e-Bike専門メーカー「BESV(ベスビー)」が展開するブランドの中で、ハイエンドなテクノロジーを採用した“スマートバイク”を手掛ける「SMALO」の最上位モデル「LX2」に試乗。どこが「スマート」なのか、確かめてみた。
Arctic WhiteとMidnight Blackの2色をラインアップ。価格は398,000円(税込)
「SMALO」ブランドのe-Bikeは、「AIドライビングシステム」とIoT技術を搭載しているのが特徴だ。
BESVのe-Bikeは乗り手のペダリングに合わせて最適なアシストを提供する「スマートモード」を搭載しているが、「SMALO」ブランドのe-Bikeには、AI機能を使い、さらに滑らかで快適なアシストになるようにブラッシュアップした「スマートモード」を搭載。この制御が「AIドライビングシステム」と呼ばれるもの。加えて、「LX2」には、スピードやペダルの回転数、踏み込むトルクに合わせて自動で最適なギアに切り替わる自動変速システムも搭載している。
「スマートモード」がオンになるとディスプレイに「S」マークが点灯する
アシストモードは「スマートモード」のみ。左手側にある「S」と記されたボタンでオン/オフを切り替える。アシスト走行可能な最大距離は120km
変速の自動制御も「AIドライビングシステム」のひとつだが、右手側にあるボタンで手動操作に切り替えられる
「SMALO」ブランドのe-Bikeのもうひとつの特徴であるIoT機能は、専用のスマートフォンアプリ「BESV smart PLUS」と連携したIoT機能のこと。アプリ上で車体のロックを解除したり、車体の位置を確認したりできる。車体に4GのSIMが搭載されているので、Bluetooth圏外では4G通信でスマートフォンと接続可能。スマートモードの出力調整や、車体のファームウェアがワイヤレスで更新できる点も新しい。
アプリ上でペアリングされた車体の現在地を確認できるほか、ルートを設定すればナビ機能も使える
こうした機能を搭載した「SMALO」ブランドのe-Bikeを、BESVでは「スマートバイク」と呼んでいる。
「LX2」は「ホリゾンタル」と呼ばれる水平基調デザインのフレームにバッテリーを内蔵することで、スマートなシルエットに仕上げている。加えて、フレームのフロント部分にはバッテリー給電のライトも内蔵されているほか、ディスプレイはハンドルの付け根のステムと一体化。また、電源ボタンもフレームの上部に内蔵されており、新世代のe-Bikeを感じるデザインだ。
近年のe-Bikeの中でもかなりスマートなシルエット。BESVのクロスバイクタイプのe-Bikeとも異なるルックスだ。重量は23.1kg
36V/14.0Ahのバッテリーをダウンチューブに内蔵。フレームに内蔵しているようには見えない細身な仕上がりだ
バッテリーは取り外せないため、車体に電源プラグを挿して充電する。トップチューブの下側に充電口を装備し、目立たなくしているのもスマート。充電時間は3時間40分
ライトもフレームのいちばん前に内蔵。バッテリーから給電するタイプ
トップチューブの上面には電源ボタンを内蔵。アシスト制御などを行うECUもフレームに内蔵している
速度やバッテリー残量、アシストモードなどが表示されるディスプレイは、ステム部分に埋め込んでいる
モーター(ドライブユニット)は前輪のハブ(車軸)と一体となったタイプを採用
変速ギアは7速。内装タイプなので、シンプルな見た目に貢献している
IoTに対応したロック機構は、手動とアプリのどちらからでも解除できる。ただ、手動で解除する場合、あらかじめ設定したパスコードを入力しなければならないので、アプリを使ったほうが簡単でスマートだ。また、後輪にあるボタンを押してロックすると、その状態で自転車が物理的に移動するなど動きを感知するとアラーム音が発動。アラーム音のオン/オフやセンサーの感度は、スマホアプリで設定できる。
後輪側のフレームのチェーンステー左側にロック機構を搭載。銀色のボタンを押すとバーが飛び出し、ホイールを回らなくする仕組みだ
ルックスはスポーティーだが、街乗りをメインの用途と想定しているため、装備は実用性を重視したセレクト。路面からのショックを吸収しやすい太めのタイヤを履き、フェンダー(泥よけ)を前後に装着している。
変速機構が内装タイプなので、チェーンの取り回しもシンプル。チェーンに触れて衣服が汚れないように全周にカバーを装着している
タイヤサイズは28×2.0インチと太め。前輪、後輪ともにフェンダーを備えているので雨上がりも安心
リアのフェンダーにはテールランプを装備。テールランプもバッテリーから給電される
街乗り向けには欠かせないスタンドも装備。スタンドの高さは調整できる
ブレーキは前後ともに油圧式のディスクブレーキ。少ない力で大きな制動力を発揮でき、コントロール性も高い
スマートモードは専用のスマホアプリを使えば、アシスト出力を3段階で調整できるが、今回は初期設定のまま走行した。
漕ぎ出しのアシストは非常にスムーズで自然。一般的な電動アシスト自転車のようにガツンと押し出される感じでないのはe-Bikeでは多い味付けだが、「LX2」は、その中でも特筆してスムーズ。ペダルに力を入れて踏み込まなくても発進できるが、思った以上に車体が進むこともない。自動変速もスムーズで、車速が伸びてくるのに合わせて適したギアにシフトアップしてくれるので、乗り手はペダルを回しているだけで加速していける。
ギアやアシストモードのことは気にせず、ただペダルを回しているだけで快適に進めるので景色を楽しむ余裕が生まれる
ただ、一般的なe-Bikeの走り方に慣れている人は、「AIドライビングシステム」のアシストフィーリングに少し違和感を覚えるかもしれない。普通、e-Bikeはペダルを強く踏み込めばアシストが強くなり、車体をグイッと加速させられるが、「LX2」の場合、力強くペダルを踏んでもそれほど鋭く加速しない。乗り手のペダルを踏む力が足りないと、それを補うようにアシストが強くなる設計のようで、あまりペダルを踏み込まずに回すようなペダリングを心掛けたほうがスムーズに走れた。
このアシスト設定で登り坂を走るとどうなるのかが疑問だったが、平坦な道を走るのと同じように、少ない力でペダルを回すだけで楽に走破できた。坂道に差し掛かると同じペダリングでも車速が落ちるため、その変化を感知して自動でシフトがダウン。それでも車速が落ちるとアシストが強くなるようで、平地と変わらない感覚で登っていけた。
アシストされている感覚はあまりないが、適切にアシストや変速が調整されているおかげで坂道も平坦な道もペダリングの力を変えずに走行できる。この感覚は新鮮だ
筆者はこれまで多くのe-Bikeに乗ってきたが、「LX2」のアシストフィーリングはそのどれとも似ていない独特なものだった。ペダルを踏み込んだトルクに合わせてアシストを強くするというより、速度を維持するのに不足する力をアシストで補うという考え方でチューニングされている印象。力強い加速をしたい人には物足りなく感じる部分もあるかもしれないが、ギアやアシストのことは気にせず、心地いい速度を維持して移動したい人にはピッタリだろう。細かいことは車体に組み込まれたAIに任せて、乗り手はただペダルを回しているだけでいい。まさに、「スマートバイク」と呼ぶのにふさわしい感覚だ。
●メインカット、走行シーン撮影:松川忍