各社トップモデルが揃う「3万円クラス」のノイズキャンセリングヘッドホン
ノイズキャンセリングヘッドホンで3万円台の予算となると、各社ノイズキャンセリング性能トップの座を争うハイエンドがズラリと並ぶ。「3万円台」の売れ筋モデルからピックアップした3機種は、ノイズキャンセリングの定番ブランドの最上級モデル、ソニー「WH-1000XM2」、去年からアクティブノイズキャンセリング機能を大幅に強化したbeats by dr.dre「studio3 wireless」、そして航空機用のヘッドホンの元祖とも呼びたいBose「QuietComfort 35 wireless headphones II」。顔ぶれは、まさにオールスター対決だ。
3万円クラスのトップバッターはソニーの「WH-1000XM2」だ。ワイヤレスでハイレゾ対応、そしてノイズキャンセリングと“全部入り”で大ヒットとなった「MDR-1000X」の後継モデルにあたる。アップデートの主な差分は、「Headphones Connect」のアプリからコントロールできる「アンビエントサウンド(外音取り込み)モード」の微調整に対応したこと、気圧対応のノイズキャンセリング性能など。ソニー最上級の精度を追求したモデルとも言える
実際に「WH-1000XM2」を装着してみると、“ゴー”という重低音、“ブーン”という低音はほぼ無音というレベルまで消えてかなり感動的だ。高域の“カー”という音は少し残るのは騒音対策としての難しさ所以だろうが、ノイズキャンセリングで対処しきれない高域のノイズも音楽を流せばまず気にならないレベルにまでは抑えられている。音楽再生時も、情報量の多いサウンドで、低音の深みもすばらしい。ソニーが気圧検出までして取り組む「WH-1000XM2」のノイズキャンセリング性能は、現行のソニー製ノイズキャンセリング製品群で間違いなくトップ性能といっていいだろう。
beats by dr.dreの「studio3 wireless」を“ノイズキャンセリング対応”のモデルとして挙げるには、ピンと来ない人も居るかもしれない。元々ノイズキャンセリング対応だった「studio」シリーズだが、前モデルまでのノイズキャンセリング性能は、正直トップグループではなかった。しかし、第3世代の本機登場にあたりBeatsが独自開発した「ピュアアダプティブノイズキャンセリング(Pure ANC)テクノロジー」を搭載。外部環境を継続的にモニタリングし環境音を遮断、再生中の音楽を解析し音源に効果的なノイズキャンルを適用する機能が盛り込まれ、改めてノイズキャンセリング対応の性能を打ち出し始めたモデルである。
実際に「studio3 wireless」を装着してみると、確かにノイズキャンセリング性能の性能向上はすぐに分かった。装着してすぐは強めのノイズキャンセリング効果の違和感は出やすいが、“ゴー”という重低音はすぐになくなり、“ブーン”という中域のノイズもほぼ無音に近いレベルになった。課題となりやすい“カー”という高域ノイズも巧みに抑えるが、完全に消すのではなく若干低めの”コー”と響く帯域に追いやるイメージだ。ノイズキャンセリング性能だけで語っても、ソニーやBoseと比べるとそん色ない水準だ。ハッキリ言って、この出来のよさは予想外だった。音楽を流してみても、全体的にクリアで低音もしっかりと引き締まっており、最近のbeatsサウンドを象徴するようなサウンド。普段使いを考えるとベストに推薦しても文句ないモデルだ。
ノイズキャンセリング対応ヘッドホンの老舗のBose最新モデルが「QuietComfort 35 wireless headphones II」だ。ノイズキャンセリングの設定は3段階で切り替えられるが飛行機内ではやはり「高」の設定が正解だ。
実際に装着してみると、ノイズキャンセリングの老舗だけに騒音低減性能はかなりすばらしい。ノイズキャンセリングの違和感が強めに出るタイプではあるが、“ゴー”という重低音はほとんど気にならない水準に抑えられている。“ブーン”という音も聴こうとしなければ問題ない水準。気になりやすい“カー”という高域の低減効果も適切なレベルだ。“下の帯域はカットするけど、おかげで高域側が余計にうるさい”という2万円クラス以下のクラスにありがちな状態を回避している。ただし、飛行機でのノイズキャンセリング効果だけを見ると、ソニー「WH-1000XM2」にはやはり及ばないし、今回の検証ではbeats by dr.dreの「studio3 wireless」の方が効果的に騒音軽減がなされているかな、と思えてしまった。
最後はサウンドだが、ハイレゾ志向でiPhoneで聞いても情報量志向のソニー「WH-1000XM2」、絶妙なメリハリのチューニングで攻めるbeats by dr.dre「studio3 wireless」に対して、「QuietComfort 35 wireless headphones II」はBoseらしいゆったりとした低音が特徴だ。聴く音楽次第ではBoseを選ぶというのもアリだろう。
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。