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Dolby Atmos対応の高コスパサウンドバーがよりハイファイに進化!デノン「DHT-S218」

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デノンから、Dolby Atmos対応サウンドバー「DHT-S218」が発表された。2024年5月17日発売で、市場想定価格は36,300円前後(税込)。サウンドバーを真剣に検討されている方ならばピンと来るかもしれないが、エントリーモデルの定番と言える「DHT-S217」の後継モデルだ。

ワンバータイプのシンプルなサウンドバー「DHT-S218」

ワンバータイプのシンプルなサウンドバー「DHT-S218」

音質のチューニングで価値を高めたワンバータイプサウンドバー

価格.comの「ホームシアター スピーカー」カテゴリーを見ると、「人気売れ筋ランキング」の1位は「DHT-S217」(2024年4月25日時点)。バリバリの現役人気モデルが早くもリニューアルされる格好だ。進化のポイントは大きく3つ。

●音質チューニングのさらなるブラッシュアップ
●Bluetooth LE Audio(LC3コーデック)対応
●HDMI入力のVRR、ALLM対応

上記が主な変更点ということは、スピーカーやアンプなど、主要な設計部分については従来モデルとほぼ同じということ。地味な改良に見えるかもしれないが、結果的に従来モデル「DHT-S217」との差で何より大きいと感じたのは、1つ目の音質チューニング部分だ。ここが強化されたことで、Dolby Atmos対応のサウンドバーとして大きく価値が上がったと感じたのだ。

スペックシート上は「DHT-S217」と「DHT-S218」の差はBluetooth LE AudioとVRR、ALLM対応くらいなので、価格のこなれた「DHT-S217」がお買い得なのでは……と思うかもしれない。しかし、「DHT-S217」を選ぶ人は、スピーカーとしての“素の音質のよさ”を求めているものだと思う。そうであるならば、これから選ぶべきは「DHT-S218」だ。試聴のインプレッションは最後に紹介することにして、製品の詳細を見ていこう。

2024年4月25日時点の価格.com「ホームシアター スピーカー」カテゴリーの「人気売れ筋ランキング」。従来モデルである「DHT-S217」が1位であり、価格.com最安価格は22,577円。スペックがほぼ同じならお買い得のように見えるが……

2024年4月25日時点の価格.com「ホームシアター スピーカー」カテゴリー「人気売れ筋ランキング」。従来モデルである「DHT-S217」が1位であり、最安価格は22,577円。スペックがほぼ同じならお買い得のように見えるが……

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2022/04/28 11:00

ロスレスのDolby Atmos対応、HDMI入力装備など必要十分の基本スペック

「DHT-S218」のスペックは「DHT-S217」とほぼ同じ。その内容を確認しておくと、サブウーハーなどがセットにならないワンバータイプのシンプルなサウンドバー。幅890mmの比較的コンパクトなキャビネットに、6スピーカー構成の3ウェイシステムが詰め込まれている。音を上方向に放射するイネーブルドスピーカーは使われていないものの、ロスレス(Dolby TrueHD)を含むDolby Atmosのデコードに対応。HDMIはeARC/ARC専用端子だけでなく入力も1系統装備。エントリーモデルでもこうした充実したスペックを揃えていることもあり、従来モデルから人気を集めていた。

25mmツイーターと45×90mmミッドレンジによる2ウェイスピーカーをフロントに、底面に75mmサブウーハーを使う3ウェイ構成。本体の左右にバスレフポートが設けられている

25mmツイーターと45×90mmミッドレンジによる2ウェイスピーカーをフロントに、底面に75mmサブウーハーを使う3ウェイ構成。本体の左右にバスレフポートが設けられている

HDMIは入出力を1系統ずつ装備。VRR/ALLMに対応して、ゲームユーザーの要望にも応えるスペック拡充が行われた。いちばん右はサブウーハー用のアナログ音声出力(プリアウト)。どうしても低音が物足りないという人は、アクティブサブウーハーを追加できる

HDMIは入出力を1系統ずつ装備。VRR/ALLMに対応して、ゲームユーザーの要望にも応えるスペック拡充が行われた。いちばん右はサブウーハー用のアナログ音声出力(プリアウト)。どうしても低音が物足りないという人は、アクティブサブウーハーを追加できる

あえてサラウンド効果をかけない「Pure」モード

なかでも特徴的なのは、サウンドバーには珍しい「Pure」モード。多くのサウンドバーでは2chの音楽を再生する場合でも何らかのサラウンド効果が追加されてしまうもの。デノンでは“ピュア”な音源再生を目指して、サラウンド効果をかけない「Pure」モードを搭載したのだ。

これはエフェクトをかけなくともよい音のするスピーカーである、というデノンの自信の表れでもあり、その結果が上記「人気売れ筋ランキング」のとおりということだろう。

こちらが「Pure」モードの信号経路イメージ。DSP(デジタルシグナルプロセッサー)内のサウンドモード、バーチャル(疑似)サラウンド回路を通らないため、より“ピュア”な再生ができるというものだ

