価格.com 家電トレンド研究所

テレビが売れない今、急激に人気を集めるハイセンスと苦心する国内メーカーの“差”とは?

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長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。

第39回は、最新の薄型テレビの最新トレンドと、今年の夏のボーナス商戦で狙い目の製品についても解説する。

コロナ禍での需要先食いの反動で低調が続くテレビ市場

【図1】価格.comの家電カテゴリーにおける人気5カテゴリーの閲覧者数比較(過去2年)

【図1】価格.comの家電カテゴリーにおける人気5カテゴリーの閲覧者数比較(過去2年)

【図2】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーの閲覧者数推移(過去2年)

【図2】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーの閲覧者数推移(過去2年)

液晶テレビや有機ELテレビなどの薄型テレビは、今でも家電製品の中では人気の高いジャンルだ。価格.comの家電関連カテゴリーの中でもずっと首位の座をキープしている(図1)。しかし、ここ数年は、カテゴリー全体の閲覧者数も減少傾向にあり、まだコロナ禍だった2年前に比べても、閲覧者の数は1割程度下がっている状況だ(図2)。

現在、同カテゴリーの人気が下がっているのには、いくつか理由がある。ひとつは、コロナ禍におけるテレビ買い換え増加の反動だ。2020年から約3年にわたって続いたコロナ禍においては、家での時間をなるべく快適に過ごすべく、さまざまな家電製品が人気を得たが、その中にはもちろんテレビもあった。外出自粛が叫ばれる中で、家の中のエンターテインメントをより楽しくするため、大型テレビに買い換える動きが加速したのだ。また、この頃、インターネットを通じた動画配信サービスも活況を迎え、テレビでもこうした動画配信サービスを手軽に楽しめる製品が増えたが、これもテレビ買い換えの大きな後押しとなった。ただ、こうした動きは買い換え需要の先食いでもあり、コロナ禍が明けた今、その反動として、テレビがあまり売れないという状況につながっていると考えられる。

もうひとつの理由は、今テレビを買い換える理由が今ひとつ希薄であることだ。上述のように、コロナ禍においては、画面のサイズアップ、動画配信への対応など、いくつかの理由からテレビを買い換えたほうが、生活の質が上がる感触があった。しかし、その後、大きな技術変革がなく、パネルの品質向上などによる画質アップなどはあっても、それが数十万円するテレビの買い換えの理由とはなり得ない状況が続いている。衛星を使ったBS/CSの4K放送も今ひとつ契約が伸びてはおらず、試聴されているのは依然として2Kの地上波が中心ということからも、テレビの高画質化が必ずしも、視聴者のニーズと合致していないことは明らかだ。

こうしたややネガティブな状況が、ここ数年のテレビ市場を取り巻いているため、テレビ自体への関心もどうしても低くなりがち。今年2024年はオリンピックイヤーであるが、ひと昔前まではよく言われていた「オリンピックの年にはテレビが売れる」という神話はすでに崩壊していると言わざるを得ない。

ただ、逆に言えば、高性能なテレビがなかなか売れないために、販売価格が安くなって、買いやすくなっている時期とも言える。そろそろテレビをバージョンアップしようと思っている人にとっては、今、テレビはまさに買い時なのだ。

この1年で伸びたハイセンス。旧東芝ゆずりの高性能と圧倒的なコスパで人気急上昇中

【図3】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける主要メーカーごとの閲覧者数推移(過去1年)

【図3】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける主要メーカーごとの閲覧者数推移(過去1年)

図3は、この1年における、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーの主要5メーカーごとの閲覧者数推移を示したものだ。これを見ると、国内の主要メーカーについては、TVS REGZAが伸びているほかは、パナソニックソニーシャープともほぼ横ばいかわずかに減少傾向にある。これに対して、中国を拠点とするハイセンスの勢いが急激に増しており、すでに上記3社の閲覧者数に並ぶほどになっていることがわかる。

