長引くコロナ禍、子どもたちといえば...意外に元気です。マスク装着や手洗いの徹底など衛生面での新習慣にも適応し、徐々に日常を取り戻しつつありますが、学習塾など習いごとに関してはオンライン化が急速に進んでいます。
オンライン授業に必要なものといえば、パソコンやタブレットにWi-Fi/インターネット回線、そして意識を集中させるためのヘッドホン。講師の声を聞くだけでなく、質問するためにはマイクも必要です。オンライン授業にかぎらず、最近ではスマートフォン/タブレット用アプリで学習するのはごく普通、ヘッドホンがもう1台あればなにかと重宝します。
とはいえ、大人用は小さな子どもが持て余す大きさと重さ、キッズ向けヘッドホンがほしいところ。オンライン授業に適した手ごろな製品があればベストですが、最終的には子どもに選ばせるにしても、まずは大人目線で機能・品質をチェックし候補を絞り込んでから子どもに提示したほうがいいでしょう。
では、どのようなヘッドホンがキッズ向け・オンライン学習向けに適しているのか、機能別に4項目をピックアップし解説したうえで、その基準を満たす3製品を紹介してみましょう。
使用するデバイスがパソコンにせよタブレットにせよ、オンライン授業用のヘッドホンはワイヤレス(Bluetooth)タイプのほうが好都合です。顔や胸元あたりの煩わしさがないだけでなく、ヘッドホンを装着しているのを忘れて歩き出しノートPCが机から落下する、といったトラブルを防げます。使い始めのペアリングと、ときどき充電する手間はあるものの、ワイヤレスならではの取り回しのよさは代えがたいものです。
世界保健機関(WHO)は、85デシベルを超える音量で8時間、100デシベルを超える音量で15分間を超えてリスニングを続けた場合、耳の機能を損傷する可能性があるとしています。早い話が"難聴"の可能性を警告しているわけで、保護者としては気になります。
その予防に役立つのが音量制限機能で、キッズ向けヘッドホンの多くに採用されています。ただし、音量全体を抑制するタイプの製品では、音の大小関係なしに一律で音量が下げられてしまうため、小さい音が聞き取りづらくなります。
このとき注意すべきは、搭載されている機能が「最大音圧レベルに上限を設ける」ことで、「音量全体の抑制」ではないことです。小さい音・支障のない音量はそのまま出力され、大音量の音だけが抑制されるタイプの製品を選びましょう。
マイク内蔵タイプの製品は、相手の声を聞くだけでなく、自分の声を相手に届けることができます。業務用/テレワーク用ヘッドホンのように、ボイスノイズキャンセリング機能(声以外の音を雑音とみなし低減させる機能)を搭載する製品はないものの、子どもの声をしっかり拾えるかどうかは重要です。
ヘッドホンには耳全体を覆うタイプ(アラウンドイヤー)と耳に載せるタイプ(オンイヤー)の大きく2タイプがあり、キッズ向けはオンイヤーが主流です。傾向としてオンイヤーのほうが軽く、圧迫感/閉塞感も少ないことから、1時間以上続く授業でも疲れにくいと考えられます。ただし、側圧が強すぎると耳が痛くなることも。よりよいフィット感を得るためにも、長さや角度を微調整できる製品のほうがベターです。
JVCのキッズヘッドホンとしては初のワイヤレスモデルです。カラーバリエーションは2色ですが、イエローモデルはマスタードイエローに近い黄色と濃紺、ピンクモデルはラズベリーレッドに近い濃いピンクと淡いピンクの組み合わせで、センスよくまとまっています。キッズモデルにありがちな原色・プラスチッキー感はありません。
7段階で調整可能なヘッドバンドは適度な伸縮性があり、最大まで伸ばせば成人男性でも装着できるほど。側圧はちょうどいいレベルで、イヤーパッドのやわらかさも適度です。スライダーに空いた穴で1〜7の伸縮レベルを確認できるため、長さを変えてもちょうどいいポジションにすぐ戻せる配慮もあります。
ボリューム変更は右側面の±ボタンを利用できます。その間の再生/一時停止ボタンには小さな突起があり、手探りで操作できるところもポイントです。L側のJVCロゴ下には3つの点があり、左右逆に装着しないための目印になります。再生/一時停止ボタンを2秒ほど長押しすれば電源オン/オフできますが、反応がシンプルな電子音でややわかりにくく、子ども自身が操作する場合は慣れが必要です。
