キヤノンの「PowerShot G」シリーズは、1インチ以上の大型撮像素子を搭載する高画質なコンパクトデジカメとして人気を集めている。本日2017年10月16日に発表になった、同シリーズの新しいフラッグシップモデル「PowerShot G1 X Mark III」は、APS-Cサイズの撮像素子を新たに採用するなど従来から大幅な進化を遂げている。その主な特徴をくわしく紹介しよう。
PowerShot G シリーズの新しいフラッグシップモデルPowerShot G1 X Mark III
PowerShot G1 X Mark IIIで特に注目したいのは、APS-Cサイズの大きな撮像素子や、光学3倍ズームレンズ、電子ビューファインダー(EVF)を搭載しながらも非常にコンパクトなボディに収まっていること。画質性能や機能の詳細は後述するが、まずはボディのコンパクトさをチェックしてほしい。
サイズは115.0(幅)×77.9(高さ)×51.4(奥行)mmで重量は約399g(バッテリー、メモリーカード含む)。従来モデル「PowerShot G1 X Mark II」(重量約553g)と比べて154gも軽く、PowerShot Gシリーズの中では光学4.2倍ズーム対応のEVF内蔵1インチモデル「PowerShot G5 X」に近いサイズ感に収まっている。さらに、このコンパクトボディに防塵・防滴性能を有しているのも大きなポイントだ。
APS-Cセンサーを搭載しながら重量約399gのコンパクトボディを実現
光学3倍ズームレンズを採用しているが、レンズ収納時の奥行は51.4mmとスリムにまとまっている
ボディ上面に撮影モードダイヤルや露出補正ダイヤルを装備する
続いて画質性能を見ていこう。撮像素子や映像エンジンの基本的なスペックはミラーレス「EOS M5」「EOS M6」や、一眼レフ「EOS 9000D」「EOS Kiss X9i」など「EOS」シリーズの最新モデルと同等となっている。
最大の特徴は、キヤノンのコンデジとして初めてAPS-Cサイズの撮像素子(約22.3×14.9mm、有効約2420万画素)を採用したこと。APS-Cサイズは、従来モデルPowerShot G1 X Mark IIの1.5型(約18.7×12.5mm)と比べて1.3倍程度の大きさとなる。EOSシリーズの一眼レフやミラーレスも採用する大型の撮像素子を用いることで、従来モデル以上に階調表現にすぐれ、高感度でも低ノイズな画質が得られるようになった。
映像エンジンは最新の「DIGIC 7」。「DIGIC 6」と比べて最大約14倍の情報を用いたノイズリダクションによって高感度時の解像感が向上した映像エンジンだ。このエンジンの搭載によって、回折補正などの機能が追加されているほか、明るさとコントラストを自動調整する「オートライティングオプティマイザ」の効果も向上している。
レンズは、35mm判換算で焦点距離24〜72mmの画角に対応する光学3倍ズームレンズを採用。開放F値は広角端でF2.8、望遠端でF5.6。広角24mmで開放F2.8の明るさを実現しているのがポイントだ。従来モデルと比べると少し暗く、望遠端の焦点距離が短いレンズとなるが、その分コンパクトにまとまっている。
広角24mm(開放F2.8)〜望遠72mm(開放F5.6)対応の光学3倍ズームレンズを搭載
左が広角端、右が望遠端。コンパクトなレンズにまとまっている
オートフォーカス(AF)システムは、EOSシリーズの最新モデルと同じ、画面の広いエリアで像面位相差AFを利用できる「デュアルピクセルCMOS AF」を採用。キヤノンのコンデジとしては初の像面位相差AF搭載モデルとなる。従来モデルのコントラストAFのみと比べてよりスピーディーなピント合わせが可能だ。動画撮影時にも滑らかなAFを利用できる。
「デュアルピクセルCMOS AF」を採用し、広いエリアでAFが使える「スムーズゾーンAF」にも対応している
連写はAF追従で最高約7コマ/秒、1コマ目固定で最高9コマ/秒に対応。AFと連写の性能を見るとEOS M5やEOS M6と同等となっており、APS-Cコンデジとしてはすぐれた性能を実現している。
