イベントレポート

世界第2位のテレビメーカー「TCL」が、タイ・バンコクにてAP市場向け製品発表会を開催

2023年5月25日、中国を本拠に置く総合家電メーカー・TCL(TCL科技集団)は、タイのバンコクにて、日本を含むアジア・パシフィック市場向けの製品発表会を開催した。

最近は日本国内でもテレビメーカーとして知られるようになったTCLだが、実は、洗濯機やエアコン、冷蔵庫などの家電製品も手がける総合家電メーカーである。なかでも突出しているのはテレビ部門であるが、同社幹部によれば、今後はテレビを筆頭に、これらの家電製品の分野でも積極的にグローバル展開を行っていきたいとのことだった。

世界第2位のテレビメーカーであるTCL。同社の主力製品であるミニLEDテレビは、前年比26.8%の売り上げ増となった

世界第2位のテレビメーカーであるTCL。同社の主力製品であるミニLEDテレビは、前年比26.8%の売り上げ増となった

中国、アメリカ、フランス、サウジアラビアといった国ではシェア2位を獲得

中国、アメリカ、フランス、サウジアラビアといった国ではシェア2位を獲得

アジア・パシフィック地域でも軒並み高いシェアを獲得している。日本では6位という位置に付けているが、2月には4位に上がったというレポートも

アジア・パシフィック地域でも軒並み高いシェアを獲得している。日本では6位という位置に付けているが、2月には4位に上がったというレポートも

将来的には世界No.1ブランドを目指す

将来的には世界No.1ブランドを目指す

そんなTCLのメインとなる商材はやはりテレビである。同社は、全世界のテレビの販売台数で2位に付けるほどのシェアを持っており、国によってはシェア1位を獲得しているところもあるほど。Google TV搭載テレビではグローバルシェア1位の座を獲得しており、まさに今伸び盛りのテレビメーカーと言える。日本市場には2019年から本格参入しており、今年で5年目を迎える。この5年の間に、TCL製テレビの認知は国内でも上がってきており、最近では、量子ドット(QD)やミニLEDといった最新技術を搭載したハイエンド製品を意欲的に投入していることでも注目されている。そのいっぽうで、低価格の普及価格帯モデルも数多く発売しており、こちらは驚くほどの高コスパで人気を得ている。TCLは、こうした全方位型のラインアップ戦略によって、日本市場でも徐々に人気を獲得しており、TCLによれば国内6位のシェアとのことだが、家電量販店などのPOSデータを集計するBCNランキングの報告によれば、2023年1月の台数ベースのテレビ売り上げでは、TCLがパナソニック、ソニーを抜いて4位に浮上。高コスパの低価格モデルを中心に人気を得てきているということだ。

量子ドットとミニLEDの搭載などにより、2000NITSの明るさを実現

量子ドットとミニLEDの搭載などにより、2000NITSの明るさを実現

量子ドット技術による純度の高い色再現

量子ドット技術による純度の高い色再現

さらに、144Hz駆動の高速リフレッシュレートにも対応

さらに、144Hz駆動の高速リフレッシュレートにも対応

2023年の最新モデルの特徴が紹介された(詳細は本分下部参照)

2023年の最新モデルの特徴が紹介された(詳細は本分下部参照)

そんなTCLが今回、自国の中国ではなく、タイのバンコクでアジア・パシフィック市場向けに大々的な製品発表会を開催したのは、同社のこの地域における販売拡大が念頭にある。発表会には、中国や現地のタイはもちろん、日本、ベトナム、香港、オーストラリアなどから、数多くの販売店スタッフや、記者、インフルエンサーなどが招かれており、メイン商材であるテレビの最新モデルをはじめ、洗濯機、冷蔵庫、エアコンといった家電製品についても幅広く展示。TCLの製品ラインアップを広くアピールする場となっていた。

TCLのメイン商材である大画面テレビのラインアップ。液晶テレビの中でも、量子ドット技術やミニLEDといった最新技術を先駆けて取り入れ、高性能なハイエンドモデルに強みを見せる

TCLのメイン商材である大画面テレビのラインアップ。液晶テレビの中でも、量子ドット技術やミニLEDといった最新技術を先駆けて取り入れ、高性能なハイエンドモデルに強みを見せる

