洗剤液と水を温めて洗うことで皮脂汚れや黄ばみも落とす「温水泡洗浄」が人気のパナソニックのななめドラム洗濯乾燥機に、新モデルが登場。先に紹介したエアコン、冷蔵庫とともにセミナーで見てきた「VXシリーズ」の“筆者がこれはイイ!”と感じた3つの進化点をお伝えします。
「NA-VX9700L/R」(市場想定価格:36万円)と「NA-VX8700L/R」(市場想定価格:32万円)がラインアップされています。いずれも、2016年9月26日発売予定
きちんと洗濯していたのに黄ばんでしまった衣類があるなら、それは皮脂汚れが原因です。皮脂の融点は約37℃なうえに、洗剤に含まれる酵素を活性化させるには40℃以上の水温が必要。つまり、水を利用した普通の洗い方では皮脂汚れは完全には落とせず、時間とともに酸化して黄ばみになってしまうのです。そこに着目したのが「温水泡洗浄」。ドラム槽の下に搭載したヒーターで水や洗剤液を温め、しっかりと洗浄する温水泡洗浄は皮脂汚れや黄ばみも落としてくれます。電気代のことを考えるとヒーターを利用するのはちょっと……と思う方がいるかもしれませんが、もっとも高温となる「約60℃除菌コース」でも1回あたりの電気代は約35円。毎日使うコースではないので、それほど負担にはならないでしょう。
ヒーターで温水にするため、常に適切な温度をキープできるのが大きな特徴
温水がいかに皮脂汚れに効果的なのかを実験で証明してみましょう。皮脂汚れと同じ成分の油と洗剤を混ぜたものを塗布した布を、水または温水の中に入れます。
左から水(約6〜9℃)、水(約6〜9℃)+温風(上部からドライヤー送風)、温水(約40℃)
水+温風の容器(右)は、水面は温風で温度が高くなったものの水温には変化なし。そのため、左の水のみの容器同様に投入した繊維からは油がほとんど落ちていません。つまり、水温が低いので洗剤の酵素の働きがいまいちということです
いっぽう、40℃の温水に入れたものはすぐに油が剥がれだしました。水温による酵素の働きの違いを実感!
その温水泡洗浄に追加されたのが、生乾きのようなニオイを落とす「約40℃においスッキリコース」です。「おまかせコース」(一般的な洗い方)の約2倍の洗剤と2回の約40℃温水洗浄で、不快なニオイを発生させる「ニオイ原因菌」の増殖を抑制。洗濯後のニオイ原因菌の残留も少ないので、部屋干ししてもイヤなニオイが付かないそう。もちろん、40℃で洗うので皮脂汚れも一緒に洗い流されます。
温水泡洗浄には水温が低い時に少し温める「約15℃洗濯モード」、デリケートな衣類にうってつけな「約30℃おしゃれ着コース」、黄ばみ予防に役立つ「約40℃おまかせコース」、付いてしまった黄ばみを落とす「約40℃つけおきコース」、白物衣類の除菌を行う「約60℃除菌コース」がありました。そこに「約40℃においスッキリコース」が追加
「約40℃においスッキリコース」は、高濃度の洗剤と温水という強力なタッグで洗浄する約91分の工程となります
水で洗う「おまかせコース」に比べ、「約40℃においスッキリコース」で洗浄するとニオイ原因菌が99%以上洗い流せるそう
洗った直後はもちろん、部屋干しで乾かしたあとも通常の洗濯に比べ不快なニオイは感知できないレベルを保持
40人から集めた“部屋干しのニオイが取れなくて臭いタオル”を半分にカットし、片方を「約40℃においスッキリコース」で洗浄。洗濯前・後のタオルのニオイを比べられる展示がありました
ニオイを確かめてみると、かなり強烈な部屋干し臭が洗濯後のほうからはまったく感じず!
