LINKIN PARKが大好きだ――。
LINKIN PARK(以下、リンキンパーク)は、全楽曲の世界累計売上枚数が1億枚以上を記録している“過去20年間で最も売れたバンド”のひとつだ。ボーカルのチェスター・ベニントンが亡くなってから早7年。2024年9月に新しいボーカルとドラムを迎え、ついに再結成し、同年11月に8枚目となる新アルバム「From Zero(フロム ゼロ)」をリリースした。
人気オンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会「2024 World Championship」では、リンキンパークの新曲「Heavy Is The Crown」がアンセムに。写真はそのときのアーティスト写真
そんな彼らが、2025年2月11〜12日の2日間、単独来日ライブを「さいたまスーパーアリーナ」で開催する。
……と、ここまでは記者然と淡々と書いてきたが、実は筆者はその2024年9月からずっと一種の興奮状態にある。
2017年当時、世界でいちばん好きなバンドの新曲がもう一生聴けなくなったと狼狽。余生、何を聴いて暮らせばいいんだろうと絶望した。自分の人生から“音楽”が失われたと強烈に痛感したのだ。
それが2024年9月、サプライズ的再結成ライブで新ボーカル、エミリー・アームストロングが登場(新ドラムのコリン・ブリテンも)。しかも女性で(驚愕から目が点)、とんでもなくカッコよくて(一瞬で虜)、過去の曲も歌ってくれて……(まずここで1回泣いた)。そしてニューアルバムを引っさげて世界ライブツアー「From Zero World Tour」が始まって、韓国では開催するのになんで日本でやってくれないのよー!? Why? ってしょげていたところで、来日ライブの告知(ここで再涙)……。
もうね、爆発した。感情が涙ごと爆発した。
取り乱して失礼しました。
ここで筆者はふと思ったのだ。この7年間、筆者と同じような感情に翻弄されてきたけれど、数日後に来日ライブを控え、ニューアルバムを聴いて気分を高めているファンは少なくないのではと。そこで今回は、その“予習リスニング”のために、価格.comマガジンらしく「どんなイヤホン・ヘッドホンがリンキンパークのニューアルバムを最高の環境で聴けるの?」という疑問を解決すべく、イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」に取材を敢行! 特におすすめの11モデルを紹介する。
イヤホン&ヘッドホンの聖地「e☆イヤホン秋葉原店 本館」へ!
★おすすめしてくれた人★
株式会社タイムマシン eイヤホン・ラボ チーフエンジニア
稲垣雄太さん
【Profile】「e☆イヤホン」の運営会社タイムマシンで、オリジナルイヤホン・ヘッドホン関連のアクセサリーなどの開発を手掛けるエンジニア。リンキンパーク好きが高じて同社に勤めていると言っても過言ではないそうで、2017年には会社を辞めそうになったほどのリンキンファンだ。ちなみに、オリジナル製品開発時のサンプル曲に、リンキンパークの楽曲も入れているとか
ここでは、タイムマシンのなかでも生粋のリンキンパークファン、稲垣さんに同バンドの楽曲を聴くのに最適なイヤホン・ヘッドホンを厳選していただいた。とはいえ、ニューアルバム「From Zero」をどう聴くかで製品の選択肢が変わってくるという。そこで、下記の2つのリスニングスタイルごとにおすすめモデルを紹介してもらった。
・「脳汁ドバドバ系」……ライブでのグルーブ感を感じながらフィーリングで聴きたい人向け
・「きれいな音系」……Hi-Fiの解像度高めの音質で、収録されている音をもれなく聴きたい人向け
