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“売れ筋家電リモコン+Amazon Echo”の使い勝手を本音レポ! 何が便利でどこが課題?

「AI」「IoT」のキーワードとともに、昨年から世界的に注目が集まっている“スマートスピーカー”。今はまだ、単体だと使用用途が限られるが、「Wi-Fi家電リモコン」を組み合わせることで、できることの幅が一気に広がるのをご存知だろうか。今回は、価格.comで売れ筋のWi-Fi家電リモコン、ラトックシステム「RS-WFIREX3」をAmazon Echoに組み合わせて、今できるIoT/スマートホーム化を体験! 実際、何が便利で、どこが課題なのか? AV評論家・鴻池賢三氏が、その使いやすさと現時点での課題までを、本音でまとめていく。

今回のテーマはこちら! Amazon Echo Dot(左)と、ラトックシステム「RS-WFIREX3」(中央)および専用アプリをインストールしたスマートフォン(右)

現状の、スマートスピーカーへの“本音”

2017年は「Amazon Echo」や「Google Home」などのスマートスピーカーが登場して、大きな話題になった。AIを利用した高度な音声認識機能は、新しい時代を予感させるものだ。

しかし実際に利用してみると、音楽配信サービスとセットで曲の選択や再生をする分には一定の実用性を見い出せるものの、音声対話は“キーワード検索”に近い雰囲気。対応する情報をウェブ上から拾って読み上げるのが精一杯という状況で、人間と会話する感覚が得られるレベルに達するには、相当な時間がかかりそうだ。天気、時間、早口言葉やダジャレを言わせて、3日で飽きたというユーザーも少なくないだろう。

最初は招待制でしか買えなかった「Amazon Echo」。2018年4月からついに一般発売開始された

最初は招待制でしか買えなかった「Amazon Echo」。2018年4月からついに一般発売開始された

こちらは、Googleから登場した「Google Home」

こちらは、Googleから登場した「Google Home」

スマートスピーカーが真に活躍するであろう用途のひとつとして、「家電の操作」=「家のIoT/スマートホーム化」が考えられる。日本国内でも、通信機能を内蔵するスマートスピーカー対応家電が続々と登場しそうな気配だ。

しかし、こちらも完全普及まではひと筋縄では行かなさそうだ。一般的に家電製品の耐用年数は7〜8年程度と長いものが多く、一般家庭では全てを入れ替えるまでに10年以上は要すると考えられるからだ。正直、現時点でスマートスピーカーをめぐる理想と現実のギャップは小さくない。

現時点でスマートスピーカーを活用するなら、「Wi-Fi家電リモコン」に注目

そこで、当面の間スマートスピーカーを使ううえで、有望なアイテムとなりそうなのが、スマートスピーカーと接続できる「Wi-Fi家電リモコン」である。

<Wi-Fi家電リモコンとは>
赤外線対応の家電リモコンで、家中の複数の家電と連携させることができる。ポイントは、専用アプリを使用して、スマホから家電製品を操作できること。スマホさえあれば、屋外からでも操作が行える。
家中にあふれるリモコンをスマホ上にひとまとめにできるので便利だし、純正の付属リモコンが故障・紛失した場合にも重宝する。

注目すべき新機能は、Amazon AlexaやGoogle アシスタントなどのAIシステムに対応するスマートスピーカーとの連携だ。現時点ではそれ単体だと用途が限定されるスマートスピーカーだが、Wi-Fi家電リモコンを間にはさめば、より多くの家電製品を音声操作することが可能になり、自宅をIoT/スマートホーム化したような形にできるのだ。

仕組みは、以下の図を参照してほしい。概念としては、スマートスピーカーを通じてAmazon AlexaやGoogle アシスタントが音声を認識してユーザーの指示を理解し、クラウド上で具体的なリモコン操作のコマンドとして置き換えて、Wi-Fi家電リモコンに送信。最終的にWi-Fi家電リモコンからリモコンコード(赤外線)を家電製品に向かって発信する。

スマートスピーカーとWi-Fi家電リモコンを組み合わせた家電操作のイメージ図。普段我々が家電操作に使っているリモコンの原理をそのままに、操作性を発展させたものと考えれば理解しやすいだろう

ラトックシステム「RS-WFIREX3」をチェック!

