7月に突如開発中であることが発表されたニコンフルサイズデジタル一眼レフカメラの新モデル「D850」。名機「D810」の性能をさらに進化させたモデルとして、高精細な描写と高速連続撮影の両立を目指して開発を進めているとアナウンスされていたが、本日、その詳細がついに明らかとなった。同社フルサイズデジタル一眼レフカメラ初の裏面照射型CMOSの採用や、倍率約0.75倍の光学ファインダーの搭載など、非常に見どころの多い製品となっている。さっそく、D850の特徴をまとめてみた。
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D850のD810からの進化点は非常に多岐にわたるが、なかでももっとも注目したいのが、カメラの心臓部とも言える撮像素子と画像処理エンジンだ。D810も、有効約3635万画素のニコンFXフォーマットCMOSセンサーと画像処理エンジン「EXPEED 4」を搭載し、発表当時は“ニコン史上最高画質”という触れ込みで大きな話題を呼んだが、今回登場するD850は、有効約4575万画素のニコンFXフォーマット裏面照射型CMOSセンサーと画像処理エンジン「EXPEED 5」を搭載するなど、D810のスペックを大きく上回るものとなっている。
有効約4575万画素のニコンFXフォーマット裏面照射型CMOSセンサー
画像処理エンジン「EXPEED 5」
入射光をより効率的にフォトダイオードに導くことができる裏面照射型CMOSセンサーの採用と、画像処理エンジンが最新世代の「EXPEED 5」となったことで、常用ISO感度はISO 64〜25600、拡張ISO感度は最大ISO 102400相当になるなど、いずれもD810より1段分広がっている。高解像度化と高感度をしっかりと両立した点はかなり評価できる部分だろう。
また、裏面照射型CMOSセンサーの読み出し速度の速さを生かし、ボディ単体で秒間最大7コマ、オプションのマルチパワーバッテリーパック「MB-D18」装着時で秒間最大9コマの連続撮影速度を実現。D810の時のように、DXクロップ撮影時に連続撮影速度が向上するといった機能は残念ながら搭載されていないが、マルチパワーバッテリーパックなしでも秒間最大7コマ撮影できるようになったのはうれしいポイントといえるだろう。連続撮影可能コマ数も、14bitロスレス圧縮RAWで約51コマ(D810は約28コマ)と、こちらも大幅に強化されている。高解像度化・高感度化だけでなく、動体撮影にも積極的に使っていけるようになったのはうれしい限りだ。
マルチパワーバッテリーパック装着時は5000コマ以上撮影できるという
さらに、消費電力の少ない裏面照射型CMOSセンサーの採用によって、バッテリー性能が大幅にしているのも見逃せない。付属の「EN-EL15a」使用時で約1840コマ、バッテリーパック装着時なら約5140コマも撮影できるという。これだけのスナミナバッテリーを搭載したモデルはこれまでみたことがない。カメラマンにとって、バッテリー残量を気にすることなく、撮影に集中できるようになったのは、間違いなくプラスに働くはずだ。
AEセンサーは、同社デジタル一眼レフカメラのフラッグシップモデル「D5」で採用された「180KピクセルRGBセンサー」を採用し、測光は-3EVの暗さまで対応。AWBまわりでは、AWBに新たに「自然光オート」を追加。「自然光オート」では、制御色温度範囲を自然光に限定し自然光でのAWBが向上しているという。
AEセンサーは、D5と同じ「180KピクセルRGBセンサー」だ
AFセンサーは、D5と同じ「マルチCAM20K」を搭載。D5に搭載されたAF専用エンジンも搭載されている。AFポイントは153点で、うち99点はクロスタイプセンサー、中央のフォーカスポイントで-4EVに、その他のフォーカスポイントすべてで-3EVに対応する。機能面では、D5にも搭載されていた「AF微調節の自動設定」を備えるほか、静止画ライブビュー時に「ノーマルエリアAF」の約4分の1のサイズのフォーカスポイントで、ごく狭いエリアに高精度でピント合わせができる「ピンポイントAF」や、マニュアルフォーカスでのピント確認に便利な「ピーキング」、深度合成の素材を簡単に撮影できる「フォーカスシフト撮影」といった機能が追加されたのもトピックだ。
AFセンサーもD5と同じ「マルチCAM20K」だ
AF制御に特化した専用エンジンも搭載する
D850は本体部分についても多数の進化を遂げている。なかでも、光学ファインダーはかなりこだわっており、新設計の倍率約0.75倍の光学ファインダーを新たに搭載してきた。この倍率約0.75倍というのは、他社を含めたデジタル一眼レフカメラで史上最大のファインダー倍率。ミラーレスカメラにはないデジタル一眼レフカメラの魅力を最大限に高めたということだろう。なお、光学ファインダーが大型化したことで、内蔵ストロボについては省略されている。
