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真逆のテレビがなぜ売れる!? 型落ち4万円以下の小型液晶と最新15万円以上の大型液晶が人気のワケ

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長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。

第29回は、年末年始の時期に多く購入される薄型テレビの状況を振り返りつつ、テレビの最新トレンドについて分析してみた。

ここ数年やや停滞気味の薄型テレビ市場

【図1】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける閲覧者推移(過去2年間)

【図1】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける閲覧者推移(過去2年間)

液晶テレビや有機ELテレビといった薄型テレビは、今も家電の王様と言うべき人気家電のジャンルであるが、ここ数年はやや人気が低迷気味だ。図1は、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーの過去2年間における閲覧者推移を示したものだが、この2年を見ても、閲覧者数は横ばいかやや減少傾向にあることがわかる。2020年に始まったコロナ禍により、人々の在宅時間が増えたことで、一時期は買い換えが進んだ薄型テレビだったが、その需要が一巡すると注目度も下落傾向に。ここ数年、めぼしい技術的な進化がなかったことや、物価高による製品価格の上昇などもあって、薄型テレビの需要は停滞期に入っている。

そんな中ではあるが、12月〜1月にかけての年末年始には、過去2年ともアクセスのピークが来ている。やはり、金銭的にも時間的にも余裕のある年末年始の時期に、比較的高額な薄型テレビを検討しつつ購入する人が多いようだ。しかし、今シーズンに関して見ると、過去2年ほどの大きなピークが来ておらず、薄型テレビの需要後退を大きく印象づける形となっている。

人気は、パーソナルテレビとしても使える4万円以下の小型液晶と、15万円以上のプレミアム大型液晶に二分

【図2】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける人気トップ5製品の閲覧者数推移(過去3か月)

【図2】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける人気トップ5製品の閲覧者数推移(過去3か月)

【図3】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける人気トップ5製品の最安価格推移(過去3か月)

【図3】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける人気トップ5製品の最安価格推移(過去3か月)

では、この年末年始には、どんなテレビが売れていたのだろうか。図2は、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける人気トップ5製品の閲覧者数推移を示したものだが、いちばん人気は旧東芝の「REGZA 40V34」、続いてパナソニック「VIERA TH-55LX950」、TVS REGZA「REGZA 55Z870M」となり、4位が旧東芝の「REGZA 32V34」、5位がハイセンスの「65U8K」という結果になっている。画面サイズも性能もバラバラだが、これら5製品の最安価格推移を示した図3を見るとわかるように、旧東芝の「REGZA 40V34」「REGZA 32V34」がおよそ4万円以下、それ以外はおよそ15万円以上と、価格帯的には大きく2つに分けられる。片方は低価格で小型の液晶テレビ、もう片方は高品質・高機能な液晶テレビという分類だ。

このように、現在の薄型テレビの人気トレンドは、書斎や子ども部屋、あるいはひとり暮らしの部屋などに最適な安価で小型(32〜40V型程度)の液晶テレビと、高画質で高機能な、55〜65V型程度の大型液晶テレビ(いわゆるプレミアム液晶テレビ)の2つに大きく分けられている。ただし前者の選択肢は今やかなり少なくなっており、価格.comで人気の上記2製品に関しても、2020年に発売された、やや古めのモデルとなっている。

【図4】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品の画面サイズ割合(2023年12月)

【図4】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品の画面サイズ割合(2023年12月)

ここで図4を見てもらいたい。これは、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品の画面サイズの割合を示したものだが、やはり人気の中心は「55〜64インチ」「65〜74インチ」「50〜54インチ」の3つのサイズで、この3つを合わせると、全体の6割近くを占める。いっぽう、小型サイズの「32〜42インチ」は全体の約15.5%と少ない。このように、売れ筋製品のボリュームを見ると、圧倒的に55V型、65V型といった大型テレビが大きいのだが、さほど大きなボリュームとはなっていない32V型、40V型といった画面サイズのモデルが今も底堅い人気を集めている。

この背景には、リビングルームなどではなく、個室に設置するためのパーソナルテレビ需要が底堅く存在していることがある。こうした小型テレビの使用用途を考えると、必ずしもテレビ放送を試聴するだけでなく、Netflixなどのネット配信動画を見たり、ゲームやPCのディスプレイとして使うケースも多い。各メーカーは、利益率が低いこれらの小型テレビの生産にはあまり積極的ではないが、こうした用途に使用するパーソナルテレビの需要は、今もまだ着実に存在しているのだ。

「液晶」vs「有機EL」では、液晶の圧勝。最新技術を搭載したプレミアム液晶が人気の中心に

【図5】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品のパネル種別の割合(2023年12月)

【図5】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品のパネル種別の割合(2023年12月)

