キャンプなどのアウトドア、車中泊など、さまざまな用途で使われているポータブル電源。キャンプは年2回、車中泊なし、ガレージでDIYなどしない、いわゆるフツーの人である筆者ですが、たくさんのガジェットを同時に充電できるポータブル電源の利便性に興味があります。
そこで、今回はフツーの筆者がポータブル電源を導入したらどんな使い方になるのか。実際にDJIの「DJI Power 1000」を長期間借用し、検証してみました。
「DJI Power 1000」、99,990円(税込み/2024年8月7日の価格.com最安価格)、2024年4月18日発売
今回試した「DJI Power 1000」は、バッテリー容量が1024Whとポータブル電源の中では大容量のモデルです。出力も定格出力が2000W、最大連続出力が2200W、ピーク出力が4400Wと、高出力な家電製品にも対応できるスペック。スマートフォンからドライヤー、電子レンジなど、ほとんどの家電製品が動作します。
大容量モデルの「DJI Power 1000」。中央にディスプレイ、その周囲に各ポートが並んでいます
「DJI Power 1000」が備えるポートは、AC出力ポート×2(安定出力2200W、ピーク出力4400W)と、USB Type-Cポート(最大140W)×2、USBポート(最大24W)×2、SDCポート×1、SDC Liteポート×1。SDCポートはDJI製のドローンやソーラーパネルによる本体充電に使えるポートです。
中央のディスプレイにはバッテリー残量と、入力、出力をリアルタイムで表示。ディスプレイ下部にUSB Type-Cポート(最大140W)×2、USBポート(最大24W)×2を装備
AC出力ポートは2基。下部のボタンを押さないと動作しないようになっています
左がポータブル電源の充電に使う入力ポート。その下のスイッチで充電モードを切り替え可能。その右にあるのがSDCポートです
筆者がポータブル電源にまず期待することは、災害時の緊急用電源としての使い道です。阪神大震災で被災したときは、2時間くらいの停電を経験しました。東京ガスによれば、災害の規模や居住エリアによるものの、台風による大規模停電時でも比較的被害がすくない地域ではおおむね2日以内で電力は復帰した実例があるとのこと。つまり、2日持つバッテリー容量があれば、安心できそうです。
被災したのが29年ほど前なので、あまり参考にはならないかもしれませんが、停電時に電気があればと思ったのが、照明と湯沸かし器です。照明がないのは非常に不便ですし、精神的にもつらいものがあります。
次に湯沸かし器。被災時はガスがなかなか復旧(1週間くらい)せず、食料を調理するのが大変でした。お湯が沸かせれば、インスタントカップ麺などを食べられるのですが、電気が復旧しないとお湯も沸かせないんですよね。ですので、ケトルや電気ポットに給電できるポータブル電源が役に立つはず。
そのほかにも、情報を得るためのスマートフォンや、冷暖房なども災害時は使えたら便利でしょう。
検証では、まず必須となる照明を接続してみました。簡易的なものですが、緊急時はこれで十分。給電したい機器を接続すると消費電力が表示され、筆者の照明だと7W。昼間は使わないことを考えると、10日以上は余裕で持ちますね。
照明は消費電力が7Wを非常に少ないので、2日間使っても容量を圧迫することはなさそう
では、照明に給電しながらケトルを使うとどうでしょうか。ケトルでお湯を沸かしてみると、消費電力は1214W。およそ5分間でバッテリーは13%減少しました。やはり、1000Wを超える消費電力の家電は数分でも消費電力はかなり高めです。朝、昼、晩の3回使うとすれば、2日は持ちますが、ほかのものに給電すると、大型のバッテリーでもギリギリ持つかなという印象です。
ケトルを使用すると、バッテリー残量はみるみる減っていきます。ドライヤーなど消費電力が高い家電は長時間使用できません
エアコンはコードが短く、延長コードも発火の危険性があるためポータブル電源に接続できません。夏場に停電したらかなり困りそうなので、扇風機などの導入も考えたほうがいいと思いました。ちなみに、DJIによれば一般的な扇風機だと9時間の連続稼働が可能とのこと。さすがに2日間停電すると扇風機を動作させっぱなしにするのは厳しそうです。
暖房もエアコン+床暖房のため、今回の検証では試せませんでした。非常用に電気ストーブなども用意しておくべきですね。ちなみに、我が家では使っていませんが、こたつは一般的に最大消費電力が500〜600Wで、弱運転であれば100W程度。電気毛布であれば100W以下。こたつや電気毛布の使用可能時間は10時間程度と考えていたほうがいいでしょう。
停電時は、スマートフォンなどの情報収集デバイスの充電も必須。スマートフォンはバッテリー容量も大きくないため、今回の「DJI Power 1000」だと50回くらいは充電できます。家族全員分のスマートフォンを充電してもたっぷりですね。
