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懐かしモデルから最新スティック型まで

ここまで見せていいの!? 日立のモノ作り精神満載な掃除機工場を見学してきた!

日立の掃除機(クリーナー)の生産拠点があるのは、創業の地である茨城県・日立市。この日立市には日立関連の拠点が複数存在するのですが、その中で掃除機を作っているのが多賀事業所です。創業80年の同工場で、日立掃除機の歴史、キャニスター型・コードレススティック型・ロボット型各掃除機の製造過程、開発秘話をたっぷり聞いてきたのでレポートします!

こちらが多賀事業所。東京ドーム7.5個分の敷地で、掃除機、LED、ドラム式洗濯機、IHクッキングヒーターなどをつくる日立の家電の中核工場です

せっかくなので写真でご説明しましょう。今回訪れたのは、広大な多賀事業所の中のこのエリアです! しかし広い!

常にユーザーニーズを捉えてきた日立掃除機の進化をプレイバック!

日立が掃除機の生産を開始したのは昭和33年のこと。そこから年々、時代のニーズに合わせて進化を遂げてきたという歴史があります。

ヒット製品のひとつが、2002年発売の「たつまきサイクロン」シリーズ。「CV-SF9」はそのパワーとサイクロン方式の採用で人気を博しました。ほかにも時代を先取りした製品が多いのが印象的です。たとえば、小型軽量の球体掃除機や、ストラップ付きでショルダーかばんのように肩から提げて使うコードレス掃除機、それにしゃべる掃除機なども! 常にユーザーのニーズを捉えながら、日立の掃除機は進化してきたことが感じられます。

1956年に発売された掃除機「H-H2」。17,200円という高価格でしたが月産3,000台の大ヒット。ちなみに、今の価格で言うと50万円だそうです!

クーペ型(上段左)など、今から見るとちょっと変わった形ですね

クーペ型(上段左)など、今から見るとちょっと変わった形ですね

ボール型の掃除機や動作を音声で知らせる掃除機も展示してあります

ボール型の掃除機や動作を音声で知らせる掃除機も展示してあります

以下の動画は、「CV-RS1」で掃除をし終わったあとの様子。ぜひ最後までご覧ください! 掃除が終わって音声案内の後、ダストボックスが自動で上がります!

2003年発売のストラップ付きコードレス掃除機

2003年発売のストラップ付きコードレス掃除機

そのほかにも、歴代製品がずらり! 見覚えのある製品も多いのではないでしょうか?

そのほかにも、歴代製品がずらり! 見覚えのある製品も多いのではないでしょうか?

1台の掃除機ができるまで〜工程が細かい! 試作品の数がすごい!

ここからは、日立の掃除機製品がどのように誕生するのかをご紹介します。製品開発の際、日立ではまず「コンセプト作り」を行うそうです。そのために実施するのが、生活者調査。商品開発、デザイナーなどさまざまな職種のメンバーがユーザー宅におもむき、実際の製品の使われ方、ユーザーの住宅環境、ライフスタイルなどを細かく調査するんだそう。

そしてコンセプトを決めたら製品作りに取りかかるのですが、その工程がとにかく細かい!

たとえば2017年発売の「PV-BEH900」の場合。このモデルは、日立ではじめてのコードレススティック掃除機ということで1年半ほど前から製品作りに取りかかったと言います。今回はデザインに焦点をあてて、製品ができあがるまでの工程を見ていきましょう。

まずつくるのが、木製の模型です。同社のデザイン担当者は「デザイン画や設計図だけでは、実際の使い心地はみえてきません。まずは立体を作り、実際に手で触ってみて製品をさらに作り込んでいきます」と話します。

デザイナーが自分で木を削ってつくるという模型(左)

デザイナーが自分で木を削ってつくるという模型(左)