そんなWi-Fi家電リモコンのひとつとして、Amazon AlexaとGoogle アシスタントの2大AIシステムに対応するラトックシステムの「RS-WFIREX3」をご紹介しよう。ラトックシステム本社にて開発担当者立ち会いのもと、デモンストレーションを体験させていただいた。はたして、Wi-Fi家電リモコンは、この先数年、家電が完全にIoT化するまでの空白を埋め、スマートスピーカー自体の活用の幅を広げてくれる存在となるのだろうか?

写真左の黒い物体が、ラトックシステム「RS-WFIREX3」。専用アプリ「家電リモコン」(右)から操作を行うと、リモコンの赤外線信号が発信され、家電製品の電源オン/オフなどが行える

RS-WFIREX3は、ラトックブランドで3代目ということもあり完成度が高く、以下のような特徴を備える。

・登録済み家電製品が豊富(国内メーカー製品の多くが型番やシリーズを選択するだけで利用可能)
・学習機能が強力(赤外線フォーマットを選ばず、海外の特殊家電も操作可能)
・手の平にすっぽりおさまるコンパクトサイズ
・温度、湿度、照度センサーを内蔵(室内環境を外出先からも把握可能)
・強力な赤外線(半球を死角なくカバー。20m級の到達距離)

RS-WFIREX3の内部。赤外線リモコン信号発信用LEDが9個配置され、製品を中心に半球方向をくまなくカバー。家電製品に付属のリモコンよりも強力で、確実に操作を伝えてくれる(※注:写真は試作品で、量産品とは一部異なります)

ラトックシステム本社で、「Amazon Echo+RS-WFIREX3」を体験してみた!

今回は、RS-WFIREX3を手がけるラトックシステムを訪問! Amazon Echoと連携させてテレビと照明の音声操作デモを体験させていただいた。

大阪市内にあるラトックシステムの本社にてデモを体験!

大阪市内にあるラトックシステムの本社にてデモを体験!

▼Alexaの「スキル」について

まず、全容をスムーズに理解するうえで知っておきたいのが、AmazonのAIシステムAlexaの「スキル」。「カスタムスキル」と「スマートホームスキル」の2つが存在するという点だ。

日本上陸時点で260種類以上とアナウンスされていた拡張機能のAlexaスキルも、いまでは650種類を超えているそう

・カスタムスキル

サードパーティーが、電源以外の詳細操作ができるAlexa対応機器を開発する場合、現時点では「カスタムスキル」が基本となる。Alexaとは原則無関係に、各機器メーカーが、製品の機能にあわせて「スキル」=「できる機能」を詳細に作り込むことができる。

テレビならチャンネルや音量、エアコンなら温度や湿度、照明なら明るさや色味といったように、各種の詳細設定が自由自在に行えるというわけだ。ただし、Alexaから独立した特区のような領域のため、音声操作を行うには、「アレクサ、○○○でXXXをして…」のように、「○○○(スキルの呼び出し名)」を加える必要がある。

具体例として、RS-WFIREX3を利用する場合は、「アレクサ、“家電リモコン”で、“照明をXXXして”…」のようになり、発話ワードに“家電リモコン”分が増えてしまうことになる。(注:RS-WFIREX3のカスタムスキルは、2018年4月時点で、操作できるのが、テレビ1台、エアコン1台、照明2台に限定される)

・スマートホームスキル

もういっぽうの「スマートホームスキル」は、家電操作向けに標準的に用意されているAlexaのインターフェイス。操作は電源のオン/オフ程度に限られてしまうが、RS-WFIREX3を利用する場合でも、発話を「アレクサ、“照明をつけて”」のように、“家電リモコン”を省略することができる。

また、執筆時点で筆者が確認した範囲だが、エアコン、照明、テレビに加え、RS-WFIREX3で登録した扇風機、掃除機、ホームシアターも、Alexaのスマートホームデバイスとして追加でき、カスタムスキルより幅広い家電が音声で操作できるのがメリットだ。

