空気清浄機にもっとも求められるのは空気をしっかりキレイにすることだが、ダイキンの調査によると、ユーザーからは“集じん力は高く、サイズや運転音を小さくしてほしい”という声が多く寄せられているという。しかし、集じん性能を向上させようとすると本体は大きくなり、それにともない運転音も増大するジレンマが生じる。そこで、ダイキンは構造を一新することで、高い性能を保持したまま設置面積と運転音を従来の30%以上低減した加湿空気清浄機を開発。説明会で見てきた新構造の仕組みを、従来モデルと比較しながら解説していこう。
新構造を採用した「加湿ストリーマ空気清浄機 MCK55S(以下、MCK55S)」。ホワイト、ディープブラウン、ブライトオレンジ、ミッドナイトブルーの4色が用意されている
空気清浄機は一般的に、サイドや背面から吸い込んだ空気をフィルターをろ過させて集じんし、キレイになった空気を上部から放出する。構造的には、前から奥(もしくは奥から前)にフィルターが何層にも装備されており、その先に加湿ユニットや送風ファンを配置。そのため、性能を高く保持しながら本体幅や奥行をコンパクト化するのは難しいという。そこで「MCK55S」には、下から積み重ねていく縦配列の構造を採用。これにより本体幅が縮小され、設置面積が約30%ダウンした。
左が縦配列の構造を採用した「MCK55S」で、サイズは270(幅)×700(高さ)×270(奥行)mm。右は従来モデル「MCK55R」で、サイズは374(幅)×590(高さ)×270(奥行)mmとなっており、新モデルは幅がスリムになり、少し背が高くなった。どちらも、適用床面積(空気清浄時)は25畳
スリムにできた秘密は、フィルターやファンの配置を積み上げる構造にしたため
まずは、一般的な加湿空気清浄機の構造を従来モデル「MCK55R」を使ってみていこう。複数枚のフィルターの先に加湿ユニットがあり、最奥に送風ファンがあるというのが、大まかな配置だ。
シャープは背面から吸い込む仕様だが、その他の空気清浄機の多くが両サイドと下部から空気を取り込むようになっている
製品によりフィルターの数は異なるが、前面パネルや背面パネルを外した所にフィルターを配置している。「MCK55R」の場合、@プレフィルター、A集塵フィルター、B脱臭フィルターと並んでいる。フィルターの向こうにあるオレンジ色の部分が加湿ユニットで、その奥に送風ファンを搭載
ろ過されてキレイになった空気は、天面の吹出口から放出
加湿するための給水タンクは、側面から取り外す
では、続いて新構造の「MCK55S」を分解していこう。「MCK55S」は最下層部に送風ファンがあり、その上にフィルター、そして最上部に加湿ユニットという配置となっている。
左右にある大きな吸込口と、従来どおり下部にある吸込口から部屋の空気を引き込む。吸い込み領域は従来より約20%拡大。吹出口と吸込口が離れた位置にあるため、放出される空気に流されることなく効率よくホコリを吸引できるようになったという
吸込口のパーツの裏には、プレフィルターが装備されている。従来モデルでは前面パネルを外して掃除しなければならなかったが、新構造では表から掃除機で吸うだけで手入れ完了
集塵フィルターなどは、側面から取り出す仕様となる。従来は下部にあった給水タンクが一番上にあるので、まずはこれを引き出す。高い位置にあるため、腰をかがめなくていいのでラク
給水タンクは縦長フォルムから横長にチェンジしたので、浅いシンクでも給水しやすくなった(左が「MCK55S」のもの)。容量は従来より0.3L少ない約2.7Lになったが、自動運転でほぼ変わりない加湿ができるという
給水タンクを引き出すと、加湿ユニットが出現
加湿フィルターも、従来(右)より小さい
小さくなると加湿力が落ちるのでは? と思われるかもしれないが、フィルターを二重構造とすることで性能を維持
加湿ユニットの下には、脱臭フィルターが配置されている
脱臭フィルターを取り外すと現れるのが、集塵フィルター。10年間交換不要となっているので、下のほうに配置されていても問題ない
送風ファンと集塵フィルターの距離を従来よりも広く取れるようになったことで、的確にフィルターに風を通すことができるようになったという。そのため、集塵フィルターのサイズを小さくしても性能が落ちない(左が新構造のフィルター)
視認することはできなかったが、フィルター陣の下には送風ファンと吸い込んだ有害物質を分解するためのストリーマユニットが搭載されている
上で紹介した構造を通過した空気は、キレイな空気となり吹出口から放出される。「MCK55S」は吹出口の範囲が広く設けられているため、同じ清浄性能を達成するのも従来の半分の風量で対応できるという。また、運転音の発生源となる送風ファンと吹出口の間にフィルターがあることにより、フィルターが運転音を遮る防音壁の役割も発揮。効率のよい風路を確保した構造とフィルターの防音効果で、運転音が約30%削減された。
「MCK55S」の天面は全体が吹出口になっている
同じ運転モードで吹き出る風をチェックしてみたが、新構造「MCK55S」のほうがやさしくてやわらか。風量が少なくて済むことも、運転音低減につながっている
実際に運転音がどれほど小さくなったのかを、動画でチェックしてみよう。動画は最大風量となる「ターボ運転」での比較。ゴーっと吹き出る風の音が小さくなったほか、耳障りな高音が減っているように感じる。普段、ターボ運転で使用する機会はあまりないだろうが、もっとも運転音が大きいモードでもこれほど低減するのはうれしい。
実は、「MCK55S」と従来モデルのターボ運転時の運転音は同じ53dB。工業会で定められた算出方法で測定すると、数値的には同等となる。しかし、人が感じる運転音はdBの数値だけが影響するのではない。音の感覚量をあらわすSONE(ソーン)も関与するというのだ。その数値を見てみると従来モデルは13.9SONEなのに対し、「MCK55S」では8.77 SONE(座った状態での感覚量)。そのため、数値は同じ運転音でも「MCK55S」のほうが小さく感じるのだそう。
ちなみに、「MCK55S」の吹出口の直下は加湿ユニットとなっているため、子どもが誤ってモノを吹出口に落としても故障になりにくいというメリットもある
このようにスリム&静かになった「MCK55S」だが、清浄のために用意されている機能は従来モデル「MCK55R」と同等。フィルターで集じんするだけでなく、フィルターでキャッチした有害物質や菌にストリーマを照射して酸化分解するほか、イオンを放出することで浮遊ウイルスやカビ菌を抑制するダブル方式を採用している。また、ニオイセンサーに加え、粒子の大小を見分けられるホコリセンサーを装備しているため、PM2.5などの微小粒子も素早く検知してキレイにできるという。