長年、家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第65回は、夏のボーナスシーズンに買い替えを考えている人も多いであろう、液晶テレビ・有機ELテレビの最新トレンドについて解説する。
※最安価格は2025年7月8日時点のものです
【図1】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
まず、最近の液晶テレビ市場の状況について、確認しておこう。
図1は、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーの過去3年における閲覧者数推移を示したものだが、これを見ればわかるように、ここ3年間、同カテゴリーは右肩下がりの様相を呈しており、3年間で3割程度、需要が減少していると見ていい。
コロナ禍では在宅時間が増えたことから、家庭におけるエンターテインメントの中心であるテレビが通常よりも売れた。しかし、その需要先食いの反動がコロナ後に出ているというのが、この需要減少の最も大きな理由だ。さらに、若年層を中心としたテレビ離れ(ゲームやネット配信などにシフト)や、業界全体での大きな技術革新のなさ、国内メーカーの衰退など、さまざまな理由が重なって、今の停滞状況にいたったのだと考えられる。
【図2】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品のパネル種別割合(2025年6月時点)
図2は、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品のパネル種別割合を示したものだが、これを見ると、売れ筋製品の約9割が液晶テレビ、残る約1割が有機ELテレビということになる。2年前は約2割あった有機ELテレビの人気が、約半分ほどにまで下がっており、人気の主体は液晶テレビに完全に移ったと見ていいだろう。
一時は、液晶テレビをリプレイスするのではないかと言われていた有機ELテレビであるが、液晶に比べて価格が高いのは今も変わらず、相対的な輝度の低さや焼き付きなどの課題もあることから、徐々に人気を下げていった。逆に、液晶テレビ側は、従来の10分の1ほどのサイズで光る「mini LED」バックライトや、色再現性を高める「量子ドット」などの技術が加わったことで、一時に比べて画質面でのデメリットが少なくなり、価格の安さも手伝って、ここ数年でグンと人気を上げているところだ。
【図3】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品の画面サイズ別割合(2025年6月時点)
図3は、同カテゴリーにおける売れ筋製品の画面サイズ別割合を示したもの。こちらを見ると、今いちばん人気の画面サイズは55V型(インチ)クラスで、次いで65V型(インチ)クラスとなっており、2年前と比べると55 V型(インチ)、65 V型(インチ)以上のサイズが占める割合が増えているのが見て取れる。55 V型(インチ)以上のサイズが全体の半数以上を占めており、32V型(インチ)以下の製品は全体の1割程度しかないことからも、この傾向は明らかだ。
【図4】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯別割合(2025年6月時点)
図4で売れ筋製品の価格帯を見ると、いちばん多いのは「10万〜15万円」で、次いで「5万〜8万円」、「15万〜20万円」となっており、比較的高価格帯の製品が売れていることがわかる。図3の結果と合わせて考えると、「55 V型(インチ)で10万円台前半」あたりが、今の売れ筋の中心と言ってもよさそうだ。
【図5】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品のメーカー別割合(2025年6月時点)
では、今売れている人気の液晶テレビ・有機ELテレビはどんなものなのだろうか。図5は、価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける売れ筋製品のメーカー別割合を示したものだが、これを見ると、TVS REGZA(旧東芝)が約33%と最も多く、次いでハイセンス(約20%)、パナソニック(約12%)、シャープ(約11%)、ソニー(約10%)と続く。価格.com上では以前よりTVS REGZA(旧東芝)の人気が高かったが、その傾向は今も変わっていない。また、中国系メーカーであるハイセンスは、TVS REGZAの親会社でもあり、国内メーカー勢を上回る人気を得ているのが印象的だ。
【図6】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける主要メーカー別閲覧者数推移(過去3年)
この状況を3年前からの推移で表したのが図6だ。こちらでも、TVS REGZA(旧東芝)の数値がダントツで高く、全体としてはやや下がってきているものの、今も他メーカーの倍程度の注目度を集めていることがわかる。逆に、ソニー、パナソニック、シャープの国内3メーカーの注目度は徐々に下がっており、注目度を上げてきたハイセンスと合わせて、ほとんど差のない2位グループを形成していることも見て取れる。
【図7】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける人気製品別閲覧者数推移(過去半年)
そして、7月月初時点の同カテゴリーにおける人気ランキングでベスト10に入っている9製品をピックアップし、その閲覧者数推移を示したのが図7だ。これを見ると、どれか1製品が圧倒的な人気を得ているということはなく、さまざまな製品がこの半年でも人気を上下させながら、もつれ合っていることが見て取れる。
