アウトドア好きな筆者にとって待ち望んだ季節がやってきました! この春もキャンプを楽しもうと思っています。とはいえ朝晩はまだまだ冷え込むので、外でも電気ケトルみたいに手軽にお湯を沸かして温かい飲み物を用意できたらいいのになと思うことも…。今回はそんなときに役立つアウトドアグッズをご紹介します。
近代的な見た目ですが、ケリーケトルの歴史は非常に長いんです。時は100年以上前、アイルランドにある湖のほとりで農夫として生活するかたわら、漁師としてサケやニジマスを釣っていたパトリック・ケリー氏によって考案されました。ガスや薪などがなくとも、枯れ葉や小枝、松ぼっくりなどの自然燃料だけでお湯を沸かすことができるんだとか。
なぜ小枝でお湯を沸かすことができるのか、その秘密は形状にありました。実は上から見ると真ん中は空洞になっており、水は内壁と外壁の間に入れるようになっているんです。この二重構造により、火力を効率的に水に伝えることができるので、少ない燃料でも一般的なやかんよりもお湯が早く沸くというわけです。
上から見ると、真ん中は空洞になっていました
ここから水を入れます。注ぎ口から内壁が見えるのがわかるでしょうか
もうひとつの秘密は煙突効果にあります。ケリーケトルは底部分にファイヤーベース(燃料容器)があるのですが、ここで起こった火がケトルの空洞部分を煙突のように通ることで上昇気流が起こり、内壁全体で熱することができる仕組み。これは田舎によくある「ロケットストーブ」と同じような原理ですね。
底部分にファイヤーベースがあります
この「二重構造」と「煙突効果」をうまく利用したのがケリーケトルというわけです。さあ、座学はこのくらいにしてさっそくお湯を沸かしてみましょう。
コーヒーを作るためにお湯を沸かしてみようと思います。適当な大きさの枝を拾ってきて、あっという間にスタンバイ完了です。
小枝を使ってやってみます
ここから水を注ぎます。このサイズで0.6L入ります
水の注ぎ口は大きいので、水がこぼれる心配はありませんでした。次に、底のファイヤーベースに燃料(小枝)を入れます。
こちらの空気穴からも枝を投入できます
燃料が足りない場合は、上の煙突からも入れてOK
キャップは火をつける前に外しましょう(キャップをしたまま温めると、吹き飛んでしまう恐れがあります)
いよいよ着火! 着火用に紙を用意して火をつけましたが、小枝なのですぐに種火ができたもよう。その後は煙突効果もあり、小枝ながら強力な火力でケトルを温めてくれます。多少の雨や風の中でもしっかり燃えてくれます。もう少し燃料を増やすと、ボーッと火柱のように煙突から火が出る様子を見られるはず。
※今回調査したのはアルミ製なので、空焚きは厳禁。熱し続けると穴が開いてしまうこともありえます。
十分な火力が確保できています
お湯が無事に沸きました!!
沸騰するまでにかかった時間は6分ほど。ガス火ならまだしも、小枝だけで沸かしていることを考えると、なかなか優秀ではないでしょうか? ちなみに松ぼっくりだと3分ほどで沸かせるそうです。今回選んだ小枝はちょっと大きて燃焼しにくかったようですね…火柱も見られませんでした。
さて、お湯が沸きましたが、この後どのようにケトルからお湯を注ぐのか。ここにもすばらしいアイデアが集積されていました。まずは取っ手。長めに作られていて、火元に触れぬよう工夫されています。
これだけ距離があるので熱くならない
そして先ほど、キャップを外してお湯を沸かしたかと思いますが、このキャップがお湯を注ぐのに活躍します。鎖でケトル下部とつながれており、鎖を持ってキャップを引き上げることでケトルの頭部が下に傾き、お湯が注げるようになっているのです。
これならアツアツのケトルを触ることなくお湯を注ぐことができるというわけ。
底部分を高くしてお湯を出す仕組み
このケリーケトルは、上部に五徳(ポットサポート)などをセットすることで、火元として調理にも使うことができます。オプションで専用の五徳も販売されていますが、今回は枝を使ってポットを乗せ、熱してみました。
ちゃんとお湯ができました
ケリーケトルの大きさは、0.6Lの「トレッカー」、1.2L「スカウト」、1.6Lの「ベースキャンプ」の3種類。材質はアルミのほかステンレスもあるので、用途によって選べるのもいいですね。
本格的に火をおこしてお湯を沸かすのもいいですが、「ちょっと休憩してコーヒーでも飲みたいな」というときや十分な燃料が確保できないときに手軽に使えるので、とても便利だと思いますよ。