新設計のペンタプリズムを搭載し、他社を含め、現行のデジタル一眼レフカメラで最大となるファインダー倍率を実現
また、背面液晶モニターについても強化されており、D850では約236万ドットのチルト式3.2型タッチパネル液晶モニターを新たに搭載。「D500」などに搭載されている可動領域の広い3軸ヒンジ構造を採用しており、撮影アングルの自由度が高まっている。
背面液晶はのチルト式3.2型タッチパネル液晶モニターとなった
シャッターユニットも特徴的で、ブレによる画質劣化を抑えるために、同社のデジタル一眼レフカメラとしては、初めてシャッターカウンターバランサーを搭載。シャッター先幕とバランサーを逆方向に走行させ、振動を打ち消し合うことで、効果的にブレを低減するという。また、静止画ライブビュー時に、先幕、後幕ともに電子シャッターを使用する「サイレント撮影」を搭載したのもトピック。フル画素で秒間約6コマ、864万画素で秒間約30コマ(最大3秒まで)の撮影が可能となっている。
シャッターカウンターバランサーを搭載したD850のシャッターユニット
ボディには、軽量かつ堅牢性にすぐれたマグネシウム合金を採用。本体サイズは約146(幅)×78.5(奥行)×124(高さ)mmとなっている。ちなみに、シャッターバランサーの配置などの兼ね合いから、D500などで採用された軽量化や薄型化に有利なモノコック構造の採用は、D850では見送られている。本体重量についても、大型の光学ファインダーやチルト式液晶モニターの搭載などにより、約1005g(バッテリー、XQDカードを含む、ボディーキャップを除く)と、D810からやや重くなっている。このあたりは、信頼性や耐久性を優先した結果といえそうだ。
マグネシウム合金ボディを採用
本体前面
本体背面。ボタンにはイルミネーション機能が搭載されている
本体天面。レイアウトはD810をほぼ踏襲。ペンタ部の内蔵ストロボのみ省略されている
本体底面
本体側面。カードスロットはSDメモリーカードとXQDカードのデュアル仕様だ
本体前面にシーリングを施し、耐久性と信頼性を確保
D850は機能面についても大幅に強化されている。なかでも、4K動画撮影の進化は見逃せない。
これまでにも、D5やD500などで4K動画撮影をサポートしていたが、これらのモデルでは、撮像素子の一部をクロップして動画撮影を行っていたのに対し、D850では、クロップなしで撮像素子をフルに使用して撮影できるようになり、特に暗所での動画撮影時の画質が大幅に向上しているという。
また、撮像素子の画素数が向上したことで、インターバルタイマー撮影を使って、8Kのタイムラプス動画の素材となる静止画を撮影できるようになったのも面白い。タイムラプス撮影はシャッターユニットの摩耗が気になって使えなかったという人も、D850なら電子シャッターだけを使って撮影できるようになったので、これまで以上に積極的に使えるはずだ。
D850のプロモーションムービーでも8Kタイムラプス撮影などが紹介されている
さらに、4K動画以外では、フルHD動画撮影時に4倍スロー(120/100pで画像読み出し、30/25pで記録・再生)、5倍スロー(120pで画像読み出し、24pで記録・再生)の動画を撮影できる「スローモーション動画」もユニークな機能。これまでにない動画撮影を楽しめるはずだ。
動画専用メニューを用意するなど、動画機能にかなり力をいれている
このほか、ネガフィルムを4544万画素のデジタルデータにする「ネガフィルムデジタイズ」や、14bitロスレス圧縮の1000コマのRAWファイルも約25分で現像できるというカメラ内RAW現像に新たに加わった「一括現像機能」など、便利な機能を多数搭載。D5には搭載されなかった「SnapBridge」が搭載された点もうれしいポイントといえるだろう。
「ネガフィルムデジタイズ」では、上記写真のような専用アクセサリーを使うことで、ネガフィルムをデジタル化することができる。機能はライブビューのメニューから呼び出し可能だ
D850は、D810の登場以来、実に約3年ぶりとなるD800番台の最新モデルだが、その間に他のモデルで培ってきた技術をおしみなく投入し、まさにスペックモンスターと言える完成度の高いモデルに仕上がっている。特に、高解像度かつ高感度かつ高速連写できるという点は、これまでのD810ではカバーしきれなかったところで、同社が風景だけでなく、ファッションやウエディング、広告用スポーツ写真など、オールラウンドで使えるモデルとなると予告していたこともうなずける。
発売は9月8日ともうすぐだ。ラインアップは本体のみで、価格は40万円前後(税込)になる予定とアナウンスされているが、できることの多さを考えたら決して高くはないはずだ。発売に先駆け、今週末開催のニコン100周年ファンミーティングにて実機がお披露目されるということなので、気になる人はぜひ注目してほしい。
PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。