LGエレクトロニクスが2024年の有機ELテレビ一挙15モデルを発表した。ラインアップはフラッグシップシリーズの「OLED G4」、ハイグレードモデルの「OLED C4」、スタンダードモデルの「OLED B4」3種で、すべてパネルの画素数は4K(3,840×2,160)。各モデルの市場想定価格は以下のとおり。
なお、製品の発売日は「OLED G4」「OLED C4」シリーズが2024年6月26日から順次とされている。「OLED B4」は5月31日からすでに発売中とのこと。
「OLED G4」シリーズの最大サイズは97V型。かなり高価ではあるが、有機ELテレビに新サイズが加わった
●「OLED G4」:「マイクロレンズアレイパネル」を使ったフラッグシップ
「OLED97G4PJA」 97V型 市場想定価格4,180,000円前後
「OLED83G4PJA」 83V型 市場想定価格1,210,000円前後
「OLED77G4PJB」 77V型 市場想定価格880,000円前後
「OLED65G4PJB」 65V型 市場想定価格616,000円前後
「OLED55G4PJB」 55V型 市場想定価格451,000円前後
●「OLED C4」:144Hz駆動対応「OLED evo」パネルのハイグレード
「OLED83C4PJA」 83V型 市場想定価格990,000円前後
「OLED77C4PJA」 77V型 市場想定価格748,000円前後
「OLED65C4PJA」 65V型 市場想定価格495,000円前後
「OLED55C4PJA」 55V型 市場想定価格363,000円前後
「OLED48C4PJA」 48V型 市場想定価格308,000円前後
「OLED42C4PJA」 42V型 市場想定価格297,000円前後
●「OLED B4」:「α8」プロセッサー搭載の倍速スタンダード
「OLED77B4PJA」 77V型 市場想定価格649,000円前後
「OLED65B4PJA」 65V型 市場想定価格440,000円前後
「OLED55B4PJA」 55V型 市場想定価格330,000円前後
「OLED48B4PJA」 48V型 市場想定価格275,000円前後
同日行われた発表会では、壁掛け、壁寄せ設置を推進していくことも表明された。日本でのテレビの壁掛けは主流ではないものの、10年前と比べれば「壁掛けテレビ」の検索量は倍程度に増加しているという(出典:Google Trends)
2024年のフラッグシップ「OLED G4」シリーズは、「マイクロレンズアレイパネル」を搭載する。これは年初の「CES 2024」で発表されたLGディスプレイ製の新ハイエンド有機ELパネル「Micro Lens Array Plus(MLA+)」と見て間違いないだろう。このパネルと映像処理エンジンの更新が新製品の目玉と言える。独自の映像処理エンジンの名称は「α11 AI Processor 4K」。処理性能は従来比(「α9 AI Processor Gen6」比)で1.3倍、「AIパフォーマンス」は4倍にもなると説明された。
「OLED G4」シリーズは、映像処理エンジンとして「α11 AI Processor 4K」を搭載。映像の処理能力を大幅に向上させたという
発表会で改めて説明された有機ELテレビの優位性
LGエレクトロニクスでは、あくまで「有機ELテレビが最高!」と打ち出していくようだ。このスライドでは、液晶テレビのMini LEDバックライトについて「数万のエリアコントロール」と記述されているが、これは「多い場合」のエリア数と考えるべきだろう。現在「Mini LEDバックライト搭載」を謳う液晶テレビのエリアコントロール数は数百〜数千の場合もあるようだ
なお、「OLED G4」シリーズでは、独自の映像処理エンジン「α11 AI Processor 4K」と「マイクロレンズアレイパネル」によって、「LG史上最高輝度」を達成したとしている。数値を「OLED B4」シリーズ比で言えば、最大約150%(APL3%時)も向上し、さらに斜めから見たときの見やすさ(視野角)も改善したとしている。ただし、この「史上最大輝度」に対応しているのは83V型、77V型、65V型、55V型のみ。これは「MLA+」パネルの展開サイズとも符合している。
左から「OLED55G4PJB」「OLED55C4PJB」「OLED55B4PJB」を斜めから見たところ。厳密な比較ではないものの、左から順にカラーシフト(斜めから見た際の意図しない色の変化)が大きくなっている。実際に1つひとつ確認した際も同様の印象だった。パネルの違いが大いに映像に表れるポイントだ
こちらも厳密な比較ではないものの、現場では輝度の違いが明確に見て取れた。すべて「標準」モードの映像だ。「OLED G4」シリーズに搭載されている新パネル自体のピーク輝度は3,000nitとのことなので、むやみに光らせない見識のある調整のように感じられた
上記のとおり、「OLED G4」では、映像処理エンジンが最新世代の「α11 AI Processor 4K」アップデートされたことも大きなポイント。4倍にもなった「AIパフォーマンス」とは一体何のことなのか、具体的には以下の機能が新規で追加されたということのようだ。
従来は映像のオブジェクト検出とそれに応じたノイズ除去をしていたところ、さらに、AIによるピクセル単位での超解像処理、顔検出と調整までを行う。「OLED C4」シリーズでは少し処理が簡略化され、フレーム単位の超解像+顔検出と調整を行う。「OLED B4」シリーズではフレーム単位の超解像処理のみ追加される
単に映像中のオブジェクトを判別するだけでなく、その中で最も注目すべき被写体を選び、それを中心にコントラストやシャープネス調整を行う。こちらは有機ELテレビの新製品すべてで利用できる機能だ
