レビュー

スクリーンが下から自動でせり上がる! 超短焦点プロジェクター用スクリーン「ケストレルテンションCLR」

超短焦点プロジェクターの悩み

100インチ超の大画面といえば、プロジェクター。近頃は薄型テレビの大型化が進み、実際100インチの製品も存在するが、映画を映画らしく楽しむとなるとやはりプロジェクターに軍配が上がる。ある程度の投写距離を要するため設置場所を選ぶという難題には、「超短焦点」という解決策が現れた。いまや4K/HDR対応の超短焦点プロジェクターは20万円台からチョイスが可能、十分手が届く存在だ。

しかし、ここにも難題が。「スクリーン」だ。近距離、しかも下斜め方向から投写するという超短焦点プロジェクターの特性上、打ち込み角(レンズとスクリーンに投写した映像の中心までの角度)が大きくなり、スクリーン上のわずかな凹凸・たるみが映像に歪みとして現れる。直線は波打ち建物の輪郭は曲がり、鑑賞に耐えない映像となってしまうのだ。だからといって壁紙の模様が映像に映り込む壁投写は論外で、選択肢は超短焦点用スクリーンのみということになる。

この超短焦点用スクリーンも悩ましい。近くへポンと置くだけで大画面という簡潔さが長所のはずが、巻き上げ式は天井付近の工事が必要になるし、固定式は会議のとき使うホワイトボードのようでせっかくの簡潔さがスポイルされてしまう。

なにかいい解決策は...と考えていたところに現れたのが、エリートスクリーンの「ケストレルテンションCLR」。超短焦点プロジェクター用としてはおそらく世界初の電動立ち上げ式、リモコンのボタンを押すだけでスルスルとスクリーンがせり上がるしくみ。もちろん工事は不要、使用しないときは台座部分のみとなるためインテリアを妨げない。これは実物を試してみなくては。

超短焦点プロジェクター向けスクリーン「ケストレルテンションCLR」

超短焦点プロジェクター向けスクリーン「ケストレルテンションCLR」

ただせり上がるだけじゃないメリットとは

ケストレルテンションCLRの取材は、都内某所の陽が射し込むオフィスで行った。プロジェクターの画質チェックを行うわけではなく、実際の設置はどうなるか、昇降の様子と使用感の確認が目的だからだ。明るい場所での使用に定評があり、筆者も度々視聴に利用した「スターブライトCLR」をスクリーン素材に採用しているという安心感もある。要は、電動立上げ式スクリーンの機構部分をチェックしようというわけだ。

まずは設置から。台座のサイズは幅約2.5m、奥行き約25cm、高さ約15cm。約35kgという重量はともかく、幅が長く抱えづらいため、クローゼットや倉庫から運び出す、収納するといった作業は2人で進めることになるだろう。とはいえ、そもそも移動困難な巻き上げ式/固定式を思えば、スクリーンとしての可搬性は十分高い。

昇降する部分に隙間が見えるが、実際の製品では解消されているとのこと

昇降する部分に隙間が見えるが、実際の製品では解消されているとのこと

立ち上げはかんたんそのもの、リモコンの「△」ボタンを押して40秒(立ち上げに30秒、停止して安定するまで10秒)ほど待てばOKだ。スクリーンサイズは100インチ/16:9に対応した2,214×1,245mm、これが両サイドからワイヤーで引っ張るタブテンション構造により、ピンと張られた状態になる。

背面には2本の長い鋼材が見える。台座には折り畳まれて格納されており、立ち上げとともに伸びる形だ(シザーバッククロススプリングメカニズム)。2本の鋼材が交差した脚部を持つ折り畳み式テーブルに近い構造、といえばイメージしやすいだろうか。立ち上げ完了後スクリーンに軽く触れてみたが、想像以上にしっかりしており、ゆらゆら揺れ続けることはない。

そう、立ち上げ式には"揺れにくい"メリットがある。一般的に巻き上げ式スクリーンは、下部に金属製バーを重し役でぶら下げることで平面性を確保するが、揺れの排除は難しい。しかし、ケストレルテンションCLRのシザーバッククロススプリングメカニズムは、スクリーン全体を背後から支える構造のため、取材中エアコンの風が当たっても揺らぐことはなかった。

付属のタッチ式リモコン

付属のタッチ式リモコン

スクリーンにはしっかりとテンションがかけられ、平面性が保たれる

スクリーンにはしっかりとテンションがかけられ、平面性が保たれる

スクリーン全体を背後から支える「シザーバッククロススプリングメカニズム」

スクリーン全体を背後から支える「シザーバッククロススプリングメカニズム」

超短焦点プロジェクターには専用スクリーンを用意すべき

今回の取材で実感したのは、超短焦点プロジェクターには専用スクリーンを用意すべきということ。壁投写の状態からケストレルテンションCLRを立ち上げると(動画を参照されたし)、映像の鮮明さ・明るさの違いは歴然、壁紙の模様が映り込むこともなくプロジェクター本来の描画力を引き出せることがわかる。当たり前といえば当たり前の話だが、超短焦点プロジェクターの製品紹介ページには壁投写のイメージ写真ばかりという現状を踏まえると、スクリーンを使うメリットを強調しておきたくなる。

ケストレルテンションCLRの場合、スクリーンに採用された「スターブライトCLR」による画質改善効果も見逃せない。幕面の多層光学構造により外光を吸収、超短焦点プロジェクターからの光を視聴者側へ反射させる働きにより、明るい場所でもハイコントラストな映像を楽しめる。取材に利用したDLPプロジェクターは最大輝度約2000ルーメン、高輝度というほどの機種ではないが、それでも陽の光が射し込む部屋ではっきり明暗差を見てとれた。

これだけの明るさが確保されるのであれば、ホームシアター用途はもちろんのこと、蛍光灯がまぶしい会社の会議室でも使えそう。じゅうぶん運搬可能なサイズ・重量ということもあり、イベント会場や結婚式場、学校の教室や販売店のショールームなど、100インチ級スクリーンの常時設置は難しいものの超短焦点プロジェクターとの組み合わせならば可能、という場所にマッチしそうだ。

幕面に採用された「スターブライトCLR」

幕面に採用された「スターブライトCLR」

プロジェクターの出力は約2000ルーメンと控えめだが、昼間でもこの明るさ

プロジェクターの出力は約2000ルーメンと控えめだが、昼間でもこの明るさ

幕面の特殊な構造ゆえに、上方向から見ると色合いが不自然になるが、横方向からの視聴には強い

幕面の特殊な構造ゆえに、上方向から見ると色合いが不自然になるが、横方向からの視聴には強い

課題があるとすれば、価格だろう。特許技術を使用するためか幕面のスターブライトCLR自体が高額で、それが約40万円というケストレルテンションCLRの価格設定につながっている。エンドユーザとしては、せめて超短焦点プロジェクター本体と同程度にしてほしいところだが...。

ともあれ、立ち上げ式スクリーンは使いやすさの観点からもインテリア性の観点からも、超短焦点プロジェクターとの相性がバツグンにいい。その先駆けとなったケストレルテンションCLRが超短焦点プロジェクター普及のけん引役となるかも、といったら言い過ぎだろうか。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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