梅雨や花粉の時期だけでなく、PM2.5や黄砂などの大気汚染問題、また、帰宅が夜になってしまうDINKSや一人暮らしの女性の防犯対策など、最近では洗濯物を室内に干す、“部屋干し”スタイルの方が増えています。そのような背景からにわかに注目を集めているのが、除湿機のなかでも“部屋干しの衣類乾燥機能”を強化した「衣類乾燥除湿機」です。
部屋干し派必須アイテムとなりつつある「衣類乾燥除湿機」の最新ラインアップ。左から、三菱「部屋干し3Dムーブアイ MJ-120KX」、シャープ「プラズマクラスター除湿機 CV-EF120」、象印「サーキュレートドライ RJ-XA70」、アイリスオーヤマ「DCC-6515C」、パナソニック「衣類乾燥除湿機 F-YHLX120」
「衣類乾燥除湿機」は、基本的な仕組みはこれまでの「除湿機」と同じ。これまでの除湿機と違うのは、室内の除湿だけでなく、部屋干しの洗濯物をより素早くカラッと心地よく乾かすための機能が強化されている点です。例えば、衣類を効率よくムラなく乾燥させるために、送風範囲を広くしたり、また、多くの風を集中して当てることができるようルーバーが工夫されたもの、また、センサーを搭載し乾いていない部分を検知しピンポイントで風をあてるものなど、その機能はさまざまです。また、多くのモデルが、イオン発生機能や脱臭効果のあるフィルターを採用するなどし、“室内干しのあのにおい”への対策を講じています。
象印「サーキュレートドライ RJ-XA70」(写真上)は、送風口が360°回転し部屋全体に風を送り室内の空気を乾燥させることで洗濯物を乾かすという考え。除湿機にサーキュレーターをプラスしたモデルも(写真下/アイリスオーヤマ「DCC-6515C」)
象印では、部屋干しのニオイ対策として、送風口の両端奥に、抗菌・消臭効果があるというナノプラチナを添加したユニットを採用
先ほど、衣類乾燥除湿機の基本的な除湿の仕組みはこれまでの除湿機と同じと説明しましたが、そのあたりをおさらいしておきましょう。
衣類乾燥除湿機の仕組みをざっくりいうと、洗濯物からの湿った空気を吸い込んで湿気を取る→乾いた空気を放出。これを繰り返すことでし洗濯物を乾燥させるというもの。この流れはいずれも共通していますが、“湿気を取る”為の方式は、製品によって異なります。一般的に除湿の方式は、「コンプレッサー式」 「デシカント(ゼオライト)式」と、その両方式を併せ持つ「ハイブリッド式」の3タイプがあり、それぞれ、以下のようなメリット・デメリットがあります。実はこれは、除湿機選びの重要なポイント。製品選びで失敗しないためには、まずはライフスタイルにあった除湿方式を選択する必要があります。
「コンプレッサー式」 夏場に強い&パワフル!
エアコンの除湿方法と同じ、コンプレッサー(空気を圧縮する装置)により圧縮された冷媒を循環させ、空気を冷やすことで湿気を水滴に変えて取り除く方式。
「デシカント(ゼオライト)式」 冬の結露対策にもピッタリ&コンパクト!
冷媒を使わずに「デシカント」という水分の吸着性能にすぐれた乾燥剤(ゼオライト)で湿った空気を除湿した後、ヒーターであたためて乾燥した空気を放出。
「ハイブリッド式」 季節を問わず除湿力が安定!
コンプレッサー式とデシカント式の両方の機構を併せ持ち、状況に応じ、最適な方式を自動で切り替えて動作。
ここでは、主要メーカーの「衣類乾燥除湿機」最新モデルを紹介。それぞれの特徴を比較検討しやすいようにまとめたので、製品選びの参考にしてください。除湿方式のチェックもお忘れなく。
洗濯物の直接風を当てないで素早く乾かす
象印マホービン「サーキュレートドライ RJ-XA70」 <デシカント式>
“衣類乾燥除湿機トレンド”の中、ひと際注目を集めているのが、“発想の転換”から生まれた本製品。衣類に直接風をあてて乾かすのではなく、送風口を横方向に360°回転可能な構造にし、部屋全体の空気を攪拌・乾燥させることで衣類を乾かすというもの。送風幅は、洗濯物の量や干し方にあわせ「60°/90°/180°/360°」で調節できるようになっています。また、上下の風向きも、上方向60°下方向30°上下方向90°の3つの送風範囲に設定可能。これにより、象印によれば、洗濯物に直接風を当てる場合に比べ大量の洗濯物をムラなく早く乾かせるようになったとし、目安として「2kgの洗濯物なら約50分で乾燥できる」とのことです。
このほか、運転コースは、「乾燥コース」「エココース」「夜干しコース」「循環送風コース」から選択可能。風量を調節し運転音を変えられる「5段階風量調節」も搭載。
最大360°回転する送風口部分。グルグルと一定方向に無限回転するのではなく、360°回転したら逆回転になるスイング式。スイング幅は、360°/180°/ 90°/ 60°で調整可能で、スポット送風もOK
<ここに注目!>
“360°の回転送風”で部屋も洗濯物も効率よく乾燥させるという新発想!
