レビュー

初心者にもやさしいロードバイク!FELT「FR Advanced 105」はどんなシチュエーションでも楽しめる

ロードバイクをはじめとするスポーツタイプの自転車がブームと言われて久しいが、最新のカーボンフレームを採用したロードバイクはどのような走行性能と乗り味なのか? カーボン技術に定評のあるメーカー「FELT」の「FR Advanced 105」に試乗して確かめてみた。

オールラウンドに使えるカーボンロード

ロードバイクには、軽量でヒルクライムに向いたモデルやツーリング向きのもの、平坦な道を高速で巡航するようなシーンで空力特性にすぐれたエアロロードなど、得意とするシチュエーションによっていくつかのカテゴリーがある。今回紹介する「FR Advanced 105」が属するFELTの「FR」シリーズは、ヒルクライムからゴール前でのスプリントまで対応するオールラウンドな特性を持ったレースバイク。大きくは、上位グレードの「FR FRD Ultimate」と、その下に位置づけられる「FR Advanced」に分かれており、「FR Advanced」には採用されるコンポーネントに合わせて「FR Advanced Ultegra Di2」「FR Advanced Ultegra」「FR Advanced 105」という3種類の完成車がラインアップされている。

サイズは470mm、510mm、540mm、560mmの4展開。車体の参考重量は8.78kgで、フレーム単体の重量は920g(510mmサイズ)だ。価格は円安の影響で変動しており、2022年8月時点で456,500円(税込)。FRシリーズの完成車では最も安いが、ロードバイクの中ではミドルグレードに位置付けられる

サイズは470mm、510mm、540mm、560mmの4展開。車体の参考重量は8.78kgで、フレーム単体の重量は920g(510mmサイズ)だ。価格は円安の影響で変動しており、2022年8月時点で456,500円(税込)。FRシリーズの完成車では最も安いが、ロードバイクの中ではミドルグレードに位置付けられる

カーボンフレームは、クロモリ(鉄)、アルミなどの金属を使ったフレームに比べて軽量で、素材の特性として振動吸収性にすぐれ、さらに、採用するカーボン繊維の種類や編み方などで剛性をコントロールしやすいので、フレームの一部分の剛性を上げたり、逆に、一部分の剛性をあえて落としたりすることもたやすい(金属フレームでもパイプの太さや肉厚を調整することで剛性を調整できるが、素材そのものの特性まで変えられない)。そのため、メーカーがフレームに乗り味などの特性を設計しやすいのがメリットだ。

そんなカーボンフレームを採用する「FR Advanced 105」は、「UHC Advanced カーボン」と「TeXtreme(テキストリーム)」という2種類のカーボン技術を組み合わせて作られている。一般的なカーボン素材は円形の糸を編み込んでいるが、TeXtremeは平たいテープ状に編み上げたものを整形する製造方法なため、重量を軽減しつつも剛性を強化することが可能。また、視覚的には、カーボンらしい市松模様を描くのも特徴だ。

フレームにはペイントが施されているが、「FELT」のロゴには素材であるカーボンの市松模様のような編み目が見える(筆者のカメラの腕ではうまく写っていないが……)

フレームにはペイントが施されているが、「FELT」のロゴには素材であるカーボンの市松模様のような編み目が見える(筆者のカメラの腕ではうまく写っていないが……)

そして、両クランク(ペダルにつながるアーム)の軸となる部品「BB(ボトムブラケット)」に、太くボリュームある形状を採用して剛性を確保しているのもポイント。ペダルを踏み込んだ際にしなりやすい部分なので、剛性を上げることにより力のロスが防げ、高い走行性能が発揮される。そのいっぽうで、シートステイとシートチューブ、メインチューブが交わる部分は、あえて剛性をダウン。縦方向に柔軟性を持たせた構造を採用することで路面の凹凸による衝撃が吸収され、ホイールが常に路面に接地するため、エネルギーのロスを防げるのだ。

ボトムブラケットは、フレームの中で最も太い。左右のペダルを踏んだ際の変形を極力抑える設計だ

ボトムブラケットは、フレームの中で最も太い。左右のペダルを踏んだ際の変形を極力抑える設計だ

左右のシートステイがシートチューブの横を通ってトップチューブにつながる構造は、縦方向にしなるとともに、左右方向のしなりを低減。路面からの突き上げをやわらげるほか、タイヤが地面に追従しやすくなり、ペダルを踏んだ力のロスも低減するといった効果がある

