特別企画
ハイレゾ相当の高音質放送にも期待できる新サービス

3月にスタートする新しいデジタル放送「i-dio」とは?

今までになかったまったく新しいデジタル放送「i-dio」(アイディオ)が、2016年3月に東京、大阪、福岡の3エリアでサービスがスタートする。順次全国へと展開される予定だが、そもそもi-dioとはどういったサービスなのか? 何が視聴できるのか? 視聴方法は?といった疑問も多い。i-dioのキーマンたちにそのあたりをくわしくうかがってきた。

株式会社エフエム東京取締役/ BIC株式会社の常務取締役/東京マルチメディア放送株式会社代表取締役 藤勝之氏(写真中央)。株式会社VIP代表取締役 仁平成彦氏(写真右)。株式会社VIP事業開発部長 星名信太郎氏(写真左)

「i-dio」とは

i-dioは、既存のテレビやラジオと並ぶ、新しい地上波放送。大枠では「V-Lowマルチメディア放送」と呼ばれ、地上アナログテレビ放送のデジタル化で捻出した電波帯域を利用する。V-Lowと称するのは、テレビで利用していたVHF帯のLow(下側)を使うからだ。

i-dioの運営母体は、株式会社エフエム東京が中心となって設立したV-Lowマルチメディア放送の事業全般を推進する持ち株会社「BIC株式会社」で、その下で基幹放送局提供事業(ハード事業)を担う株式会社VIPと、全国を広域ブロックに分け、それぞれの地域を担当する移動受信用地上基幹放送局(ソフト事業者)である複数の「マルチメディア放送株式会社」で構成される。

関東・甲信越広域圏の親局は東京タワー(東京局)。基幹放送局提供事業(ハード事業)を担う株式会社VIPが関東総合通信局から免許を受けて運営

i-dioは完全なデジタル放送で、ラジオ的な音声番組を中心に、情報や映像も活用した本格的なマルチメディア放送を目指している。対象はスマホなどの情報端末、カーナビゲーション、サイネージなどを想定。電波を使った「放送」なので、受信にはチューナーが必要だが、視聴者がいくら増えても映音の品質やデータ通信速度が低下することはない。インターネット網を利用した通信と大きく異なる点だ。

「i-dio」で何が視聴できるのか?

i-dioは日本全国を7つの広域ブロックに分けて運営されるため、地域によって受信できるチャンネルと内容には差異がある。ブロックの1つである「関東・甲信越」ブロックを例に見ると、3月1日のサービススタート時に予定されているのは5つのラジオチャンネルと1つの映像チャンネルだ。放送チャンネルと内容のイメージについて藤氏にうかがった。

藤勝之氏

藤勝之氏

具体的にチャンネルの内容を紹介すると、「東京マルチメディア放送」が手がける「i-dio Selection」は、CMやトークなしのノンストップの音楽専門で、クラシック、ジャズ、マスターピース(洋楽)の3つを放送。ミュージックバード(音楽専門の衛星デジタルラジオ)的なイメージという。「i-dio Creators Ch.」は、映像が中心。クリエイターが比較的自由にショートムービー、フラッシュアニメなどを発表できる場にしたいという。また、「TOKYO SMARTCAST」の「TS ONE」は、総合編集で音楽やニュース・カルチャーを発信、TOKYO FMのデジタル版的な内容。特徴は音質で、MPEG-2 AAC形式/320kbpsで放送を行い、2017年にはサンプリング周波数が96kHzのハイレゾ相当(HD Sound)音源を採用予定するなど、「デジタル地上波最高音質」を標榜する。エフエム東京本社ロビーには、一般的なネット配信音声と「i-dio」の音質差を聴き比べできるデモ展示が行われているなど、高音質へのこだわりがうかがえる。

エフエム東京本社ロビーに設置された音質比較デモ展示。ヘッドホンを着用し、切り替えることで音質差を確認できる

音質比較デモ展示では、リアルタイムの周波数波形表示もあり、i-dioによる高音質放送が、高域までカットされることなく再生できていることをアピール。電波放送のメリットとして「高音質」を強く訴求しているのが印象的だ

放送に関する技術詳細は、株式会社VIP仁平氏と星名氏にうかがった

放送に関する技術詳細は、株式会社VIP仁平氏と星名氏にうかがった

聴き放題という点では、サブスクリプションサービスを連想する部分もある。TS ONEは曲選択が自由にできないながらも、音質にすぐれ、無料というのは大きな魅力だ。リスナーの選択肢が増えると言う点でも歓迎したい。