こちらが「Pure」モードの信号経路イメージ。DSP(デジタルシグナルプロセッサー)内のサウンドモード、バーチャル(疑似)サラウンド回路を通らないため、より“ピュア”な再生ができるというものだ

「サウンドデザイン」を磨き上げた「DHT-S218」

ここまでは従来モデルの特徴をほぼそのまま継承したもの。音質チューニングをブラッシュアップしたとはどのようなことなのか。

担当者によれば、「DHT-S218」のコンセプトは「奏(かなで)」。音楽を奏でるためのサウンドバーであることを訴求している。そのために重視するのは3つの「デザイン」だ。

・「アコースティックデザイン」
・「エレクトロニクスデザイン」
・「サウンドデザイン」
これらの3つを揃えることで、サウンドバーで音楽を奏でる――映画だけでなく音楽も再生し、鑑賞できるレベルに高める――ことができるというのだ。

そもそも、オリジナルモデルと言える「DHT-S216」が発売された2019年、サウンドバー≒映画再生のためのスピーカーという既成概念を壊すことを目指していた。そこで導入されたのが、原音をストレートに再生する「Pure」モードだった。音楽を楽しめるサウンドバーに仕上げるため、まず“素の音”がよいサウンドバーを作ろうと製品企画が立ち上がり、ここでひとまず完成されたのが「アコースティックデザイン」。

電源部やアンプ、新しいSoCの採用で音質を磨いたのが2022年に発売された「DHT-S217」。ここでロスレスのDolby Atmosデコードにも対応し、「エレクトロニクスデザイン」を完成させた。この時点でスキのない仕様に仕上がったかに見えた。

「DHT-S217」で採用されたのが、高級AVアンプにも採用例がある高性能SoC。これは上位モデル「DHT-S517」ベースのプラットフォームであり、余裕のある信号処理ができるという。「DHT-S218」にもそのまま継承されている

「DHT-S217」で採用されたのが、高級AVアンプにも採用例がある高性能SoC。これは上位モデル「DHT-S517」ベースのプラットフォームであり、余裕のある信号処理ができるという。「DHT-S218」にもそのまま継承されている

しかし、「DHT-S218」ではさらに音質を突き詰めた。すでに完成された「アコースティックデザイン」と「エレクトロニクスデザイン」を前提に、音質のブラッシュアップに注力したのだ。そうして完成させたのが「サウンドデザイン」。具体的には、「Pure」モードのさらなるチューニングだけでなく、Dolby Atmos再生に必要な「Music」「Movie」モードの検討も重ねたそうだ。

「DHT-S218」には4種のサウンドモードが用意されている。5.1chやDolby Atmosなどのサラウンドを再生する場合には「MOVIE」か「MUSIC」を選ぶと、サラウンド感のある再生が行われる。「PURE」はサラウンド効果をかけないモードのため、主にモノラルやステレオ(2ch)の音楽、映画で使うことになる

「DHT-S218」には4種のサウンドモードが用意されている。5.1chやDolby Atmosなどのサラウンドを再生する場合には「MOVIE」か「MUSIC」を選ぶと、サラウンド感のある再生が行われる。「PURE」はサラウンド効果をかけないモードのため、主にモノラルやステレオ(2ch)の音楽、映画で使うことになる

この「サウンドデザイン」については、製品発表会で「サウンドマスター」山内慎一氏がコメントをしてくれた。サウンドマスターとはすべてのデノン製品の音質を最終決定する人物のこと。ひとりのサウンドマスターが高級アンプやプレーヤーと同じように「DHT-S218」の音質をチューニングし、音質を決定しているのだ。

「DHT-S218」の音質を徹底的にチューニングした、デノンの「サウンドマスター」山内慎一氏

「DHT-S218」の音質を徹底的にチューニングした、サウンドマスター山内慎一氏

いわく、ある程度ハードウェアが作り込まれたうえで、ソフトウェア的な作り込みを徹底したのが「DHT-S218」。ベースが固まっているので、チューニングはかなりやりやすいのだという。特別なパーツ交換がされているわけではないが、すでにできあがった製品に手を入れていくという意味ではプリメインアンプ「PMA-SX-1 LIMITED」やCDプレーヤー「DCD-SX1 LIMITED」の開発に似た形と言える。従来モデルと比べると、緻密な表現や、自然な音の広がりを目指し、より聴きやすくなったのではないかとのこと。

ただし、特性やイコライザーカーブを大胆に変えたわけではないそうだ。改めて「DHT-S217」を聴いて、今だからこそ粗めに感じた部分をブラッシュアップしていった。1度完成したものを冷静に見たからこそわかることがあるし、ここ2年の間にノウハウが蓄積されたこともあるそうだ。