左右のシートステイがシートチューブの横を通ってトップチューブにつながる構造は、縦方向にしなるとともに、左右方向のしなりを低減。路面からの突き上げをやわらげるほか、タイヤが地面に追従しやすくなり、ペダルを踏んだ力のロスも低減するといった効果がある

フォークのコラムが収まるヘッドチューブ部分も、太めのテーパー構造を採用。これは、ステアリング特性にも影響する部分だ

フォークのコラムが収まるヘッドチューブ部分も、太めのテーパー構造を採用。これは、ステアリング特性にも影響する部分だ

フロントフォークもカーボン製。垂直方向に柔軟な構造を採用しており、路面からの衝撃を吸収し、タイヤを常に路面に押し付ける

フロントフォークもカーボン製。垂直方向に柔軟な構造を採用しており、路面からの衝撃を吸収し、タイヤを常に路面に押し付ける

ブレーキなどのケーブルは極力フレーム内を通しているので、スッキリとした見た目

ブレーキなどのケーブルは極力フレーム内を通しているので、スッキリとした見た目

リアブレーキのケーブルもフレームの中を通り、キャリパーの直前で外に出されている

リアブレーキのケーブルもフレームの中を通り、キャリパーの直前で外に出されている

シフトワイヤーも、フレーム内部を通ってディレーラーまで導かれている

シフトワイヤーも、フレーム内部を通ってディレーラーまで導かれている

その他、変速ギアやブレーキなどのコンポーネントは、シマノ製「105」グレードを採用しており、変速段数は、前2速×後11速の合計22速。制動力とコントロール性にすぐれた油圧ディスクブレーキを装備し、ホイールを支えるアクスルシャフトは剛性の高いスルーアクスルが使用されている。

シマノのコンポーネントとしては上から3番目のグレードとなる「105」は、リア11速(その下の「ティアグラ」は10速)。将来的にレースにも出てみたいと考えているなら、このグレード以上を選んでおいたほうがいいと言われている

シマノのコンポーネントとしては上から3番目のグレードとなる「105」は、リア11速(その下の「ティアグラ」は10速)。将来的にレースにも出てみたいと考えているなら、このグレード以上を選んでおいたほうがいいと言われている

フロントのディレーラーやクランクも「105」グレード。4アームで薄型のクランクは剛性も高い

フロントのディレーラーやクランクも「105」グレード。4アームで薄型のクランクは剛性も高い

油圧ディスクブレーキも「105」グレード。ローター径はフロント160mm、リア140mmだ

油圧ディスクブレーキも「105」グレード。ローター径はフロント160mm、リア140mmだ

ホイールは、Devox Whee「lRDS.A1」のチューブレスレディ。リムハイトは23mmあり、空力に貢献する

ホイールは、Devox Whee「lRDS.A1」のチューブレスレディ。リムハイトは23mmあり、空力に貢献する

Vittoria「Rubino IV」の700×25Cサイズのタイヤが装着されているが、最大28Cまでの太さに対応する

Vittoria「Rubino IV」の700×25Cサイズのタイヤが装着されているが、最大28Cまでの太さに対応する

シートポストは、カーボン製のDevox Post「C2 Cap」。上位グレードと同様のものだ

シートポストは、カーボン製のDevox Post「C2 Cap」。上位グレードと同様のものだ

ハンドルも上位グレードと同じくDevox製。コンパクトで、ドロップ高もあり、前傾姿勢が取りやすい

ハンドルも上位グレードと同じくDevox製。コンパクトで、ドロップ高もあり、前傾姿勢が取りやすい

平坦な道からヒルクライムまで走ってみた

「FR Advanced 105」は、オールラウンダーに位置づけられる「FR」シリーズに属するので、さまざまなシチュエーションでその実力を試す必要がある。街中から郊外の平坦路、そしてヒルクライムまで走ってみよう。路面の荒れ具合によって印象が異なる場合もあるので、平坦な道は舗装のきれいな場所と結構荒れた路面で試走した。

