2025年5月12日、ソニーは4K液晶テレビ「BRAVIA(ブラビア)」の2025年モデルとして「BRAVIA 5 XR50」シリーズを発表した。ソニーは昨年、BRAVIAのシリーズ構成と命名ルールを刷新、4K液晶BRAVIAは「BRAVIA 9 XR90」シリーズと「BRAVIA 7 XR70」シリーズが投入されたが、今回追加されたのは新命名ルールの中では最も数値の小さい比較的スタンダード寄りに位置づけられるモデルとなっており、導入しやすい55V型から超大画面サイズの98V型まで、4種類の画面サイズがラインアップされる。
ソニー「BRAVIA 5 XR50」(写真は98V型の「BRAVIA 5 K-98XR50」)。4K液晶テレビの2025年モデルとしては「BRAVIA 5 XR50」シリーズが唯一の新モデルとなっている
■4K mini LED液晶テレビ「BRAVIA 5 XR50」シリーズ)
K-98XR50(98V型、6月28日発売、市場想定価格1,100,000円前後)
K-75XR50(75V型、6月7日発売、市場想定価格429,000円前後)
K-65XR50(65V型、6月7日発売、市場想定価格330,000円前後)
K-55XR50(55V型、6月7日発売、市場想定価格253,000円前後)
ちなみに、「BRAVIA 5 XR50」シリーズは製品ラインの数字だけを見ると比較的スタンダード寄りと書いたが、これはソニーの誇るプロセッサー「XR」を搭載したモデルの中での話。4K液晶BRAVIA全体を見るとミドルクラスの製品で、価格.comでもいまだに人気の2023年モデル「BRAVIA X90L」シリーズの後継モデルにあたる。「BRAVIA X90L」シリーズの立ち位置を継承したうえで、mini LEDバックライト採用という進化を見せたのが、「BRAVIA 5 XR50」シリーズというわけだ。
ここからは「BRAVIA 5 XR50」シリーズの詳細をみていこう。
まずはプロセッサー「XR」から。名称自体はBRAVIAのフラッグシップモデル「BRAVIA 9 XR90」シリーズにも搭載されているものと同じだが、2024年から2025年にかけての画質研究の知見はソフトウェア更新として盛り込まれているそうだ。
65V型モデルの「BRAVIA 5 65XR50」。プロセッサー「XR」は2025年の最新仕様
液晶パネルは4Kの倍速120Hz対応。ソニー公式の発表はないが、説明会の実機で確認したところ4KのVAパネルを採用と思われる。
最大の特徴であるmini LEDバックライトは、高輝度と高コントラストを実現する「XR Backlight Master Drive」による高精度なローカルディミングにももちろん対応。暗部の電流を明部に集中させ明るさを高める機能の効果の高さと、その精度を表す独自指標「XR Contrast Booster」は10となっており、2023年モデル「BRAVIA X90L」シリーズと同等のスペックとなっている。ちなみに、同じくmini LEDバックライトを採用した上位モデル「BRAVIA 7 XR70」シリーズは20という値。mini LEDバックライトを採用したモデルの中でもしっかりと差別化が行われている。
実際に75V型の「BRAVIA 5 75XR50」で画質を確認してみた。位置づけとしては「BRAVIA X90L」シリーズの後継にあたるが…画質向上は明らかだった。「XR Contrast Booster」は同じ10という値になっているが、mini LEDバックライトになったことと制御アルゴリズムの向上によって見た目以上に輝度感がアップしている。バックライトの動きがわかるデモ機を見てもらうとわかるが、mini LEDバックライトになったおかげで、画面の明暗に対してより細かく精密にバックライト制御ができるようになっており、この部分が画質向上に大きく寄与しているようだ。
バックライト制御のデモ。写真中央が「BRAVIA 5 XR50」シリーズ、写真右が「BRAVIA X90L」シリーズだ。「BRAVIA X90L」シリーズではローカルディミングがかなり粗いが、mini LEDを採用した「BRAVIA 5 XR50」シリーズは映像に合わせかなり細かく制御していることがおわかりいただけるだろう
HDRフォーマットはHDR10、HLG、Dolby Visionに対応。広色域技術「XR Triluminos Pro」にも対応していて、2024年モデルと同じくNetflix、Sony Pictures Core、Amazonプライム・ビデオといった主要なストリーミングサービス向けに最適化された「スタジオ画質モード(スタジオキャリブレーション)」も利用できる。
スピーカーシステムは「Acoustic Multi-Audio」仕様で、画面上部サイドにツイーター、下部にフルレンジスピーカー(バスレフ型)をそれぞれ2基ずつ配置。スピーカーユニットは「X-Balanced Speaker」で、総合出力は40W(10W×4)となっている。部屋の音響特性や視聴位置に合わせてサウンドを自動で最適化する自動音場補正機能も搭載。立体音響フォーマットの「Dolby Atmos」や「DTS:X」に対応するほか、あらゆるコンテンツを臨場感あふれる立体音響にアップスケーリングする「3D Surround Upscaling」も利用可能となっている。
ほかにも、ソニー製のサウンドバーやホームシアターシステムの接続を想定した「Acoustic Center Sync」を搭載。AI技術を活用して人の声を聞き取りやすくする「Voice Zoom 3」も追加されている。
画面上部の両サイドにツイーターを配置
HDMIは全4系統で、すべてHDMI 2.1に対応。ネット機能は「Google TV」仕様で、Chromecast built-inやAirPlay 2に対応するなど、ネット機能とシームレスに連携できるBRAVIAらしさは健在だ。