Alexaアプリのスマートホームに、RS-WFIREX3で登録した家電をデバイスとして登録した画面の例

Alexaアプリのスマートホームに、RS-WFIREX3で登録した家電をデバイスとして登録した画面の例

まとめると、ユーザーは、詳細な操作が可能な「カスタムスキル」と、発話が少なくて済む「スマートホームスキル」の使い分けが必要で、ここを押さえておけば、セットアップや操作もスムーズに進むはずだ。

ちなみにGoogle Homeなど、Googleアシスタント(Actions on Google)と連携する場合は、「Conversation Action」がAlexaのカスタムスキルに、「Direct Action」がAlexaのスマートホームスキルに相当する。使い勝手は少々異なるが、概念として頭に入れておくと理解しやすいだろう。

▼「Amazon Echo+RS-WFIREX3」の使い心地は?

実際に体験してみると、基本とも言えるカスタムスキルでの
「アレクサ、家電リモコンで照明をつけて」
「アレクサ、家電リモコンでテレビを消して」
……といった操作はきわめて安定している。

Alexaが言葉を聞き違えることはなく、発話からリモコン信号が発信されて家電が反応するまでの時間も1秒程度と、待たされる感はほとんどない。

しかし、家電製品に付属のリモコンと比べるならば、話すスピードにもよるが、発話開始から家電が反応するまでのトータル時間は、カスタムスキルを使った呼び出しで約8秒といったところだ(次回のアップデートで4秒程度に改善される予定)。

RS-WFIREX3の特徴でもあるが、Alexaのスマートホームスキルを利用した場合は、“家電リモコンで”を省略してもきちんと動作し、この際の発話開始から家電製品が反応するまでの時間は約4秒だった。各家電製品に付属しているリモコンなら、「ボタン操作=反応」とタイムラグがないので、そう考えると4秒はかなり長い。しかし実際の家庭でイメージすると、操作をしようと思ってからリモコンに手を伸ばし、所望のボタンに指が届くまで数秒はかかるはずだし、ましてや、リモコンを探すとなると4秒ではすまない。

音量やチャンネルを連続的に操作するなら付属リモコン、単純に電源をオン/オフするならAlexa経由、という使い分けがよさそうだ。

▼「定型アクション」を使いこなせ! 方言を認識させる裏技って?

今までのリモコン以上に便利かつスマート風に使いこなすなら、「定型アクション」が利用できる。「定型アクション」とはAlexaアプリで設定できるマクロ風機能で、「呼びかけ」と「一連のリモコン操作」を対にして記憶させることができる。たとえば、「アレクサ、おやすみ」に、エアコン「オフ」と照明「オフ」を紐付けておくと、ベッドに入って就寝直前に「アレクサ、おやすみ」と話すだけで、エアコンが停止し、照明も消灯するといった具合。

現時点で「定型アクション」には、スマートホームスキルで利用できる家電製品しか登録できないので、操作対象が限られる。テレビは電源(オンまたはオフのトグル)のみ、エアコンはオン/オフ、照明はオン(明るさ指定可能)とオフのような大雑把な感じになってしまうが、起床時、外出時、帰宅時など、毎日の決まったルーチンをこなすには実用充分で便利そうだ。

筆者が気付いた「定型アクション」の裏技的な使い方が、方言への対応だ。関西では「照明」のことを「でんき(電気)」と呼ぶことが多いのだが、AlexaのAIを持ってしても現時点では「でんき」を「照明」のことだと理解してくれない。「定型アクション」で「アレクサ、電気をつけて」を作成し、「照明をオンにする」を登録しておくと、所望の操作ができるようになった。

テレビや扇風機のように、電源の操作がトグル(オンの時に“電源ボタン”を操作するとオフになり、オフの時に操作するとオンになる)タイプの場合、「アレクサ、テレビ」や「アレクサ、扇風機」にしておくと、発話から“つける”や“消す”を省略でき、混乱も避けられるようになった。