操作性では、約236万ドットの有機ELデバイス(0.39型)を採用したEVFを内蔵したのが大きな特徴だ。キヤノンの光学技術を結集したレンズを採用するなどして、周辺まで高解像なEVFに仕上がっているという。EVFを覗いた状態でスムーズに操作できるように、ズームなどの各種操作を割り当てられるスムーズリングと、右手人差し指で操作できる電子ダイヤルを搭載しており、より直感的な操作が可能だ。
約236万ドットの内蔵EVF
各種機能を割り当てられるスムーズリングをレンズ部に搭載
グリップの近くに電子ダイヤルが備わっている
さらに、タッチパネル搭載の3.0型バリアングル液晶モニター(約104万ドット)も採用。タッチAFやタッチシャッターといった操作のほか、EVFを覗いたままタッチ操作でAF枠を移動できる「タッチ&ドラッグAF」にも対応している。タッチ&ドラッグAFは、タッチ操作でAF枠を指定できるうえ、モニター上をドラッグしてAF枠を移動することも可能。操作しやすいように枠の動き方や作動エリアをカスタマイズすることもできる。
3.0型のバリアングル液晶モニター(約104万ドット)を採用
タッチパネルに対応しており、タッチシャッターなどの便利な操作が可能だ
タッチ&ドラッグAFは、タッチした際のAF枠の移動方法(絶対位置もしくは相対位置)と、操作可能な領域(全域、左半分、右半分、左上、左下、右上、右下)の設定が可能。利き手や利き目、手の大きさにあわせて使いやすいようにカスタマイズできる
このほかの機能面では、カメラをパンニングすることでパノラマ写真を撮影できる「パノラマショット」や、星空夜景や星空軌跡などの撮影が可能な「星空モード」、シャッタースピードなどを最適な設定に調整する「流し撮りモード」など、PowerShotシリーズらしい多彩な撮影機能を搭載。タイムラプス動画の撮影にも対応している。
カメラをパンニングすることでパノラマ画像を自動合成するパノラマショット(左)、カメラの動きや被写体の進行方向・速度を解析して最適なシャッタースピードに自動設定流するし撮りモード(右)といったシーンモードを搭載する
ネットワーク機能では、Wi-Fiに加えてBluetoothを搭載。Bluetoothでのスマートフォンとの常時接続が可能で、スマートフォンからの操作のみでWi-Fiに切り替えてカメラ内の画像の閲覧・転送を行える。エントリー向け一眼レフの最新モデル「EOS Kiss X9」と同じように、カメラの電源がオフの状態でもカメラ内の画像にアクセスできるのが便利だ。さらに、Bluetoothでの位置情報の常時送信にも対応しており、カメラのレリーズに対応してスマートフォンの位置情報を撮影する画像に加えることも可能だ。
対応バッテリーはPowerShot G5 Xなどと同じ「NB-13L」。静止画の撮影枚数はモニター表示時・ファインダー表示時ともに約200枚となっている。
PowerShot G1 X Mark IIIの最大の特徴は、APS-Cサイズの撮像素子を搭載するモデルながら重量約399gのコンパクトボディに収まっていることだ。さらに、単焦点レンズを採用するAPS-Cコンデジが多い中で、広角24mm(開放F2.8)対応の光学3倍ズームレンズを採用するのもこのモデルの魅力。持ち運びやすいうえに広角から中望遠までズームを生かした撮影ができるので、スナップや旅行、風景、ポートレートといった幅広い撮影に対応することが可能だ。
レンズ一体型ならではの撮像素子に最適化したレンズを採用しており、レンズと撮像素子のマッチングによる高画質にも期待できる。キヤノンのAPS-Cデジカメは一眼レフやミラーレスなど選択肢が多いが、PowerShot G1 X Mark IIIはその選択肢をさらに広げる注目度の高いコンデジだ。ハイエンド向け一眼レフのサブ機として利用するのもいいだろう。市場想定価格は13万円前後(税別)。発売は2017年11月下旬が予定されている。