長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第49回は、乾燥する冬場の健康維持に欠かせない家電製品「加湿器」の最新トレンドについて解説しよう。
【図1】価格.com「加湿器」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
加湿器という製品は、空気が乾燥する冬期に需要が高まるが、逆に夏期になると一気に需要が下がる、典型的な季節家電だ。図1は、過去3年間における価格.com「加湿器」カテゴリーの閲覧者数推移を示したものだが、いずれの年も、10月から3月にかけての時期が需要期で、年末の12月にピークを迎えている。空気が冷え込み、乾燥が厳しくなってくるにしたがって需要が増し、逆に春を迎え温かくなってくると需要が減少することがよくわかる。今年も9月末くらいから徐々に需要が上がってきており、10月、11月、12月と需要は増加の一途をたどることが予想される。
【図2】「加湿器」カテゴリーにおける主要メーカー別閲覧者数推移(過去3年)
図2は、過去3年間における価格.com「加湿器」カテゴリーにおける主要メーカー別の閲覧者数推移を示したものだ。こちらを見ると、加湿器の主要メーカーの中でも、象印がずば抜けて高い人気を維持しており、2位以下のメーカーとはかなりの開きがあることがわかる。2位以下のメーカーでは、ダイニチ、シャープが比較的安定した人気を得ており、続いてパナソニックとアイリスオーヤマが4位争い、その下がドウシシャ、三菱重工の6位争いという状況になっている。
象印がここまで高い人気を維持している理由としては、同社の製品が加湿方式に「スチーム式」を採用していることが大きい。スチーム式は、湯沸かしポットと同様、水を熱して水蒸気(スチーム)を発生させて室内を潤す方式。ヒーターで熱を加えるため、消費電力は大きいが、加熱により水分中の雑菌を除去できるため、クリーンに加湿できるのがメリット。コロナ禍で、多くの消費者が空気のきれいさに敏感になったこともあり、スチーム式を全面採用する象印の加湿器の人気が高まった形だ。加えて、同じような構造の湯沸かしポットを長年製造してきた象印ならではの安全設計や使いやすさもあり、今や象印のスチーム式加湿器が価格.com上では定番の人気製品となっているのだ。
逆に、もうひとつの大きな加湿方式である「気化式」はどうだろう。気化式は象印以外のほとんどのメーカーが採用している(いくつかの方式を採用するメーカーも多い)加湿方式のひとつであるが、ここ最近は上記のスチーム式に人気で押されている感が強い。気化式の最大のメリットは消費電力が少なくて済むことだが、水を吸い込ませ、風で気化させる気化フィルターのお手入れがやや面倒だ。また、お手入れを怠ると水分中の雑菌を放出してしまう可能性があるというデメリットがあり、この点がやや敬遠されている。ただ、気化式の中でも、ヒーターで温めた温風をフィルターに当てて気化させる「温風気化式(温風ハイブリッド式)」は、雑菌を放出してしまうリスクが低いことから、どちらかと言えば人気が高い。この温風気化式の製品を多く製造しているメーカーとしては、ダイニチやシャープなどがあり、これらのメーカーの人気が、ほかの気化式採用メーカーに比べてやや高い理由のひとつになっている。
【図3】「加湿器」カテゴリーにおける人気モデル別閲覧者数推移(9月1日〜)
では、具体的にどのような製品が価格.comで人気を得ているのだろうか。図3は、価格.com「加湿器」カテゴリーにおける人気モデル別の閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、やはり象印の3製品が人気で、なかでも「EE-TA60-BM」の人気が群を抜いて高い。ちなみに象印の3製品はいずれも今年9月に発売されたばかりの最新モデルである。
人気No.1の「EE-TA60-BM」は昨年まではなかったハイパワータイプのモデル。洋室プレハブで最大17畳まで対応するハイパワーで、スチーム式では比較的カバーできなかった広めの部屋でも利用できることから人気を得ている。マットブラックという加湿器にはなかなかないカラーリングも人気の理由だろう。
象印の「EE-DE50-WA」と「EE-DE35-HA」は、加湿量違いの姉妹機モデル。部屋の大きさによって好きなほうを選ぶことになるが、いずれも最新モデルながらすでに安定した人気を維持している。
