スマートフォンやスマートスピーカーと連携し、各種家電製品の遠隔操作を可能にする「スマート家電リモコン」。壁などに設置され、Wi-Fi経由でスマートフォン/スマートスピーカーからの指示を受け取り、製品に付属のリモコンに代わり赤外線で命令を伝えることが、その役割だ。1人2役どころか10役、20役を果たすリモコンとして活用でき、屋外からの命令も可能になるため、家電の活用範囲は大きく拡がる。
製品選びのポイントは、「製品付属のリモコンの代役になれるかどうか」に尽きる。ほとんどのスマート家電リモコンには、テレビやエアコンといったカテゴリーごとに多くの製品情報が登録されており、製品名を選ぶだけでそのリモコンの信号を送信できるようになる。その登録数の多さと発信する信号(赤外線)の強度が、製品付属リモコンの代役としての決め手だ。
その点、ここに取り上げる「RS-WFIREX4」は380機種以上のリモコンに対応、プリセット値として提供する。プリセット値は新製品の登場にあわせ順次追加されているほか、手動でリモコン信号を登録することもできるので、旧製品を利用している場合も安心だ。
前モデルと比べての進化点としては、赤外線部の有効範囲(信号到達距離)が最大30mに拡大したことが挙げられる。信号を受信する家電製品側の受信性能と設置場所にもよるが、前モデルの「RS-WFIREX3」は最大20mだから、信号到達エリアは大幅に拡大されたことになる。スマート家電リモコンは信号が安定的に届かなければ機能しないだけに、重要なポイントといえるだろう。
筐体サイズがひと回り小さく・軽くなったことも見逃せない。前モデルのRS-WFIREX3は最大部の面積が63.5×63.5mmで厚さは24mmだったが、RS-WFIREX4は45×45mmの厚さ15mmと、その差は歴然。重量も半分の16gになったため、壁面に固定するときは両面テープ程度の粘度があれば足りてしまう。ボディカラーがホワイトに変更されたこと、フック用の穴が設けられたことを合わせれば、壁掛け設置のハードルが数段下がったことは間違いない。
より小さく軽くなったスマート家電リモコン「RS-WFIREX4」
USB Micro-Bで電力供給する。左隣のボタンはWPS用
背面には壁掛けフックのほか、ヒモを取り付けるための穴が用意されている
ボディカラーがホワイトに変更されたため、壁に取り付けても違和感が少ない
RS-WFIREX4のアドバンテージは、なんといっても対応するリモコンの多さだ。プリセット情報はファームウェアアップデートのたびに追加され、エアコンやテレビはもちろんのこと、タカラトミー製ACS対応プラレールアドバンスといった趣味性の高い製品までサポートされている。開発元のラトックシステムがWEB上で公開しているプリセット一覧(https://iot.ratocsystems.com/support/preset/)は随時更新されるため、導入前の参考になることだろう。
セットアップはかんたん、スマートフォン1台あればいい。iPhone Xで作業したが、事前にダウンロードしておいた専用アプリ「スマート家電コントローラ」を起動してメールアドレスを登録、届いた本人確認コードを入力してから画面の指示に従いRS-WFIREX4をWi-Fiに接続すればOK。SSIDの指定は本体裏のQRコードをカメラで読み取ればいいので、わかりやすい。あとはテレビやレコーダー、エアコンといった製品を登録していけばセットアップ完了だ。
対応する家電機器のリモコンデータは350種以上、しかも随時追加されている
機種を選び動作テストを行えば、以降はアプリを利用してすべての操作が可能になる
内蔵センサーで気温の取得が可能なため、温度情報を必要とするエアコン用リモコンにもしっかり対応する
スマートスピーカーの登録も、ほぼ自動化されている。Googleアシスタントを例にすると、家電リモコン一覧画面の右上にある「三」ボタンをタップして「Googleアシスタントの設定」を選択、現れた画面で「カスタム(Conversation Actions)」か「スマートホーム(Direct Actions)」のどちらかを選べばいい。
カスタムの場合、ウェイクワード(OK Google/ねえGoogle)に続けて「家電リモコンを使って○○して」と言わなければならないが、エアコンと照明にかぎってはウェイクワード不要で「電源オン」や「明るく」と命令できる。Googleアシスタントによる命令はスマートフォンアプリでも実行できるので、スマートスピーカーはこれから購入という場合でもとりあえずひと通りの機能を試せる。
GoogleアシスタントはDirect Actionsにも対応、エアコンと照明は短いフレーズで命令できる
iPhone/iOS 12以降を利用している場合、Siriショートカットを使う手もある。家電リモコンアプリ上であらかじめそのボタンをタップしておくと、『設定』アプリの「Siriと検索」項目からショートカットを作成できるようになるので、そこで自分が言いやすい言葉と関連付けるのだ。「Siri、テレビをオン」とか「Siri、明かりを消して」などと自由な言い回しで登録できるので、かたわらには常にiPhoneがあるという人にはスマートスピーカーなしでも十分便利に活用できることだろう。
よく使うボタンはウィジェットに登録しておくと操作がラクになる
Siriショートカットを使えば、任意のフレーズで命令できるようになる
肝心の家電機器側の反応は、すこぶる良好だ。リビング全体を見下ろすことができ、かつ家電機器側の受光部と直線で結べる高めのポジションにRS-WFIREX4を設置したところ、登録したすべての家電(エアコン/テレビ/レコーダー/照明器具)についてひと通り操作できた。これまで利用した家電リモコンの中には、反応が鈍かったりそもそも反応しなかったりしたものがあったが、最大30mという赤外線部の有効範囲のなせる技か、一貫して安定している。
命令を出してから実際に家電機器が反応するまでのタイムラグは1秒前後と、ストレスになるかならないかギリギリのライン。あともうひと声反応が早ければとも思うが、スマートスピーカーのエンジン部分(Cloud Functions/AWS Lambda)がクラウド上に存在する仕様上やむを得ないところ。もっとも、利用頻度の高いボタンをウィジェットに登録しておくなどの工夫で実質的なレスポンス向上を図れるため、結局のところ使いこなした者勝ちという種類の製品であることは確かだ。
IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。