製品化に向けてさまざまな工程をたどります。ここにある模型はほんの一部なのだとか

製品化に向けてさまざまな工程をたどります。ここにある模型はほんの一部なのだとか

最初の模型を作ったのち、今度は実際にモーターなどのパーツを入れるスペースを作り、重さやバランスなども見ながらどんどん形をつめていきます。カラーもCAD上で見るだけでなく、実際に模型に塗装し、質感や色味をチェックしていきます。

続いて、実際に駆動部を入れて動かし、さらに微調整。重心とハンドルの位置、ハンドルの太さなど、細かい調整が続きます。今回見せてもらった模型はあくまでデザインにフォーカスしたものですが、これ以外にモーター、バッテリー、ブラシなど各部品の作り込み、動かしたあとの風路の調整などを経てやっと1台の製品が誕生します。

同社クリーナーの場合、商品企画は東京・港区、デザインの拠点は東京・国分寺、設計・生産拠点は多賀事業所となっており、すべて国内で企画設計生産をしている点が特徴であり強みとなっています。

動く作業台、カメラでモニタリング! ムダを省く組み立てエリア

続いては、いよいよ生産ラインの見学。「キャニスター型」「ロボット型」「スティック型」、それぞれの組み立てエリアを見学しました。

今回この3製品の組み立て作業を見学しました

今回この3製品の組み立て作業を見学しました

なお、以前は部品ごとに担当者が組み立てるライン生産式を採用していたそうですが、これは個人による熟練度の差が出やすいという問題があります。「作業のスピードが遅い人がいるとそこに製品がとどまり、ほかのメンバーの待ち時間が生じることがあり、ムダになっていました。そこで2003年からひとりが製品を最後まで組み立てるセル生産方式を導入しました」とのこと。

2003年当時は、部品を作業員が自分で補充する方式をとっていました。しかし、これでは取りに行く時間がムダになるとして、その後部品を自動で排出し、補充する「キットチャージ」方式を採用。さらに、作業台が動いたり、作業に必要な工具が手前に移動するなど、作業効率を向上させる設備が随所に見られます。工具は規定の回数作業しなければ、ずっと手前に出たままなので、締め忘れなどを防げるという仕組み。

おもしろかったのが、ロボット掃除機「minimaru」のセルです。ロボット掃除機はセンサーなど細かいパーツやコネクターが多く、組み立ての難易度が高いものです。そこで迷わず正確に組み立てられるよう、カメラを使って作業をモニタリングしています。

作業台上部にあるカメラで手元を上のモニターに映し出します。正しい作業を行えば、次の組み立てに取りかかれますが、作業の抜けなどがあると、次に移れないようになっています。問題のある個所をモニターで確認できるため、すぐに対処ができるというわけ。このモニターの採用で、これまで1か月かかっていた独り立ちまでの期間を、7日間に短縮できるようになりました。

スティック掃除機の生産は、部材がトレイにのせられたまま運ばれてきます。トレイはそのまま作業台として使用。

組み立てがおわると、トレイを下に送り、また新しいトレイが自動で供給されるという仕組みです

キャニスターの組み立て作業。部材は奥から作業台車で供給されます。ちょうど、頭の高さくらいの位置です。工具は規定回数かしめ作業をすると元の位置に戻ります

組み立てが終わると、作業台が一時的に奥に引っ込むため、下のベルトコンベアに出来上がった製品がのせやすくなります。

各セルの組み立て状況をモニタリングして部材供給を行います。15か所の組み立てセルに対し、供給人員は2人ほどとのこと

作業台の上部のカメラで、作業の整合性をチェック

作業台の上部のカメラで、作業の整合性をチェック

作業の進行状況にあわせてモニターの表示も変化していきます

作業の進行状況にあわせてモニターの表示も変化していきます

組み立てが終わると、本体をベルトコンベアに流す仕組み。なお足元には、組み立てエリアを掃除するためのminimaruがいます

これらの環境改善により、同事業所ではライン生産だった時代よりも30%の効率化を実現したといいます。こうした改善案は作業員の声が反映されているそうで、改善に関する会議を週1ペースで開き、日々ムダを省いているというのだからおどろき。ちなみに、1台あたりの組み立て作業時間は、キャニスター型が約4分、スティック型が約3分、ロボット型が約7分だそう。

今年度の新製品を紹介!

