スピーカーやカーAVの技術を集結した注目のフラッグシップ!

生産台数は1日5台!? パイオニアの高級ヘッドホン「SE-MASTER1」誕生!

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2015年5月15日に発売となったパイオニアの高級ヘッドホン「SE-MASTER1」。同社が得意とするスピーカーやカーAVで培われた技術を投入し、TADスピーカーを製造する東北パイオニアにおいて、専任の技術者によって1台1台ていねいに組み立てられたプレミアムモデルだ。パイオニアの本気に裏打ちされた正真正銘のフラッグシップヘッドホンとなっている。実売価格は27万円。

先日開催されたフジヤエービック主催の「春のヘッドフォン祭 2015」では、オンキヨー&パイオニアブースにおいて、SE-MASTER1のトークショーが行われ、担当者から開発秘話が語られた。今回は、そこで明かされた内容を交えつつ、SE-MASTER1の特徴を紹介していこう。

春のヘッドフォン祭 2015で初展示となったパイオニアの「SE-MASTER1」

春のヘッドフォン祭 2015で初展示となったパイオニアの「SE-MASTER1」

6年前から始まっていたパイオニアの高音質ヘッドホン作り。
ハイエンドスピーカーのエンジニアがプロジェクトを主導

オーディオ好きにとってパイオニアというブランドは、スピーカーのイメージが強いのではないだろうか。オーディオ全盛期を支えてきたのもその理由のひとつであるし、ホーム用スピーカーからハイエンドモデルまでそろえる自社生産できる数少ないメーカー(いまではブランド)だからだ。

そんなパイオニアが、今回作り上げた高級ヘッドホンがSE-MASTER1だ。そもそもパイオニアのヘッドホン事業は、いまから約55年前の1960年頃、初号機「SE-1」がリリースされたことからスタートしている。そこから紆余曲折を経て、今ではDJ用ヘッドホンや低価格ヘッドホンを中心に提供しているが、振り返ってみると、スピーカーには存在するハイエンドモデル(フラッグシップ機)が、ヘッドホンにはなかった。そこで、ハイエンドヘッドホンを作るべくプロジェクトが立ち上がり、SE-MASTER1の完成に至ったのだ(初号機と名前が似ているのも気のせいではないだろう)。開発がスタートしたのは今から6年前。そう、ハイレゾブームが始まる前から開発が進められていたモデルとなるのだ。

SE-MASTER1のプロジェクトリーダーは、パイオニアの高級スピーカーも担当したことがある瑤寺晃(たまでらあきら)氏。同社の最高峰スピーカー「EX」シリーズをはじめ、ウィスキーの樽(たる)材を用いた「ピュアモルト」シリーズなど、パイオニアで評判の高いスピーカーを支えてきた人物だ。現在は、同社イノベーション事業本部技術部部長。パイオニアに入社して28年というベテランエンジニアだ。そんなパイオニアのハイエンドスピーカーの音を作り守りつづけてきた人物の1人が、同社のハイエンドヘッドホンの開発に携わっているのである。

トークショーには、開発を主導するパイオニアの瑤寺晃氏(左)と、オーディオビジュアルライターの野村ケンジ氏(右)が登場した

国内生産、さらにはハンドメイドにこだわった理由

トークショーで出た話の中で一番驚きだったのが、SE-MASTER1の製造については、専任の技術者であるマイスターと呼ばれる人が、すべて組み立てていることだ。一般的には、複数の作業員を配置して流れ作業で作るライン生産が主流だが、この製品はそうではなく最初から最後まで1人のマイスターにより手作業(ハンドメイド)で行われている。この理由は、パイオニアが、SE-MASTERに対して、数多くの精密な部品やパーツを高い精度で組み立てることを求めたからだ。組み立て精度を高めることで、よりクオリティの高い製品に仕上げることを狙ったのである。しかも、SE-MASTER1の製造を行えるマイスターは現状1人しかおらず、生産台数は1日に5台作れるくらいとのことだ。

SE-MASTER1の開発・生産を受け持つのは、プロオーディオのTADやカーオーディオ「カロッツェリアX」などを担当している、山形県天童市の東北パイオニア。マイスターも東北パイオニアの職人である。企画自体は本社チームとのことだが、東北パイオニアの技術を結集して製作されているのだ。

PCC処理のアルミニウム振動板を採用。外観は金属をふんだんに使った頑丈な作り

続いて、SE-MASTER1のスペックを見ていこう。

SE-MASTER1はオープンエアー型のヘッドホンで、ドライバーユニットのサイズは直径50mm(ネオジウムマグネット)。振動板には、PCC処理を施した25μ厚のアルミニウムを採用した。PCC処理とは、高硬度のセラミック皮膜を形成させる特殊表面処理で、内部損失を大きくすることで剛性を高めるためのもの。内部損失が低いと付帯音が大きくなり、分解能が落ちてしまう。それを防ぐことによりクリアでナチュラルな高域再生を実現しているのである。再生周波数は85kHz。日本オーディオ協会が定めるハイレゾリューション音源の高域再生性能として定義されている40kHzを大幅に上回っている。ちなみに、このPCC処理は、日本パーカライジング製のものだ。

