ロードバイクタイプやクロスバイクタイプ、マウンテンバイク、ミニベロタイプなど、e-Bikeには多様なタイプがあるが、今回は、オフロード走行もできるロードバイク「グラベルロード」タイプをピックアップ。長距離ツーリングをしたり、未舗装路を走ったり、普通のロードバイクではできない乗り方が楽しめるキャノンデール「Topstone Neo Carbon Lefty 3」の魅力に迫る!
ロードバイクの種類のひとつ「グラベルロード」は、近年、ロードバイク市場でトレンドとなっているカテゴリー。舗装路だけでなく、未舗装路(グラベル)も走行できるように設計されており、一般的なロードバイクよりもタイヤが太く、制動力の高いディスクブレーキを装備しているのが特徴だ。このカテゴリーにおいて、キャノンデールの電動アシスト機能を搭載していないグラベルロード「Topstone(トップストーン)」シリーズが、以前から高い評価を得ている。他メーカーのモデルを圧倒する高い走破性を有し、オフロードを100km以上走る長距離レースではTopstoneシリーズが上位を独占した実績もあるほど。そんなTopstoneシリーズのグラベルロードに、電動アシスト機能を組み合わせたのが「Topstone Neo」シリーズ。本シリーズのトップグレードに位置する「Topstone Neo Carbon Lefty 3」は、カーボン製のフレームに、ボッシュ製のドラブユニット「Performance Line CX」(e-MTB用の最上級グレード)を搭載している。
適応身長162〜175cmの「SM」、170〜185cmの「MD」、180〜193cmの「LG」という3サイズが用意されている。販売価格は665,500円(税込)
ドライブユニットは75Nmの最大トルクを発揮する、ボッシュ製の最上級グレード「Performance Line CX」。素材にマグネシウムを多用するなどして軽量化も図られている
フレームに内蔵されるインチューブ式のバッテリーを採用。バッテリーもボッシュ製「PowerTube 500Wh」で、容量は500Whだ
バッテリーは車体から取り外して充電できるほか、フレームに設けられた充電口から充電することも可能。バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで約4.5時間かかる
アシストモードは「ECO」「TOUR」「SPORT」「TURBO」の4種類。アシスト可能な距離は最長170kmとなっている。なお、ディスプレイは「Purion」
Topstone Neo Carbon Lefty 3で注目すべきは、前後に30mmのトラベル量を持つサスペンション機構を搭載しているところ。他メーカーのグラベルロードにも、ハンドルやサドルに伝わるショックを吸収する機構を備えたモデルはあるが、Topstone Neo Carbon Lefty 3ほど本格的なものではない。しかも、その機構が非常にユニークで、フロントフォークは片持ち式。同社のマウンテンバイクなどにも装備されている独自のサスペンション「Lefty」をベースに、ストロークを短くするなどしてグラベルロードに最適化した「Lefty Oliver」を採用している。そして、リアのサスペンション機構も非常に特徴的。カーボンのフレームそのものがしなることでショックを吸収する方式となっており、フロントと同じトラベル量を確保している。この方式では、振動を抑制する「ショックアブソーバーユニット」が不要となるため、軽さが求められるロードバイクに適していると言えるだろう。なお、このように前後に本格的なサスペンション機構を備えているのはTopstone Neoシリーズ、Topstoneシリーズで共通しており、このシリーズ最大の特徴ともなっている(一部、フロントがリジッドフォークのモデルもあるが、シリーズの中では特殊なモデルという位置づけとなっている)。
左側にのみ装備された片持ち式のフロントフォークは、見た目の特徴ともなっている。ホイールは通常のロードバイクより少し小径の650Bサイズ(27.5インチに相当)で、タイヤは太めブロックタイプ
30mmのストロークを持つLefty Oliverフロントフォーク。ゆっくりした衝撃にはあまり動かず、急なショックには反応するというように、グラベルロード向けの動き方をする
ロックアウト機構が装備されているので、舗装路では動きを制限することも可能
リアのサスペンション機構は、リアタイヤを支えるフレーム部分が可動する方式。シートチューブとの接続する上側部分には、ピボットが設けられている
シートチューブの薄くなっている部分がしなって衝撃を吸収する。カーボン製のフレームなので、金属疲労なども起こらないという
