筆者は趣味として、山奥の川辺でキャンプをして宿泊し、翌朝から渓流釣りをする、という遊びをしているのですが、早朝にテントを撤収するのが面倒で、車中泊を選択することもしばしば。設営や撤収がもっと簡単なテントがあれば……と探していて見つけたのが、ロゴス「Tradcanvas オートエアマジックドーム DUO」(以下、「オートエアマジックドーム DUO」)です。“90秒で設営完了”という売り文句に惹かれ、さっそく使い勝手を試してみることにしました。
通常、テントを設営する際は、ポールを組み立て穴に通したり、フライシートを掛けてフックをポールにはめたりする必要があり、この一連の流れが結構わずらわしい。異なる長さのポールを使用する製品の場合、間違った穴に通してしまってやり直し……ということがたびたびあり、イライラを感じていました。そんなわけで設営の簡単なテントが欲しいけれど、かといって一般的なポップアップテントでは、フレームがヤワなため風に弱く、ひと晩過ごすのは心許ない。
そんななか、「オートエアマジックドーム DUO」はポップアップテント並みに設営が簡単で、ポール付きテント並みの強度を持っているとのこと!
その秘密は、チューブ状のフレームに空気を入れることで自立する独自の設計。しかも電動の空気ポンプが内蔵されており、ボタンをポチッと押すだけで設営が完了するという驚きのイージー仕様です。
とはいえ、筆者は飛び道具的なアウトドアギアに対して、「ホントに使えるの……?」と半信半疑になるタイプ。主に気になっているのは、
【1】空気チューブで本当に強度が実現できるのか?
【2】設営は簡単でも撤収が面倒なのでは?
という2点。それらを踏まえつつ、実際のアイテムで検証してみましょう。
まずは、収納時の状態をチェック。「オートエアマジックドーム DUO」は2人用で、サイズはおよそ49(横)×20(縦)×20(高さ)cm。量販店で売っている安物のマミー型寝袋よりもふた周りほど大きなサイズで、重量は約4.5kg。コンパクトとは言い難いサイズと重量ですが、クルマで荷運びすることを思えば問題なし。キャリーなどで持ち運びを工夫すれば、電車キャンプにも活用できるサイズ感です。
上が「オートエアマジックドーム DUO」で、下は筆者私物の寝袋。クルマで持ち運ぶことを想定すれば、十分にコンパクトです。収納袋はストラップ付きで持ち運びやすいため、駐車場とキャンプサイトが離れていても安心
袋を開けてみると、テント本体とペグ、そして黒い電子機械が入っていました。てっきりこの電子機械がポンプだと思っていたのですが、実はこれ、蓄電容量1500m/Ahのバッテリー。ポンプはテント内に内蔵されているようです。バッテリーは事前に充電しておく必要があり、USB Type-Cを使ってフル充電まで約3時間です。
バッテリーには充電用のUSB Type-Cケーブルが付属。ペグはおまけ程度と考え、適宜交換してもいいでしょう
バッテリーを挿す位置は、チューブフレームの右端。その下側にある丸い樹脂パーツは、内蔵されている電動ポンプのスイッチで、これをポンと押すだけでOKと、操作も簡単。「もし電動ポンプが取り外し可能なら、サップボードやビニールプールの空気入れとしても使えるのにな……」とか、「バッテリーの容量もたっぷりあるし、LEDランタンのバッテリーや火起こしのブロワーとしても使えるように拡張アイテムが出るといいな……」と思ってしまうほど、テントを膨らませるためだけに使うにはもったいないほどの豪華設備です。
三角形のバッテリーは空気を入れ終わったら外して保管しておくこと。また、空気を入れている最中はポンプ部のファスナーを開けておこう
もし、余った電力やポンプを活用できるようなオプション展開があれば、「着替え場所&空気入れとして使えるサップ旅行テント」のように、パッケージングとしてまとまりそうな予感。そのあたりは今後のロゴスの展開に期待したいところです。
では、実際に膨らませてみましょう。
ちなみに、取扱説明書では最初にペグで仮留めしてから空気を入れるようになっていますが、1人でも簡単に動かせる重量とサイズなので、空気を入れて形がある程度決まってから位置決めしたほうが楽かも? ということで、今回は仮留めせずに試してみました。
動画内では、時々チューブが折れ曲がらないように調整していますが、基本はほったらかしでOK。一瞬で……とはいきませんが、ポチッとすれば居住スペースが現れるなんて、漫画「ドラゴンボール」に出てくる「カプセルハウス」を彷彿とさせます。
なお、筆者はビビって途中でポンプを止めていますが、規定の空気圧になれば自動でストップする機能も付いているのでご安心を。
元々誰でも設営できるぐらい簡単な仕様ですが、付属の収納袋には組み立て方を記した説明書が縫い付けてあるので、初心者でも心配はありません。
ペグを打つ角度なども図解してある説明書。とはいえ、ノールックで立てられるほど簡単です
