type-Aのポートサイズよりも小さいUSB Type-Cを採用したことで、本体の薄型化を実現した。電源ポートとしての機能も備えており、どのUSB Type-Cポートに電源ケーブルをつないでも充電できる
ヘッドホン端子もヒンジ部に用意されているため、ケーブルの長さが短いヘッドホン接続する際は注意が必要だ
ちなみに、本体には通常のUSB Type-Aに変換するケーブルが1つ同梱されており、USB Type-Cに対応していないUSB機器もつなげられるように配慮されている。インターフェイスがすべてディスプレイ後ろ側に背面にしかないため、膝の上にのせて使うときなどにUSBへアクセスしにくいということと、有線LANやディスプレイ出力などがまったくないというのが少々残念な点ではあるが、薄型化のためには致し方ないのかもしれない。
本体に付属するUSB Type-C⇒USB Type-Aの変換ケーブル
Type-Cに対応していないUSB機器も接続できるが、接続すると上記の写真のようになってしまうため、膝の上にノートPCを置いて作業するときに邪魔になるときがある
液晶ディスプレイは、フルHD表示対応の13.3型光沢パネルを採用し、タッチ操作には非対応となる。タッチパネルでもないモバイルPCで光沢パネルを採用しているのはかなり珍しいが、本体の薄型化にともなう強度を確保するため、表面ガラスに「ゴリラガラス4」を採用したためだと思われる。IPS方式のパネルとなっており、視野角が広く、コントラストも高いため、動画や写真などのマルチメディア用途に適しているが、非光沢タイプの液晶にくらべると映り込みがやや気になるので、このあたりはユーザーによって好みが分かれそうだ。
IPS方式の13.3型フルHD液晶パネルを採用。光沢パネルのため、強い光源が背後にあるときは、写り込みがけっこうある
本体を薄型化するために採用した特殊なヒンジのためか、液晶画面は上記の写真の角度までしか開けない
キーボードについては、アイソレーションタイプのキーボードを搭載する。キーストロークも約1.3mm確保しており、打鍵感はなかなか。キーピッチも約19mmで、手の大きい筆者でも窮屈せずに打てた。しかも、これだけの薄型ボディながら、キーボードバックライトを備えているというのだから、まさにお見事としか言いようがない。なお、キーボードの左右には、HPのノートPCでおなじみのBang & Olufsenと共同開発したスピーカーが搭載されている。
アイソレーションタイプのキーボードを採用。キートップはゴールド印字となっており、コントラストも高くて視認性も良好だ
これだけの薄型ボディなのに、キーボードバックライト機能もしっかりと搭載されている
キーボードの左右には、Bang & Olufsenと共同開発したスピーカーを搭載
最後にスペック周りをみていこう。冒頭でも触れたが、Spectre 13には、CPUに「Core i7-6500U」と「Core i5-6200U」を採用した2モデルがラインアップされている。Spectre 13のような薄型PCでは、より消費電力が少ない「Core Mプロセッサー」が採用されることが多いのだが、Spectre 13では、Core Mプロセッサーよりも処理能力の高い「Skylake-U」が採用されている。しかもストレージには、PCI Express接続で高速なアクセス速度を誇るNVMe M.2 SSDを搭載。メモリーも標準で8GB搭載しており、現在発売されているモバイルPCでも随一のスペックを誇っているのだ。
実際に取材に持ち出して数日間使ってみたが、OSやアプリケーションの起動がとにかく早く、立ち上がりが遅くてイライラするといったことがほとんどなかった。バッテリー駆動時間についても、取材先で無線LANにつないで3時間使った直後の段階で、バッテリーが100%から55%に減っていたので、ほぼカタログスペック通りの性能は担保できていそうだ。
パソコンの総合性能を測定するFuturemarkの「PCMark 8」(Home accelerated)のスコア。モバイルPCでスコア3000オーバーはかなり優秀だ
「Crystal DiskMark 5.1.2 x64」(ひよひよ氏作)の結果。リード速度は驚異の1600MB/s超えだ
今回試してみて唯一気になったのが、動作中のファンの駆動音。今回借用したモデルがCore i7搭載モデルということもあり、使っていると頻繁にファンが稼働し、負荷が高い状態だと気になるレベルの高周波音を発していた。薄型筺体に熱量の大きい高性能CPUを収めているため、ファンが稼働するのは仕方ないのだが、もう少し静かになってくれるとありがたかったりする。
本体底面部にある2つの冷却ファン。駆動音がもう少し静かになってくれるとうれしい
また、高性能CPUを搭載したためか、ACアダプターの電源ケーブルがかなり太くなっており、ケーブルが硬くてコンパクトにまとめにくかった。バッテリー駆動時間が長いため、ACアダプターを持ち運ぶことはあまりないとは思うが、どうしても持ち運ばなければいけない際は、若干かさばる点は注意しておいたほうがいいだろう。
付属のACアダプター。USB Type-C側のケーブルは柔らかくて取り回ししやすいが、コンセント側のケーブルが太くて硬く、取り回ししにくい
近年、Windows PCにもデザインコンシャスな製品が増えてきているが、いざ蓋を開けてみると、デザイン重視でCPUやストレージなどのPCとしての基本性能を妥協している製品が多かった。その点Spectre 13は、あれだけの薄型ボディながらスペックには一切の妥協がない。光沢液晶の採用やUSB Type-Cのみのインターフェイスなど、多少扱いにくい部分は残ってはいるが、モバイルPCに求められる堅牢性やバッテリー駆動時間についてはしっかりと担保されており、ちゃんと実用的に使える製品に仕上がっていた。価格については、今回紹介したスペック上位モデルが159,800円〜、下位モデルが139,800〜(いずれも税抜)となっており、モバイルPCとしては決して安くはないが、Spectre 13なら、ノートPCのデザインにもこだわりたいという人はもちろん、とにかく薄くて高性能なモバイルノートPCがほしいという人にもしっかりと答えてくれるはずだ。