ちなみに、筆者も同店で各モデルを試聴させてもらった。今回おすすめしてもらった11モデルのなかで、特に「これ、いい! 欲しい!!」と思ったモデルには軽くレビューを付け加えた。試聴曲は「Heavy Is The Crown」。普段は、「iPhone 11 Pro Max」(旧型でごめんなさい)の「Apple Music」と、イヤホンは「Beats Studio Buds +」、ヘッドホンは「Beats Studio Pro」で「From Zero」を聴いている。
【SPEC】●ドライバー:ダイナミック型●防水性能:IPX5●対応コーデック:SBC、AAC、LDAC●連続再生時間:約4〜7時間、約28時間(充電ケース利用)●再生周波数帯域:10Hz〜35kHz
高音質なヘッドホンで知られるHIFIMANが手掛けるハイエンドモデル。口径10mmのダイナミックドライバーには、振動板の表面に特殊なメッキ処理を施した「トポロジーダイヤフラム」を採用している。また、DACには独自のR2Rラダー方式「HYMALAYA R2R DAC」が使われており、同社は総額30万円の組み合わせを完全ワイヤレスイヤホンで実現したとアピールしている。
声の1つひとつ、楽器の1つひとつがクリア。音の粒が細かいモデルです。特に女性ボーカル(エミリー・アームストロング)の歌声がきれいに艶っぽく聴けます。リンキンパークの楽曲に詰まっている音を分解しながら聴きたい人に
【リンキン好き編集・牧野の試聴MEMO】音が跳ねて聞こえてくる不思議な感覚で、リンキンパークにぴったり! エミリーのシャウトもしっかり束になって襲いかかってくる。低音もしっかりで広がりがイイ。ちなみに、製品名の「Svanar」はスウェーデン語で「白鳥」の意味で、「スワナ」と読むが、シルバーにきらめく白鳥のようなデザインの本体も、宝石箱みたいな多面体のケースもイケてる
【SPEC】●ドライバー:ダイナミック型●防水性能:IPX4●対応コーデック:SBC、AAC、LDAC●連続再生時間:約3.5時間、約8.5時間(充電ケース利用)●再生周波数帯域:非公表 ※2024年6月に新色「モデレートブルー」も登場
小型・軽量サイズながらも、同ブランドのハイエンドモデルにも採用されている独自の音響構造「アコースティックコントロールチャンバー」や「ハーモナイザー」を搭載しているモデル。直径6 mmのPEEK振動板を採用しており、自然で厚みのある音を実現している。LDAC対応で、ハイレゾ音質も楽しめる。
リンキンパークを聴く際は、音に“若干の歪み”があったほうが合っていると思うんです。「EAH-AZ40M2」は解像度がそこそこあり、上位モデルと比べると歪みが少し大きめなんですけど、シリーズの中ではこれがいちばんリンキンパークが聴きやすいモデルだと思います。最新作のフラッグシップモデル「EAH-AZ100」もありますが、リンキンはこっち
【SPEC】●ドライバー:ダイナミック型●防水性能:非公開●対応コーデック:SBC、AAC●連続再生時間:約8時間、約27時間(充電ケース利用)●再生周波数帯域:20Hz〜22kHz
beyerdynamicのスタジオサウンドを実現したという、小型でエントリー帯にラインアップされるモデル。15分のクイック充電で3時間の再生ができるほか、「beyerdynamicアプリ」を使えば、サウンドの好みやタッチパッドの操作、ソフトウェアの更新などができる。
曲によってはグッと低音が主張してくるモデル。大きいアリーナで、というよりは日本武道館のような狭めの箱でライブを聴いているような濃い音が体験できます
稲垣さんに完全ワイヤレスイヤホン(TWS)をいろいろ紹介してもらい、このとき筆者はすでにそこそこ満足していた。だが、そこで言われたのが「まだ序の口ですよ」……。稲垣さん的にはTWSだとちょっと物足りないのだとか。以下では、世界が広がる有線イヤホンを厳選してもらった!
