長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第26回は、空気が乾燥する冬場の必需品、風邪の予防や体調管理に役立つ「加湿器」の最新トレンドについて解説する。
【図1】価格.com「加湿器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去2年)
【図2】価格.com「加湿器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3か月)
加湿器は、季節に非常に左右される家電製品である。端的に言うなら、空気が乾燥する冬場に売れる製品であり、湿潤な夏場はほぼ売れなくなる。図1は、価格.comの「加湿器」カテゴリーの、過去2年における閲覧者数推移を示したものだが、これを見ればわかるように、加湿器が注目されるのは、毎年10〜2月くらいの時期のみと言ってもいいくらい。これは暖房器具とほぼ同じような推移であり、冬物家電と言っても過言ではない状況となっている。なお、今年に関しても10月くらいから注目度が徐々に上がっているが、急激に寒くなってきた11月11日くらいを境に大きく注目度が跳ね上がっている(図2)。やはり、本格的に寒くなってくると、加湿器の購入を考える人が増えるようだ。
【図3】価格.com「加湿器」カテゴリーの主要メーカー別閲覧者数推移(過去1年)
日本国内で加湿器を製造・販売するメーカーは大小合わせるとかなり多いが、主要プレイヤーとなるとそれほど多くはない。図3は、価格.com「加湿器」カテゴリーにおける主要メーカー別の閲覧者数推移を示したものだが、人気なのは、象印、ダイニチ、パナソニック、シャープ、アイリスオーヤマといったところで、それ以下のメーカーになると、かなり閲覧者数も少なくなる。
なお、これらの主要メーカーは、メーカーごとに製造している加湿器に特色がある。価格.comで長らくいちばん人気を維持している象印は、基本的に水を加熱して湯気を出す「スチーム式」を展開。水を加熱することで雑菌をなくすことができる安心感と、同社が長年培ってきた電気ポットのノウハウを生かした、安全設計が人気を呼んでいる。
これに対して、そのほかのメーカーは、基本的に「気化式」の加湿器がメインだ。なかでも、シェア2位のダイニチは、ヒーターで空気を暖めて温風で気化させる「気化式ハイブリッド」を全面展開するのが特徴。気化式はスチーム式に比べて電気代が少なくて済むのがメリットだが、加湿スピードの面で劣る部分がある。しかし「気化式ハイブリッド」だと普通の気化式より早く室内を潤すことができ、しかもスチーム式ほど電気代がかからない。他メーカーも同様の方式の加湿器を作っているが、ほぼこれ1本で勝負しているダイニチの人気は価格.com上では比較的安定している。
以下、3位〜5位のメーカーは人気にほとんど差がないが、気化式の加湿器を中心に展開してきたシャープも、最近はダイニチ同様の気化式ハイブリッドを交えたラインアップになりつつある。新興のアイリスオーヤマは、超音波式も含む全方位ラインアップが特徴だが、価格.com上で人気なのは低価格の超音波式(超音波式ハイブリッド)が中心だ。
水の分子を震わせてミストにして放出する超音波式は、製造が比較的簡単で、ボディを小型化しやすいため、さまざまなメーカーが採用しているが、雑菌を含んだ水をそのままミスト化して放出するおそれがあることから、最近では人気が落ちている。この対策として、ヒーターで温めた水をミスト化させる「超音波式ハイブリッド」を採用するメーカーも増えている。
【図4】価格.com「加湿器」カテゴリーにおける人気モデル5製品の閲覧者数推移(過去3か月)
図4は、価格.com「加湿器」カテゴリーにおける人気モデル5製品の閲覧者数推移を示したものだが、上位5製品中、4製品が象印製で占められている。そして、上述の図3でも見たように、象印はここ数年安定した人気でトップの座を譲ることがない。価格.com上でここまで象印の加湿器の人気が高いのは一体なぜなのだろうか。
まず大きな理由として、同社の加湿器がスチーム式を採用していることがある。上述のとおり、スチーム式は電気ポットと同じ要領で水を温めて、その湯気をスチームとして放出するという、基本的にはシンプルな構造だ。加湿器には、大きく分けると、スチーム式、気化式、超音波式の3つの種類があるが、気化式、超音波式と比べると、熱を使う分、消費電力が大きく、そのために避けられることも多かった。一時期は、より効率的に加湿が行える気化式や、より手軽な超音波式に水をあけられていた時期もあったほどだ。
しかし、スチーム式にはほかの方式にはないメリットもある。それは清潔性だ。基本的に冷たい水をそのまま放出するほかの方式に比べて、スチーム式は必ず水を熱して放出する。つまり水を煮沸消毒しているわけで、その中に含まれる雑菌などを放出する心配がないのだ。この清潔性を重視する人にとっては、スチーム式は譲れない唯一の選択肢だったわけだが、コロナ禍で空気のきれいさに注目が集まると、加湿器の中でもスチーム式に人気が集中し、これを取り扱う象印の加湿器も品切れを起こすほどの人気となった。これが、今もスチーム式が人気の大きな理由である。