ちなみに、スマートホームスキルで「TV」とアルファベットで登録されていると、「テレビ」ではなく「ティーヴィー」と発音しないと反応しない。登録をカタカナの「テレビ」に修正しておくと、操作しやすくなるので、覚えておくとよいだろう。

Alexaアプリの定型アクションに、実行条件(呼びかけるワード)を登録した例

Alexaアプリの定型アクションに、実行条件(呼びかけるワード)を登録した例

スマスピ+家電リモコンの特徴と弱点、今後の進化展望を語る

音声操作においては、発話自体が面倒で時間もかかるのが難点だが、先述の通り、リモコンが手元にないときや、決まったルーチンをこなすのには便利だ。そうした意識があれば、利用する価値を見い出せるだろう。家電操作において、Alexaの音声認識精度は完璧と言えるレベルで、RS-WFIREX3が発する強力なリモコン信号は空振りすることもなく、極めて実用的だった。

いっぽう、RS-WFIREX3に限ったことではないが、赤外線リモコンを利用する弱点も知っておかなければならない。命令が一方通行で、家電側の動作状況を把握することができないので、失敗時のリトライができない。

たとえば、ヒトが通って遮ったり、障害物など、何らかの事情で赤外線が操作対象の家電に届かないケースが想定される。また、テレビに至っては、使用頻度が高いにも関わらず、電源のオンとオフが同じボタン、つまりリモコンコードも同じなので、電源をオフにしようとしても、テレビがスタンバイ状態で「電源」操作を行ってしまうと、意図に反してテレビがオンになってしまう。確実に電源の操作を行う必要があるのなら、別途、遠隔操作に対応した電源管理アダプターを導入する手も考えられるが、複雑になってしまうのは厄介だ。

また、現在ユーザーからは、スマートスピーカーで操作を受け付けてから、リモコン操作が実行されるまでのタイムラグを短くしてほしいという要望があると言う。筆者の計測ではAmazon Echoでは1〜2秒程度と気にならないものの、Google Homeを試してみた際は5〜8秒程度と一拍待たされる印象だった。

ラトックシステムでソフトウェアの開発を担当する赤井氏によると、AlexaやGoogleアシスタントを担うサーバーは現在北米にあり、また、リモコンコード関するデータベースを東京地域のサーバーに置いていることと、さらに複数回の通信を行うため、通信の総距離がタイムラグに影響しているという。

このデータベースを置くサーバーを変更すれば、時間を短縮できることが確認されており、近いうちに更新を予定しているそうで、既存ユーザーには朗報と言えるだろう。また今後は、日本でユーザーが増えれば日本国内にミラーサーバーを置くことも予想でき、ユーザーとサーバーの距離が縮まることで、さらなる高速レスポンスも期待できそうだ。

お話をおうかがいした、ラトックシステム開発部ソフトウェア担当の赤井氏

お話をおうかがいした、ラトックシステム開発部ソフトウェア担当の赤井氏

最後に。エンジニア目線では“リアル”に結びつくAlexaに将来性?

今回は、家電リモコンの実用度について取材を行ったが、AlexaとGoogleアシスタント両方に対応する製品開発を行っている赤井氏に、エンジニアの目線で両AIシステムの将来性をたずねてみた。すると、「Alexaが有利」という回答だった。

技術的な優劣ではなく、Amazonでは日本拠点にエンジニアを置き、ラトックシステムのようなサードパーティーに向けた開発サポートが手厚く、開発がスムーズなのだという。今回のRS-WFIREX3も、Alexa対応に要した時間はわずか半年というから驚きだ。

Alexaはスキルの多さで他社を圧倒し、それが大きな魅力と言われているが、綿密な計画に基づいた成果のようだ。経路検索やウェブ情報検索ではGoogleが圧倒的な強さを見せるが、家電製品がからむスマートホームや、商品をユーザー宅まで届けるネットショッピングなど、ネットとリアルの融合も考えるとAmazonの強さは疑う余地がない。その核となるであろうスマートスピーカーやデバイスは、当面Alexaが中心になりそうに感じた。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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