ここからは、そんな日立の最新掃除機をご紹介しましょう。

今年度の新製品。左から、コードレススティック型「PV-BH900G」、サイクロン式キャニスター型「CV-SP900G」、紙パック式キャニスター型「CV-KP900G」

コードレススティック掃除機「パワーブーストサイクロン PV-BH900G」は、さまざまなアタッチメントで家中の掃除ができる「立体おそうじ」をコンセプトにしたモデル。製品の特徴は、小型ハイパワーファンモーター「X4」を搭載し、ターボモードを備えたこと。たくさん空気を排出すればたくさん空気を吸い込む。そのためには、効率よく空気を流すことが重要ということで、モーターに2枚の固定羽を搭載し効率を高めました。

こちらが、小型ハイパワーファンモーター「X4」。円周付近に大きな羽がついています(写真は「PV-BFL1」用のもの)

以下の動画は、引き金式の「ゴミ捨てレバー」。ゴミ箱の中まで本体を入れられるため、ゴミが舞い上がりにくいのが特徴。

サイクロン式の「CV-SP900G」は、2.5kgの軽量ボディながら300Wのハイパワーが特徴。新集じん構造を採用し、ダストカップの内筒に髪の毛などがからみにくくなりました。そのほか、ロボット掃除機の「minimaru」も、アップデートにより走行効率が向上しています。

こちらは、サイクロン式掃除機「CV-SP900G」のダストカップ。内筒の構造を見直し、髪の毛がからみにくくなりました。左の従来機と比べると違いがよくわかります

紙パック式掃除機「CV-KP900G」は、立体的なデザインが特徴。高級感だけでなく、薄肉化に成功し、軽量化につながったそうです

新搭載の紙パック。空気は通すけれど、細かい塵などはキャッチ。水も漏らさぬ紙パックです。風路を見直し、紙パックの寿命は約1.6倍になりました

【まとめ】ここまで見せてイイの? と、びっくりした工場見学

筆者はこれまで多くの家電の工場を見学してきましたが、生産ラインの様子を撮影したり、デザイン模型のブラッシュアップの過程など、ここまで細かく見せてくれるところは、ほとんどありませんでした。正直こちらが「こんなに見せていいの??」と心配になるくらいです。

なかでも、「minimaru」製造過程はつい夢中になって見てしまいました。minimaruは小型薄型のモデルが特徴のロボット掃除機ですが、本体サイズが小さいということは、それだけ中に入るパーツの組み立ても難しくなるということ。それを、セルとモニタリングの工夫で作業効率アップをするなんて! すごい!

見学の後、多賀事業所関係者の何名かにお話をうかがったところ、「コンセプト作りから入るなど、これまで以上にデザイナーが関わる工程が増えました。そこで、デザイナーからも自分たちの取り組みを発信していきたかったんです」「国内生産の強みを生かした、日立の物作りに対する思いを伝えたかった」「せっかく遠くまで来てもらうんだからいろいろお見せしたくて」といった声が聞かれました。

しかも工場では、見学者が来る前に現地の芝刈りをして庭を整えていたそうで、見学当日には昔の掃除機を急遽調整して動かしてくださったりと、細かいところにまで日立のみなさんの心づかいを感じた1日でした。こういう心づかいが、日立のモノ作りにつながっているのでしょう。

伊森ちづる

伊森ちづる

家電流通専門誌で白物家電と家電量販店と流通に関する取材・執筆・編集を担当。趣味は料理、旅行、舞台鑑賞、米国ドラマ視聴など。クラシック音楽の”現代音楽ファン”というと変人扱いされることが悩み。

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