また、「アマネク・テレマティクスデザイン」による「アマネク・チャンネル」は、自動車を運転するドライバーに向けた、日本初のモビリティ向け専用デジタルラジオチャンネル。放送と通信、位置情報(GPS)とビッグデータを活用し、例えば進行方向の道路状況提供ほか、レジャー施設のクーポン券配布など、柔軟な情報提供が可能という。V-Low電波放送なら、自動車が高速移動中でも安定したデータ受信が可能で、しかも通信費用はかからない。さらに、災害発生時に道路が寸断した際、利用できる経路の情報提供においても、広く遠く、多くのユーザーに同報可能な電波放送ならではのメリットが生かせる。近年では、携帯電話網やWi-Fiスポットの利用など、インターネット経由のデータ通信が主流になりつつあるが、通信障害の懸念はゼロにできない。電波を使用するi-dioは、通信インフラ全体の冗長化という意味でも重要といえるだろう。地デジ放送が受信できるカーナビゲーションシステムであれば、それほどコストアップなしでi-dioに対応できると見られ、また、ユーザーにとっても通信費や受信料が無料なことから、今後発売されるカーナビ製品は、i-dioに対応する可能性が高そうだ。

ここからはi-dioの新しい部分になるのだが、放送に際しては、放送局設備を提供するハード事業者のVIP(ブイアイピー)と、 放送設備を借り受けて地域ごとに基幹放送業務を行うソフト事業者(マルチメディア放送株式会社)、コンテンツプロバイダー(コンテンツ提供者)が分かれている。端的には、放送に関わる許認可が必要な部分と、コンテンツ制作が分離されることにより、誰もが情報を発信できる可能性を持つ。藤氏によると、ショッピングモールのテナントに似ているという。人気のないコンテンツプロバイダーは、入れ替えも可能。コンテンツプロバイダー同士の切磋琢磨をうながし、放送の活性化を狙ったものだと言う。

番組の内容やサービスについては、コンテンツプロバイダーに委ねられることになるが、ラジオで音楽を聴いていれば、ジャケット写真や、アーティスト名、曲名といったテキストデータを付加できる。また、気に入った楽曲があれば、スマートフォンなどのデータ通信を利用して音源ファイルが購入できるようなサービスも可能と言う。

視聴方法は?

原則は電波による放送なので、チューナーを持つ受信機が必要。「i-dio」が受信できる市販第1号製品は、コヴィア製のSIMフリースマートフォン「i-dio Phone」で、すでにビックカメラやヨドバシカメラなどでも購入できる。コヴィアでは、i-dioのハイレゾ級音質を生かすため、新にオーディオブランド「ZEAL」を立ち上げ、i-dio Phoneへの接続を想定した外付けUSB DACヘッドホンアンプ「EDGE」も用意。わずか10gで生え出しのmicroUSBケーブルを備え、バスパワー駆動ができるなど携帯性も重視。それでいて、192kHz/24bit対応のスペックを誇り、日本オーディオ協会が規定するハイレゾロゴも掲示している。

コヴィア製のSIMフリースマートフォン、i-dio Phone

コヴィア製のSIMフリースマートフォン、i-dio Phone

このほか、iPhoneをはじめとする、チューナーを内蔵していないスマホやタブレットでの視聴を可能にするWi-Fiチューナーを合計10万名に無償でモニター配布予定(2月末応募締め切り分5万名に加え、3月より東京・大阪・福岡で3万名、5月に名古屋で2万名追加募集予定)。同チューナーは放送波を受信して得たデジタルデータをそのまま携帯端末に転送する仕組みで、映音クオリティや機能はいっさい損なわれない。10万名とは驚くべき数だが、新しい放送の開始に際し、視聴者を獲得して弾みをつけるのが狙いだろう。

左のアンテナを搭載した小さな箱が「i-dio WiFiチューナー」。リチウムイオンバッテリーを内蔵し、受信したi-dioのデジタルデータをWi-Fi経由で転送する。視聴はスマートフォンおよびダブレットを想定し、iOSとAndroid向けの専用アプリを用意

自動車ドライバー向けの「アマネク・チャンネル」については、将来的に車載カーナビゲーションシステムが対応してメインの受信機となりそうだが、直近では、2016年4月に「車載用TunerBox」を1万円前後で市販予定。専用の「Amanekアプリ」をインストールしたスマホと組み合わせることで、Amanekサービスの一部が利用可能になるそうだ。

さいごに

藤氏は、i-dioが単なるデジタルラジオではなく、情報化時代にちょうどよい本格的なマルチメディア放送だと強調する。ハード事業者、ソフト事業者、コンテンツプロバイダーを分離した柔軟性の高い枠組みや、原則無料で利用できる敷居の低さなども魅力的だ。現時点で、i-dioを受信できる端末は少ないが、今後、カーナビ、スマホ、防災ラジオ、ミニコンポなどが対応し、我々の身近な存在になる可能性を感じた。

また、AVファンにとっては、高音質の無料放送は歓迎すべきであり、音楽との出会い、そして手軽にハイレゾ音源をダウンロード購入できる手段としても期待したい。携帯電話網を経由したIP通信が全盛の今、放送の特性を生かしたi-dioがどのような楽しみや利便性をもたらしてくれるのか、今後も見守りたい。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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