本体デザインは、ベゼルを目立たなくした「フラッシュサーフェイスデザイン」で、98V型を除く3モデルのスタンドは、標準ポジションとサウンドバー設置スペースを確保できるサウンドバーポジションの2ウェイ仕様となっている。
金属風のフレームを採用した「フラッシュサーフェイスデザイン」
55V型、65V型、75V型の3モデルのスタンドは2ウェイ仕様だが、98V型はサウンドバーポジションのみ対応する
新命名ルールの中では最も数値の小さい「BRAVIA 5 XR50」シリーズは、モデルナンバーを下に拡大するためのモデルになるわけだが、mini LEDバックライト採用による画質向上は思った以上に出来がよかった。いっぽうで、「5」というナンバリングは、「BRAVIA X90L」シリーズをはじめとしたかつての90番台シリーズが担っていた“手の届くハイエンド”といったポジションから見ると、ラインアップ上の序列が下がったかのような印象も受けてしまう。
98V型も登場するミドルクラスとなった「BRAVIA 5 XR50」シリーズ
とはいえ、これは昨年登場した「BRAVIA 9 XR90」シリーズや「BRAVIA 7 XR70」シリーズといったmini LEDバックライト採用の上位モデルが存在することにより、相対的な位置づけの変化が起こったためであり、画質性能はかつての90番台シリーズからは着実に向上しているのは確かだ。
もっとも、ソニーは2025年モデルとして北米向けにはQD-OLEDパネル搭載の有機ELテレビ「BRAVIA 8 II」を投入しており、「BRAVIA 5 XR50」シリーズのみ投入となった日本は若干ラインアップが絞られた形になっている。ソニーBRAVIAの2025年モデルがさすがに1シリーズのみというのは寂しいので、今後の「BRAVIA 8 II」の発表にも期待したいところだ。
今回の「BRAVIA 5 XR50」シリーズの発表に合わせ、ホームシアター体験をさらに向上させる新しいサウンドシステム群も発表されている。
なかでも注目は、ワイヤレスサブウーハーを付属する2ユニットタイプのサウンドバー「BRAVIA Theater Bar 6 HT-B600」。サウンドバー本体は、「X-Balanced Speaker」によるフロント3chとイネーブルドスピーカー2ch仕様。標準付属のワイヤレスサブウーハーと合わせて、製品パッケージで3.1.2chのサウンド構成をカバーする形となっている。
サウンドバー「BRAVIA Theater Bar 6 HT-B600」。5月31日発売で、市場想定価格は61,000円前後
「BRAVIA Theater Bar 6」のサウンバー本体
サウンドバー本体の天面左右に上向きのイネーブルドスピーカーを搭載し、天井反射による立体的なサラウンド再生を実現している
別体のワイヤレスサブウーハー
立体音響フォーマットは「Dolby Atmos」および「DTS:X」に対応。ソニー独自のバーチャルサラウンド技術「Vertical Surround Engine」と「S-Force PRO Front Surround」により、フロントスピーカーだけでも高さ方向を含む多次元的なサウンド空間を生成できるようになっており、2chコンテンツもサウンドフィールド技術によるサラウンド化も行える。
ミドルクラスのサウンドバーだが、イネーブルドスピーカーを搭載し、サウンドバー本体もコンパクト。別体のワイヤレスサブウーハーで迫力のある重低音も楽しめるので、はじめてのサウンドバーとしてもぴったりの1台と言えそうだ。
さらに、「BRAVIA Theater」の名前を冠するサウンドバー向けのオプションスピーカーも拡充されている。
より深くパワフルな低音を求めるユーザー向けには、オプションのワイヤレスサブウーハー「BRAVIA Theatre Sub 7 SW7」が登場。サブウーハーを付属しない「BRAVIA Theatre Bar」シリーズ(Bar 9やBar 8)との組み合わせを想定したもので、薄型デザインで壁に寄せて設置可能という特徴がある。
オプションのワイヤレスサブウーハー「BRAVIA Theatre Sub 7 SW7」。352(幅)×134(奥行)×358(高さ)mmの薄型デザインが特徴
ワイヤレスリアスピーカーの新モデル「BRAVIA Theater Rear 8 SA-RS8」も登場した。ワイヤレスリアスピーカーとしてはミドルクラスで、「SA-RS3S」の後継モデルにあたる。ツイーターと「X-Balanced Speaker」を用いたウーハーを組み合わせた2ウェイ構成で、実用最大出力は100W(50W×2)。ソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」も利用可能だ。
写真左が新モデルの「BRAVIA Theater Rear 8 SA-RS8」、写真右が「SA-RS3S」。外装がファブリック仕上げに変更されたほか、各ユニット独立アンプ駆動で高音質化が図られている
「BRAVIA Theater」のオプションスピーカー群は、これでサブウーハーがグレード別に3モデル、リアスピーカーも3モデルとなった。最新の「BRAVIA Theater Bar」シリーズはもちろん、既存の「HT-A7000」「HT-A5000」「HT-A3000」といったサウンドバーや、「STR-AN1000」、「STR-AZ」シリーズ(日本未発売)などのAVアンプとも組み合わせて使用できるなど、幅広い製品群をカバーできるようになった。
最近では、「BRAVIA Theatre Bar 9 HT-A9000」を中心にオプションのワイヤレススピーカーを買い揃えるケースも増えてきているそう。ワイヤレススピーカー追加による臨場感あふれるサラウンドサウンドという価値観を推進してきたソニーの「BRAVIA Theater」シリーズ。新モデルの投入でその魅力がますます高まりそうだ。