レビュー

“静止画のフラッグシップ”の実力は? パナソニック「LUMIX G9 PRO」実写レビュー

パナソニックの「LUMIX G9 PRO(DC-G9)」(以下、G9)は、「静止画のフラッグシップモデル」として2018年1月25日に発売になった新型のミラーレスカメラ。プロやハイアマチュアをターゲットにしたモデルで、高性能な動画撮影機能を搭載する「LUMIX GH5」(以下、GH5)と比べて、より静止画撮影に向いた進化を遂げている。GH5との比較も交えながら、画質や操作性の特徴をくわしくレビューしよう。

静止画のフラッグシップモデルとしてラインアップに追加されたG9

静止画のフラッグシップモデルとしてラインアップに追加されたG9

電子シャッターでの高速連写など静止画撮影機能を強化

パナソニックは、2008年10月に世界初となるミラーレスカメラ「LUMIX G1」(以下、G1)を発売して以降、幅広いタイプのミラーレスカメラをリリースしてきた。充実した動画撮影機能を搭載するフラッグシップ「GHシリーズ」、スタンダードモデルに位置付けられる「Gシリーズ」、ファインダー内蔵の小型・軽量モデル「GXシリーズ」、エントリー向けの超コンパクトモデル「GMシリーズ」といったように複数のシリーズを展開し、ハイエンドからエントリーまで充実したラインアップを誇るのが特徴となっている。

そんな特徴を持つパナソニックのミラーレスだが、G1誕生からちょうど10年となる2018年に新しい展開がスタート。スタンダードモデルだったGシリーズの立ち位置を見直し、Gシリーズは静止画撮影向け、GHシリーズは動画撮影向けとしてラインアップを整理。静止画(Gシリーズ)と動画(GHシリーズ)に分けた“ダブルフラッグシップ”を打ち出し、静止画のフラッグシップモデルとして今回紹介するG9をリリースした。

G9は、有効約2033万画素のLive MOSセンサーや最新の画像処理エンジン「ヴィーナスエンジン」など、基本的なハードウェア構成はGHシリーズの最高性能モデルGH5と同じだ。だが、静止画のフラッグシップに位置付けられるだけあって、静止画撮影に限れば多くの部分でGH5を上回る内容になっている。

画質面では、GH5と同じイメージセンサーと画像処理エンジンを採用しつつ、センサー表面に、反射を抑えるAR(Anti Reflection)コーティング処理を追加。これにより、GH5よりも逆光時に発生しやすいゴーストやフレアに強くなった。以下に掲載するGH5との比較作例を見ていただきたいが、同じレンズを使用して太陽を画面に入れた構図で撮ったところ、G9では気になるようなゴースト・フレアは出なかった。

G9のイメージセンサーは表面にARコーティング処理を追加。従来よりも逆光に強くなった

G9のイメージセンサーは表面にARコーティング処理を追加。従来よりも逆光に強くなった

G9を使って太陽を画面に入れた構図で撮影した作例。気になるようなゴースト・フレアは発生していない
G9、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、12mm、F14、1/1300秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(5184×3888、6.13MB)

上の作例と同じ時間にほぼ同じ構図でGH5を使って撮ってみたところ、画面中央にゴーストが発生。強い光源(太陽)の右下にも薄くフレアが出ている
GH5、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、12mm、F14、1/1300秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(5184×3888、6.12MB)

上の2枚の作例から中央部を切り出したもの。同じレンズを使ってもこのくらい差が出る。比較作例以外でも強い光源がある状態で撮ってみたが、G9は逆光にかなり強い印象を受けた

G9の基本性能では、電子シャッター時の連写速度がGH5よりも向上している。GH5は被写体追従(AFC/AFF)時で約9コマ/秒、ピント1コマ目固定(AFS/MF)時で約12コマ/秒の連写速度だが、G9はAFC/AFF時で約20コマ/秒、AFS/MF時で約60コマ/秒を実現。現時点では、マイクロフォーサーズ機の中で最速となる連写性能だ。電子シャッター時の最速シャッタースピードも、GH5の1/16000秒から1/32000秒に向上している。

さらに、電子シャッターの高速連写を活用した機能として「プリ連写」を新搭載。この機能は、シャッターボタン半押し時に事前の連写を開始し、全押し時に一定の時間分さかのぼって記録するというもの。これまでも超高速連写「6K/4Kフォト」でこの機能は実装されていたが、G9ではフル画素かつRAW形式でのプリ連写が可能となった。AFC/AFF時はシャッターボタンを全押しする前の最大8コマ、AFS/MF時は最大24コマをさかのぼって記録できる。

G9は電子シャッター時の連写が強化された。AFC/AFF時で約20コマ/秒、AFS/MF時で約60コマ/秒の超高速連写を実現。プリ連写は、AFC/AFF時は最大8コマ、AFS/MF時は最大24コマまでさかのぼって記録できる。なお、メカシャッター時の連写速度はGH5と同じでAFC/AFF時で約9コマ/秒、AFS/MF時で約12コマ/秒となっている。