世界市場においては、すでに日本のテレビメーカーのシェアはかなり小さいものとなって久しいが、国内市場においては、これまで比較的安定していた。しかし、ここへ来て、テレビの世界市場第2位(2023年時点※)のハイセンスが日本国内でも大きくシェアを伸ばしてきており、国内メーカーの座を脅かすまでになっている。さらに言えば、価格.comでは閲覧者数トップのTVS REGZAもハイセンスグループの一員であり、この2つのブランドを足し上げると、国内ではダントツのシェアを誇ることになる。

※2023年のテレビ出荷台数において AVC Revo調べ

ハイセンスのテレビがここまで国内市場で人気を勝ち得た理由は、高品質・高画質でありながらも、圧倒的なコストパフォーマンスを実現していることだ。そもそも価格.com上では、旧東芝ブランドのテレビ「REGZA」が長らく人気No.1を維持していたが、その東芝のテレビ事業部がハイセンスに買われ、再出発したのが2018年。TVS REGZAに会社名を変えたのが2021年だが、その社名からもわかるように「REGZA」ブランドはそのまま維持された。テレビ製造の方向性は変えず、ブランドも維持されたことから、その後も「REGZA」シリーズは好調を続け、その技術を一部共有して開発されているハイセンスのテレビ製品も、ユーザーからは「REGZAと同様の技術を使って作られている高品質のテレビ」として認知されるにいたったのだ。

【図4】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける55V型人気液晶テレビ5製品の最安価格推移(過去6か月)

【図4】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける55V型人気液晶テレビ5製品の最安価格推移(過去6か月)

しかも、ハイセンス製品の販売価格は驚くほど安い。図4は、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける55V型の人気液晶テレビ5製品の最安価格の推移を示したものだが、性能的にやや上になるTVS REGZA「REGZA 55Z870M」を別にすると、55V型でそれなりに高画質なモデルの価格の相場は、およそ13〜14万円台と言える。これに対して、ハイセンスの「55U8K」は、これをやや下回る11〜12万円台で売られている。しかも、性能的にはTVS REGZA「REGZA 55Z770L」やパナソニック「VIERA TH-55LX950」などの国内メーカーの製品より格上で、最新技術である「Mini LED」や「量子ドット技術」に対応したモデルであり、性能比で考えれば、信じられないくらい安い。

なお、4K液晶テレビのエントリーモデルに位置づけられる「55E6K」については、2024年6月4日時点で60,957円という驚きのプライスで売られている。この価格は、価格.comに掲載されている55V型液晶テレビの中でも上位10位に入る安さであり、それなりに名の知れたメーカーの最新製品としては、やはり驚くほどに安い

【図5】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける65V型人気液晶テレビ5製品の最安価格推移(過去6か月)

【図5】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける65V型人気液晶テレビ5製品の最安価格推移(過去6か月)

この傾向は、65V型となるとさらに顕著に表れる。図5は、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける65V型の人気液晶テレビ5製品の最安価格の推移を示したものだが、このクラスでは人気が高いソニーの「ブラビア」シリーズは、20万円、30万円というプライスで推移しているのに対し、TVS REGZAの「REGZA 65Z770L」とハイセンスの「65U8K」は15万円前後で推移しており、圧倒的に安い。なお、この2モデルの性能差は、55V型の「REGZA 55Z770L」と「55U8K」と同様だ。さらに、「65U8K」の後継モデルとなる「65U8N」が5月に発売されたばかりだが、こちらも発売時の価格が18万円を切っており、すでに売れ筋ランキング上位に食い込むほどの人気ぶりとなっている。

このように、国内のテレビメーカーが販売に苦心する中、旧東芝ゆずりの高性能と、圧倒的な価格優位性を両立させたハイセンスが、今日本市場でも急激にその存在感を示しつつある。実際に同社の製品を使っているユーザーからのレビュー評価もかなり高めで、購入後の満足度も高いことから、国内市場でも安心して購入できるメーカーとして認知されてきていると言えるだろう。

コレ買っときゃ間違いない! 価格.com編集長が今注目する液晶テレビ5選

※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年6月4日 時点のものです。

●55V型
ハイセンス「55U8K」

55U8K

価格.com最安価格:109,798円
発売日:2023年5月中旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.55(10人)

