あれこれ通信

洗濯王子による、洗濯するための家。「センタクアトリエ」のこだわりがハンパない

日本アルプスをのぞむ長野県・伊那市の住宅地に建つ「センタクアトリエ」。白と青の“洗濯カラー”が爽やかです

テレビや雑誌、そしてこの「価格.comマガジン」でも、効果的な洗濯方法やプロ目線の製品レビューを届けてくれている「洗濯王子」こと洗濯家の中村祐一さんが、出身地である長野県に、活動拠点「センタクアトリエ」をオープンさせました。ここでは、中村さんの洗濯愛とこだわりがハンパない「センタクアトリエ」をどこよりもくわしくレポート。中村さんが自宅での洗濯に使用している愛用アイテムもご紹介します!

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これが洗濯だ! 洗濯で世界を変える「This is SENTAKU」プロジェクト

中村さんは、長野県で3代続くクリーニング店の3代目。「洗濯王子」の愛称で親しまれ、これまでのべ3,000人を超える人々、芸能人、企業などへも洗濯に関するアドバイスを行っているプロの洗濯家です。

洗濯家の中村祐一さん

洗濯家の中村祐一さん

「センタクアトリエ」は、中村さんが家族と暮らす家の1階部分を使用。洗濯は日常の中で行うことなので、実際の暮らしの中で提案しないと説得力がないという想いから、住居と活動場を一緒にしているそう。年間50件以上にのぼるというメディア取材対応用のスタジオ、研究室・実験室、しみ抜き・クリーニング業務の作業場、洗濯教室を行うワークショップ会場、自社メディア用のスタジオなど、洗濯に関するあらゆることを行えるスペースとして使用していく予定だそう。

中村さんはこのセンタクアトリエを拠点とした今後の活動を、「This is SENTAKU(ディスイズセンタク)」プロジェクトと名付け、クリーニング屋、コインランドリー、ハウスメーカー、家電メーカー、他分野の専門家などとコラボすることで、洗濯を通して人々の暮らしの質を向上させるための提案をしていきたいと話していました。

まるでおしゃれなキッチンのような、たっぷりと自然光が入る広々とした空間。すべて洗濯をするためのスペースだそう

中村さん:目標は、「家庭に洗濯を伝え、世界に“ホンモノ”の洗濯文化を創り出すこと!」。この時代においても、衣服の管理、洗濯については定義がされていないことにすごく違和感を覚えています。各々が自己流で手入れをしていて、人によっては、まったく効果がない形で洗濯をしている状況なんです。“これが洗濯”ということを伝えられたら、多くの人の暮らし、人生、世界が変わっていくんじゃないかと思うんです。

ハンパない! 洗濯王子のこだわりポイント5

「センタクアトリエ」には、間取りから壁の素材まで、自称「日本一の洗濯馬鹿」だという中村さんならではのこだわりがいっぱいです。

1.効率的な洗濯導線を実現する、洗濯用の間取り

「センタクアトリエ」のもっとも大きな特徴は、効率的な洗濯導線を実現する間取りです。洗濯は、「脱ぐ→洗う→干す→アイロンがけ→畳んでしまう」という、工程が多い家事。行程ごとの距離が離れてしまうとめんどうになってしまうため、センタクアトリエでは洗濯をするための導線をまとめ、全行程が、一連の流れで行えるようになっているのです。

センタクアトリエ1階の図面。1階の半分以上、青枠で囲んだ部分がすべて洗濯に関わるスペースになっているだけでなく、1階の3分の1のスペースが洗濯だけを行うアトリエになっています

洗面脱衣室には、家族それぞれに振り分けられる6段の引き出しと洗濯かご置き場を設置。まず洗濯かごに、脱いだ衣類や使用済のタオルなどを入れます

洗面脱衣室の引き出しはすべて壁の向こう側のアトリエにつながっているため、洗濯かごの中身は、アトリエで受け取れるようになっています。しかも、洗濯かごのすぐ横には洗濯機を設置しているので、洗濯物はそのまま洗濯機に投入可能

洗濯機の運転が終了したら、移動することなくそのまま洗濯機の上に備え付けられた物干し竿に洗濯物を干すことができます

中村さん:洗濯物は外に干すのが常識だと思われていますが、むしろ逆です。皮膚と同じように、衣類にとっても日差しの強い屋外は過酷。外に出すことで黄砂や花粉、排気ガスが付着するリスクも高まるので、僕は室内干しを推奨しています。外干しは洗濯作業の導線が長くなり、洗濯が大変になるという意味でも室内干しのほうが効率的なんです。

物干し竿のそばにはアイロンとアイロン台もスタンバイ。しわ伸ばしが必要な衣類は、乾いたあとすぐにアイロンをかけられます

畳んだ衣類は家族それぞれ引き出しに入れれば洗濯完了。クローゼットにしまう場合も、洗面脱衣室とクローゼットがつながっているため、めんどうがありません

驚くべきことに、洗う〜畳んでしまう、の工程を行うのに、移動するのは最大3歩程度。実際には洗濯機を回している時間はほかのことをしているので、ずっとその場にいるわけではないですが、たくさんの洗濯物(洗濯後は特に重いですよね)を抱えて2階のベランダに行って干し、乾いた洗濯物を家族各々の部屋を回ってしまう必要がなくなります。すごくいい!

