長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第14回は、これからの時期、本格的な需要期を迎えるエアコンについて解説する。
【図1】価格.comの「エアコン・クーラー」カテゴリーの閲覧者数の推移(過去2年)
まずは、エアコンの需要が高まる時期について確認しておこう。図1は、価格.comの「エアコン・クーラー」カテゴリーの過去2年間における閲覧者数の推移を示したもの。これを見ればわかるように、気温が高まる5〜8月くらいがエアコンの需要期ということになる。なお昨年は、新型コロナ感染拡大にともなう中国のロックダウンの影響で、いくつかのメーカーでエアコンの生産ができなくなったというやや特殊な事情があったため、特に6月後半に急激に需要が伸びているが、一般的にはここまで極端な形にはならず、気温が上がってくる5月中旬以降くらいから6月くらいにかけてじわじわと需要が上がっていき、本格的な暑さを迎える7月にピークを迎えるのが、例年のパターンだ。今年の場合も、5月上旬のアクセス数で見る限り、例年とほぼ同等の上がり方となっており、今後気温の上昇につれて、エアコンの需要も上がっていくものと予想される。
【図2】価格.comの「エアコン・クーラー」カテゴリーにおける主要5メーカーの閲覧者数の推移(過去1年)
では、価格.comでは、どんなメーカーのエアコンが人気なのだろうか。図2は、価格.comの「エアコン・クーラー」カテゴリーにおける主要5メーカーの閲覧者数の推移(過去1年)を示したものだが、これを見ると、ダイキン、三菱電機、パナソニック、日立の4社が僅差でトップの座を奪い合うような形となっており、この4社がエアコンにおける4大メーカーという感じになっている。やや離れて5位のシャープ、そしてこのグラフには出ていないが、6位に富士通ゼネラルが付ける展開だ。
ちなみに、価格.comでは伝統的に、個室に取り付けて使うような小出力のエアコン(2.2kW/主に6畳用)が人気の中心となっている。インターネット通販で購入する特性もあるのだろうが、リビングに取り付けるような中〜大出力の多機能モデルよりも、価格的にも手ごろなベーシックモデルが売れ筋の中心だ。これらのベーシックモデルは、昨年発売された型落ちモデルを中心に売れており、価格的にも4万円前後から購入できるものが多い(図3)。もちろん、取り付け工賃は別途必要となるが、家電量販店などで売られている製品と比べると価格差が2〜3万円程度になるものも多く、工賃込みでもだいぶ安く購入できる場合がある。エアコンの場合、出力が上がるほど価格も上がっていくので、インターネット通販で購入するメリットはより高まっていくだろう。
【図3】価格.comの「エアコン・クーラー」カテゴリーにおける人気モデル(2.2kW/主に6畳用)4製品の最安価格推移(過去1年)
上述のとおり、エアコンの需要期は、本格的な暑さを迎える7月がピークとなる。ただ、エアコンの場合、購入してすぐに使える性質のものではなく、必ず取り付け工事が必要になる点には注意したい。7月くらいに急激に暑くなってきてからようやくエアコンの冷房を動かしたところ、全然涼しくならない。こういう話は毎年多く聞かれる。多くはコンプレッサーが壊れてしまったり、冷媒のガスが抜けてしまったりというのが原因で、買い換えが必要な場合があるのだが、需要ピークの7月にこうした駆け込み購入する人が後を絶たないため、取り付け業者のリソースが不足し、結果として、3週間待ち、4週間待ちといった状況を招きかねない。こうなると、暑い時期をエアコンなしで過ごさねばならず、なかなか厳しいことになるので、とにかくエアコンは早めに動かして、壊れていないかどうかをチェックすることが肝要だ。
なお、エアコンの発売時期であるが、意外にも冬の時期に発売されることが多い。メーカーによっても異なるが、年末の11月くらいから年明けの2月くらいにかけて新モデルが発売される傾向にある。ただ、価格.comでも人気の小出力のベーシックモデルの場合、発売時期はもう少し遅く、1〜4月くらいの時期に発売されることが多い。そのため、現時点ではすでに最新モデルが店頭に多く並んでいるが、その前モデルも、まだ型落ちになってから数か月しか経っていないため、現状ではインターネット市場での流通在庫は比較的潤沢に存在する。ちなみに、この時期におけるベーシックモデルの最新モデルと、型落ちモデルの価格差であるが、モデルにもよるが2万円程度変わってくるものも多いため(図4)、さほど性能が変わらないのであれば、型落ちモデルを購入するのは賢い買い方だ。
【図4】ベーシックモデルにおける最新モデルと型落ちモデルの価格差例(日立「白くまくん」2kW/主に6畳用)
さらに言うなら、上記の図3でも見たとおり、安くなった型落ちモデルの場合、本格的な夏を迎える前に買っても、価格はほとんど変わらない。それどころか、型落ちモデルの流通在庫が減ってくる夏の時期になると、むしろ価格が上がってくる傾向にあるので(人気モデルの中にはすでに価格上昇しているものもある)、購入するなら早めに行うのが吉だ。今年の場合、昨年のように、製品自体の在庫がなくなることはなさそうだが、型落ちモデルを安めに購入したいなら、取り付け業者も比較的スケジュールがとりやすい今のうちに動くべきだろう。
最後にエアコンを買う際にチェックしておくべき機能やスペックについてまとめておきたい。