変速ギアなどのパーツも、未舗装路の走行を視野に入れた構成となっている。メインコンポーネントはシマノ製のグラベルロード向けの「GRX」を搭載。変速ギアは1×11速で、最近、ロードバイク(特にグラベルロード)に波及してきたリア側のみの仕様となっている。激坂の登りに対応できるように、変速ギアの最大歯数は42Tと大きめだ。このほか、前後のブレーキに油圧ディスクを採用し、高い制動力とコントロール性を確保している。
変速段数1×11速の、シマノ「GRX 812Shadow」のリアディレイラーを採用。最大歯数は42Tと、マウンテンバイクほどではないがかなり大きめ
油圧式ディスクブレーキもシマノ「GRX」。ローター径は前後ともに160mmだ
ロードバイクらしくドロップハンドルを装備しているが、未舗装路を走ることもあるグラベルロードの特性に合わせ、悪路での押さえやすさに配慮して下側が広くなったハの字形状となっている。曲がりこんだ部分も浅く、初心者にも握りやすそう
ブレーキとシフトを兼ねるレバーもシマノ「GRX」だ
標準装備はされていないが、別途購入すれば、シートポストは座ったまま高さが調整できるドロッパーポストに交換可能
前後にサスペンションを装備した、ドロップハンドル版の「フルサス」とも言えるスペックを持つTopstone Neo Carbon Lefty 3の魅力をたっぷり堪能するには、やはりトレイル(山道)を走行しなければならない。ということで、e-MTB(マウンテンバイクタイプの電動アシスト自転車)の試乗でも何度か訪れているトレイルに足を伸ばすことにしたのだが、その途中にある舗装路で早くも走りの軽さを実感した。
筆者が、トレイルに向かうこの道を走るのは主にe-MTBなので、マウンテンバイクタイプと比較することになるが、フルサスモデルのe-MTB場合、車重が20kg台半ばのモデルが多く、大半が太いブロックタイプのタイヤを履いているため、電動アシスト機能を備えていても走行感は重めだ。いっぽう、Topstone Neo Carbon Lefty 3はやや太めのタイヤを履いているとはいえ、ロングライドも楽しめるロードバイク。18.4kgに押さえられた車体は、スイスイと進んでいく。試しに電動アシスト機能をオフにして走行してみたが、重さは感じるものの、それほど苦労することなく走行できた。
ロードバイクタイプのe-Bikeと比肩するほど軽い走行感。一般的なロードバイクと比べると姿勢はアップライトだが、クロスバイクより前傾姿勢は取りやすい
アシストも強力なので、坂道もスイスイ登れる。今回は短い距離しか走っていないが、これなら長距離も苦にならないだろう
舗装路を走っている時には、前後サスペンションが動いている感じはほとんどない。サスペンションが動くとペダルを踏む力がロスしてしまうため、舗装路の移動ではマイナス要因となるが、その感覚がほとんどないということは効率よく走れているのだろう。だが、少し大きめの段差を越えた際には、体に伝わってくる衝撃があきらかに小さい。必要なところでは、しっかりサスペンションが働いてくれているようだ。
そして、未舗装路に入るとTopstone Neo Carbon Lefty 3の本領が発揮された。砂利の敷き詰められたジープロードを走っても、砂利による凹凸が手やお尻にほとんど伝わってこないのに、路面状況はきちんと感じられる。30mmというストロークと、急な動きのショックに反応するサスペンションの動き方が、こうした砂利道にマッチしている印象だ。当然ながら、電動アシスト機能が搭載されているので、砂利の抵抗によってペダルが重くなることもない。何てことない砂利道を走るだけで、これほど楽しめる自転車はなかなかない。
砂利道でも舗装路とほとんど変わらない感覚で走れるのは、グラベルロードの中でもTopstone Neo Carbon Lefty 3をはじめとするTopstone Neoシリーズと、電動アシスト機能を搭載しないTopstoneシリーズくらいだろう
本格的なトレイルに入っても、軽い走行感は変わらない。e-MTBで走るよりもペダリングが軽く、速度の乗りもいいので気持ちよくなっていき、どんどんペダルを回してしまう。フラットな未舗装路では、ドロップハンドルらしいライディングポジションで風を感じながらグイグイ進むような走り方もできる。筆者がこれまで試乗してきたe-MTBよりもあきらかによく進む。未舗装路でも、速めのペースを維持して走るのが気持ちいい自転車だ。
試乗した季節は冬前だったので、路面には落ち葉がいっぱい。落ち葉を踏みしめながら、速めのペースで駆け抜ける感覚はe-MTBとは少し違う爽快感が味わえる
もちろん、ゆっくり走って、景色を楽しみながらトレイルを流すのも心地いい