プリ連写機能を使って、蝶の飛翔を撮影した1枚。こうしたすばやく動く被写体が動き出す瞬間を収めるのは通常の撮影では難しいが、プリ連写を使えばシャッターを押す前にさかのぼって記録してくれるので楽々と撮ることができる
G9、LEICA DG ELMARIT 200mm / F2.8 / POWER O.I.S.、200mm、F2.8、1/2500秒、ISO1000、RAW現像(Lightroom CCで明るさや彩度などを調整)
撮影写真(5184×3888、11.8MB)

上の作例の一連のコマを並べたもの。この作例ではAFSでピントを固定して最大24コマさかのぼって記録している。コマ数から計算するとさかのぼる時間は0.4秒くらいだろうか。最大8コマとなるAFCでもプリ連写を試してみたが、コマ数に違いはあるものの、さかのぼる時間はAFS時と同じようだった

G9は、補正効果の高さで定評のあるボディ内手ぶれ補正も進化している。ジャイロセンサーに加えて、イメージセンサーや加速度センサーから得られる情報も使用するアルゴリズムを新たに搭載することで、GH5ではシャッタースピード換算で5段分だった補正効果は、現時点で世界最高となる6.5段分に向上した。

暗い屋内で手持ち撮影した作例。シャッタースピードは1/13秒、焦点距離は46mm(35mm判換算92mmの画角)。補正効果が6.5段分に向上した手ぶれ補正によって、こうした暗いシーンでも遅いシャッタースピードで手ぶれを抑えて撮ることができる
G9、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、46mm、F8、1/13秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(5184×3888、8.32MB)

機能面では、電子シャッターとボディ内手ぶれ補正の機構を生かした「ハイレゾモード」を新たに搭載したのがトピック。イメージセンサーを動かしながら8回連続で撮影し、カメラ内で約8000万画素(10368×7776)の高解像度写真に合成する機能だ。動きのある被写体だと効果が出ないのと、最小絞り値はF8、感度は最高ISO1600に制限されるものの、静物撮影において細かいディテールまで表現したい場合に活用できる。

約8000万画素の高解像度が得られるハイレゾモード。記録画素数として約4000万画素も選択できるほか、RAW記録や通常の1枚撮影の同時記録なども利用できる

ハイレゾモードで撮影した物撮り作例。記録画素数は最大の約8000万画素(10368×7776)を選択した
G9、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、60mm、F4、1/30秒、ISO200、ホワイトバランス:晴天、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(10368×7776、24.2MB)

上の作例から、約8000万画素のハイレゾモードと約2000万画素の通常撮影で同じ部分を等倍で切り出して並べてみた。ハイレゾモードの画素数の高さが伝わるだろうか

この画像は、約8000万画素のハイレゾモードの作例を通常撮影と同じ画素数になるように縮小して(解像度を縦横半分に落として)、等倍で切り出して比較したものになる。縮小時にシャープネス処理は行っていないが、ハイレゾモードのほうが情報量が多く、細かいところまで表現できている。通常撮影の画像をRAW現像で調整してもここまで緻密な描写は得られない

G9の動画撮影機能は、4:2:0 8bitでの4K(3840×2160)/60p記録に対応。4Kは60fps、フルHDは180fpsのハイスピード動画の記録も可能だ。ただし、G9は静止画撮影用のフラッグシップということで、GH5と比べるとプロ向けの動画撮影機能では見劣りする。GH5はシネマ4K(4096×2160)/24p記録が可能なうえ、最大400Mpbsの高ビットレート記録にも対応。4:2:2 10bitでの4K/30p記録や、外部レコーダーへの4:2:2 10bitの4K/60p記録も可能だ。さらにGH5はバリアブルフレームレート、アナモフィックモード、タイムコード記録、V-Log L(別売オプション)といったプロ向けの機能をふんだんに搭載している。動画撮影時の放熱設計もGH5のほうが上回っており、4Kの連続撮影時間も、GH5は無制限だがG9は10分に制限されている。

超望遠ズームレンズ「LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.」を使って、草を食べるプレーリードッグを撮影した4K/60p動画。60p記録らしく滑らかな動きのムービーに仕上がっている。焦点距離200mmの望遠で手持ち撮影したが、細かい手ぶれが抑えられているのもポイント

流氷の間を進む砕氷船から撮影した4K/60p動画。レンズの焦点距離は25mm程度。時おり大きくゆっくりと揺れる船上で、立った状態で手持ち撮影を行ったが、手ぶれはうまく補正されている(※風切り音が入っています。ご注意ください)。