【SPEC】●ドライバー:ダイナミック型、バランスドアーマチュア型×7●再生周波数帯域:5Hz〜22kHz●インピーダンス:10Ω●出力音圧レベル:105dB/mW
“歴代最強ステージモニター”をうたう、Ultimate Earsの最上位ユニバーサルイヤホン。ユニット構成は、バランスドアーマチュア7基、ダイナミック型ドライバー1基の8基だ。estronと共同製作した独自規格のコネクター「Ultimate Ears IPXコネクションシステム」を採用しており、防水・防塵機能を備える「海外/国内のトップミュージシャンの厳しいツアー環境にも耐える設計」が魅力。
故・チェスターが使用していたと言われているシリーズの2018年モデル。ライブ会場にいるような臨場感がトップレベルに高いです。ケーブルはプロのアーティストが使っているモノと同じ仕様
【リンキン好き編集・牧野の試聴MEMO】1音目から、ほかのイヤホンとはレベルが段違いの非常にクリアで落ち着いた音にビックリ! すべての帯域の音の1つひとつが勝手に鼓膜に流れ込んでくる感じ。味付けなしの純粋なエミリーの歌声が聴ける(と感じた)
【SPEC】●ドライバー:ダイナミック型●再生周波数帯域:15Hz〜25kHz●インピーダンス:32Ω●出力音圧レベル:109dB/V
ルーマニアのオーディオメーカー、Meze Audioのエントリーモデル。ダイキャスト製法により、亜鉛合金とアルマイト処理されたアルミニウムを使用し、軽量性と耐久性を両立させている。上位モデルのクオリティーを継承しており、同社ならではバランスのよい音質を体験できる。
リンキンパークは基本的にダイナミック型ドライバーを搭載した、本モデルのようなモデルが合うと思います。かなりきれいなカナルサウンドが体験できます
【SPEC】●ドライバー:バランスドアーマチュア型×6●再生周波数帯域:非公表●インピーダンス:20Ω●出力音圧レベル:122dB/mW
ダフト・パンクやクラフトワークなどが愛用する、ドイツのVISION EARSが手掛けるIEM。中低域が充実している「VE6 X1」と軽快でナチュラルな「VE6 X2」という2種類のサウンドを、フェイスプレートにある小型スイッチで切り替えられる。
ダフト・パンクも使っていたというドイツメーカーのIEMです。「X2」のほうがバランスよくておすすめ。感覚的で極端な表現なんですが、「UE LIVE To-Go」では音が大砲でドーンと来る感じだとしたら、「VE6 Xcontrol」は音がレーザーみたいに繊細に伝わってきて、アタック感があります。バンドの端にある楽器の音もしっかりと聞こえてくるほど細かい! ちなみに、同社にはドライバーの数がさらに多い高額な上位モデルもありますが、高ければ高いほどイイというわけではなく、特にリンキンパーク系の楽曲を楽しむ場合は、セレクトに気をつけてください。私はこちらのカスタム版を使っています
脳汁がドバドバ出る有線イヤホンを紹介してもらい、お腹いっぱい胸いっぱい。そんな筆者に稲垣さんはこう告げた。「いや、あのですね、まだ“上”があるんですよ」。思わず「まだーっ!?」と店内で大きい声を出してしまった筆者は、稲垣さんいわく「ケタが変わってくる」というヘッドホンの世界に連れていかれた。ちなみに以下の3モデルは、稲垣さんの私物であるポータブルオーディオプレイヤー「KANN CUBE」(Astell & Kern)やアンプ「Formula S」(Eleven Audio)を利用して試聴している。
【SPEC】●タイプ:開放型●ドライバー:ダイナミック型●再生周波数帯域:3.5Hz〜51.5kHz●インピーダンス:38Ω●出力音圧レベル:117dB/mW●ケーブル長:約1.85m
52mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載した開放型のヘッドホン。新開発の磁気回路とボイスコイルが相まって、すぐれたダイナミクスとトランジェント・レスポンスを実現しているという。同ブランド史上初の着脱式ケーブルを採用。