ペダルを漕ぎ出してまず感じるのは、ペダルを踏んだ力がロスなく推進力に替わる剛性の高さだ。特にBB周りは、スタンディングで踏んでもびくともせず、踏んだ力がフレームのしなりによって減損される感覚がない。ひと言で言えば、よく進む。ただ、その分、車体がかなり硬い印象。あまり速度の乗らない街中では、路面のギャップや舗装の荒れも拾って身体に伝わってくる。こういう車体はスプリント向きだが、筆者のように脚がない(脚の筋力・耐久力が足りないこと)乗り手には、その硬さや反応のよさが疲れにつながる場合も少なくない。まだ走り始めたばかりだが、若干の不安を感じる。

ペダルを踏んだ力がロスされることなく推進する力に変換され、よく進む感覚が楽しい

ペダルを踏んだ力がロスされることなく推進する力に変換され、よく進む感覚が楽しい

だが、少し広い幹線道路に出てスピードが上がると印象が少し変わった。剛性の高さやよく進む感覚はそのままだが、車体に1本軸が通ったようにピシッと安定して不安感がなくなる。さらに、路面からの突き上げもウソのように身体に伝わってこない。それでいて、路面の舗装の状態などの情報はしっかりと伝えてくれるので、今、自分がどのような状態のアスファルトの上を走っているのかまでわかる。30km/h以上での巡航は気持ちよく、先程まで感じていた車体が硬いという印象もだいぶ薄れてきた。やはり、これくらいの速度を想定して車体が設計されているのだろう。そして、巡航からの再加速では、それなりのスピードが出ているのに、ペダルをさらに踏み込むと車体が俊敏に反応して加速する。これには、かなり驚いた。あまりにも気持ちよくて、30km/h以上での巡航から再加速を何度も試してしまったほどだ。

巡航の気持ちよさと加速の爽快さのどちらも味わえる

巡航の気持ちよさと加速の爽快さのどちらも味わえる

続いて、有名なヒルクライムスポットも走ってみた。登りでは、スペックの数値以上に軽さを感じる。ペダリングの力がきちんと推進力に変換されているからだろう。シッティングで軽いギアを選択してクルクル回すペダリングでも着実に坂を登れ、少し重めのギアをスタンディングで踏み込んでも、車体がスッと前に出る。また、車体を大きく左右に振るような踏み方をしても、左右の動きが軽く、それでいて車体がしなっている感覚もない。ヒルクライムレースを視野に入れているようなライダーにも、「FR Advanced 105」はかなり魅力的な選択肢になりそうだ。

シッティングでもスタンディングでもよく進む特性が、ここでも効いている印象

シッティングでもスタンディングでもよく進む特性が、ここでも効いている印象

ペダルの踏み込みに合わせて車体を左右に振る動きもしやすく、こちらも数値以上に軽く感じる

ペダルの踏み込みに合わせて車体を左右に振る動きもしやすく、こちらも数値以上に軽く感じる

そして、帰路につくため、再び幹線道路に戻った際に、脚に余力があることに気付いた。筆者としては結構なヒルクライムにチャレンジしたので、帰りはヘロヘロになるだろうと予想していたのだが、むしろ、行きよりもハイペースで走れてしまったのだ。予想以上に走れるので、帰りに遠回りをしてしまったくらい。最初に不安に感じていたフレームの硬さによる脚へのダメージはまったくなく、次の日にダルさや筋肉痛が残ること(筆者はよくある)もなかった。

まとめ

本気のレース向けカーボンロードに試乗するのは久しぶりだったが、最新モデルの進化を感じられた。走行が軽いのはもちろんだが、踏んだ力を推進する力に変換する剛性の高さと、身体に残るダメージを低減する振動吸収性の両立がすばらしい。平坦路ではビシッと芯が通ったような安定感と高速巡航性、加速の俊敏さを味わえ、ヒルクライムでは羽が生えたような軽さを実感。それでいて、フレームの硬いロードバイクにありがちな疲労感もなかった。

乗り始めた当初は「フレームが硬いから、初心者にはハードルが高いかも」と感じていたが、走り終わってみたら(そして次の日になっても)、「FR Advanced 105」はロードバイクに乗り始めた人でも十分に魅力を感じられるやさしさを持ったモデルだと印象が変わった。むしろ、このバイクでロードバイクキャリアをスタートしたら、早い段階から、平坦路をかっ飛ばす気持ちよさも、ヒルクライムの楽しさも感じられ、いろいろな方向に楽しみ方を広げていけるだろう。

●メインカット、走行シーン撮影:松川忍

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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