最新技術のMini LEDと量子ドット技術の両方を備えるなど、高画質でありながらも11万円前後という驚愕のプライスを実現。映像エンジンにはTVS REGZAと共同開発した「HI-VIEWエンジン」を搭載し、情報量の多い4K映像でも高速処理。地デジや4K放送はもちろん、ネット動画やゲームも高画質で楽しめる。サウンド面は合計40Wの3スピーカーで、Dolby Atmosにも対応。4K/120p入力で遅延時間約0.83msを実現した「ゲームモードPro」にも対応する。

TVS REGZA「REGZA 55Z770L」

REGZA 55Z770L

価格.com最安価格:129,146円
発売日:2022年8月31日発売
ユーザー満足度・評価:★4.56(28人)

2022年発売の4K液晶REGZAの中核モデル。Mini LEDは採用していないが、直下型の量子ドット液晶パネルを採用しており、画質的には十分なもの。「タイムシフトマシン」を搭載しており、外付けHDDをつなげば最大6チャンネルの地デジ番組を常時録画できる。サウンド面では合計60W、計9個のスピーカーによるの「重低音立体音響システムZ」による迫力のサウンドを実現。Dolby Atmosにも、もちろん対応する。ゲームモードでは、4K/120p入力で遅延時間約0.83msを実現。これだけの内容で13万円以下は間違いなくお買い得だ。

TVS REGZA「REGZA 55Z870M」

REGZA 55Z870M

価格.com最安価格:168,000円
発売日:2023年4月21日発売
ユーザー満足度・評価:★4.89(20人)

上記「REGZA 55Z770L」の機能はほぼそのままに、最新技術のMini LED液晶パネルを採用したハイグレードモデル。Mini LEDと量子ドット技術の両方を備えたモデルとしては、価格も安く、お買い得感が強い。従来の液晶パネルと比べると、明るさ、色純度とも高いので、画質面でこだわる方には最適。

●65V型
ハイセンス「65U8K」

65U8K

価格.com最安価格:149,141円
発売日:2023年5月中旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.92(13人)

上記55V型の「55U8K」の65V型モデル。機能的には「55U8K」と同じで、Mini LEDと量子ドット技術による高画質を実現しつつも、15万円前後というプライスを実現したことから人気が爆発。「価格.comプロダクトアワード2023」では、映像部門の大賞に輝いたほどの人気と高評価を得た。後継モデルとなる「65U8N」では、ゲームモードが144Hz駆動に対応するなどの改良が加えられているが、本稿執筆時点で価格差が4万円程度あるので、本モデルのほうがお買い得感が強い。

ソニー「BRAVIA XRJ-65X90L」

BRAVIA XRJ-65X90L

価格.com最安価格199,729円
発売日:2023年5月20日発売
ユーザー満足度・評価:★4.68(6人)

2023年発売のソニーのプレミアム液晶テレビの主力モデル。Mini LED採用の「X95L 」シリーズも上位にあるが、価格差がかなりあるため、20万円程度の予算なら、こちらを選びたい。同社独自の認知特性プロセッサー「XR」を搭載し、直下型LEDパネルとの組み合わせによる、ビビッドな色合いと高コントラストな映像が特徴。サウンド面では、計4基のスピーカーによって立体音響を実現する「XR Surround」に対応。Dolby Atmos以外のサウンドも臨場感のあるサウンドにスケールアップする。そのほか、PS5との連動モードも搭載する。

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鎌田 剛(編集部)
Writer
鎌田 剛(編集部)
1996年にソフトバンクにて複数のパソコン情報誌の編集・立ち上げに携わった後、2002年にカカクコム入社。2006年「価格.comマガジン」を創刊。以降、編集長としてメディア運営に携わる。日経MJにてコラム連載、ラジオ出演なども幅広く行う。家電製品アドバイザー資格保持者。
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北島圭介(編集部)
Editor
北島圭介(編集部)
出版社で10数年、編集者として経験を積み、2022年にカカクコム入社。家電製品から文房具など、さまざまな商品を検証するモノ雑誌の編集経験を生かし、価格.comマガジンで生活家電を中心に気になる製品をレビューしている。
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