サイクロンボックスにフィルターを搭載しないから吸引力が持続するという、三菱電機のサイクロン式掃除機「風神」に新モデル「TC-ZXE30P」が誕生。これまでの「風神」はゴミと空気をしっかり遠心分離するためにサイクロンの円すいが少し長めとなっており、本体も奥行が大きめだったが、「TC-ZXE30P」は風路を見直すことで円すいサイズはそのままにコンパクト化を実現した。そして「TC-ZXE30P」は、吸うだけでない“吹く”掃除方法を提案。発表会で見て・体験してきた、新しい構造と掃除スタイルをお伝えしよう。
「風神 TC-ZXE30P」なら、落ち葉も吹き飛ばしてキレイにできる。詳細は以下でチェック!
一般的に掃除機のホースは、サイクロンボックス下部に接続するタイプが多い。「風神」も同様の仕様だったが、「TC-ZXE30P」ではその構造を見直し、サイクロンボックス上部に装着するように変更した。吸い込んだ空気とゴミをサイクロンボックスに運ぶ“風路のムダ”が省略できるため、本体サイズが小型化。さらに、アルミフレームのモーターを採用することで本体重量が前モデルより約21%軽くなった。
サイクロンボックスの下から吸い込む場合、サイクロンボックスの上まで空気やゴミを誘導する風路が必要となる。「TC-ZXE30P」のようにサイクロンボックス上部から入る構造とすると、風路が約92%短縮化できた
前モデル(左)と並べてみると、奥行きが短くなったことがわかる。本体サイズは、前モデルが216(幅)×283(高さ)×357(奥行)mmなのに対し、「TC-ZXE30P」は223(幅)×270(高さ)×333(奥行)mm。数値的には若干の差だが、見た目の印象は大きく異なる。また、本体重量も3.7kg(前モデル)から2.9kgになり、持ち運びや走行がラクに
ホースを装着した様子。「TC-ZXE30P」のように、吸い込み口からサイクロンボックスにダイレクトに空気やゴミが入る構造に改良しても、それをきちんと分離するのは容易なことではないのだそう。そのため、サイクロンボックス下部に吸い込み口を設けている掃除機が多いのだとか
本体が小さくなると吸じん力もダウンするのでは? と心配されるかもしれないが、サイクロンの性能は従来同等だという。「風神」のこだわりであるフィルターレスのサイクロンボックスで、ダイレクトに送られてくる風を利用し、風速約84m/秒の高速風で細かなゴミまで99.9%捕集。フィルターに頼らないため目詰まりによる吸引力低下も抑制され、強い吸引力が99%以上持続する。
綿ゴミをはじめとする大きめのゴミが最初に分離され、外側の集じん室に蓄積。その後、微細じんが分離されるというように2段階のサイクロン構造となっている
掃除機において吸引力は重要だが、“吸引力が強い=キレイに掃除できる”とはならない。ヘッドでゴミを捉えることができなければ、精度の高い掃除は望めないからだ。「TC-ZXE30P」のヘッドは、掃除機がけした後に残りやすいヘッド両端部のゴミも吸い込むワイドな吸引口を搭載したのがポイント。広範囲をカバーするヘッドと吸引力の組み合わせで、1往復でしっかり吸じんする。
回転ブラシを外すと、中央の吸い込み口に流れ込むような窪みが見える。この形状に沿って、両端からゴミが効率的に吸い込まれるという
深さが8mm、6mm、4mmと異なる溝のある板に砂状のゴミを撒いて、清掃力を検証してみた。
動画にあるように、1往復で一番深い溝のゴミもキレイに取り除くことができた。ヘッドを往復する回数が減るため、掃除が早く終えられそう。ヘッドの前面が当たる壁際に見立てた所のゴミも、しっかり除去できている
排気もキレイ
前述のサイクロン構造は吸引力が持続するだけでなく、ゴミの溜まっている所を分離後の風が通過しないため、排気臭が低減できるメリットもある。さらに、本体内部に設置されたフィルターにより、排気の臭いがサイクロンボックスにフィルターのあるサイクロン式掃除機(TC-C3ZH)と比べて94%も抑えられた。