ちなみに、価格.comの売れ筋製品における液晶テレビ有機ELテレビの割合だが、図5に示したとおり、およそ85:15となっている。液晶テレビよりも後発で、画質や応答速度にすぐれる有機ELテレビだが、その普及度は以前に比べても今ひとつ高まっていないようだ。その理由として、一時期は、有機ELテレビの価格面での問題が指摘されていたが、今やその価格差は同程度のスペックを持つ液晶テレビと比べても数万円以内に収まっていることが多く、さほどの障壁とは言えなくなっている。では、なぜいつまで経っても、液晶テレビから有機ELテレビへの移行が進まないかと言えば、液晶テレビ自体の技術進化が大きく、有機ELテレビのメリットが感じられにくくなっているからだ。

これまで液晶テレビが画質面で弱点と言われてきた「白浮き」「低コントラスト」「残像感」といった問題は、液晶パネルの進化や映像エンジンの進化によって、かなり解消されており、プレミアム液晶テレビではあまり感じないレベルになっている。いっぽうの有機ELテレビは、液晶テレビに比べると画面が暗めであることが多く、「焼き付き」の問題も指摘されるなど、トータルバランスで見た場合に、価格差以上のメリットを感じにくくなっているのだ。もちろん、有機ELテレビの画質面での優位性は揺るがないが、最近では「Mini LED」や「量子ドット技術」といった最新技術が液晶テレビ側にどんどん搭載されてきており、画質面でも有機ELテレビとの差はあまりなくなってきた。このため、画質重視のユーザーも、これらの技術を搭載したプレミアム液晶テレビのほうに関心を寄せつつあるのが現状と言えそうだ。

コレ買っときゃ間違いない! 価格.com編集長が今注目する薄型テレビ7選

※最安価格とユーザー評価は、いずれも2024年1月9日 時点のものです。

TVS REGZA「REGZA 55Z870M」

REGZA 55Z870M

価格.com最安価格:164,000円
発売日:2023年4月21日発売
ユーザー満足度・評価:★5.00(7人)
種類(画面サイズ):液晶テレビ(55V型)

TVS REGZAの液晶テレビラインアップで「Z870M」シリーズの55V型モデル。最新技術である「Mini LED」と「量子ドット」技術を用いた新開発パネルを採用。さらに「超解像」で知られる映像エンジンの最新版「レグザエンジンZR」を搭載することで、色鮮やかで明るく細やかな映像を実現している。サウンド的にも、計7個のスピーカーにより、視聴者を包み込むようなサウンドを実現する「重低音立体音響システムZ」を搭載。立体音響「Dolby Atmos」にも対応する。また、レグザシリーズではおなじみの、外付けUSB HDDを接続することで「全録」に対応する「タイムシフトマシン」機能も搭載。全方位でスキのない性能を持ちながら、16万円台で購入できるのは、相当にコスパが高いと言える。

TVS REGZA「REGZA 55X8900L」

REGZA 55X8900L

価格.com最安価格:151,000円
発売日:2022年7月下旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.50(22人)
種類(画面サイズ):有機ELテレビ(55V型)

同じくTVS REGZAのモデルだが、こちらは有機ELテレビの、上から2つめのライン「X8900L」シリーズの55V型モデル。2022年発売だが現行のスタンダードモデルだ。自社開発の高冷却インナープレートを採用する「レグザ専用高コントラスト有機ELパネル」を搭載。有機ELパネルの温度上昇を抑えることで、ピーク輝度を明るくでき、有機ELパネルの弱点と言われる明るさの面を補強した。映像エンジンには「レグザエンジンZRII」を採用し、有機ELならではの細やかな色再現を可能にする。サウンド面では、計6個のスピーカーで臨場感豊かなサウンドを実現する「重低音立体音響システムXP」を採用。立体音響「Dolby Atmos」にも対応する。「タイムシフトマシン」は搭載しないが、外付けUSB HDDを使った裏番組録画(新4K衛星放送は1チャンネル、そのほかは2チャンネル)に対応する。2022年の発売だが、現行の高性能な有機ELテレビが15万円台から購入できるのは、こちらもコスパが高い。

ソニー「BRAVIA XRJ-55X90K」

BRAVIA XRJ-55X90K

価格.com最安価格:158,877円
発売日:2022年8月6日発売
ユーザー満足度・評価:★4.57(8人)
種類(画面サイズ):液晶テレビ(55V型)

2022年発売のソニーのプレミアム液晶テレビ。ブラビアの液晶テレビのラインアップでは上から2つめの「X90」シリーズで、価格.com上でも人気が続いているモデルである。直下型LEDバックライトと、ソニーが誇る認知特性プロセッサー「XR」を搭載し、高コントラストでありながらも、人が目で感じる自然な美しさを実現する。サウンド面では、計4つのスピーカーが臨場感豊かなサウンドを実現する「Acoustic Multi-Audio」を搭載。立体音響「Dolby Atmos」にも対応する。録画機能では、3チューナーを搭載し、放送種別を問わず2つの裏番組を同時録画できる。また、同じソニーグループのSIEが販売するゲーム機「PS5」に最適化された連携機能も搭載し、ゲーム機との親和性も高い。