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もちろん従来モデルから変更されたスペックもある

上述のとおり、機能面ではBluetoothの新規格LE Audioに対応したこと、HDMI入力がVRR、ALLMに対応したことが新しい。

Bluetooth LE Audioに対応したということは、Bluetooth接続時のコーデックとして「LC3」が使えるようになったということ。「LC3」コーデックを使うにはスマートフォンなどの送信側も同じくLE Audioに対応している必要があるが、標準コーデックの「SBC」よりも高音質が期待できるコーデックではある。まだまだ対応スマートフォンなどは少数だが、これからの拡充が期待されるところ。今から対応しておけば、将来的には役に立ちそうだ。

VRR、ALLMに対応したことで、ゲームユーザーへも訴求する

VRR、ALLMに対応したことで、ゲームユーザーへも訴求する

グリル(ネット)は材質を変更し、音の透過率をアップしているそうだ

グリル(ネット)は材質を変更し、音の透過率をアップしているそうだ

「Pure」だけでなく「Music」や「Movie」モードもハイファイ度を増している!

同じようなグレーだが、若干色の異なる「DHT-S217」(上)と「DHT-S218」(下)。サイドのバスレフポートも、グレーから青みがかった色に変更されている

同じようなグレーだが、若干色の異なる「DHT-S217」(上)と「DHT-S218」(下)。サイドのバスレフポートも、グレーから青みがかった色に変更されている

最後に、発表会で短い時間だが実機の音質に触れられたので、そのインプレッションをお伝えしよう。

まず再生されたのは従来モデルである「DHT-S217」。サラウンド処理をバイパスする「Pure」モードでテイラー・スウィフトのCDから「We Are Never Ever Getting Back Together」を聴く。ボーカルにややくぐもった感じはあるが、タイトなキックドラムには聴くべきものがあると感じさせる、さすがのクオリティだ。

いっぽうの「DHT-S218」では、先の不満だったくぐもった感じがなくなり、ギターの音もきらびやかに響く。全体の見通しがよい、一段上のクオリティだった。この日はあくまでARC(テレビ)経由の音を聴いていたため、「DHT-S217」で感じたくぐもった感じはARCを使っているからかも、とはじめは思っていた。ところが、「DHT-S218」ではそんな印象がすっかり変わってしまったのだ。

ここでさらに重要だと思ったのは、「Music」モードで聴いたときのクオリティ感の落差が少ないこと。「Music」モードで同曲を再生するとベースが強調され、少し音場が左右に広がることでより聴きやすくなる印象がある。それでいて通りのよいボーカル、タイトなキックドラムなど、全体としての質感が維持されているのがわかる。

あくまでバーチャルでの拡張再生のため、違和感がある場合もあるが、「Music」モードもスピーカーで音楽を聴く楽しさを体験させてくれる。「Pure」モードは一貫して自然で鮮度が高く、ハイファイ(高忠実度再生)を感じさせるので、状況に応じて使い分けたいところだ。

Dolby Atmosの移動感はより明瞭

「Music」や「Movie」モードの質が上がったということは、Dolby Atmos再生のクオリティが上がったことにほかならない。Dolby Atmosをデコードして三次元立体音響を楽しむには、「Music」もしくは「Movie」モードを使うことが必須なのだから。

定番のコンテンツとしてDolby Atmos音源を収録したUltra HDブルーレイ「グレイテスト・ショーマン」を「Movie」モードで再生してみると、「DHT-S217」で野太く響くバーナムのボーカルも悪くないが、「DHT-S218」ではボーカルも、楽曲の演奏も、効果音も、全体の解像感が上がっている。ナイフが放たれ、的に当たる移動のある音など、細かに貼り付けられた効果音が埋もれず、本来のサウンドデザインがよくわかる。「DHT-S217」と比較するとちょっとすっきりしすぎと思う人もいるかもしれないが、映画への没入度を高めるという意味では、こちらのバランスが好ましいと思う。

まとめ:「DHT-S218」は相変わらずの高コスパ!

冒頭のとおり、「DHT-S218」が従来モデル「DHT-S217」からスペックとして変わったのはBluetooth LE Audio、VRR、ALLMへの対応くらい。まだ市場在庫のある「DHT-S217」のほうがお買い得ではないか、と思われるかもしれない。

しかし、「DHT-S218」の音質は確実に「DHT-S217」を上回っていると思う。「Pure」モードで聴く2chの音楽も、「Music」や「Movie」モードで聴くDolby Atmosの音楽・映画も、明らかによりハイファイに磨き上げられていることはお伝えしておきたい。Dolby Atmos対応サウンドバーとしてここは重要なポイントだ。

「DHT-S217」との価格差をどう考えるかはユーザー次第だが、せっかく音質のよいサウンドバーを選ぶためにデノンを指名するならば、新製品「DHT-S218」を検討していただきたい。製品価格はやや上がっていたとしても、製品としてのクオリティもしっかり上がっているので、コストパフォーマンスの高さは相変わらず。いずれにせよ、「DHT-S218」はサウンドバーの新定番となるはずだ。

柿沼良輔(編集部)
Writer / Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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