さらに、スチーム式の加湿器の中でも、象印の製品は機能性が高い。安い加湿器の場合、温度設定やタイマー設定などが行えないものもあるが、同社の製品は3段階の温度設定や、タイマー設定など、かゆいところに手が届く設計となっている。さらに、転倒しても熱いお湯がこぼれないようなお湯漏れ防止機構や、チャイルドロック、空だき防止機能など、同様の構造を持つ電気ポットを長年製造してきたノウハウがあちこちに生きている。こうした機能性の高さが安全性につながり、スチーム式ならではの清潔性もあって、象印の加湿器は安定して人気が高いのである。
なお今年は、電気料金の値上げが話題となっているため、消費電力が高いスチーム式にとっては逆風となっている。ただし、今の状況を見る限り、象印のスチーム式加湿器の人気は安定して高く、大きな障壁とはなっていないようだ。多少の電気代の高騰には代えられない利便性と安心感が、同社のスチーム式加湿器にはあるということの裏付けとも言える。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2023年11月14日 時点のものです。
価格.com最安価格:15,710円/16,500円
発売日:2023年9月1日発売
ユーザー評価:★5.00(3人)
加湿方式:スチーム式、定格加湿量:480mL/h、対応畳数:和室/8畳、洋室13畳、タンク容量:4L
象印のスチーム式加湿器の最上位モデル。洋室13畳にまで対応するため、リビングなどでも使いやすい。色はホワイトとグレーが用意されるが、性能は同じだ。480mL/hの最大加湿量と、4Lの水タンクを備え、就寝中の8時間加湿し続けられる能力を持つ。温度センサーと湿度センサーのデュアルセンサー搭載で、3段階の加湿モードを自動で切り替えてくれるのが特徴だ。象印製品ならではの広口容器、ふた開閉ロック、転倒湯漏れ防止機能、チャイルドロックなどの便利・安全機構を備えるのも魅力。
価格.com最安価格:10,680円
発売日:2023年9月1日発売
ユーザー評価:★--(0人)
加湿方式:スチーム式、定格加湿量:350mL/h、対応畳数:和室/6畳、洋室10畳、タンク容量:2.2L
象印のスチーム式加湿器では小型のモデル。最大加湿量は350mL/hで、主に寝室や書斎向け。ただし水タンクが2.2Lとやや小さいので、運転モード「強」での連続加湿時間は6時間となる。それ以外の機能面では、上記「EE-DD50」とほぼ同じで、使い勝手や安全性にも配慮されている。
価格.com最安価格:14,699円
発売日:2022年9月15日発売
ユーザー評価:★4.63(3人)
加湿方式:気化式ハイブリッド、定格加湿量:550mL/h、対応畳数:和室/9畳、洋室15畳、タンク容量:4L
シャープの気化式ハイブリッド加湿器では標準タイプに当たる2022年モデル。550mL/hの最大加湿量で、洋室15畳まで対応するため、リビングなどで使うのにも十分な性能だ。気化式の加湿器は、給水トレーや加湿フィルターの定期的なお手入れが必要になるが、本モデルはフィルターの温風乾燥機能を搭載しており、お手入れの手間を減らせるのが特徴。シャープならではの「プラズマクラスター7000」も搭載しており、潤いのある空気と一緒に放出できる。また、給水方式も、着脱可能な水タンクのほか、そのまま上から給水できる吸水口も設けられており、使い勝手がいい。
価格.com最安価格:31,273円
発売日:2022年8月8日発売
ユーザー評価:★4.80(8人)
加湿方式:気化式ハイブリッド、定格加湿量:1,200mL/h、対応畳数:和室/20畳、洋室33畳、タンク容量:7L
気化式ハイブリッド加湿器を広く展開するダイニチの大容量タイプの2022年モデル。ターボ使用時は最大で1,300mL/hという大加湿量と、7Lものタンク容量を持ち、洋室では最大33畳までの空間に対応する。気化式のデメリットと言われるお手入れの面倒さに、さまざまな方法で対処しており、気化フィルターや給水トレーが抗菌仕様なのはもちろん、ぬめりなどが付きやすい給水トレーには使い捨てタイプのトレーカバーを用意する。運転モードは4種類用意され、湿度も3段階で設定できるなど、設定項目も多く、スマートフォンによる遠隔操作も可能だ。
価格.com最安価格:22,000円
発売日:2023年9月20日発売
ユーザー評価:★3.00(1人)
加湿方式:気化式、定格加湿量:500mL/h、対応畳数:和室/8.5畳、洋室14畳、タンク容量:4.2L
パナソニックの気化式加湿器の最新モデル。最大加湿量は600mL/hで、洋室14畳まで対応可能だ。パナソニック独自の「ナノイーイオン」を放出するのはもちろん、「ナノイーイオン」で水を除菌する「イオン除菌ユニット」と加湿フィルター自体を除菌する「フィルター清潔モード」を搭載。加湿フィルター自体も取り外して洗いやすい形状のものを採用しており、お手入れには配慮されている。DCモーター搭載で風量も多く、ファンを高速回転させることで加湿スピードをアップさせる「お急ぎモード」も搭載する。