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e-Bike選びに役立つ基本的なことまとめ! 普通の電動アシスト自転車とどこが違う?

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近年、「e-Bike」(もしくは「eバイク」「E-バイク」)という名称の自転車が増えている。主にスポーツタイプの電動アシスト自転車を指す呼び名だが、区分のポイントはそれだけではない。そこで本記事では、一般的な電動アシスト自転車との違いや、e-Bikeを選ぶうえで知っておいたほうがいいことをまとめてみた。さらに、法令違反ではない安心して乗れるe-Bikeを選ぶための情報も紹介する。

「e-Bike」って、どんな自転車?

電動アシスト自転車は、日本で誕生した乗り物。1993年にヤマハが発売した「PAS」が、世界初となる電動アシスト自転車の市販車だ。

1993年に発売されたヤマハ「PAS」の初代モデル

1993年に発売されたヤマハ「PAS」の初代モデル

その後、日本で生まれた電動アシスト自転車は海を渡り、主に欧州で「e-Bike」と呼ばれるようになる。今は、その呼び方が逆輸入されている状況だ。ただ、欧州には“ママチャリ”的な実用自転車は存在しないため、欧州では「電動アシスト自転車=e-Bike」だが、日本ではMTB(マウンテンバイク)やロードバイク、クロスバイクなどの“スポーツタイプ”の電動アシスト自転車をe-Bikeと呼ぶことが多い。公的な規定があるわけではないが、日本の大手電動アシスト自転車メーカーであるパナソニックやヤマハも電動アシスト自転車とe-Bikeを別ブランドで展開している。

パナソニックのe-Bikeブランド「XEALT(ゼオルト)」。現在、「XEALT S5」「XEALT L3」「XEALT M5」(写真のモデル)の3モデルをラインアップしている※2024年1月25日時点

パナソニックのe-Bikeブランド「XEALT(ゼオルト)」。現在、「XEALT S5」「XEALT L3」「XEALT M5」(写真のモデル)の3モデルをラインアップしている
※2024年1月25日時点

ヤマハのe-Bikeは「YPJ」ブランドで展開。現在、「YPJ-XC Final Edition」「YPJ-MT Pro」「YPJ-MT Pro 30th ANNIVERSARY」「CROSSCORE RC」「WABASH RT」(写真のモデル)の5モデルをラインアップしている※2024年1月25日時点

ヤマハのe-Bikeは「YPJ」ブランドで展開。現在、「YPJ-XC Final Edition」「YPJ-MT Pro」「YPJ-MT Pro 30th ANNIVERSARY」「CROSSCORE RC」「WABASH RT」(写真のモデル)の5モデルをラインアップしている
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e-Bikeと電動アシスト自転車はドライブユニットが異なる

日本ではスポーツタイプの電動アシスト自転車をe-Bikeと呼ぶことが多いと前述したが、クロスバイクなどのスポーツタイプの車体であればe-Bikeに分類されるわけではない。街乗り向けのミニベロ(小径タイプ自転車)タイプのe-Bikeもある。

前後に20インチのタイヤを履いたターン「HSD P9」。街乗り向けのミニベロタイプの電動アシスト自転車だが、これもe-Bikeだ

前後に20インチのタイヤを履いたターン「HSD P9」。街乗り向けのミニベロタイプの電動アシスト自転車だが、これもe-Bikeだ

では、電動アシスト自転車とe-Bikeはどこが違うのかというと、ドライブユニットが異なる。基本的に、「スポーツタイプのドライブユニット」が搭載されたモデルをe-Bikeと呼ぶことが多い。

ドライブユニットとはモーターやセンサーなどを含む、電動アシスト自転車(e-Bike)の心臓部と言えるもの

ドライブユニットとはモーターやセンサーなどを含む、電動アシスト自転車(e-Bike)の心臓部と言えるもの

スポーツタイプのドライブユニットにはいくつか種類があるが、代表的な例が「1軸タイプ」のユニットだ。一般的な電動アシスト自転車で主流な2軸タイプのドライブユニットは、アシストの力をチェーンに伝える軸と、ペダルを踏んだ力を伝えるクランク(ペダルが付いているアームの部分)軸がある。それに対し、e-Bikeに採用されることの多い1軸タイプはクランク軸のみ。ペダルの踏力を伝えるクランク軸にアシスト力が直接伝わるため、より自然なアシストフィーリングが得られる。

パナソニックのe-Bike「XEALT」の前身となる「Xシリーズ」のプレスリリースの資料を基に編集部作成

パナソニックのe-Bike「XEALT」の前身となる「Xシリーズ」のプレスリリースの資料を基に編集部作成

ヤマハ「PAS Brace」の車体デザインはスポーツタイプだが、2軸タイプのドライブユニットを搭載しているため、「YPJ」ではなく「PAS」ブランドに分類されている

ヤマハ「PAS Brace」の車体デザインはスポーツタイプだが、2軸タイプのドライブユニットを搭載しているため、「YPJ」ではなく「PAS」ブランドに分類されている