象印以外では、シャープの温風気化式モデル「HV-S55-W」が安定した人気となっている。こちらは昨年2023年9月に発売された型落ちモデルとなるが、最新モデルに比べて7,000円ほども安い15,000円台の低価格をつけており、お買い得感が強い。プラズマクラスターイオンによる空気清浄機能も人気の理由だろう。
また、ドウシシャのスチーム式モデル「Korobaan400S KSY-4011」も人気が高い。こちらは、シンプルな機能にまとめたスチーム式加湿器で、とにかく価格が安いのが特徴。主にAmazon.co.jpでの販売となるが、安い時期では1,700円台という破格のプライスで売られていたこともあり、ほかの加湿器とは一線を画すほどの低価格で人気がある(図4参照)。
このほか、アイリスオーヤマのスチーム式モデル「AHM-MH60-W」も、同様のシンプル機能の製品となるが、こちらは現状12,000円台の最安価格となっている。もちろん、これでも十分に安いのだが、比較するとドウシシャの「Korobaan400S KSY-4011」のほうがインパクトが強い感じだ。
【図4】「加湿器」カテゴリーにおける人気モデル別最安価格推移(9月1日〜)
このように、今人気なのは、スチーム式加湿器で、メーカーとしては象印がいちばん人気。ただ、価格が比較的高めなので、ドウシシャやアイリスオーヤマなどの低価格スチーム式モデルに流れる人も多そうだ。いっぽうの気化式モデルでは、温風気化式を採用するダイニチやシャープの製品を中心に、価格が安くなった型落ちモデルが一定の人気を得ているという状況となっている。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年11月6日 時点のものです。
価格.com最安価格:21,500円
発売日:2024年9月1日発売
ユーザー満足度・評価:★4.00(1人)
加湿方式:スチーム式
適用畳数:木造和室/10畳、プレハブ洋室/17畳
人気の象印製スチーム式加湿器の最上位モデル。加湿能力は600mL/hで、プレハブ洋室で17畳という広い適用畳数を実現したハイパワーにより、広めのリビングでも十分加湿できる。デュアルセンサー搭載で、「ひかえめ」「標準」「しっかり」の3モードを自動的に切り替えて運転可能。1〜9時間まで設定可能なオン/オフタイマーも搭載する。「転倒湯もれ防止構造」など、長年、湯沸かしポットを手掛けてきた象印ならではの安全設計も魅力だ。
価格.com最安価格:17,271円
発売日:2024年9月上旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.00(1人)
加湿方式:スチーム式
適用畳数:木造和室/8畳、プレハブ洋室/13畳
プレハブ洋室で13畳に対応する象印の主力モデル。加湿能力は480mL/h。主な機能は上記「EE-TA60-BM」とほぼ同様だが、オンタイマーは4/6/8時間、オフタイマーは1/2/4時間の設定となる。また「転倒湯もれ防止構造」など、長年、湯沸かしポットを手掛けてきた象印ならではの安全設計も魅力だ。
価格.com最安価格:7,646円
発売日:2023年9月下旬発売
ユーザー満足度・評価:★5.00(1人)
加湿方式:スチーム式
適用畳数:木造和室/7畳、プレハブ洋室/11畳
ドウシシャが2023年に発売したシンプル構造のスチーム式加湿器。ベッドサイドにも置きやすい小型サイズだが、7,000円台で買える低価格が特徴。名前の由来は、独自の吸盤構造で倒れにくいこと。加湿能力は400mL/hで、「おやすみ」「快適」「うるおい」の3つの運転モードを搭載。1/2/4/6時間に設定可能なオフタイマーも搭載する。
価格.com最安価格:15,201円
発売日:2023年9月発売
ユーザー満足度・評価:★4.00(1人)
加湿方式:温風気化式
適用畳数:木造和室/9畳、プレハブ洋室/15畳
シャープが2023年に発売した温風気化式加湿器。プレハブ洋室で15畳まで対応するので、広めのリビングでも使いやすい。加湿能力は550mL/hで、「強」「静音」「エコ(強)」の3つの運転モードを搭載。静音モードでは、1時間あたりの電気代が約0.37円とかなり省エネで動作する。シャープならではの「プラズマクラスター7000」による空気清浄機能も搭載。吸水は上部の給水口か、取り外し可能な給水トレイの2つから選べる親切設計だ。