米国・ブルックリンで作っている工芸品レベルのヘッドホン。物理的に科学的にいかに音が聞こえるかっていうことにこだわって作られています。1度聴けば、音が心に届いてくるのがわかります。オープンタイプで音が外に漏れるんですが、実はわざと。音の雑味を逃がしてくれているんだと思います。野外ライブをHi-Fiな音質まで昇華させている感じで、音1つひとつの生々しさが体験できます
【SPEC】●タイプ:密閉型●ドライバー:ダイナミック型●再生周波数帯域:6Hz〜48kHz●インピーダンス:300Ω●出力音圧レベル:103dB/V●ケーブル長:3m
密閉型デザインを採用したヘッドホン。反響音を最小限に抑制する独自のガラストランスデューサーカバーを搭載し、透明感のあるサウンドを実現する。また、バランス出力に「Pentaconnコネクター」を採用。ヘッドホン用コネクターとしては最も接触抵抗が低く、歪みを最小限に抑制する。
ゼンハイザーは開放型が有名でよく売れているんですが、このモデルは解像度がとにかく高い。密閉型なので音が耳の穴を通過するだけでなく、耳介やその周りにも空気感をまとってぶつかってくるので、より楽しいです
【SPEC】●タイプ:開放型●ドライバー:平面磁界型●再生周波数帯域:8Hz〜110kHz●インピーダンス:32Ω●出力音圧レベル:105dB/V●ケーブル長:6.3m
音質、デザイン、快適性を追求した、同社の最高峰ヘッドホン 「Empyrean」の進化モデル。前モデルのサウンドをさらに磨き上げ、サウンドステージの解像度や、細部の表現、クリアで正確な音像を実現しているという。また、「Empyrean」のサウンドエンジンを最大限に引き出す新イヤーパッド「Duo」を採用。
今回紹介した中でいちばんきれいで魅力的な音を聴かせてくれるのが、これ。新生リンキンパークを聴くヘッドホンとしてはトップレベルのひとつかと思います。低音から高音まで全体的に高解像度で、特にボーカルのエミリーさんの声がとても力強く、色っぽく、微細なところまで楽しめます
正直この時点で、音の波にもまれすぎて気絶しかけていたのだが、40万円前後のヘッドホンはなかなかハードルが高いということで、お手ごろ価格のワイヤレスヘッドホンもおすすめしてもらった。
【SPEC】●ドライバー:ダイナミック型●対応コーデック:SBC、AAC、LC3●連続再生時間:約70時間(ANCオン)、約100時間(ANCオフ)●再生周波数帯域:20Hz〜20kHz
周囲の音に応じて音質を調整し、楽曲の細かなディテールを再現する「アダプティブラウドネス機能」を搭載したワイヤレスヘッドホン。周囲の環境音を継続的に測定し、不要な音をカットするアクティブノイズキャンセリング機能を搭載しており、オンの状態では最大約 70 時間、それをオフにした状態では最大 100 時間のワイヤレス再生が可能だ。
音作りが本当にきれい。ベースがやや強めですがバランスはよく、特にギターや打楽器系の音を心地よく聴けます。楽器が前に出てくる立体感を味わいたい人、または、リンキンパーク以外の音楽を聴きたい人にもおすすめです
【SPEC】●ドライバー:ダイナミック型●対応コーデック:aptX Adaptive、aptX HD、aptX、AAC、SBC●連続再生時間:約30時間●再生周波数帯域:非公表
前モデル「Px7 S2」をベースに機能が向上した、上位機種と位置づけるフラッグシップモデル。「Px7 S2」のアクティブ・ノイズキャンセリング・ワイヤレス・プラットフォームを継承しつつ、専用設計の40mmカーボンコーン・ドライブユニットを新たに採用。これにより、ドライバーの振動板のあらゆる点から耳の穴までの距離が均一となり、没入感にすぐれる高精細なサウンドステージをかなえるという。前モデルと同様に、aptX Adaptiveコーデック(48kHz/24bit対応)をサポート。
低音の沈む具合が個人的に好みで、どちらかというと脳汁ドバドバ系です!
【リンキン好き編集・牧野の試聴MEMO】ズーンと沈み込みながら広がる低音がイイ! ドラムの音がはっきりしていてバチバチに鼓膜を刺激してくれる。あとシンプルに装着感がよく、長時間着けていても疲れなさそうだったし、本体の高級感のあるデザインやカラーが物欲を大いに刺激された!