設営完了した状態がこちら。同じく2人用であるモンベル「ムーンライト テント2」よりやや小さめのサイズです。最近のキャンプシーンで流行りのナチュラルカラーのため、ウッディなギアや鋳鉄系のアイテムとも相性がよさそうです。
大人2人が横になれる長方形の底面に、アーチ状のチューブフレームを採用した構造。荷物を置く位置を工夫すれば広々と使えます
シングルチューブ構造のため、横から見ると三角形。ソロ用バップテントの室内空間をイメージしてもらうとよいかもしれません。
風向きに対してチューブフレームが平行になるよう設営すれば、より安定しそう
中のサイズ感はこんな感じ。多少手狭ですが、インフレータブルマットを敷いて大人2人が就寝することも可能です。前室も付いているため、脱いだ靴やリュックなど荷物の保管スペースとして活用できます。
座って過ごす分には余裕のある天井高。調理などをする際などはタープなどを追加したい
試しにコットを運び込んでみましたが、雨天時にコットを使って2人で就寝すると、身体の側面がウォールに触れて濡れるだろうと思われます。コットを使用する場合は、最も天井高があるテント中央部分に置いてソロで使うほうが快適でしょう。
テントの幅は140cm。写真のように70cm以上あるワイドタイプのコットを1台で使えばゆったりと過ごせます
フライシートは2,000mm、フロアシートは3,000mmの耐水圧で、紫外線を約90%以上カットする加工が施されています。米国の難燃基準「CPAI-84」をクリアした難燃素材をシートに使っているそうで、焚き火するときも安心。
前室部分には冷気や泥の侵入を防ぐマッドスカートも搭載
各所のロープには自在金具が付属しており、設営も簡単
また、いわゆるシングルウォールというよりも、フライシートとインナーテント一体型とも言うべき構造。裏側にはベンチレーションも付いています。
ベンチレーション部分には、ロゴス独自開発の高機能メッシュ素材「デビルブロックST」を採用。通常比約1.5倍のUVカット率/遮光率を実現し、紫外線や強い日差し、虫の侵入を防ぎながら風通しも確保しています。
ベンチレーションのメッシュ部分はひさし付きで雨の侵入をシャットアウト
室内にはランタンフックはもちろん、左右にポケットを配置。テントとしては過不足のないレイアウトです。
ポケットの容量も十分。鍵やメガネなど、行方不明になりがちな小物類を収納できます
そしていちばん気になるのが、はたしてエアチューブで耐風性は確保できるのか、というところ。また、ランタンを掛けたときに潰れないか、という点も気になります。
で、実際に強めに力を掛けてみた様子がこちら。
ヤワなポールだと折れてしまうぐらいの強い風が吹いたとしても、復元力のあるエアチューブ式なら破損する心配はほとんどないだろうな、と感心しました。これなら、最近流行りのゴールゼロなどのコンパクトなランタンはもちろん、少々大きめのLEDランタンを掛けても十分に耐えられるでしょう。
また、エアチューブ式と聞いて、「破れたらどうするんだ?」と少し不安だったのですが、実物を見てみると、フライシートと共地の素材の中に固いカバーが掛けられ、さらにその中にチューブが入っている、いかにもタフそうな仕様。
木の枝が少々当たった程度では破れたりしなさそうな頼もしさがあるエアチューブ
もうひとつ気になっていたのが、撤収の手間。実際に試してみると、バルブを緩めてまとめるだけでOKでした。しかもコンパクトなテントにありがちな、正しい手順の畳み方で仕舞わないと付属の袋に入らない……といったこともなく、袋のサイズに合わせてなんとなくクルクルとたたむだけで入れられました。
ちなみに、空気抜き用のバルブは、バッテリーの反対側にセットしてあります。空気を入れる前に忘れずにこちらを締めておきましょう。ポンプと同じ側に付いていれば設営や撤収のときにあちこち行き来せずに済むのですが、おそらく構造上難しいのでしょうか?
バルブはねじ込み式。もちろん工具などは一切使わずに開け閉め可能です。手動ポンプを使用する場合はこちらのフタからセットします
キャンパーに取材をしていてよく聞くのが、「キャンプに慣れてくるにしたがって、テントを立てずにタープだけで過ごしたり、車中泊で過ごしたりするようになった」という言葉。その裏には、自然の中で過ごすのは好きだけど、寝るためだけにテントを設営するのは面倒臭い、という現実があるように思います。特に週末に1泊2日のキャンプや、キャンプ場に泊まりながら長距離移動するような場合などは、テントを立てた翌日に撤収することになるため、どうしても面倒臭さが勝ってしまうもの。ですが、この「オートエアマジックドーム DUO」なら、試しにキャンプをやってみたい、というビギナーから、次々とキャンプ場を渡り歩きたい、という上級者まで、気軽にテント泊を実践できるのではないでしょうか。