総合家電メーカーであるTCLが展開する冷蔵庫の最新モデル。日本国内でも一部モデルをAmazon経由で販売中だ

総合家電メーカーであるTCLが展開する冷蔵庫の最新モデル。日本国内でも一部モデルをAmazon経由で販売中だ

アイスディスペンサーが前面に搭載された冷蔵庫。日本ではなかなか見かけない仕様だ

アイスディスペンサーが前面に搭載された冷蔵庫。日本ではなかなか見かけない仕様だ

洗濯機も幅広く展開。低価格戦略でグローバルに展開しているという

洗濯機も幅広く展開。低価格戦略でグローバルに展開しているという

国内では見かけない上下2段の洗濯機。いっぽうが洗濯乾燥用で、もういっぽうが洗濯専用という仕様。洗濯物の種類別に別々に洗うことを想定したものだという

国内では見かけない上下2段の洗濯機。いっぽうが洗濯乾燥用で、もういっぽうが洗濯専用という仕様。洗濯物の種類別に別々に洗うことを想定したものだという

なんとTCLはエアコンも製造している。こちらも低価格のシンプルモデルを中心にグローバル展開している

なんとTCLはエアコンも製造している。こちらも低価格のシンプルモデルを中心にグローバル展開している

そんな幅広いラインアップの中でも、やはり気になるのは、テレビの新モデルだろう。日本国内ではすでに5月18日より順次発売が開始されているが、会場では、今話題の量子ドットやミニLEDを搭載した最新モデルが一挙展示されており、来場者の注目を集めていた。これらの最新技術を搭載したハイエンドモデルについては、国内メーカーでも、ソニーやTVS REGZAなどを中心に、新モデルの投入が相次いでいるが、この分野ではTCLがむしろ先んじて市場に製品を展開してきたという経緯がある。ある意味、この発表会の場で紹介されたTCLの最新モデルを見ることで、今後の世界のテレビの潮流が理解できると言っても過言ではない。以降、発表会場で展示されていた最新モデルの詳細をお伝えしていこう。

C845シリーズ

量子ドットとミニLEDを組み合わせた最新パネルを採用したフラッグシップモデル「C845」シリーズ。144Hzの高速リフレッシュレートにも対応し、映像鑑賞からゲームプレイまで、さまざまな用途にフル対応する

量子ドットとミニLEDを組み合わせた最新パネルを採用したフラッグシップモデル「C845」シリーズ。144Hzの高速リフレッシュレートにも対応し、映像鑑賞からゲームプレイまで、さまざまな用途にフル対応する。なお当モデルはチューナーレス仕様となる

TCLの4Kテレビ製品ラインアップの中ではフラッグシップに当たるモデル。ただし、本モデルはチューナーレス仕様となっており、テレビ番組を視聴するには別途チューナーを搭載したレコーダーなどが必要になる。

むしろ、本モデルのメインターゲットは、テレビ視聴ではなく、大画面でゲームをプレイしたいゲームユーザーだ。基本的なスペックとしては、量子ドットやミニLEDといった最新技術を備え、映像エンジンには同社開発の「Algo Engine Max II」を搭載する。しかし、本モデルでもっとも特徴的なのは、144Hzのリフレッシュレートを実現した「4K 144Hz VRR」の搭載だろう。通常「倍速」と呼ばれる120Hzを超える高リフレッシュレートを実現したことで、「PS5」などの最新ゲーム機はもちろん、パソコンと接続して、大画面のゲーミングディスプレイとしても利用することが可能だ。このほか、入力機器からのゲームプレイ映像情報を検出し、自動的に0.8msという低遅延のゲームモードに切り替える「ゲームマスター」機能や、パソコンと接続した際にグラフィックを最適化する「AMD FreeSync Premium Proテクノロジー」にも対応するなど、本格的なゲーミング機能が満載だ。

もちろん、HDRについても、「HLG」「HDR10+」「Dolby Vision IQ」の各規格に対応。サウンド面では、立体音響技術「Dolby Atmos」に対応するほか、「DTS-HD」「DTS Virtual: X」のサラウンドにも対応するなど、映像コンテンツを存分に楽しめる機能はフル搭載。OSに「Google TV」を採用しているので、最新の映像配信サービスなども手軽に楽しむことができる。

画面サイズは、85V/75V/65V/55V型を用意。このうち、日本国内では、55V型と65V型の2モデルが発売される。気になる販売価格だが、55V型の「55C845」が181,652円〜、65V型の「65C845」が298,000円〜(いずれも2023年5月30日時点の価格.com最安価格)となっている。

C745シリーズ

量子ドットパネルを採用し、144Hzの高速駆動に対応する「C745」シリーズ。現時点では日本での発売は予定されていない

量子ドットパネルを採用し、144Hzの高速駆動に対応する「C745」シリーズ。現時点では日本での発売は予定されていない

普及価格帯の4Kテレビシリーズで、量子ドット技術を採用し、色純度の高い映像を再現できる。映像エンジンには同社開発の「Algo Engine II」を搭載し、高純度かつ高輝度の自然な色合いを再現する。C845シリーズと同様に、144Hzのリフレッシュレートを実現した「4K 144Hz VRR」に対応する。そのほか、HDRやサウンド機能などは、C845シリーズと同等。画面サイズは、85V/75V/65V/55V型を用意。なお、本モデルは日本国内では未発売となる。

