ビクター「HA‐FW10000」
2018年10月18日、JVCケンウッドは東京都内でビクターブランドの今後の展開に関する発表会を開催。ビクターブランドを「イノベーションを追求するブランド」と位置付け、音の領域では「原音探求」思想を再定義するブランドとして展開すると宣言し、頭外定位音場処理技術「EXOFIELD」を使った音場特性カスタムサービス「WiZMUSIC」、ビクターブランド90周年記念モデルホーン付きオルゴール「RJ-3000MK2」に続くビクターブランドの新製品として、木の振動板を採用した「WOOD」シリーズのフラッグシップイヤホン「HA‐FW10000」を発表した。
ビクターブランドの今後の展開。音の分野は「原音探求」をテーマに新製品を続々と投入する予定だ
今回ビクターブランドの新製品として発表された「HA‐FW10000」は、WOODシリーズの発売10周年を記念するフラッグシップイヤホン。直近では、WOODシリーズはJVCブランドのハイクラスヘッドホン・イヤホンシリーズである「CLASS-S」を冠して展開されていたが、今回の新製品からビクターブランドで展開される形となる。
ビクターブランドを冠するのは初代WOODシリーズ以来
新製品は10周年を記念したフラッグシップモデルということで、「すべては音のために」をコンセプトに、これまで培ってきた技術だけでなく新しい技術を惜しみなく投入し、徹底した高音質を追求したのが大きな特徴となっている。
なかでもWOODシリーズのアイデンティティであるウッドドームドライバーユニットはかなりこだわっている。新開発のウッドドームカーボン振動板は、音の伝搬速度が速く、振動の減衰特性にすぐれるカバ材から削り出した薄さ50ミクロンのウッドドームにカーボンコーティングしたPET振動板を組み合わせることで、美しい響きと緻密な表現を実現。また、強度にすぐれたチタニウム素材のドライバーケースを採用することで、音の雑味を排除。高い磁束密度を実現するハイエナジー磁気回路により、駆動力とリニアリティについても大きく向上しているという。こういった改良により、これまでWOODシリーズが得意としていなかった低域部分の表現力が大きく向上しているという。
新開発のウッドドームドライバーユニットの概要
さらに、ドライバーユニットの音を受け止める筐体にも大きくこだわった。MMCX端子を独立したポッドに収納することで、ハウジングから分離する構造を新たに採用。ハウジング内の音響設計の自由度が広がったことで、形状を0.1mm単位で調整できるようになり、徹底した音質の追求が行えたという。ハウジングとウッドスタビライザーについても、国産の楓を採用。無垢材から精密削り出し加工を行い、硬度の高い漆塗りを職人の手で一つずつ丁寧に多層塗りすることで、楓本来の響きを引き出すとともに、フラッグシップらしい上質なデザインに仕上げた。吸音材も、天然素材の阿波和紙と絹の2種類を組み合わせることで、温かく美しい音の響きの実現に寄与しているという。
ハウジングとウッドスタビライザーは和楽器にも使われる漆の多層塗りを施すことで、響きの調整という音響面と、見た目の上質さというデザイン面の両方に配慮した
ノズル部分は、強度の高いステンレスを採用するとともに、「アコースティックピュリファイヤー」と呼ばれるスパイラルドットイヤーピースの技術を応用し、音の純度を高めるドットを内側に配置したことで、音の雑味を排除し、高解像度でピュアなサウンドの実現を狙ったという。イヤーピースについても、従来のスパイラルドットイヤーピースをベースに、肌に近い力学特性を持つ「SMP iFit」という新素材を使用した「スパイラルドットイヤーピース+」へと進化し、さらなる表現力の獲得と高いフィット感を実現したという。
ノズルはステンレス素材を使用。ドライバーユニットフロントに位置する部分に「アコースティックピュリファイヤー」を施し、音の純度を高めた
「HA‐FW10000」の付属品。「スパイラルドットイヤーピース+」も5サイズ付属する
ケーブルは、L/R完全分離ハイグレードグルーヴケーブルを採用。新たな芯線構成により音の伸びと繊細な表現を可能にしたほか、天然素材の絹を組み合わせたことで、原音の持つピュアなディテールや雑味のない滑らかな響きも再現できるということだ。
筐体デザインが大きく変わったため、「HA‐FW10000」はいわゆるShure掛けしかできないが、ケーブルがしなやかなので付け心地はなかなか
発売日は11月上旬を予定。市場想定価格は18万円前後(税別)だ。
発表会では、「HA‐FW10000」の発表以外にも、ビクターブランドの今後の展開についていくつか発表された。
まずは、ビクターブランドの復活第1弾として発表された「WiZMUSIC」の今後の展開だ。頭外定位音場処理技術「EXOFIELD」を応用し、あたかも目の前のスピーカーから聴こえるような立体感・臨場感のあるサウンドをヘッドホンで再現する音場特性カスタムサービスとして昨年5月に発表された「WiZMUSIC」。測定サービスと組み合わせた展開だったため、これまでメーカー直販のみでの取り扱いとなっていたが、11月からは同社が認定したパートナーショップでも計測サービスを実施して展開していくという。また、「WiZMUSIC」で提供していたヘッドホン「HA-WM90」の単体販売も11月から実施予定とのこと。価格はヘッドホンパッケージが45万円前後、ヘッドホン単体が35万円前後になる見込みだ。
音場特性カスタムサービスの「WiZMUSIC」
「WiZMUSIC」で提供していたヘッドホン「HA-WM90」の単体販売が決定。価格は35万円前後
また、これまでJVCブランドで展開していたWOOD CONEオーディオシステムについても、2019年2月にビクターブランドから新製品を発売することがアナウンスされた。今回の発表会では詳細なスペックについては語られなかったが、スピーカーはフルレンジのウッドコーンスピーカー、本体はハイレゾ再生に対応し、同社独自のデジタル高音質化技術「K2 TECHNOLOGY」やBluetooth機能などが搭載されるということだ。
来年2月に発売を予定しているWOOD CONEオーディオシステムの最新モデル
スピーカーはフルレンジのものが採用される
本体は「K2 TECHNOLOGY」やBluetooth機能が搭載される見込み。「K2 TECHNOLOGY」はBluetoothでも利用できるそうだ