2.洗濯はお湯でするべし! 洗濯機用の水栓は混合栓

センタクアトリエの洗濯機用の水栓は、お湯も出る混合栓。衣類はお湯(40℃程度)で洗うことで汚れがしっかり落ちるため、黄ばみが蓄積しづらく、室内で干してもにおいにくいそうです。

デザインもおしゃれな混合栓

デザインもおしゃれな混合栓

中村さん:食器はお湯で洗うのが当たり前なのに、なんで洗濯には水しか使えないんだろうって思っていたんです。これから家を建てる方には、洗濯用の水栓を混合栓にすることをおすすめしたいですね。難しい場合はお風呂の残り湯でもいいです。その場合はお湯の汚れの分、洗剤を多めにしてください。洗剤が溶ければOKなので、すすぎは水で大丈夫ですよ。

<関連記事>「お湯洗濯」ってやっぱイイ! “縦型初”温水洗濯機の実力を、洗濯王子がチェック

3.家庭でプロ用使ったっていい! 業務用のしみ抜き機を設置

なんと、自宅に業務用のしみ抜き機を設置。水圧で汚れを弾き飛ばすというものです。カメラマニアはプロが使うカメラ機材を趣味に使う。コーヒーマニアには焙煎機を自宅に持っている人もいる。だから、洗濯マニアもプロの道具を使ったっていいじゃないか、という提案。費用はかかりますが、汚れ物が多い家庭では洗濯の負担が格段に少なくなるとのこと。

プロ用のしみ抜きガンは20万円くらいだそう。家を建てるタイミングならぎりぎり現実的?

プロ用のしみ抜きガンは20万円くらいだそう。家を建てるタイミングならぎりぎり現実的?

弾き飛ばした汚れと水分を吸引するバキューム部まで導入すると金額が張るので、下にタオルを敷くなどして代用するという手もあるそう

中村さん:(多くの家庭がプロ用の道具を導入したら、商売あがったりでは? という質問に)儲からなくなるのはたしかに困るのですが(笑)、商売が繁盛するより、正しい洗濯を多くの人に伝えたいという気持ちのほうが大きいです。

また、同じ機械を使ってもやはりプロの仕事は違うので、必要とされる場面は必ずあると思います。いくら高いカメラを買っても、僕がプロカメラマンと同じ画を撮れないのと一緒ですね。プロの道具を使うことでプロのすごさがわかるという側面もあるのではないでしょうか。

4.シンクは医療用

水がたっぷり溜められるシンクを使用。洗濯用のシンクはないので、医療用のシンクを取り付けているそうです。

中村さん:目盛りを付けて溜めた水の量が計れるようにすれば、手洗いの際も洗剤の量がわかりやすくなります。どこかと一緒に洗濯用シンクを開発したいですね

5.日当たりのよい方角と、珪藻土の壁、空気が循環する工夫

通常、家は道に対して垂直に建てますが、センタクアトリエは少しだけ斜めに振り、南東向きに建てています。これは日(直射日光ではない)が入りやすく室温が上がりやすい、室内干しに適した環境を作るため。また、壁に珪藻土(けいそうど)を使うことで適切な湿度をキープできるだけでなく、窓を開けると風が通りやすいようになっていたり、換気扇やサーキュレーターを設置することで意図的に空気の流れを作る工夫もしているそう。

壁は自身で塗ったという珪藻土。部屋の調湿をしてくれるそう

壁は自身で塗ったという珪藻土。部屋の調湿をしてくれるそう

サーキュレーターや換気扇で、室内の空気を動かす工夫も

サーキュレーターや換気扇で、室内の空気を動かす工夫も

中村さん:室内干しの場合は、室温を高く、湿度を低く保つのがポイントです。家の中に人がいないことが前提ですが、雨の日は夏でもタイマーで数時間だけ暖房をかけてもOK。換気扇や扇風機、サーキュレーターを使って空気を動かすだけでも乾きがまったく違いますよ。

気になる! 洗濯王子の愛用している洗濯機やアイロンってどんなもの?