従来からあるコースですが、「約40℃つけおきコース」の威力がすごいので紹介させてください! 「約40℃つけおきコース」は、約40℃に温めた高濃度2倍洗剤(おまかせコースの2倍の洗剤を使用)に約6時間衣類を保温しながら浸すというもの。トータル約420分の運転時間がかかりますが、黄ばみも落とす洗浄力が魅力です。筆者が長年着用し、ウエストの部分が黄ばんでしまったスウェットも「約40℃つけおきコース」で黄ばみがほぼ目立たなくなりました。
10年以上使用しているものなので、さすがにこの黄ばみは落ちないだろうと思っていたのですが、人に見せても恥ずかしくないレベルまで白くなりました
洗濯コースではないものの、洗浄力に影響するリフトアップホイールの形状が改良されたのでお伝えしておきましょう。リフトアップホイールはドラム槽の奥にあり、洗濯物を動かしてくれます。ドラム槽の中で洗濯物を入れ替えることは、洗いやすすぎのムラ低減につながるので大切。
洗濯機のドアを開いて、奥に見えるのがリフトアップホイールです
フラットだった前モデルに比べ、新モデルでは金属部分やネットの部分に凹凸を持たせた形状に変わりました。凹んだ部分に衣類が入り、回転にあわせて前方に送り出すような働きをします
リフトアップホイールの改良による衣類の入れ替わり具合を、下の動画でチェックしてください。新モデルのほうは赤色の布が上下だけでなく、前後にも動いていることがわかります。
近年は寝具のダニ対策に関心が高まっており、布団専用の掃除機も好調な売れ行きです。洗濯機にもサイズは限られますが毛布を洗うコースが用意されているので、利用している人も多いのではないでしょうか。しかし、ダニは生命力が強いうえに繊維にがっちりとしがみ付いているため、吸うだけ、洗うだけでは取れません。そこで注目したいのが熱! 下の動画を見てもらうとわかるように、一般的にダニは熱が苦手で、50℃以上の熱を当てると動きが停止します。その状態で洗えば、繊維からダニを引き剥がせるというところから「ダニバスターコース」が誕生。最初に約65℃の温風で毛布を加熱(プレ乾燥)し、その後洗濯することでダニ・アレル物質を99%以上除去します。
「ダニバスターコース」で洗える寝具は、毛布(化繊100%)や敷きパッド、タオルケットなど3kgまでのもの
最後に紹介するのは、ドラム槽の衛生を保つための機能。一見、キレイに見えてもドラム槽の裏側には洗剤カスが蓄積している可能性があります。洗濯カスは黒カビの原因になってしまうので、放置しておくと「せっかく洗ったのに洗濯物に黒いカスが付いている」「イヤなニオイがする」といった仕上がりになってしまうことも。VXシリーズには洗濯のたびに槽を洗浄してくれる自動お手入れ機能もありますが、汚れが気になった時には温めた洗剤液で強力にクリーンにする「約30℃槽洗浄コース」が便利です。新モデルでは、「約30℃槽洗浄コース」の水量やドラム回転数が見直されました。従来は1分間に約100回転だったドラムの回転数を約120回転にアップし、水流の勢いを強めて広範囲に洗浄できるようにすることで、約5時間42分かかっていた運転時間を約3時間に短縮。
従来モデルに比べて明らかに水の量が多く、1度の回転で広い範囲を洗浄していることがわかります
「約30℃槽洗浄コース」は30℃に温めた水+洗剤液で洗うことも特徴です。温めることで槽の汚れの取れ具合がどれほど変わるのかを見てみましょう。
洗剤液を混ぜた水とお湯を用意し、その中に汚れた槽の一部を投入。1分間揺らして、汚れ落ちを比較してみました
左が「約30℃槽洗浄コース」と同じ状況にして洗浄したパーツですが、汚れの落ち具合には明確な差が!
こんなふうに汚れないように、こまめに槽洗浄を行いましょう