“除湿機+サーキュレーター”の斬新アイデア
アイリスオーヤマ「DCC-6515C」 <ハイブリッド式(コンプレッサー+ヒーター)>
除湿機の上にサーキュレーターをポンとのせたような、見た目もユニークなこの製品。基本的には見た目どおりの使い方をするわけですが、このアイデアが目からウロコ。サーキュレーターは一般的な除湿機の送風機能と比べてもちろん、扇風機と比べても同等、またはそれ以上に強力な風を放出できます。つまり、「DCC-6515C」のサーキュレーター部分から放出される風は強力なうえ、“乾いた風”。自動首ふり機能で稼動すれば洗濯物を素早く乾燥させるだけでなく、部屋の空気も攪拌可能です。
コンプレッサー+ヒーターのハイブリッド式のため、室温が下がる冬場も安定して除湿できますし、また、夏場は室温の上昇を抑えた除湿が期待できるでしょう。さらに、送風機能でサーキュレーターとしてエアコンと併用すれば、快適なだけでなく節電にもつながりそう。
実際に使用したところ、横方向の首ふり機能では、150cm幅に広げた洗濯物にまんべんなく風をあてることができていました。縦方向の調整は手動で行い、送風を真上に向けることもできます。なお、サーキュレーターは「標/弱/切」で風量調節が可能で、「切」では除湿機のみの稼動となります
<ここに注目!>
サーキュレーターとして洗濯物乾燥以外にも大いに活用できる!
プラズマクラスターでスポット脱臭・除菌も!
シャープ「プラズマクラスター除湿機 CV-EF120」 <コンプレッサー式>
最大の特徴は、干した洗濯物の真下に本製品をセットし、除菌効果のある高濃度プラズマクラスターイオンを含む風を集中的にあてることで生乾き臭を消臭しながら乾燥するというスタイル。ちなみに、0.3μmの微小な粒子を99.97%以上集じんできる「HEPAフィルター」と、ニオイを除去する「脱臭フィルター」により、“きれいになった風”で衣類の乾燥・除湿を行います。ルーバーの可動域が広く、上下最大180°の幅で送風可能。また、除湿能力が1日12Lというパワフルなので、広いリビングでの部屋干しや除湿にも対応できます。空気清浄機能単独でも運転可能なため、1年を通して活用できるのではないでしょうか。
なお、洗濯物の乾燥だけでなく、プラズマクラスターイオンを集中的にあてる「スポット消臭」で、汗のついてしまった衣類の汗臭を消臭するという使い方も。頻繁に洗えないジャケットや帽子、スカーフなどの消臭に活用できそうですね。
<ここに注目!>
プラズマクラスター+HEPAフィルター+脱臭フィルターで“キレイな空気”を放出
夏も冬も1年中“スピード乾燥”ができる
パナソニック「衣類乾燥除湿機 F-YHLX120」 <ハイブリッド式>
除湿方式に、デシカント+コンプレッサーの「ハイブリッド式」を採用し、1年中強力に除湿できるのがウリの本製品。上下160°、左右120°開く「メガスイングルーバー」で周囲の空気をたっぷり誘引し、さらに、“幅165センチ”という広い送風を可能にする「ワイドルーバー」により、“梅雨時期で約43分、冬季で59分”という“乾燥スピードNo.1”を実現しています。また、乾燥した衣類の“湿気戻り”を防ぐ「カラッとキープモード」がユニーク。センサーで湿度を検知して、設定湿度をキープするよう自動運転。雨の日など、衣類乾燥後に部屋の湿度があがり湿気が戻ることがありますが、それを防いでくれます。外出など、長時間家を空けるときの部屋干しに便利。経済面でも◎ですね。
生乾き臭対策として、除菌・脱臭効果のある「ナノイー」イオン発生機能を搭載。ナノイーだけを放出する「ナノイー送風」も可能。洗濯物を乾かすだけでなく、湿度が高くなりがちな浴室やクローゼット、下駄箱のカビ対策としても活用できます。
<ここに注目!>
一年中をとおしてパワフルに除湿! 乾燥スピードはダントツ!
センサーで乾燥状況を検知してピンポイント送風
三菱電機「部屋干し3Dムーブアイ MJ-120KX」 <コンプレッサー式>
「部屋干し3Dムーブアイ MJ-120KX」は、その名のとおり、同社のエアコンでも採用されているセンサー「部屋干し3Dムーブアイ」を採用した除湿機。赤外線センサーと湿度センサー、温度センサーにより洗濯物の表面状態を検知し、洗濯物の位置や乾き具合にを見分けながら自動で運転を制御するのが最大の特徴。左右100°、上下160°の範囲を529エリアに分割し、乾いていない部分にピンポイント送風することも可能です。しかも、その具合は本体上部の液晶モニターで確認できるようになっています。
また、乾燥時間は長くなりますが、送風と除湿を組み合わせ、約40%の省エネ運転で乾燥させる「節電モード」や、衣類のない部分には送風しない「エリアカット制御」などの省エネモードも見逃せません。さらに、市販のホースで連続排水も可能なので、徹底的に除湿したい湿気の多い場所をカラッと乾燥させることができます。
<ここに注目!>
“乾きムラ”を防ぐため、3つのセンサーで529エリアを常に監視してスポット送風