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エントリー一眼レフの人気ブランドがついにミラーレスに

「DIGIC 8」初採用! “Kiss”ブランド初のミラーレス「EOS Kiss M」誕生

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キヤノンの「EOS Kiss」は、フィルム一眼レフ時代から長年にわたり高い人気を誇る、エントリー向け一眼レフ。一眼レフでもっとも有名なブランドと言っても過言ではないが、2018年3月下旬、そんなEOS Kissブランドにこれまでにない展開が始まる。「EF-M」マウントを採用する「EOS M」シリーズの新モデルとして、EOS Kissブランドの冠がついたミラーレスカメラ「EOS Kiss M」が初めて発売になるのだ。本記事では“ミラーレスKiss”の特徴をくわしく紹介しよう。

2018年3月下旬に発売になるEOS Kiss M。カラーバリエーションはホワイトとブラックの2色

2018年3月下旬に発売になるEOS Kiss M。カラーバリエーションはホワイトとブラックの2色

最新の映像エンジン「DIGIC 8」をいち早く搭載し、AFがさらに進化

EOS Kiss Mのスペックの中で特に注目したいのは、キヤノンのデジタルカメラとして初めて映像エンジンの最新バージョン「DIGIC 8」を採用していること。DIGIC 8によってオートフォーカスや画質などが大きく進化しているのだ。

オートフォーカス(AF)は、位相差AFによる高速合焦が可能な「デュアルピクセルCMOS AF」の性能がさらに向上。測距エリア・測距点が拡大し、対応レンズであれば画面の幅約88%×高さ約100%の広いエリアで、横13×縦11の最大143点の測距点を使ったピント合わせが可能になった。非対応レンズでも幅約80%×高さ約80%のエリア、横11×縦9の最大99点に対応する。2016年11月発売の「EOS M5」は最大49点(横7×縦7)のAFシステムだったので、比べると大幅にスペックアップしたことになる。

なお、幅約88%×高さ約100%のエリアに対応するレンズは、「EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM」「EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM」「EF-M28mm F3.5 マクロ IS STM」の3本。一部「EF-S/EFレンズ」でも対応するとのことだ。

さらに、被写体の追尾性も向上。2次元の情報だけでなく、被写体や背景との奥行き情報も活用するようにアルゴリズムが進化し、従来よりも高精度な追尾が可能となった。似たような被写体の誤追尾を防ぎ、背景と同系色の追尾にも強くなったという。

最低測距輝度は「EV-2」に向上。EOS M5は「EV-1」なので約1段分改善したことになる。より暗いシーンでもAFの利用が可能だ。また、AFフレームサイズ「小」設定時でもコンティニュアスAFが可能になったのも進化点だ。

対応レンズを装着すれば、幅約88%×高さ約100%のエリアで、最大143点の測距点(横13×縦11)を使ったAFが可能

従来よりも被写体の追尾性が向上し、サーボAFを使った高精度な追尾が可能となっている

従来よりも被写体の追尾性が向上し、サーボAFを使った高精度な追尾が可能となっている

AFの機能では「瞳AF」を追加。サーボAFでの利用には対応しないものの、検出した顔の瞳に自動的にピントを合わせてくれる。タッチ操作で左右どちらの瞳にピントを合わせるかの切り替えも可能だ。

連写はAF追従で最高約7.4コマ/秒、AF固定で最高約10.0コマ/秒を実現。EOS M5よりもコマ速がアップしている。

「DIGIC 8」によって画質も向上。4K動画撮影にも対応

撮像素子は、有効約2410万画素のCMOSセンサー(APS-Cサイズ)を採用。感度はISO100〜25600に対応。拡張設定でH(ISO51200相当)も選択できるようになった。

