街乗り向けのe-Bikeとしてはハイスペックな装備を採用し、価格が880,000円(税込)と高価なことで話題となったビアンキ「E-OMNIA C-TYPE」が、2024年の価格改定で、発売当初の半値440,000円(税込)に値下げされた。
筆者は2022年に発売されて早々に試乗し、完成度の高さに感心したものの、確かに街乗り向けとしては価格が高すぎると思っていたので、大幅に値下がりした今は間違いなくお買い得だ。「E-OMNIA C-TYPE」の魅力を紹介しよう。
ビアンキの代名詞とも言えるカラー、チェレステのほか、ブラックグロッシー、ボルドー、ホワイトグロッシーの計4色を用意
価格が改定されただけなので、当然、車体構成やスペックは変わっていない。搭載しているドライブユニットは、ボッシュ製「Performance Line CX」。山道を走るe-MTB(マウンテンバイクタイプのe-Bike)などに搭載されることが多いトップグレードのドライブユニットで、「E-OMNIA C-TYPE」のような街乗り向けのe-Bikeに採用しているのは珍しい。バッテリーもボッシュ製で、そのなかで最も容量の大きい625Whのものを装備。この組み合わせだけでも、e-Bikeとしてのスペックの高さが感じられる。
サイズは650(幅)×1,890(全長)mmで、重量は約30kg
ボッシュ製のドライブユニットでは最高峰に当たる「Performance Line CX」を採用。最大トルクは85Nmを発揮する
625Whの大容量バッテリーをフレーム内部に搭載している。取り外して充電することも可能。バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで約4.9時間かかる
太さを持たせたアルミ製のフレームは、リアキャリアまで一体化した構造を採用しており、かなり剛性が高そう。前後のタイヤには、e-Bike専用に設計されたシュワルベ製「Marathon E-Plus」を採用し、段差などを乗り越えた際のショックを吸収するサスペンションをフロントに装備するなど贅沢な作りだ。
フロントライトとテールライトはフレームに一体化。リアにはテールライトのほか、フレームの左右にもライトを内蔵している。ライト類はすべてバッテリー給電で点灯する仕様
リアホイールを保持する部分のフレームはかなりゴツい。パワフルなアシストに対応するためだろう
タイヤは前後とも21.5インチと太め。乗り心地がよさそうだ。太いタイヤに合わせたフェンダー(泥よけ)を装備している
フロントサスペンションはトラベル量100mmのSRサンツアー製
前後とも、すぐれた制動力を発揮する油圧製ディスクブレーキを採用。キャリパーはシマノ製で、ローター径は180mm
ドライブユニットやバッテリー、ホイールなどの装備は街乗り向けのクロスバイクというよりe-MTBのようなスペックだが、街中での利便性を高める装備も充実している。フェンダー(泥よけ)やスタンド、サークルロックなどを標準装備しているほか、チェーンではなく、ベルトで後輪に駆動力を伝えるベルトドライブを採用しているので、注油などのメンテナンスの手間もかからない。
1本で支えるサイドスタンドだが、重量のある車体を支えるしっかりしたもの
ハンドルはやや手前に角度が付いている。街乗りで使いやすい形状だ。中央にあるディスプレイはボッシュの最高グレードで、「Kiox」と呼ばれるコンパクトなカラータイプ。速度や平均速度、ケイデンス(ペダルの回転数)、ペダルを踏む力(W表示)など、多くの情報が表示できる
ハンドルを支えるステムには角度や高さを調整できる機構付き
サドルは幅があり、骨盤をしっかり受け止めてくれる形状。サドル下にはクッション性を高める構造を採用している
リアキャリアの部分にABUS製のサークルロックが付いてるいるので、盗難防止の鍵を購入しなくて済む
クランク軸から後輪に駆動を伝える部分に歯付きベルトを使うベルトドライブ構造を採用。変速機構は内装5段のシマノ製「NEXUS」で、停車中も変速できる
ドライブユニットを始めハイスペックな装備で構成された「E-OMNIA C-TYPE」だが、e-Bikeの中でも重い約30kgという車重が、乗り味や取り回しなどに影響しないか気になる。街中を中心に走行し、性能を確かめてみた。
アシストモードは「ECO」「TOUR」「SPORT」「TURBO」の4種類。アシスト走行が可能な距離は最大約170km。すべてのモードを試しているが、平坦な道は「TOUR」で十分だ
ボッシュ製のドライブユニットは、パワフルさに定評がある。「E-OMNIA C-TYPE」はそのなかでも最上級の「Performance Line CX」を搭載しているので、かなりパワフルなアシストを予想していたが、漕ぎ出し時にいきなり押し出されるような感覚はない。アシストが制御されているようで、やわらかい感覚だ。また、ベルトドライブを採用していることも、この漕ぎ出しの感覚に寄与しているように感じた。
ただ、パワーがあるのは確か。約30kgも車重があるにも関わらず、速度がどんどん乗っていく。といっても、重さを感じないわけではなく、重いものがしっかりと加速するという感覚。この乗り味と、剛性の高いフレームで安心感が高い点はe-Bikeの中でもバイクに近いように感じた。
強くペダルを踏まなくてもグイグイ車速が乗る感覚で、気持ちいい
坂道も走ってみたが、e-MTBなどに搭載されるドライブユニットだけあって、ペダルを回しているだけで軽々と登れた。ちなみに、今回試した坂道を「TURBO」モードに切り替えて登ってみたところ、飛び出そうなくらいパワフルだったので、一般的な舗装路の登り坂なら「TOUR」モードで登り切れるだろう。
前傾しにくいライディングポジションだが、ほとんど脚の力は使わずに登れる
「E-OMNIA C-TYPE」はアシストが効かなくなる24km/h以上の速度域に達すると、車体の重さを強烈に感じるので、24km/h未満で走行するほうがいい。その速度域であれば、太いタイヤとフロントのサスペンションのおかげで衝撃を感じることもなく、快適な乗り心地を楽しめた。
バッテリーをフレームに内蔵し、すっきりとしたe-Bikeっぽくないルックスのモデルが増えているが、「E-OMNIA C-TYPE」は、e-Bikeの中でもがっしりとしたフレーム形状を採用し、バッテリーだけでなくライトも内蔵式とするなど意欲的な構造で、e-Bikeでしかなし得ないスタイリングに仕上げられている。見た目だけでなく、最上級のドライブユニットを搭載するなど性能面でも妥協はなく、そのことは試乗で実感できた。
昨今は、円安などの影響でe-Bikeの価格は上昇傾向にある。そのため、エントリーグレードでも440,000〜500,000円することも少なくない。つまり、2024年の価格改定で440,000円(税込)に値下がった「E-OMNIA C-TYPE」は、ハイグレードなスペックのe-Bikeをエントリーグレードのe-Bikeくらいの価格で購入できることになる。コスパのいい街乗り用のe-Bikeを探しているなら、かなり狙い目だ。
上質な乗り心地で疲れも少ないので、長距離の通勤などにも対応する
●メインカット、走行シーン撮影:松川忍