まず、エアコンにどんな機能を求めるのか、そして予算はどれくらいなのかを考えよう。メーカーにもよるが、一般的に同じメーカーのエアコンでも、最低3つくらいのグレードに分けられている(6つくらいある場合もある)。上から順に、プレミアムタイプ、スタンダードタイプ、ベーシックタイプといった具合だ。プレミアムタイプは、そのメーカーの最新技術が盛り込まれている場合が多く、機能重視の方ならこのグレードに注目すべきだろう。ただし、その分、価格も高くなり、同じ適用畳数でも、ベーシックタイプと比べて3倍以上の価格差が生じる場合もあるので気を付けたい。主に、家族が集まるリビングルームなどに設置するエアコンに向いている。
逆に、シリーズのボトムを担うベーシックタイプの製品は、価格が安いのが何よりのメリットだが、機能面ではメーカー間の差がさほど付きにくい。寝室や書斎、子ども部屋など、常に使うわけではない個室用に向いており、価格で選んでもさほど問題ないだろう。
最後に、両者の中間に位置するスタンダードモデルだが、このクラスは機能の有無がさまざまあるので、各メーカーのエアコンのカタログに掲載されている機能比較表を参考に、欲しい機能があるかどうかをしっかり確認して選びたい。価格と機能とのバランスが最も重視されるグレードと言えるだろう。
なお、最近の技術トレンドとしては、エアコンの室内機内部を常に清潔に保つクリーン機能が充実している。これらの機能はスタンダードモデルまでは対応しているメーカーが多く、ものによっては、ベーシックモデルでも対応しているものがあるので、よく確認しよう。このほか、AIとセンサーを駆使した自動運転で、気流を上手にコントロールするものも流行りだが、こうしたものはプレミアムタイプにのみ搭載されるケースが多い。梅雨時に冷やしすぎない再熱冷房機能や、換気機能なども大体プレミアムタイプのみの搭載機能。逆にスマホ連携機能(Wi-Fi搭載)などはスタンダードタイプでも搭載しているものは多い。
ここまで大体のイメージが決まったら、あとは、エアコンを設置する部屋の対応畳数で型番を絞り込もう。なお、エアコンは電源の取り方によって、100Vタイプと200Vタイプが存在するので、電源の取り方についてもきちんと確認しておこう。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2023年5月16日 時点のものです。
価格.com最安価格:157,068円
発売日:2022年11月発売
ユーザー評価:★5.00(2人)
空調専業メーカー、ダイキンが製造するルームエアコンのフラッグシップモデル「うるさらX」の最新モデル。「うるさらX」は、もとより独自の無給水加湿機能などによる湿度コントロールを得意とするエアコンだが、最新モデルではその加湿・除湿性能がさらにアップしており、冷房の冷やしすぎを抑制したり、暖房による乾燥を抑制したりできるのが大きな特徴となっている。室内の換気も行えるなど、非常に多機能かつ上質な冷暖房が行えることから人気がある。
三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」のフラッグシップ「Z」シリーズの2022年モデル。最新モデルからは1世代前のモデルになるが、お得意の360度赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.+」とAIを搭載し、室内の温度や利用者の表面温度などを感知しながら、同時に2か所(2人)それぞれに最適な温度の気流を届けてくれる。ナノレベルの微細なミストが除菌を行ってくれる「ピュアミスト」機能を備えるほか、自動おそうじメカも搭載。室内機内部のお手入れもしやすいよう設計されている。
価格.com最安価格:164,000円
発売日:2022年11月発売
ユーザー評価:★-(-人)
日立のルームエアコン「白くまくん」のフラッグシップ「XJ」シリーズの最新モデル。室内機内部を清潔に保つクリーン機能には定評があり、お手入れの難しい熱交換器を一度凍らせてから暖めて、表面に付着したホコリや油、カビなどを一気に洗い流す「凍結洗浄 除菌ヒートプラス」が特徴。さらに最新モデルでは、プラズマイオンを室内機内部に充満させ、カビや菌を抑制するという。さらに、業界初となる、室外機の熱交換器にも「凍結洗浄」機能を搭載。徹底的に空気をきれいに保つ機能が満載だ。
価格.com最安価格:153,998円
発売日:2021年10月発売
ユーザー評価:★-(-人)
パナソニックのルームエアコン「エオリア」のフラッグシップ「X」シリーズの2022年モデル。1世代前のモデルにはなるが、最近同社のエアコンは価格の高止まりが続いているため、このクラスでお買い得に買うならこちらのほうがおすすめだ。パナソニック独自の高濃度イオン「ナノイーX(48兆)」を使ったクリーン機能が特徴で、室内機内部はもとより、部屋の空気も一緒にきれいにしてくれる。上位モデルに搭載される加湿・換気機能は搭載されないが、再熱除湿を利用した冷やしすぎない「快適除湿(パーシャル除湿)」を搭載するなど、高品位な冷房が可能。室外機の排熱を有効活用する「エネチャージシステム」の採用で、省エネ性も高い。
価格.com最安価格:133,500円
発売日:2021年10月発売
ユーザー評価:★4.00(1人)
シャープのルームエアコンではフラッグシップとなる「X」シリーズの2022年モデル。温度、湿度、気流を快適にコントロールする「匠の冷房」に対応し、冷房運転時は湿度を上手に取り除きながら、冷風が身体に当たりにくいサラッと快適な冷房を実現する。同社独自の高濃度イオン「プラズマクラスターNEXT」を搭載し、室内機内部はもとより、部屋全体の空気をきれいにしてくれるのも特徴だ。1世代前のモデルにはなるが、13万円台から購入可能なコストパフォーマンスの高さも光る。
価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。