画質の細かいところが進化しており、自然な明るさに補正する「オートライティングオプティマイザ」は、顔検出と連動して従来と同じ補正を行いつつ、顔の白飛びを自然に低減するようになった(※人物が1人のときのみの機能)。高輝度側の階調表現も見直され、全体的に白飛びを低減するように改善されている。白飛びの軽減にあわせて、逆光時でも顔の輝度を上げて明るく仕上げるようにAE(自動露出)も進歩している。さらに、ハイエンド一眼レフ「EOS 5D Mark IV」と同じように、レンズ収差や回折現象を補正し、高画質を実現する「デジタルレンズオプティマイザ」をカメラ内に搭載するのも見逃せない。これまでPC用ソフト「Digital Photo Professional」で利用していた機能を撮影時に選択できるようになった。

カメラ内でデジタルレンズオプティマイザの利用が可能になった

カメラ内でデジタルレンズオプティマイザの利用が可能になった

DIGIC 8の採用によってRAWが新しいフォーマット「CR3」になったのも見逃せないポイントだ。CR3は、画質優先での記録に加えて「C-RAW」という新しいファイル形式に対応。従来の「CR2」フォーマットでは画素数を減らす「M-RAW」「S-RAW」が用意されていたが、C-RAWはその代わりとなるもの。M-RAW/S-RAWとは異なりフル画素のままデータ容量を抑えるのが特徴で、カメラ内RAW現像やデジタルレンズオプティマイザの利用も可能となっている。

新しいRAWフォーマットCR3に対応。データ容量を抑えて記録できるC-RAWを選択できる

新しいRAWフォーマットCR3に対応。データ容量を抑えて記録できるC-RAWを選択できる

手ブレ補正は、レンズ側のジャイロセンサーでブレを検知することに加えて、撮像素子の画像情報からもブレ量を検知し、高精度にブレを除去する「デュアルセンシングIS」を搭載。これまでキヤノン製コンパクトデジカメで採用されていた機能をレンズ交換式として初めて採用する。対応レンズである「EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM」「EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM」「EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM」を装着した場合であれば、EOS Mシリーズと従来モデルと比べて静止画の手ブレ補正効果が約0.5段分向上する。

動画撮影は4K(3840×2160)24p/25p記録に対応。撮像素子の中央部の画素をクロップして撮影し、AFはコントラストAFとなる。撮影した4K動画からカメラ内で静止画を切り出せる「4Kフレーム切り出し」や、30p/25p記録が可能な4Kタイムラプス動画機能も備わっている。さらに、ハイビジョン(1280×720)の120p/100pハイフレームレート記録にも新対応。30p/25pでの1/4スロー再生が可能な動画の撮影が可能だ。また、動画撮影時の手ブレ補正はボディ内の電子5軸補正に対応。「コンビネーションIS」対応レンズ装着時であれば、レンズ側の水平回転と縦回転の情報をレンズとボディの双方で制御することで、手ブレを強力に補正する。

4K/24p記録に対応。ビットレートは約120Mbpsとなっている

4K/24p記録に対応。ビットレートは約120Mbpsとなっている

EVF&バリアングル液晶を搭載しながらクラス最軽量ボディを実現

EOS Kiss Mは、エントリーモデルながらEOS M5と同じ約236万ドットの電子ビューファインダー(EVF)を内蔵する。EOS Mシリーズとしては初めて横開きのバリアングル液晶モニター(3.0型、約104万ドット)を採用するのもトピックだ(※他モデルはチルト液晶を採用している)。タッチ操作にも対応しており、タッチでのメニュー操作やタッチAF/タッチシャッターのほか、EVFを覗きながらモニターをタッチすることでAF枠を直感的に移動できる「タッチ&ドラッグAF」も可能となっている。

約236万ドットのEVFを内蔵

約236万ドットのEVFを内蔵

タッチ操作対応のバリアングル液晶モニターを採用するのもEOS Kissらしいところ

タッチ操作対応のバリアングル液晶モニターを採用するのもEOS Kissらしいところ

操作性はEOS Kissらしくシンプルにまとまっている。モードダイヤルや電子ダイヤル、各種ボタンがボディ右側にレイアウトされており、片手での操作が可能。EVFを覗きながらでもスムーズに設定変更が行える。