ただ、2軸タイプのドライブユニットを搭載するe-Bikeもある。また、最近は、車輪の軸(ハブ)と一体化したドライブユニット(詳しくは後述)を採用したモデルも増えてきた。どちらも1軸タイプとは機構は異なるが、e-Bikeらしい自然なアシストフィーリングになっている。

パナソニック「XEALT L3」はe-Bikeだが、2軸タイプのドライブユニットを採用。「XEALTチューニング」を施すことで、1軸タイプのドライブユニットと遜色ないアシスト感を実現している

パナソニック「XEALT L3」はe-Bikeだが、2軸タイプのドライブユニットを採用。「XEALTチューニング」を施すことで、1軸タイプのドライブユニットと遜色ないアシスト感を実現している

e-Bikeの自然なアシストフィーリングがもたらすメリットとは

一般的な電動アシスト自転車の場合、ペダルを踏んだ力に対してアシストが唐突に立ち上がるため、発進しようとペダルを踏み込んだときにグッと車体が押し出されるような挙動があったり、思ったよりも進み過ぎたりすることがある。いっぽう、スポーツタイプのドライブユニットを搭載したe-Bikeは、ペダルを踏んだ力にアシスト力が自然な感じで上乗せされるので、出だしもスムーズ。乗り手の意図どおりにコントロールできる。

自分が踏み込んだときにアシストが作動するため、違和感が少ない

自分が踏み込んだときにアシストが作動するため、違和感が少ない

また、スポーツタイプのドライブユニットは高いペダルの回転数(ケイデンス)にも対応しているので、ハイスピードでの巡航や、軽いギアで高ケイデンスを維持しながら坂を登って行くようなシーンでも、きちんとアシストが提供される。長い距離を走った際の疲れの少なさにもつながるので、車体がスポーツタイプではないミニベロなどでもe-Bikeを選ぶ価値はある。

傾斜のきつい坂では軽いギアに入れてペダルをクルクル回して走ることがあるが、アシストのロスがないため、e-Bikeはこのようは走り方も得意

傾斜のきつい坂では軽いギアに入れてペダルをクルクル回して走ることがあるが、アシストのロスがないため、e-Bikeはこのようは走り方も得意

e-Bikeのドライブユニットには種類がある

一般的な電動アシスト自転車の場合、各メーカーでドライブユニットの種類は限られており、同シーズンに発売されるモデルには同じドライブユニットが搭載されていることがほとんど。組み合わせるバッテリーの容量でモデルごとの差を出すことが多い。いっぽう、e-Bikeは使用シーンや価格帯に合わせて性能の異なる複数のドライブユニットを用意し、車種ごとに使い分けている。また、シマノやBOSCHなどのように、ドライブユニットを自転車メーカーに提供しているブランドがあるのも特徴だ。ドライブユニットは、e-Bikeのグレードや特性を判断する際のポイントのひとつでもある。

日本で展開されているシマノとBOSCHのドライブユニット一覧。種類(グレード)がいくつかあり、たとえば、シマノのトップグレード「E8080」であれば、e-MTB(マウンテンバイクタイプのe-Bike)などに採用され、「E5080」なら街乗り向けのモデルに搭載されることが多い。なお、両ブランドの特性を比べると、BOSCHのほうがパワフルで、シマノのほうがスムーズなアシストという印象だ

日本で展開されているシマノとBOSCHのドライブユニット一覧。種類(グレード)がいくつかあり、たとえば、シマノのトップグレード「E8080」であれば、e-MTB(マウンテンバイクタイプのe-Bike)などに採用され、「E5080」なら街乗り向けのモデルに搭載されることが多い。なお、両ブランドの特性を比べると、BOSCHのほうがパワフルで、シマノのほうがスムーズなアシストという印象だ

また、ドライブユニットの取り付け方でタイプが分けられている。主流は、車体中央に搭載し、チェーンを介して後輪を駆動する「センタータイプ」。そして、近年増えているが、駆動輪のハブ(車軸)と一体化した「ハブモータータイプ」だ。このタイプのドライブユニットは、中国のバーファン製が多い。

パナソニックやヤマハが採用しているのはセンタータイプ

パナソニックやヤマハが採用しているのはセンタータイプ

アシストフィーリングの自然さはセンタータイプに軍配が上がるが、ハブモータータイプはパワフルでコストが安い。世界的に、センタータイプは上級モデル、ハブモータータイプはエントリーモデルのe-Bikeに採用されることが多いので、この点も知っておくとe-Bike選びで役立つだろう。

法令違反にならないために購入前に知っておくといいこと

カテゴリーとして分類されていても、e-Bikeは電動アシスト自転車。日本の道路交通法の基準に適合していなければならない。

日本の道路交通法で定められた電動アシスト自転車の規格

電動アシスト自転車(もしくはe-Bike)として販売されていても、こうした基準が守られていない製品がある。特に、海外の新興メーカーのe-Bikeには注意が必要。海外では日本と規定が異なるため、本来なら日本の規格に適合させなければならないが、海外仕様のまま販売しているモデルがあるのだ。知らずに乗っていたとしても、基準に適合していない電動アシスト自転車で公道を走ると運転者が罰則の対象になる。