全体的に見て取れるのは、今年の1月くらいには比較的人気だった32V型(インチ)や40V型(インチ)といった画面サイズの製品が今はやや人気を落としているのに対し、売れ筋の55V型(インチ)クラス、65V型(インチ)クラスの製品がここへ来て人気を上げていることだ。メーカー別に見ると、売れ筋製品メーカーNo.1のTVS REGZAが4モデルランクインしているが、うち2モデルが32V型(インチ)、40V型(インチ)といった小型サイズで、1モデルが唯一の有機ELテレビ。人気の55V型(インチ)、65V型(インチ)クラスのモデルとなると、今年4月発売の「REGZA 55Z770R」のみという状況となっている。
これに対して、売れ筋製品メーカーNo.2のハイセンスのモデルは3モデルが上位にランクインしているが、そのうち2モデルが今人気の55V型(インチ)、65V型(インチ)クラスの製品で、売れ筋のラインアップに違いがある。TVS REGZAはさまざまなタイプのモデルをラインアップに持っているため、全体としては人気が高いが、売れ筋の55V型(インチ)、65V型(インチ)クラスに限って見れば、ハイセンスのほうがむしろ人気を得ていることが見て取れる。
【図8】価格.com「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーにおける人気製品別(55V/65V)最安価格推移(過去半年)
最後に、現在人気の55V型(インチ)、65V型(インチ)クラスの液晶テレビ4製品(TVS REGZA、ハイセンス、ソニー)の最安価格推移を見てみよう(図8)。これを見ると、価格の安いハイセンスの55インチモデル「55U8N」は11万円前後を推移しており、65V型(インチ)クラスのハイセンス「65U8N」および、ソニーの「BRAVIA KJ-65X75WL」は、13万〜15万円程度で推移しており、このあたりが55V型(インチ)、65V型(インチ)の狙い目の価格帯と言えそうだ。
なお、今年2025年4月に発売されたばかりのTVS REGZA「REGZA 55Z770R」であるが、発売時は23万円台の最安価格をつけていたものの、発売からわずか2か月ほどで14万円台まで最安価格が下がっており、すでに底値と言っていい状況にある。ライバルのハイセンス「55U8N」10万円台、65V型(インチ)クラスの人気モデルでも13万〜14万円台ということを考えると、新モデルであっても、これくらいの価格帯まで下がってこないと、なかなか売れないということなのかもしれない。
なお、これらのモデルはすべて、画質や音質にこだわった高機能モデルであることは書き添えておこう。今やこうした最新技術を詰め込んだ高機能で大画面な液晶テレビが、10万〜15万円で買える時代なのである。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年7月8日時点のものです
価格.com最安価格:99,745円
発売日:2024年5月中旬
ユーザー満足度・評価:★4.53(23人)
ハイセンスが昨年発売した55V型(インチ)の主力液晶テレビ。mini LEDや量子ドット技術など、最先端の技術を取り入れた高画質を実現しながらも、今なら10万円前後で購入できるという驚異的なコストパフォーマンスが特徴。ユーザー評価も非常に高く、画面が明るい、操作がキビキビしている、ネット配信サービスにもほとんど対応など、性能・機能的にもかなり高い水準にあると言える。
価格.com最安価格:128,755円
発売日:2024年5月中旬
ユーザー満足度・評価:★4.54(17人)
上記「55U8N」の65V型(インチ)版。性能・機能はほとんど「55U8N」と同じだが、144Hzのゲームモードを備えるなど、パネル性能がやや高い。しかも画面サイズがワンランク大きくなっても13万円を切る最安価格で購入でき、コストパフォーマンスはかなり高い。設置スペースに問題なければ、こちらを選ぶのもよさそうだ。
価格.com最安価格:168,200円
発売日:2024年5月31日
ユーザー満足度・評価:★4.80(36人)
TVS REGZAの液晶テレビ「Z870シリーズ」の昨年モデル。mini LED+広色域量子ドットシート搭載の新設計パネルを採用し、高コントラストかつ色鮮やかな画質を実現。サウンドについても「重低音立体音響システムZ」による迫力ある音声が楽しめる。録画についても、6チャンネル全録に対応した伝統のタイムシフトマシンに対応。120Hz対応のゲームモードも搭載するなど、性能・機能とも死角がない。少し前までは15万円台で買えたが、今はやや最安価格が上がっており17万円前後となっている。買うならお早めに。
価格.com最安価格:150,589円
発売日:2024年4月12日
ユーザー満足度・評価:★4.48(10人)
ハイグレードの有機ELテレビながら、15万円台前半の最安価格をつけており、かなりお買い得な本モデル。専用の高コントラスト低反射有機ELパネルモジュールを採用しており、有機ELならではの多彩な色表現をさらに高めているほか、重低音までしっかり響かせる「重低音立体音響システムXP」も装備。映画やスポーツなど、さまざまなコンテンツを大迫力で楽しめる。録画は地上/BSそれぞれ3チャンネル対応で、全録に対応したタイムシフトマシンでない点は注意。
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