C645シリーズ

量子ドットパネルを採用する普及価格帯モデル「C645」シリーズ。120Hz相当のリフレッシュレートを実現するゲームマスター機能に対応する

量子ドットパネルを採用する普及価格帯モデル「C645」シリーズ。120Hz相当のリフレッシュレートを実現するゲーミングアクセラレーター機能を搭載する

普及価格帯の4Kテレビシリーズで、量子ドット技術を採用し、色純度の高い映像を再現できるのが特徴。映像エンジンには同社開発の「Algo Engine II」を搭載し、高純度かつ高輝度の自然な色合いを再現する。リフレッシュレートは通常は60Hzだが、ゲームプレイ時には応答速度とリフレッシュレートを最適化する「DLG 120Hz 機能」を利用可能(50V/43Vは非対応)。滑らかで遅延が低減された映像でゲームを楽しめる。TVチューナーは2基内蔵。HDRはHLG/HDR10/Dolby Visionに対応する。

画面サイズは、85V(日本未発売)/75V/65V/55V/50V/43Vを用意。販売価格だが、43V型の「43C645」が73,212円〜、50V型の「50C645」が82,386円〜、55V型の「55C645」が91,561円〜、65V型の「65C645」108,258円〜、75V型の「75C645」が154,130円〜(いずれも2023年5月30日時点の価格.com最安価格)となっており、画面サイズに対してかなりリーズナブルな価格設定となっている。

P745シリーズ

ラインアップのボトムを担う普及価格帯モデル「P745」シリーズ。120Hz相当のリフレッシュレートを実現するゲームマスター機能に対応する

ラインアップのボトムを担う普及価格帯モデル「P745」シリーズ。120Hz相当のリフレッシュレートを実現するゲーミングアクセラレーター機能を搭載する

今回発表された4Kテレビ・ラインアップの中では、ボトムを担うエントリーモデル。上位モデルのような量子ドット技術やミニLEDなどの最新技術は搭載しないが、映像エンジンには同社開発の「Algo Engine II」を搭載し、高コントラストかつ滑らかな映像を再現する。TVチューナーは2基内蔵。そのほかのHDRや「DLG 120Hz 機能」(50V/43Vは非対応)などは、C645シリーズと同等となる。

画面サイズは、85V(日本未発売)/75V/65V/55V/50V/43V型を用意。販売価格だが、43V型の「43P745」が64,038円〜、50V型の「50P745」が73,212円〜、55V型の「55P745」が82,386円〜、65V型の「65P745」99,083円〜、75V型の「75P745」が135,718円〜(いずれも2023年5月30日時点の価格.com最安価格)となっており、C645シリーズ以上の高コストパフォーマンスとなっている。

TCLの幹部に取材! 日本市場における今後の展開を聞いた

なお、製品発表会直後に、発表会でも登壇したTCLの幹部3名に各国の記者たちと合同取材する機会が得られた。今後の同社の日本での展開などについてインタビューしたが、そのやり取りの一部を下記に紹介しよう。

--日本の経済状況は今決してよいとは言えない中で、TCLが日本市場において製品を販売拡大していくために、どのようなことを考えていますか?

TCL:直近の2年間で見れば、確かに日本の市場のボリュームは下がっているが、世界全体でも同じようなことが言える。ただ、こうした状況の中で、市場を盛り上げていくのも、私たちの責任のひとつであると考えている。
対策としては、やはりプロダクトの魅力がいちばん重要になるだろうし、その点についてはいちばん力を入れて頑張っていきたい。私たちの製品がベストになるように持っていく必要があると感じている。
日本市場で見ると、量子ドット(QD)、ミニLED、144Hz駆動などの機能を搭載したハイエンドモデルのほうはある程度いい状態が見えてきている。とはいえ、まだ経済状況がよいとは言えない状況もあるので、より高コスパの製品を投入して、多くの消費者のニーズに応えることも重要だと感じている。

TCL グローバルマーケティングセンター ゼネラルマネージャーのEileen.Sun氏

TCL グローバルマーケティングセンター ゼネラルマネージャーのEileen.Sun氏

--2023年以降、日本市場でどのような製品にフォーカスを当てて展開していくつもりでしょうか?

TCL:やはりメインはテレビです。量子ドット(QD)、ミニLED、144Hz駆動などの機能を搭載したハイエンドモデルを中心に訴求していきます。また今年8月には、最大クラスの98インチの大画面テレビも投入予定となっています。また、昨年後半から、冷蔵庫を発売し、今は主にAmazonで販売していますが、今後はこうした冷蔵庫や洗濯機などの家電製品も徐々に投入し、また販売チャネルも拡大していきたいと考えています。

TCL海外事業グループ(OBG)ゼネラルマネージャーのBiao.J氏

TCL海外事業グループ(OBG)ゼネラルマネージャーのBiao.J氏

鎌田 剛(編集部)

鎌田 剛(編集部)

価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。

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