オーディオテクニカは2015年10月8日、同社のヘッドホン・イヤホンブランドの主力モデルとなる「ART MONITOR(アートモニター)」「SOLID BASS(ソリッドベース)」シリーズを一新。搭載するドライバーなどをリニューアルして、フルモデルチェンジを行った。各シリーズの上位モデルはハイレゾ音源の再生に対応している。今回は、リニューアルした各シリーズのヘッドホン・イヤホンの最上位モデルにのみ絞って、特徴を紹介していくとともに、音質についても簡単ながらレポートしていきたい。
はじめに取り上げるのは、原音再生を基本ポリシーにするART MONITORシリーズ。同シリーズは1994年に誕生し、今年でデビュー21周年となる、同社の顔とも言えるモデルだ。比較的フラットなトーンバランスを持ちつつ、爽快感の高い中高音域が特徴的なサウンドで、これぞオーディオテクニカの音と言う方も少なくないだろう。同シリーズの新しい最上位モデル「ATH-A2000Z」の特徴と音をチェックしていこう。
ART MONITOR シリーズの最上位モデルATH-A2000Z
新しいART MONITORシリーズの最上位モデルとして登場するのが、密閉型ダイナミックヘッドホンとなるATH-A2000Zだ。デビュー以来改良を加えていたドライバーを新規設計し、ハイレゾ音源時代に対応するべく、さらなる音質向上をテーマに、チューニングが行われている。
その中で大きなポイントとなるのが、日本の職人が1点1点丹念に作り上げたという、新設計のドライバーユニットだ。口径は53mm。ドイツ製パーメンジュール磁気回路や純鉄ヨークなどを採用することで磁束密度を高めており、音の駆動力を引き上げた。また、空気の流れを均一化し歪みのないダイアフラムの音を再現するトップマウントPCBを採用。さらに、ダイアフラムには新しく超硬質特殊コーティングを施すほか、純度の高いOFC7Nボビン巻きボイスコイルにより、中高域の表現に磨きをかけている。
このほかにも、ドライバーユニットを固定する土台、バッフルには、不要振動を抑制するマグネシウム素材を採用。加えて、軽量なチタニウムハウジングにより、優れた音響特性と高剛性をあわせ持つとしている。なお、ハウジング内には、もうひとつハウジングを設けた二重構造「D.A.D.S構造」になっており、伸びのある低音を実現している。
ドライバーユニットの分解図
不要振動を抑制するマグネシウム製バッフル
空気のバネを使用することで、伸びのある低域を実現するという、D.A.D.S.構造(PAT.)
チタニウムハウジング
装着感も改良している。頭へフィッティングしやすいように、新3D方式ウイングサポートを装備。また、イヤーパッドには低反発素材の立体縫製を採用し、長時間リスニングでも疲れにくく、安定した装着感を実現している。
ART MONITORシリーズはもともと着け心地に定評があるシリーズで、本モデルでも従来同様の着け心地の良さを実感できる。新3D方式ウイングサポートや立体縫製イヤーパッドになって、より重心がよく着けてもそこまで重さを感じない。長時間のリスニングでも疲れにくくなっている。
新3D方式ウイングサポート
立体縫製イヤーパッド
ATH-A2000Zは、聴きやすいモニターライクなトーンバランスを持ったサウンドだ。中高域の透明感としっかり抜けていく爽快感が印象的で、金属的な響きがややあるものの、高い音がでるブラス系の楽器とは相性がよく、いきいきとした元気のよい表現をしている。低域はスピード感がありもたつくこともない。深く沈みこむ音ではないが、過不足のないものになっており、低音重視というわけでなければ十分に満足できるレベルだ。
試聴環境。同社の真空管ヘッドホンアンプ「AT-HA22TUBE」がセッティングされていた
再生周波数帯域:5Hz〜45kHz
出力音圧レベル:101dB/mW
最大入力:2000mW
インピーダンス:44Ω
重量:294g(ケーブル除く)
ケーブル:左右両出しの左右独立アース線(4芯)構造。線材はOFC-6N+OFC。ケーブル長は3m