スマートフォン、ノートPC、タブレット、スマートウォッチ、イヤホンなど、身の回りのガジェットを全部充電しても消費電力は78W
検証した結果、照明、ケトル、スマートフォンなど最低限のアイテムなら、「DJI Power 1000」で給電しても2日間はギリギリ大丈夫だと思います。しかし、冷暖房も含めると2日以上は厳しそうですね。
これ以上の長期にわたって使用するには、「DJI Power 1000」に給電する必要があります。そのために必要なのが、ソーラーパネル。2日以上の連続使用を想定するので、あれば導入を考えたほうがいいです。そこは、どこまで防災の準備をするのかもありますし、あとは予算との都合もあるでしょう。
筆者みたいなフツーの人でも緊急時用としてポータブル電源を持っておくのはアリだと感じました。やはり、照明とケトル、スマートフォンだけでも使えるのはメリットが感じられる点です。
ただし、緊急時用としてはアリと言いましたが、緊急時用だけのために約10万円もするデバイスを買う必要があるのか、という声もあるでしょう。筆者としても、数万円ならいいけれど10万円はちょっと、というのは同感です。
そこで、別の用途も探ってみました。
筆者は年に2回ほど、キャンプに行きます。しかも、1泊ではなく2泊することが多いです。いつもはモバイルバッテリーで済ませるところですが、今回は「DJI Power 1000」を持って行ってみました。
キャンプでは、スマートフォン、タブレット、加熱式喫煙具の充電で使用。いや、これくらいだったらモバイルバッテリーでもいいじゃん、という感じですよね。まず、モバイルバッテリーと違って圧倒的に楽なのは、バッテリーの残り容量をまったく気にする必要がないことです。
筆者が充電したいデバイス+家族が使っているデバイスを合わせると、モバイルバッテリーだけでは少し心もとないんですよね。複数のデバイスを同時に充電できるポータブル電源は、キャンプなどのアウトドアに最強だと思います。
キャンプでもポータブル電源は活躍します。ただし、防水対応ではないモデルが多いので、雨天時はテント内で使うようにしましょう
これは個人的な問題ですが、キャンプに行くとモバイルバッテリーの置き場所を忘れてしまうんですよ。それを探すのが面倒で。特に夜は暗いので、探すだけでストレス。ポータブル電源の場合だと、基本的に置き場所が決まっているので、そこに充電しに行けばいいだけ。これは地味にいいところでした。
しかし、これでも10万円の出費を許せるかと言えば微妙なところ。やはり、日常的に使ったほうが価値を見出せるかなと感じました。また、キャンプがメインで使うなら、容量が少ないタイプのポータブル電源でも十分事足りると思います。
そこで思いついたのが、自宅でスマートフォンやタブレットの充電に使用すること。自宅のソファはコンセントから離れた場所にあるため、充電しながらソファでゴロゴロしつつ、スマートフォンやタブレットを使えません。延長コードは部屋の景観を損ないたくないので設置していません。
家族の間では「デジタルデトックスタイム」と言ってごまかしていますが、本音は充電しながらソファで寝ころびながらスマートフォンで動画とかを見たいんです。
そこで「DJI Power 1000」をソファの下に設置。これだけですべて解決しました。家族分のUSBポートは備わっていますし、控えめに言って最高。ソファ下に設置し、「DJI Power 1000」のバッテリーが50%を切ったら充電。またソファ下へ設置というのが、我が家での活用方法になりました。
周囲にコンセントがなくても、ソファのそばに設置すれば、簡易電源として役立ちます。しかし、さすがに緊急時にバッテリー残量が少なかったら元も子もないため、日常的に使う場合は定期的な充電を忘れずに
なお、もっと長いバッテリー駆動時間のポータブル電源が必要であれば、「DJI Power 1000」向けの大容量拡張バッテリー「DJI Power Expansion Battery 2000」も要チェック。2048Whの大容量で、ケーブルで接続するだけで「DJI Power 1000」の容量を拡張できます。最大5台まで拡張できるので、「DJI Power 1000」でもう少し容量が欲しいと感じたら、拡張バッテリーを考えてみてもいいかも。
筆者のようなフツーの人だと、緊急時、たまにのキャンプ、自宅の簡易電源という3通りの使い方を見出すことができました。緊急時用として持っておきつつ、ほかの用途でも使えれば十分価値があると思います。絶対持っておくべき! とまではいきませんが、やはりあると便利だし、万が一の事態にも備えられるのは安心です。
10万円はちょっとという人はもう少し容量の小さい低価格なモデルでもいいかもしれません。ただし、消費電力が多い電化製品に給電したい場合は、容量が小さいモデルでは難しい場合があるので、気をつけてください。
なお、自分の用途に合ったポータブル電源を探すなら、以下の記事の選び方やおすすめ製品も参考にしてみてはいかがでしょうか。