洗濯のプロは、自宅でどんな製品を使っているのでしょうか。中村さんのお気に入りのアイテムを披露していただきました。

洗濯機は3種類を使い分け

ミーレのドラム式洗濯機と乾燥機
中村さん:
ミーレは僕から見て、唯一「洗濯に思想がある」と思えるメーカー。洗濯機に搭載されているコースすべてに意図があるんです。洗剤も開発しているのですが、どちらも服をケアすることを考えて作られているのが伝わってきます。

ミーレ「W596W5」(右)、「T8823C」(左)

ミーレ「W5965WPS」(右)、「T8823C」(左)

日立の2層式縦型洗濯機
中村さん:
ちゃんと洗濯しようと思ったら、洗濯機は2層式がベストです。水の量、回転、脱水すべてを衣類に合わせて設定できるので、クリーニング屋さんも必ず2層式を使用しています。ただ、つきっきりにならないといけないのが毎日の洗濯に使用するにはネックですね。

日立「青空 PS-65AS2」

日立「青空 PS-65AS2」

東芝の縦型洗濯機
中村さん:
よく使っているのが、この東芝の縦型。洗い、すすぎ、脱水がそれぞれ1分単位で設定でき、2層式に近い操作が可能なところが気に入っています。

東芝「AW-8D3M」

東芝「AW-8D3M」

中村さん:「縦型とドラム式はどちらがおすすめ?」とよく聞かれるのですが、個人的にドラム式は「洗濯機能付き乾燥機」という感じで考えています。なので、乾燥機能を使わない場合、あまりメリットを感じないんですね。逆に縦型は汚れ具合に応じて水量を設定でき、しっかり汚れが落ちるので、泥汚れが多い家庭などには縦型をおすすめしています。

ただ、家庭によって洗濯のカタチは変わるため、どれがよいとは一概に言えません。僕自身は縦型もドラム式も2層式もそれぞれよさがあると思っているので、使い分けをしています。

アイロンは、重くてコード付きが◎

中村さんは、いろいろなアイロンを買っては試しているそう

中村さんは、いろいろなアイロンを買っては試しているそう

中村さん:好きなアイロンは、ティファールの「アクアスピード5336 FV5336J3」です。アイロンはある程度重くて、コード付きで温度を安定して供給できるものがいいですね。ティファールはフライパンと電気ポットが人気を博しているだけあって、熱の扱いが非常にうまいメーカーだと思います。

日本では動かしやすさや軽さが重視され、「楽にかけられる」以外の提案がないのが残念。本当にちゃんとシワを伸ばしたいと思ったら、アイロンにはある程度の重さが必要だと思います。そういった意味では、ヨーロッパのメーカーのほうが、アイロンの本質を捕らえていると思います。

ティファール「アクアスピード5336 FV5336J3」

ティファール「アクアスピード5336 FV5336J3」

<関連記事>洗濯王子に学ぶアイロンがけの楽しみ方

洗剤は、成分の役割を理解してから選ぶと洗濯の質が向上します

洗剤だけでなく、界面活性剤、アルカリ剤などの原料を用意。「料理で言うと、みそ・塩・醤油という感じ」だそう。衣類に合わせて調合して洗っているとのこと

市販の洗剤は、オリジナルラベルを付けたボトルに入れておしゃれに。洗剤の原料がみそ・塩・醤油なら、市販の洗剤は、「○○鍋の素」みたいなもの。ひとつで味が決まるけれど、意図したものと違う材料が入っているものを使っても意味はないのだそう

開発中のオリジナル洗剤

開発中のオリジナル洗剤

中村さん:どんな成分が入っているかわかったうえで市販の洗剤を選ぶと、洗濯の質が上がります。今の家庭洗濯は「あっさりした鍋が食べたいと思っているのに、キムチ鍋の素とか買ってきちゃって、なんかおいしくないなって言っているような状況」だと思うんです。洗剤を選ぶ際は、どういう汚れを落としたくて、その汚れを落とすために必要な成分は何なのかを考えて選んでみてほしいですね。

<関連記事>洗濯王子がおすすめする、洗濯洗剤の正しい選び方・使い方

「僕は洗濯馬鹿なので」と自虐気味に洗濯愛を語る中村さんですが、センタクアトリエの構造やその洗濯メソッドは非常に合理的。さすがに同じように洗濯のための家を建てることは難しいですが、洗濯の質を高めるために、私たちでも日常の中に取り入れられるヒントとなる部分がたくさんありました。

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大泉瑠梨(編集部)

大泉瑠梨(編集部)

美容・健康家電を中心に新製品レポートやレビュー記事を担当。時には体を張って製品の実力をチェックします。

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