ボディ上面右側にモードダイヤルを装備。シャッターボタンの同軸上に電子ダイヤルも備わっている

ボディ上面右側にモードダイヤルを装備。シャッターボタンの同軸上に電子ダイヤルも備わっている

片手で操作できるように背面のボタン類はボディ右側に集中

片手で操作できるように背面のボタン類はボディ右側に集中

EVFを内蔵しながらもボディは小型・軽量。サイズは116.3(幅)×88.1(高さ)×58.7(奥行)mmで、重量はブラックが約387g、ホワイトが約390g(バッテリー+SDカード含む)。APS-Cサイズの撮像素子を搭載するミラーレスとしては最軽量クラスのコンパクトボディだ。

EVFやしっかりとしたグリップを搭載しつつも重量400gを切る小型・軽量ボディを実現。APS-Cミラーレスとしては非常に持ち運びやすいモデルだ

撮影機能では、オートモードがさらに使いやすく進化。これまでモードとして独立していた「クリエイティブアシスト」がオートモードで利用できるようになった。オートモードでも、画面に表示されるアイコンをタッチすることで背景ボケや明るさ、色合いなどを手軽に調整して撮ることができる。さらに、シーンモードには、電子シャッターで単写での無音撮影が可能な「サイレントモード」を追加。シャッタースピードを自動で調整する「流し撮りモード」も利用できる。写真やイラストを交えてカメラの機能・設定をわかりやすく表示する「ビジュアルガイド」にも対応。

ネットワーク機能はWi-Fi/Bluetoothに対応。撮影しながら画像をWi-Fi経由で自動送信する「スマートフォンへの撮影時画像送信」を新たに搭載。Wi-Fi接続下でカメラと専用アプリ「Camera Connect」を設定することで、撮影と並行して撮影画像をスマートフォンにそのまま送信できるようになった。また、PCとの連携も強化されており、Wi-Fiに接続した状態であれば、事前にペアリングしたPCに差分データのみを自動送信することが可能。撮影後、電源オンのままカメラを置いておくだけで、PCにデータを自動でバックアップすることができる。さらに、EOS Mシリーズとして初めて「EOS Utility」に対応しており、PCからのリモート撮影も可能だ。

オートモード上でクリエイティブアシストを使って画質を仕上げることができる

オートモード上でクリエイティブアシストを使って画質を仕上げることができる

無音撮影ができるサイレントモードは、子どもの寝顔の撮影や、博物館・美術館での撮影など静かに撮影したい状況で活用できる

まとめ 小型・軽量で高性能はまさに“Kiss”。本気度の高いエントリーミラーレス

EOS Kissブランドは、持ち運びやすい小型・軽量ボディに、上位モデルに匹敵する画質力と機能性を搭載するのが伝統的な特徴となっている。EOS Kissブランド初のミラーレスとして登場するEOS Kiss Mも、そんな同ブランドの伝統をしっかりと継承。EVF内蔵のAPS-Cミラーレスとしてはクラス最軽量となるコンパクトボディに、最新の映像エンジンDIGIC 8をいち早く搭載。現時点のEOS Mシリーズの中ではもっとも高性能なモデルに仕上がっている。キヤノンオンランショップの販売予定価格(税別)は、ボディ単体が73,500円、EF-M15-45 IS STM レンズキットが88,500円(※その他レンズキットも用意されている)。DIGIC 8初搭載で多数の新機能を持つミラーレスとしてはコストパフォーマンスが高く、話題を集めるカメラになりそうだ。

キヤノンがEOS Kissブランドのミラーレスをラインアップに加えるのは、レンズ交換式カメラの中でミラーレスがシェアを伸ばしている現状を考慮してのマーケティング的な側面もあると思う。だが、キヤノンがこれまで一眼レフでしか使ってこなかったEOS Kissブランドをミラーレスで新たに展開する意味は大きい。しかも、既存の製品をベースにブランドを付けたというわけではなく、小型・軽量、高画質、シンプルな操作性を特徴に持つ、“Kiss”らしさを存分に感じる“ミラーレスKiss”に仕上がっているのだ。いよいよキヤノンがミラーレスにも本腰を入れ始めてきたといったところだろうか。“ミラーレスKiss”を皮切りに、今後、キヤノンがミラーレスでどんなモデルを投入するのかにも注目していきたい。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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