オーディオテクニカの重低音ヘッドホン・イヤホン「SOLID BASS」シリーズから、ハイレゾに対応したカナル型イヤホン「ATH-CKS1100」が登場した。すでにSOLID BASSシリーズの最上位ヘッドホン「ATH-WS1000」のレポートはお伝えしているが、今回紹介する「ATH-CKS1100」は、同シリーズのイヤホン最上位機種として位置付けられた製品だ。イヤホンというコンパクトなボディの中に、向かい合わせに配置した2基のドライバーを採用することで、重低音ながらハイレゾの精細さも表現できるモデルとなっている。価格は25,000円。発売日は10月23日。
オーディオテクニカのカナル型イヤホンATH-CKS1100
ATH-CKS1100の最大の特徴は、2つのドライバーユニットを向かい合わせに配置した「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」。それぞれのドライバーを同時に動かす(ただし、一方には逆位相を流し振動板を反対方向に動かす)ことで、ドライバーが互いに押したり引いたりするPUSH-PULL駆動になり、ドライバー単体に比べてより大きいパワーが得られるという。迫力のある重低音はこうした仕組みにより実現している。また、逆位相で動作するため相互変調を抑制し、歪みを低くできるのも大きなポイントだ。
なお、DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS自体は、すでに発売されている「ATH-CKR10」や「ATH-CKR9」で初めて搭載されたものだが、ATH-CKS1100ではそれをSOLID BASS用に改良。重低音と高解像度を両立した音作りがなされている。後方部のマグネットのサイズを大きくし、2枚ある振動板のうち前方のものには、高硬度なダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを採用。高域特性も向上させているとのことだ。
SOLID BASSシリーズに用に改良されたDUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS
エンクロージャーは切削無垢アルミニウム材だ。ドライバーから伝わる振動を抑え、不要な音歪みを低減している。また、筐体には内部の空気のバネ性をコントロールする2つのベント(空気孔)を設けるほか、振動板への負荷を軽減するステンレス製の音響抵抗材を装備し、低音の出力を高めつつレスポンスよく仕上げた。
ケーブルはATH-CKS1100専用品で、コネクタにはオーディオ専用として設計されたA2DC(Audio Designed Detachable Coaxial)を使用。着脱式で見た目はMMCX風だが、市販のリケーブル品は使えないものとなっている。線材はL/Rチャンネル独立のスタッカード撚り線だ。
切削無垢アルミニウム材を使用したエンクロージャー
イヤーチップを外したノズル部。メッシュではない、繊維状のスクリーンが装着されている
着脱ケーブル。コネクタには、オーディオ専用として設計されたA2DCが使われている
新製品発表会の会場でATH-CKS1100を試聴することができた。再生環境は、プレーヤーがFiiO「X5」で、ヘッドホンアンプがオーディオテクニカ「AT-PHA100」であった。
すでにお伝えしたSOLID BASSシリーズの最上位ヘッドホン「ATH-WS1000」と同様に、低域をただ盛った音ではなく、量感を上げつつもしっかり締まった制動感があり、そのサウンドプロ―ポーションはまさにガッチリした太い仕上がりだ。それでいて歪みも気にならない程度に抑えられているため、質・量ともにクオリティーの高い低域になっている。
いっぽう、低域が前に出てくると他の音が聴こえにくくなるケースもあるが、ATH-CKS1100ではそういうこともない。中高域の見通しがよく、かつ従来モデルに比べて解像度も高いため、情報量が不足している感じはない。空間的な表現についても、音場の広がり具合は前世代に比べて数段上がった印象だ。これまでのSOLID BASSシリーズを聴いたことがある人であれば、その進化を実感できる音になっている。