元々アウトドア用途向けの需要が強かったポータブル電源は、コロナ禍以降に急速に普及し、最近では防災対策用に購入する人も増えている。防災対策も視野に入れるとなれば、バッテリー容量が大きければ大きいほど、安心感があるだろう。そこで今回注目したのが、3,000Whクラスのポータブル電源で最軽量、コンパクトをうたう「Jackery ポータブル電源 3000 New JE-3000B」(以下、「JE-3000B」)だ。実際に使用してレビューする。
「JE-3000B」の最大の注目点は、3,072Whの大容量バッテリーを搭載していること。万が一、大規模停電が発生した場合、復旧までには平均3日間かかるとされ、この間に必要な電力は、3〜4人家族で1日あたり1,000Whが目安と言われる。まず、これだけの電力をポータブル電源でまかなえるということが、「JE-3000B」の最大のメリットだろう。
ただしその半面、バッテリー容量が増えればポータブル電源の本体重量は増し、使い勝手が悪くなるというデメリットも。これに対して「JE-3000B」は、バッテリーの大容量化とともに、小型・軽量化も両立させており、本体重量は約27kgを実現している。これまで3,000Whクラスの電源は重量が40kgを超えるものも多かっただけに画期的。メーカーによれば、他社製品も含め、3,000Whクラスのポータブル電源では最も軽量でコンパクトとのこと。
本体サイズは約416(幅)×325(奥行)×307(高さ)mm。本体はやや横長のフォルムだ
本体上部の左右には、持ち運び用のハンドルが備わっている。男性の力なら、屋内の持ち運びは十分に可能だ
「JE-3000B」には、別売りで専用のキャリーカート「Jackery ポータブル電源用 折り畳みキャリーカート」も用意されており、屋外への持ち出しも考慮されている
さらに、大容量バッテリーのもうひとつのデメリットである充電時間の長さについても、「JE-3000B」ではしっかりと対策が取られている。家庭用ACコンセントからの充電なら約1.9時間で80%までの急速充電ができ、約2.5時間でフル充電が可能となっており、3,000Whクラスのポータブル電源としてはかなりスピーディーだ。
また、バッテリーには独自の「低自然放電技術」が採用されており、使用せずに1年間放置しても、電池残量が100%の状態から5%しか自然放電しないという。いったん充電しておけば、突然の停電時など、いざというときの備えとして安心感があるのだ。
「JE-3000B」の小型・軽量化を可能にしたのは、製造工程でCTB(セル・トゥ・ボディ)技術を用いたことが大きい。これは、電気自動車(EV)にも採用される製造技術で、筒状の電池のセルをハニカム形状の構造体で固定する製造方法を用いている。
この構造にすることで、余分な部品を省いてスペース利用効率を高め、耐衝撃性や耐久力も向上させているのだ。メーカーによれば、CTB技術を用いた3,000Whクラスのポータブル電源は同製品が初めてとのことで、まさに画期的と言えるだろう。
次に、改めて基本スペックを詳細に見ていこう。
何度も言及するが、バッテリー容量は3,072Whで、4000回サイクルの充放電に対応する長寿命のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。定格出力は3,000W(瞬間最大6,000W)だ。
一般的な家庭用コンセントの定格出力は1,500Wまでで、1,000W以上の電力を消費する電気ケトルやドライヤー、炊飯器などの家電を同時に使用できないが、定格3,000Wの出力に対応する「JE-3000B」なら、そうした家電を同時に使える。
筆者の事務所は古い団地の一室で、日ごろから電力使用量の大きい家電の検証などを行っているが、電気の契約が30Aまでで、複数の家電を同時に使うとブレーカーが落ちることがある。しかし、「JE-3000B」を使用すると、こうした心配を減らすことができた。
たとえば、夕食時に電気ケトルなどの消費電力の高い調理家電を「JE-3000B」に接続し、同時にオーブンレンジや食器洗い乾燥機、コーヒーメーカーも家庭用コンセントに接続して使用してみたが、ブレーカーダウンは発生しなかった。
また、定格消費電力1,120Wのホットプレート「BALMUDA The Plate Pro」を「JE-3000B」に接続して使用したところ、約3時間使用できた。消費電力の高い調理家電をこれだけ長時間使用できるのだから、普段からキッチンスペースの下に置いて使うと便利だ。
「JE-3000B」は定格出力3,000Wで、出力の高い調理家電へ同時に給電できるため、キッチンスペースに設置して使用するのにも便利だ
「JE-3000B」が搭載する出力端子は以下の9つ。
・AC出力ポート×4
・USB Type-C出力ポート×2
・USB Type-A出力ポート×2
・シガーソケット出力ポート(DC)
USB Type-C出力ポートは最大100W、USB Type-A出力ポートは最大18Wの出力に対応しているので、スマートフォンやノートPCをはじめ、さまざまなデジタル家電へ素早く給電できる。
本体前面中央には液晶ディスプレイを搭載し、その左にシガーソケット出力ポート(DC)を装備。その下部には、USB Type-C出力ポート×2、USB Type-A出力ポート×2、AC出力ポート×4を備える
本体右側面には、充電用のAC入力ポート、ソーラー入力ポートとシガーソケット入力ポートを装備
最近のポータブル電源の使い方のひとつとして定着しつつあるものに、UPS(無停電電源供給装置)の代替用途もあげられる。UPSとは、停電などで電源供給が一時的に途絶えたときに、バッテリーから継ぎ目なく電源を供給し続ける装置のこと。
「JE-3000B」は、停電発生時に0.02秒でバッテリーからの電源供給に切り替わるため、UPS機能に対応するデスクトップPCやWi-Fiルーターなどを接続しておけば、急な停電時もPC内のデータを失ったり、インターネット接続が切れたりすることもない。
なお、家庭用コンセントからポータブル電源を経由して家電に給電する場合には、ポータブル電源のバッテリーを使用せずパススルーをしている状態となるため、ポータブル電源のバッテリーの消耗を抑えられる。
ポータブル電源は容量が大きければ大きいほど、さまざまな家電へ一度に給電できるので、停電発生時の備えとしての安心できる製品だ。しかしその半面、バッテリー容量が大きくなると一気に本体重量が重くなるというデメリットもあった。
その点「JE-3000B」は、3,072Whの大容量バッテリーを搭載しながら、重量を約27kgに抑えることで、こうしたデメリットを可能な限り解消している。本体重量約27kgは決して軽量ではないが、3,000Whクラスのポータブル電源は40kg以上が一般的だったことを考えると、「JE-3000B」の軽量化には、ひとつの技術的なブレークスルーが垣間見える。
「JE-3000B」は、カジュアルなキャンプ用途や車中泊で用いるにはオーバースペックだが、防災対策を考慮するなら、購入の選択肢としてぜひ検討したいモデルだ。もちろん、定格出力が3,000Wあるので、消費電力が大きいキッチン周りに設置するなどして、普段使いをするのにも適している。
別売りのソーラーパネルから蓄電して、節電対策を図るのもよさそう。持ち運びできるポータブル電源でありながら、家庭用蓄電池のように大容量を使いこなせるのが、「JE-3000B」の魅力と言える。