サイクロンボックスの遠心分離で99.9%のゴミを捕集した後の空気は、HEPAフィルターとULPAフィルターを通過(赤い囲み部分)。0.3μmの微細なハウスダストも逃さないので、最終的な捕集率は99.999%となった
ゴミを吸うだけでない新たな掃除スタイルが、「TC-ZXE30P」には用意されている。「エアーブロー機能」という“吹き飛ばす”清掃方法だ。掃除機のうしろから出る排気風を利用してゴミを吹き飛ばす仕組みだが、従来の仕様では風速が不足してしまう。というのも、排気風は電源コードの冷却にも用いられており、分散しなければならなかったからだ。これは言葉で説明してもわかりにくいので、下の図解を見てほしい。
「TC-ZXE30P」では電源コードを冷やすために排気風は使わず、独立した風路から吸引する(黄色い矢印)。コードを出し入れする所から空気を吸い込み、冷却にあてるのだ。そして、その空気は排気風と合流するようになっており、風量が増大。従来は5m以下だったが排気風の風速が、「TC-ZXE30P」では40mとなった。
排気風を分散させないことで、強い風速を保持する
排気風が強いと床上のホコリまで舞い上げてしまいそうだが、カバーが装着されているのでそのような心配はないという
どう使う?
「エアブロー機能」を使用するための手順を見ていこう。
通常の掃除で使用しているホースを外し、掃除機後方にある排気口に差し込む
ヘッドやパイプを取り、手元グリップに専用ノズルを装着。専用ノズルを付けたほうが、的確に風を放出しやすい
玄関に散らばった土など、掃除機で吸い込むのはちょっと……と思うものは外に吹き飛ばしてキレイに! 下の動画のように、溝に入り込んだ砂も風の力で除去できた。
落ち葉や枯れ葉といったものも、「エアブロー機能」で外へ掃き出せばいい(下の動画参照)。
掃除がしにくい網戸にも、“吹き”掃除が有効。本体が2.9kgと軽いので、持ちながら掃除してもさほど苦には感じないだろう
使い勝手や衛生面に配慮した機能や工夫にも、独自のこだわりが満載。新機能でないものもあるが、筆者が便利だと思ったものを順に紹介する。
LEDランプでゴミをチェック!
サイクロン式掃除機は掃除したゴミが見えるからこまめに廃棄できると言われているが、サイクロンボックスが完全に透明でないことも多い。また、使用していると汚れで半透明のような状態になり、溜まったゴミが見えづらくなる。そこで「TC-ZXE30P」は、サイクロンボックスを照らすLEDランプを搭載。ゴミが蓄積されるとLEDランプが見えなくなっていくので、廃棄タイミングを知る目安にできる。
電源コードをコンセントに差すと、LEDランプが自動で点灯する
サイクロンボックスの取り出しは、ボタンを押して上に引くだけ。カバーなどが装着されていないので、取り外しがスムーズ
サイクロン部まで細かく分解でき、水洗い可能。パーツが大きめなので、洗いやすい
ブラシに巻きついた毛が取れる「毛がらみ除去機能」
従来から搭載されているが、回転ブラシに絡んだ毛や糸を簡単に除去できる機構は便利。回転ブラシを横に引き抜くと、ヘッド端に設置されたカッターで糸などをカットしてくれる。
回転ブラシに巻き付いた糸などは、通常だとハサミで切るしか除去方法がなかったが……
「TC-ZXE30P」は回転ブラシをスライドすると、糸がヘッドのほうに残留。取れた糸はゴミ箱に捨ててもよし、掃除機で吸ってもよし!
「TC-ZXE30P」の発売とあわせて、下位モデル「TC-ZXE20P」もラインアップされる。「TC-ZXE20P」には、「エアーブロー機能」や「毛がらみ除去機能」などは搭載されていない。
左側2製品が「TC-ZXE30P」。シャインホワイトとカッパーオレンジの2色が用意されている。下位モデル「TC-ZXE20P」はビオラレッドのみ。いずれも、発売日は9月1日予定