日本では車速が10km/hを超えてからは24km/hまでアシスト力を徐々に下げ、ゼロにしなければならないが、たとえばEUの規定の場合、アシストできる速度の上限は25km/hで、10km/h以上の速度でもアシスト比を下げる必要はない、というように違いがある

日本では車速が10km/hを超えてからは24km/hまでアシスト力を徐々に下げ、ゼロにしなければならないが、たとえばEUの規定の場合、アシストできる速度の上限は25km/hで、10km/h以上の速度でもアシスト比を下げる必要はない、というように違いがある

上記の規格(1)の「ペダルをこがないと走行しない構造」については、わかりやすい。ペダルはあるが、ペダルをこがなくてもアクセルのレバーなどを操作すると走行する機能が付いていたらアウト。原動機付自転車に該当するので、ナンバーを取得し、ナンバープレートやライト、テールランプなどの保安部品を装備しなければならない。走行は車道に限られ、運転するには原付免許が必要。ヘルメットの装着も義務だ。

“ペダルをこがずに進む機能が付いる電動アシスト自転車”は、電動アシスト自転車ではない

“ペダルをこがずに進む機能が付いる電動アシスト自転車”は、電動アシスト自転車ではない

問題は規格(2)と(3)。e-Bikeに乗り慣れていれば違和感を感じ取れるが、わずかな違いなので、普通は日本の法規に対応しているかを体感で判断するのは難しいだろう。そんなときに、判断材料として使えるのが、公益財団法人 日本交通管理技術協会が実施している型式認定の「TSマーク」だ。道路交通法などに規定された基準に適合した電動アシスト自転車として国家公安委員会に認定されたことを証明するマークなので、「TSマーク」が貼付されているモデルを選ぶほうが安心。

「TSマーク」には点検整備済証と型式認定の2タイプがあるが、型式認定の取得を証明するのは写真右端のもの

「TSマーク」には点検整備済証と型式認定の2タイプがあるが、型式認定の取得を証明するのは写真右端のもの

>>平成23年以降に型式認定を行ったモデル(駆動補助付自転車)を日本交通管理技術協会のサイトで確認可能(外部サイト)
https://www.tmt.or.jp/examination/index9.html

ただし、型式認定の取得は任意なため、日本の法規に対応していても型式認定を取得していないモデルも存在する。そんなときは、ドライブユニットのブランドをチェック。シマノやBOSCHのドライブユニットを搭載し、日本で正規販売されているe-Bikeなら購入しても大丈夫だ。

バッテリー容量は「Wh」で確認する

電動アシスト自転車を選ぶ際、バッテリー容量を確認することは多いが、スペックの表記がe-Bikeは異なる場合があるので、最後に触れておこう。

本来、バッテリーの容量は「V×Ah」で算出した「Wh」で表すのが正しいが、従来、日本の電動アシスト自転車は電圧が25V前後で大きな差がなかったため「Ah」で表記するのが一般的だった。しかし、e-Bikeの電圧は36Vが主流。これまでの電動アシスト自転車とは電圧が異なるため、「Ah」ではなく「Wh」で表記されることが多い。ただ、e-Bikeの中にも「Ah」表記のみのモデルもある。その場合、「36V-13.1Ah」や「36V/13.1Ah」などのように電圧も記されているので、「Wh」表記のモデルと比べたいときは、「V×Ah」で計算しよう。

メーカーの公式サイトに掲載されているスペック表記。メーカーやモデルにより表記は若干異なるが、e-Bikeではない電動アシスト自転車でも電圧が記されているので、計算して「Wh」にすれば比較できる

メーカーの公式サイトに掲載されているスペック表記。メーカーやモデルにより表記は若干異なるが、e-Bikeではない電動アシスト自転車でも電圧が記されているので、計算して「Wh」にすれば比較できる

上の図版を基に、もう少し説明しておく。ヤマハの電動アシスト自転車「PAS Ami」とe-Bike「WABASH RT」は、どちらも「Ah」表記。「Ah」の数値だけ見ると「WABASH RT」のほうがバッテリー容量は小さい。しかし、電圧が異なるため、容量を計算すると「PAS Ami」は約400Wh、「WABASH RT」は約470Whと、「WABASH RT」のほうが大きいことがわかる。「Ah」の数値だけでは実際の容量はわからないことを覚えておこう。

近年のe-Bikeのバッテリーは500Wh前後の容量が主流で、なかには750Whという大きいものもあるが、バッテリーをフレームに内蔵するインチューブタイプを採用するモデルが多いため、大容量のバッテリーでも悪目立ちしない

近年のe-Bikeのバッテリーは500Wh前後の容量が主流で、なかには750Whという大きいものもあるが、バッテリーをフレームに内蔵するインチューブタイプを採用するモデルが多いため、大容量のバッテリーでも悪目立ちしない

増谷茂樹
Writer
増谷茂樹
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。
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中村真由美(編集部)
Editor
中村真由美(編集部)
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。気づけば15年以上、生活家電の情報を追い、さまざまな製品に触れています。
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