マウンテンバイクのように未舗装路も走れるロードバイクと言う以上、やはり登りと下りの性能は確かめておかねばならない。まず、かなりの傾斜がある坂道に挑んでみたが、あっさり登り切れてしまった。大きな凹凸がなく、落ち葉が敷き詰められた路面コンディションだったこともあるが、前傾姿勢が取りやすいライディングポジションのおかげもあり、Topstone Neo Carbon Lefty 3の登坂性能の高さはe-MTBに勝るとも劣らないように感じた。もちろん、サスペンションのストロークが30mmなので、120〜150mm程度が一般的なe-MTBに比べると大きな段差があった場合の乗り越え性能は劣るが、道路の凹凸がさほど大きくなければ登りの性能は十分過ぎるものと言える。
斜度のある登りも難なく成功。落ち葉の多い路面は滑りやすいが、それほどタイヤが滑ることなく走れたので、グリップ性能もなかなか高い印象だ
下りについても予想以上の走行性能を実感。マウンテンバイクよりもハンドル幅が狭いため、車体を押さえづらそうに思えるが、意外なことに、下りの段差を乗り越えるような場面でもそれほど怖さを感じない。サスペンションが大きめの衝撃をきちんと吸収してくれることと、車体のバランスがすぐれていることが寄与しているのだろう。
下りでも予想以上の安定感があり、ハイペースで駆け抜けることができた。ドロップハンドルでも車体が押さえやすい
少し大きめの段差でも、着地の衝撃はサスペンションで絶妙に緩和される。詳しくは後述するが、同時に、腕もショックを吸収するように動かせば、驚くほどの安定性が望めるだろう
このように、すぐれた働きを見せるサスペンションだが、動きはかなり独特。一般的に、マウンテンバイクなどに装備されているフロントサスペンションは、段差を乗り越える際にふんわりとショックを吸収してくれるのに対し、Topstone Neo Carbon Lefty 3に装備されている「Lefty Oliver」はふんわりと動くことはなく、速い動きの衝撃にだけ反応する。その特性のおかげで、砂利道でハイペースな走行もできるのだが、トレイルの下りでは少々慣れが必要。衝撃の吸収をすべてサスペンション任せにすると、段差で体を突き上げられる可能性があるのだ。そのため、ある程度は腕や体も使って衝撃を吸収しなければならない。ざっくり言うと、速い動きの衝撃はサスペンションで、ややゆっくりとした大きい段差などの衝撃は体で吸収するといった具合だ。一般的なロードバイクやマウンテンバイクとは違う体の使い方をしなければならないので若干とまどうこともあるかもしれないが、慣れると、ストローク量が30mmとは思えないほどよく働いてくれるサスペンションの効果を存分に堪能できるはず。今回試したような里山トレイル程度なら、十分に走破できる性能を持っている。
写真のようなギャップを乗り越える際の衝撃はサスペンションがしっかりと吸収してくれるが、路面のうねりなどは体で吸収する走り方を身につける必要がある
グラベルロードの中でも悪路での走破性にフォーカスし、独自のフルサス機構を採用したTopstone Neo Carbon Lefty 3には、実は、乗る前からかなり期待をしていた。というのも、電動アシスト機能を搭載していないグラベルロード「Topstone」に乗っている筆者友人から、走行性能の高さを聞いていたからだ。その車体をベースとし、ボッシュの強力なドライブユニットを組み合わせたTopstone Neo Carbon Lefty 3であるから、疑問を抱くような出来映えなわけがない。そして、実際に試乗してみると、期待以上の仕上がり。前後サスペンションと電動アシスト機能のおかげで走破性は申し分なく、舗装路での快適性も損なわれていない。自走でトレイルまでアプローチして、登りも下りも楽しむという遊び方がぴったり来る。こうした遊び方はe-MTBでも可能だが、舗装路での軽快な走行はTopstone Neo Carbon Lefty 3のほうが圧倒的にすぐれていて、快適だ。
トレイルでの乗り方に関してもう少し深掘りすると、ダウンヒルコースのような激しいシーン以外なら十分に走破できる性能は持っている。ただ、e-MTBとは異なり、大きめの段差やギャップの多い下りなどにチャレンジして楽しむよりも、どちらかというとフラットに近いルートのほうが気持ちいい。“できない”わけではないが、あえて、そういう激しいセッションを探さなくても、その辺にある林道を走るだけでも気持ちよくなれる。そうした場所は日本全国どこにでもあり、それほど遠出をしなくても見つけられるはず。オンロードもオフロードも快適に走行でき、特別な環境がなくても存分に楽しめるTopstone Neo Carbon Lefty 3は、ほかのe-Bikeにはない独自の世界を持ち、遊びのフィールドを一気に拡大してくれるモデルと言える。
このような感じのトレイルを、風を感じながら流すのが一番気持ちいい。そしてこの程度のトレイルは、どこにでもありそうだ
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。