音質はまずまず、人間の声の帯域はクリアに聞こえ、マイクもしっかり話者の声を相手に届けてくれます。中高域にかけての情報量はやや乏しく、音楽鑑賞用には物足りなく感じるかもしれませんが、オンライン学習向けには過不足ない印象です。音量制限もしっかり機能し、ボリュームを最大にしても少し音が大きいかな、という程度。安心して子どもに与えられそうです。
■主要スペック
タイプ:Bluetooth/密閉・オンイヤー
カラー:2色(イエロー、ピンク)
音量制限機能:○(最大音量85dB)
重量:約110g
連続再生時間:16時間
ヘッドバンド調整:片側7段階
折り畳み:×
マイク:○
有線接続:×
iCleverのキッズ向けのワイヤレスヘッドホンは、特に"男の子に刺さりそう"な仕掛けがたくさん。深い青とパステルブルーのコントラストもさることながら、折り畳んで小さくできる機構もメカ好きの男の子には支持されるはず。ヘッドバンドはクッションが効いてイヤーパッドもやわらかく、装着感は上々です。
ほかの製品にない特徴は「光る」こと。「+」のボリュームボタンを長押しすると、イヤーカップに埋め込まれているLEDが光り出します。色は赤、青、黄、緑の4色、一定のパターンで点滅する様子はなかなか楽しいもの。親目線ではカワイイものに目が向きがちですが、男の子目線ではカッコイイものが正義ですから、このようなギミックは支持されるはず。なお、装着している本人の目には入らないため、オンライン学習の妨げにはなりません。
付属のケーブルを使うと有線ヘッドホンとして使えることもポイントです。ケーブルを差し込むとBluetoothとLEDの点灯が停止し、完全に有線ヘッドホンして機能します。自動的にマイクもオフになるため、オンライン学習のときはパソコン内蔵マイクを使うなどの対策が必要になりますが、テレビや音楽プレーヤーの音を聞くときなど、ペアリングするほどではない一時利用の場面で重宝しそうです。
リスニングの音質は、キッズ向けヘッドホンとしては納得のレベル。オーディオ観賞用と比べるわけにはいきませんが、特に有線接続時にはメリハリが効いた音を楽しませてくれました。マイクはやや音がこもって聞こえるときがあったものの、きちんと声を拾ってくれます。音量制限は最大音量94dBと数値的にはやや大きめに感じられますが、実際にボリュームを最大にしてももう一段回上げたくなる程度の音量でした。
■主要スペック
タイプ:Bluetooth/密閉・オンイヤー
カラー:2色(ブルーグリーン、ピンク)
音量制限機能:○(最大音量94dB)
重量:約173g
連続再生時間:25時間
ヘッドバンド調整:無段階スライド
折り畳み:○
マイク:○
有線接続:○
JBLのキッズ向けヘッドホン「JR310BT」は、ビビッドな色使いが印象的。デザイナーが意識したのかどうかはわかりませんが、試聴用に借り出したカラー(レッド/ブルー)は某アメコミヒーローのコスチュームを彷彿とさせました。壁を這うその姿に憧れる男の子であれば、このレッド/ブルーを選ぶのでは?
JBLブランドだけあって、音周りはしっかり。ギターのカッティングのような電源オン/オフ時の効果音からして違います。低域に厚みがあるその音は音楽鑑賞にも耐えられるレベルで、ホビー/ゲームなどオンライン学習以外にも使えそうです。マイク性能もまずまず、音がややこもりがちな印象はあるものの、入力音量を上げれば相手にしっかり聞こえます。
特筆すべきは、その折り畳み機構。イヤーカップ部を90度回転させればヘッドバンドと水平になり、それを内側に折り曲げればコンパクトに収納できます。学校などに持ち出す可能性があるデバイスなだけに、収納性の高さは強みになることでしょう。
音量制限機能もしっかり。ボリュームを最大まで上げてもやや大きいかな、くらいの音圧で、長時間リスニングによる難聴も未然に防ぐことができそうです。
■主要スペック
タイプ:Bluetooth/密閉・オンイヤー
カラー:3色(グリーン、ライトブルー/ピンク、レッド/ブルー)
音量制限機能:○(最大音量85dB)
重量:約115g
連続再生時間:30時間
ヘッドバンド調整:片側13段階
折り畳み:○
マイク:○
有線接続:×
IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。