また、振動板を囲むエッジには「PEEKフィルム複合材」と呼ばれる高内部損失素材を使用。さらに、リブ形状を改良することで、歪(ひずみ)のきわめて少ない周波数特性を実現した。このほかにも、中低音の歪の原因となる磁気変調歪を低減するために、トッププレートに銅キャップを配置している。高分解能で低歪を徹底的に行っていることがわかる。

ドライバーユニットは直径50mmのネオジウムマグネット。振動板には、PCC処理を施した25μ厚のアルミニウムを採用

ドライバーユニットの分解図

ドライバーユニットの分解図

SE-MASTER1の外観をチェックすると、金属素材が多く使われていることがわかる。たとえば、ヘッドバンド部と、ハウジングを支えるハンガーには、航空機などにも採用されるジュラルミン(高強度のアルミ合金)が使用されている。また、ハウジングには3.5mm厚のアルミ合金を使用。金属素材を用いることでしっかりと固定できるだけでなく、振動や共振を防げるようにしているという。

さらに、ハンガー、ハウジング、ベースの各連結部にゴム部材を挟むフローティング構造を採用するほか、金属部品を使ってドライバーユニットをベース部にしっかり固定できるフルバスケット方式など、ホーム用スピーカーやカー用スピーカーで培われた技術も使われている。そういった製品も手がける東北パイオニアらしいテクニックだ。

オープンエアー型にしては本体重量が460gと重めだが、装着時のフィット感が良好なため重さはそこまで気にならなかった。ヘッドバンドに装着されているヘッドクションには、東レの人口皮革素材「エクセーヌ」を使用している。内側はスエード調の肌触りだ

ハウジングを支えるハンガー。細いワイヤーのように見えるものは、側圧を好みに合わせて調整できるテンションロッド

テンションロッドは、側圧が強めと弱めの2タイプが用意されており、付け替え可能となっている

テンションロッドは、側圧が強めと弱めの2タイプが用意されており、付け替え可能となっている

着脱式ケーブル。MMCXコネクタを採用しており、リケーブルも可能

着脱式ケーブル。MMCXコネクタを採用しており、リケーブルも可能

ハウジング関連のパーツ。全体的にアルミ合金が多く使われているため、特有の金属音が気になるが、ハウジングとベース部の間に真鍮(しんちゅう)をかましたりすることで、付帯音を抑えている

「AIR Studios MONITOR REFERENCE」を初めて取得したヘッドホン

SE-MASTER1は、「ひたすらに原音に忠実な音」をコンセプトに、英国にある世界屈指のレコーディングスタジオ「AIR Studios」のサウンドエンジニアとともに音質チューニングを行っている。

同スタジオが求める品質の機器に与えられる認証「AIR StudiosMONITOR REFERENCE」を取得したそのサウンドは、瑤寺氏によれば「(パイオニアのサウンドを作りつつ)個性を極力なくす方向」としており、オーディオビジュアルライターの野村氏によれば「システム全部の音がでてくる。アンプの音も、プレーヤーの音も。Astell&Kernのプレーヤーで聞けばAKのだとわかる」というほどだ。

新しいパイオニアのハイエンドの音は、機器の特性にも反応するほどのリファレンスクオリティーになっているのである。

音質ファーストインプレッション

今回、春のヘッドフォン祭 2015にて、SE-MASTER1の音質をチェックすることができた。その音は、圧倒的ともいえる音数の多さでド肝を抜かせてくれた。静粛性がずば抜けており、音の見通しがとにかくよい。これまで埋もれていた繊細な表現も、如実に描きだしてくれる高い解像度を備えている。また、粒立ちのよい音を描きだしつつも、よくまとまったプロポーションに仕上がっているのは、さすがパイオニアといった感じだ。音場感の表現も緻密で広い。引き締まった低音はレスポンスよく鳴ってくれるため、スピード感のある楽曲でもしっかり追従してくれそうだ。高音はやや硬質な印象を受けたが、エージングが進めばだいぶ印象もかわってくることだろう。

音質とは少し離れるが、着け心地にもふれておきたい。オープンエアー型としては重い本体重量460gだが、頭に装着してみると意外なほどに軽い。テンションロッドによる側圧の具合がちょうどいいのと、本体のバランスがよくとれているからだ。試聴時間は5分と限られていたので長時間の着け心地は未確認だが、フィット感は良好だったと評したい。

まとめ

SE-MASTER1は、パイオニアの技術が惜しみなく投入された同社のフラッグシップヘッドホン。これまでパイオニアが培ってきたヘッドホンの技術に加えて、オーディオ用スピーカーやカーAVで学んだノウハウも取り入れたモデルで、パイオニアの新しいフラッグシップの音を感じさせてくれる仕上がりだ。特にハイレゾ音源では、情報量の多さや空気感が実感できると思う。実売価格は27万円と、ヘッドホンとしては高価だが、その裏側にあるさまざまなステータスを考えればうなずける設定だ。ヘッドホンで楽しむハイクオリティなパイオニアサウンド。その音をぜひ体験してみてほしい。

銭袋秀明(編集部)

銭袋秀明(編集部)

編集部の平均体重を底上げしている下っ端部員。アキバをフィールドワークにする30代。2015年4月、某編集部から異動して価格.comマガジン編集部へ。今年こそ、結果にコミット!

製品 価格.com最安価格 備考
SE-MASTER1 235,440 ヘッドホンのフラッグシップモデル
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2017.4.27 更新
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