ソニー「BRAVIA XRJ-55A80L」

BRAVIA XRJ-55A80L

価格.com最安価格:213,898円
発売日:2022年4月22日発売
ユーザー満足度・評価:★4.38(8人)
種類(画面サイズ):有機ELテレビ(55V型)

ソニーの有機ELテレビのラインアップでは上から2つめの「A80」シリーズの最新モデル。2023年発売の最上位モデル「A95K」シリーズのように、量子ドット技術を使った「QD-OLED」を搭載してはいないものの、価格が安めで21万円台から購入できるのが魅力。本機では従来機(「A80K」シリーズ)よりもピーク輝度が10%上がり、より明るくなった。また、認知特性プロセッサー「XR」も2023年の最新版となり、ノイズが少なく、より精細感の強い画質を実現した。サウンド面では、画面自体をスピーカーとして震わせる同社独自の音響技術「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」を採用。映像と音の一体感がより高められている。立体音響「Dolby Atmos」にも対応する。録画機能では、3チューナーを搭載し、放送種別を問わず2つの裏番組を同時録画可能。また、同じソニーグループのSIEが販売するゲーム機「PS5」に最適化された連携機能も搭載する。

パナソニック「VIERA TH-55LX950」

VIERA TH-55LX950

価格.com最安価格:145,800円
発売日:2022年5月27日発売
ユーザー満足度・評価:★4.69(16人)
種類(画面サイズ):液晶テレビ(55V型)

パナソニックが2022年に発売したプレミアム液晶テレビの最上位モデル。すでに後継モデル「VIERA TH-55MX950」が発売されているが、4万円以上の価格差があり、14万台で購入できる本機はかなりコスパが高い。独自構造・自社組み立てのプレミアム液晶ディスプレイを搭載し、かなり輝度の高い、明るい画質が得られるのが特徴。これに加え、AIによるディープラーニングを活用して映像シーンを自動認識する「オートAI画質」により、自動で最適な画質に調整してくれる。サウンド面では、上向きに設置された2基のイネーブルドスピーカーを含む計4つのスピーカーによる立体音響を実現。もちろん立体音響「Dolby Atmos」にも対応する。また、録画機能では、新4K衛星放送は1チャンネル、そのほかは2チャンネルの裏番組録画に対応する。

ハイセンス「65U8K」

65U8K

価格.com最安価格:147,100円
発売日:2023年5月中旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.84(7人)
種類(画面サイズ):液晶テレビ(65V型)

ハイセンスが2023年に発売したプレミアム液晶テレビの65V型モデル。15万円前後の購入しやすい実売価格を実現しながらも、最新技術である「Mini LED」と「量子ドット」技術の両方を搭載し、価格に見合わない高画質を実現している。その実力が広く認知され、「価格.comプロダクトアワード2023」の映像部門で大賞を受賞した。映像エンジンには、TVS REGZA社と共同開発した「HI-VIEWエンジン」を搭載。上記「Mini LED」と「量子ドット」技術を生かしたパネルの能力を最大限に生かし、テレビ放送もネット配信動画も、ソースを問わず美しく表現する。サウンド面では、立体音響「Dolby Atmos」に対応した3スピーカーシステムを搭載。録画機能では、新4K衛星放送は1チャンネル、そのほかは2チャンネルの裏番組録画に対応するほか、4K/120p入力で遅延時間約0.83msを実現した「ゲームモードPro」も搭載する。

TVS REGZA「REGZA 32V34」

REGZA 32V34

30,690円(価格.com最安価格:2024年1月9日時点)
2020年9月18日発売
ユーザー満足度・評価:★4.23(159人)
種類(画面サイズ):液晶テレビ(32V型)

2020年の発売以降、根強い人気で売れ続けている32V型の液晶テレビ。解像度は1366×768でフルHD未満ではあるが、32V型という画面サイズを考えると妥当なところ。映像エンジン「レグザエンジン Power Drive」を搭載し、さまざまなソースの映像を美しく描き出す。各種のネット動画配信サービスに対応しており、リモコンのダイレクトボタンでアクセス可能。外付けUSB HDDを使った裏番組録画にも対応する。低遅延のゲームモードも搭載しており、ゲーム機のディスプレイとして活用されるケースも多い。この内容で3万円強で購入できるコスパのよさは、2024年になった今でも他の追随を許さないところだ。

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鎌田 剛(編集部)
Writer
鎌田 剛(編集部)
1996年にソフトバンクにて複数のパソコン情報誌の編集・立ち上げに携わった後、2002年にカカクコム入社。2006年「価格.comマガジン」を創刊。以降、編集長としてメディア運営に携わる。日経MJにてコラム連載、ラジオ出演なども幅広く行う。家電製品アドバイザー資格保持者。
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北島圭介(編集部)
Editor
北島圭介(編集部)
出版社で10数年、編集者として経験を積み、2022年にカカクコム入社。家電製品から文房具など、さまざまな商品を検証するモノ雑誌の編集経験を生かし、価格.comマガジンで生活家電を中心に気になる製品をレビューしている。
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