「OLED G4」シリーズのみ対応する「AIディレクター処理」では、「色の分布」を映像のフレーム単位で解析し、映像の意図を読み取り、「配色理論に基づいてより感動的な画質で表現する」とのこと。写真のように、本来色彩があってしかるべきと思われる場所の色が抜けているような場合に色を足すようなイメージのようだ
上記新機能のほか、HDR映像入力時の「OLEDダイナミックトーンマッピングプロ」は昨年モデルから継承した重要な機能だろう。映像を1フレームごとに分析を実施。さらにその1フレームを5,000以上のエリアに分割し、その1つひとつのトーンカーブと明るさを最適化する。本機能は「OLED B4」シリーズでは非対応。このあたりが「OLED C4」と「OLED B4」の実質的な差として画質に直接影響度の大きなポイントになっているのだろう。
なお、HDRについては新製品すべてのモデルでHDR10、HLGのほかDolby Visionに対応する
そのほか、24コマで制作された映画をそのままのフレーム数で再現する「FILMMAKER MODE」、周囲の明るさに応じて暗い映像の暗部のみを最適化する「AI輝度」、部屋の環境に応じた実測と音場調整機能「オートサウンドチューニング」など、AIを活用した画質・音質の最適化は「OLED G4」「OLED C4」「OLED B4」共通の仕様として多数盛り込まれている。
42V型から83V型まで最も幅広いサイズから選べる「OLED C4」シリーズ
製品発表会ではあまり触れられていなかったのだが、「OLED C4」「OLED B4」シリーズについても詳細を確認しよう。
まず、「OLED C4」シリーズは冒頭のとおり、「マイクロレンズアレイパネル」を搭載していない。また、映像処理エンジンは「α9 AI Processor Gen7」。つまり「OLED G4」シリーズとの比較で言えば最大輝度やAIによる画質・音質の最適化機能に差があるということだ。
新機能としてはVRR適用時に4K/144Hzのリフレッシュレートで駆動できることが特筆される。「OLED C4」シリーズが42V型という比較的小型サイズから展開されていること、「OLEDダイナミックトーンマッピングプロ」などの主要機能を使えることを考えれば、このシリーズこそ2024年モデルの中核と言えそうだ。
なお、「OLED G4」シリーズももちろん4K/144Hzのリフレッシュレートに対応する。ただし「OLED97G4PJA」のみ非対応だ。
48V型から77V型を展開する「OLED B4」シリーズ
同時に発表された有機ELテレビ新製品の中で、最も安価なのが「OLED B4」シリーズ。倍速パネル仕様なので、基本機能は必要十分と言ったところだろう。ただし「OLED C4」シリーズとの価格差は結構微妙だ。
スペック的な差分を見ると、有機ELパネルが簡素化されていること、映像処理エンジンが「α8 AI Processor 4K」であることなど、やはり画質・音質に関わる部分が省略されている。
「OLED G4」の項目でカラーシフトの差を写真で紹介したとおり、その画質差と価格差をどう考えるかがポイントになりそうだ。ひとりで使うならば「OLED C4」とそこまで大きな差は出ない可能性はあるが、複数人で使うならば、もしくは広めの部屋で角度のある場所から見ることが多いならば「OLED C4」シリーズを選ぶのが無難ではないだろうか。
こちらは「OLED77G4PJA」と、サブウーハーがセットになったサウンドバー「SG10TY」。両機は無線でリンクできるほか、高域をテレビ、中低域をサウンドバー+サブウーハーが受け持つという具合に一体のサウンドシステムとして利用できる
サウンドシステム関連での新機軸として面白いのは、別記事で紹介予定のサウンドバー「SG10TY」とリンクできること。詳細は「SG10TY」の記事を参照いただきたいが、テレビとサウンドバーのスピーカーをすべて一体のシステムとしてとらえ、すべてのスピーカーでより高音質を狙うという趣旨だ。また、「SG10TY」との接続はワイヤレスで、壁掛け時にもすっきりと設置できるとしている。これらの機能に対応するのは、2022年発売以降の「OLED M/Z/G/C/B/A」シリーズなど。
LGエレクトロニクス製のBluetoothスピーカー2台をテレビとリンクしたデモンストレーションの様子
さらに面白いのは「Bluetoothサラウンド」機能だろう。Bluetoothスピーカーをサラウンド(リア)スピーカーとして利用できる機能のことで、LGエレクトロニクス製の特定モデルを使えば2台の追加も可能。これだけでリアルサラウンドが楽しめるという提案だ。本機能は、新有機ELテレビのすべてで利用できる。
発表会で参考展示されていたのは、「XBOOM 360 X02」という新製品。今夏発売予定だという。現状で言えば「XBOOM 360 X03」などが対応製品となるようだ。
夏以降に発売が見込まれるBluetoothスピーカー「XBOOM 360 X02」。「XBOOM 360 X03」と同じく、360度に音を広げるタイプの無指向性スピーカーだ
「CES 2024」で発表されたとおり、高画質志向の「OLED G4」が登場するなど、さすがパネルメーカーをグループ企業に持つLGエレクトロニクス、とうなってしまう充実のラインアップ。購入しやすい「OLED C4」シリーズの価格動向も気になるところだ。
製品発表会の会場には液晶テレビもあったのだが、それらは「一応」といった様子。特に「OLED G4」シリーズは会場のような明るい場所で見てもまぶしいほどで、安価な液晶テレビよりも間違いなく明るい。サウンドシステム面での新機能も含めて、じっくりと検証したい期待の新製品群が登場した。