自転車王国・台湾の自転車メーカーである「MERIDA(メリダ)」はロードバイクやクロスバイクなどのスポーツバイク以外に、子ども用自転車などもリリースする世界的な総合バイクブランドだ。レースシーンでは長らくマウンテンバイクがよく知られていたが、ここ数年、ロードレースにもバイクを供給し始め、日本最高のロードレーサーのひとり、新城幸也氏が在籍するロードレースチーム「バーレーン・メリダ」が使用するバイクとしてもよく知られている。今回は、そんなメリダのロードバイク「REACTO 4000」のインプレッションをお届けしよう。
「REACTO 4000」は、冒頭で紹介したトッププロチーム「バーレーン・メリダ」の多くの選手がメインで使用しているロードバイクのミドルグレードモデルとなる。現在のロードバイクは、ひとつのブランドから用途が異なるバイクを3種類くらいリリースするのが当たり前。REACTO 4000は空気抵抗を低減するフレーム形状を採用し、効率的に走ることを目的としたエアロロードにカテゴライズされる。
「REACTO 4000」のサイズは44、47、50、52、54、56cmで、重量は8.3kg(サイズ50p)。メーカー希望小売価格は249,000円(税別)
フレームのカーボン素材やパーツ類はトップモデルとは異なるが、自転車の性能を左右するフレーム形状はトップモデルとほぼ同じ「カムテール形状」となっている。カムテール形状とは、正面からの向かい風だけでなく、やや斜め方向や横風にも強くなることから、多くのエアロロードで採用されている形状。長らく自転車のフレームは、断面を涙滴状にしたほうが高いエアロ効果を発揮するというのが一般的だったが、最近では、涙滴断面の後ろ側(尖った部分)をすっぱり切り落としたカムテール形状のほうがより高いエアロ効果を得られると言われている。
前方からぶつかった空気を後方にスムーズに流すため、後方側をすっぱり切り落としたようなカムテール形状になっている
えぐれたシートチューブデザインも特徴のひとつだ。フレームとタイヤが近づくことで乱流が発生しにくくなり、空気抵抗が低減。また、ホイールの軸がバイクの中心に近づくため、ハンドリングがもたつかないという効果も期待できる
タイヤ側に伸びたシートステイを薄く細くタイヤに沿うような形状にすることで、高いエアロ効果と振動吸収性を実現
リアブレーキはシートステイではなく、クランクの軸であるボトムブラケット下にセットし、エアロ効果を高めている
ストレートな形状のフロントフォークは、下りにおいても安定感のあるハンドリングを実現
フロントブレーキは、制動力が高いダイレクトマウントの「シマノ 105」を採用
フレーム形状がトップモデルとほぼ同じREACTO 4000は、エアロ効果もトップモデルとほぼ同等ということになる。乗り味に期待をふくらませ、街中を走ってみた。
一般的にエアロロードモデルは剛性が高く、前には進むけれども「硬い」と感じることが多いのだが、REACTO 4000は剛性の高いCF2カーボンを使用しているにも関わらず、マイルドな乗り心地。フレーム設計に加えてシートポストの振動吸収もいいようで、平坦な道では、かなり快適性を感じることができた。今回の試乗では短い距離しか走れなかったため、ロングライド時にどれくらいの疲労度になるかは断言できないが、「進むのにやさしい」という感じで、長距離走行でも快適な乗り味を得られるだろう。
シートポストの後方に振動吸収素材が搭載されており、体に伝わる振動を緩和してくれる
もともと平坦区間を得意とする種類のバイクだが、上りのフィーリングもかなりいい感じ。ある程度、高めの剛性があることが上りの走行をスムーズする味付けになっている印象だ。自転車によって背中を必要以上に押されるような感覚もないため、意図せずにペースアップしてしまうこともなく、あとで疲れるという事態にも陥りにくそう。ギンギンに硬いほうが反応がよくて上りやすいと思っていたが、中級レベルくらいのライダーにはREACTO 4000くらいのほうがちょうどいいかもしれない。
車重が軽いため、エアロロードでありながら平坦だけでなく上りも得意。トップレーサーのようにコースによって自転車を乗り換えることができない、筆者のようなライダーにはありがたいことだ。しかも、直進の走行性を高めるフレーム形状とやさしい乗り心地を実現するカーボン素材など、設計はかなりバランスの取れたものとなっており、快適さがハンパない。トップモデルの機能を比較的手ごろな価格で入手して体感できる、汎用性の高い1台と言える。