「生命力・生命美」をキーワードにした新しい絵作りをチェック

次に、G9の画質をもう少しくわしく見ていこう。

G9は、スペックではわからない部分だが、従来からの絵作りの基本方針が変更になった。従来は忠実な色再現を重視していたが、G9では「生命力・生命美」をキーワードに、GH5の描写をベースにしながらも、より豊かな階調と色調表現を目指した絵作りにチューニングされているという。

以下に、GH5と同じシーンで撮り比べた作例(JPEG撮って出し)を掲載するので、描写の違いをチェックしてほしい。G9の色再現については、「生命力・生命美」というキーワードから想像するにもう少し記憶色寄りになると予想していたが、実際はかなり忠実な色表現という印象。従来は白い被写体をよりクリアな色で再現する、いい意味でデジタルっぽさを感じる色合いだったが、G9では質感の再現性を重視した色描写になっているようだ。さらに、高感度の画質も変わった。G9は高感度でもノイズを無理につぶすことなく、ディテールの再現性を保ったままノイズをうまく低減している印象を受ける。

G9、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、12mm、F6.3、1/640秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(5184×3888、9.58MB)

GH5、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、12mm、F6.3、1/640秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(5184×3888、9.40MB)

上の作例は、青空と白い建物を被写体にして、晴天下のほぼ順光の状況でG9とGH5を撮り比べたものになる。GH5のほうはやや青味が強く、青空がよりクリアで鮮やかな感じの描写になっている。それと比べるとG9は発色が抑えられており、無理に色を作っていない感じが好印象。実際の空はそれほど澄んだ状態ではなかったので、実際に見た感じに近いのはG9だ。仕上がり設定の「フォトスタイル」は「スタンダード」に設定しているが、これを鮮やかな「ヴィヴィッド」やコントラストの強い「風景」にすると、スタンダードほどの違いは出ないものの、やはりG9のほうが発色が抑えられた感じになった。なお、G9のフォトスタイルは、従来とは異なり、色相のパラメーターがなくなっている。

サムネイルを並べてみてもG9とGH5の発色の違いがわかる。G9はGH5に比べると全体的に穏やかなで自然な色合いだ

G9、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、40mm、F8、1/500秒、ISO200、ホワイトバランス:晴天、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(5184×3888、9.94MB)

GH5、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、40mm、F8、1/500秒、ISO200、ホワイトバランス:オート、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
撮影写真(5184×3888、9.79MB)

上の作例では、ホワイトバランスを晴天にしてG9とGH5で撮り比べてみた。両モデルの違いはほとんどないように見えるかもしれないが、白い花の色合いに注目してほしい。G9はわずかにアンバーな色が乗った感じの仕上がり。いっぽうのGH5は花がより白く再現されている。好みの分かれるところだが、少し日が傾いてきた時間帯に撮ったことを考慮すると、G9のほうが忠実な再現性と言える。従来はよりクリアに描写しようとする傾向が強く、白い被写体をより白くするような傾向があったが、G9では状況にあわせてより自然な描写になるようだ。

サムネイルではわかりにくいので、作例の白い花の部分を縮小して切り出してみた。G9は白い花が少しアンバーな色味になっている

以下に、ISO6400の高感度で撮影した写真を等倍で切り出した画像を掲載する。G9とGH5で細かいところを見比べてみると、G9はGH5よりも高感度でのディテールの再現性が高く、立体感のある画質が得られている。両モデルは同じイメージセンサーと画像処理エンジンを採用しているが、高感度の画質も傾向が異なるようだ。

G9/GH5、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH.、50mm、F8、1/320秒、ISO6400、ホワイトバランス:晴天、フォトスタイル:スタンダード、シェーディング補正:オフ、JPEG
G9撮影写真(5184×3888、8.83MB)
GH5撮影写真(5184×3888、8.64MB)

静止画撮影を意識したデザインと使いやすい操作性

続いて、GH5と比較しながらG9のデザインと操作性の特徴を見ていこう。

G9のボディは、これまでのパナソニックのミラーレスカメラとは異なり、より筋肉質で精悍な印象のデザインとなった。GH5など従来モデルはボディ上面が滑らかな曲線だったが、G9はグリップの凹凸を強調するようなラインに変更。ファインダー部も三角の形状になり、シャープさが増した。表面の塗装も、漆黒のレザートーン塗装を施すことで黒を強調。グリップなどのシボ加工は、より細かく深いものに変更になっている。さらに、上面左側の撮影モードダイヤルには、デザインのアクセントとなるレッドラインが加わった。

左がG9で右がGH5。G9はボディ上面のラインが直線的になったほか、塗装やシボ加工も見直されている。いい意味で、高性能な一眼レフのようなテイストを取り入れたデザインだ。GH5と同様、防塵・防滴に加えてマイナス10℃の耐低温設計も実現している

G9のデザインの大きな特徴となるのがファインダー部。三角の形状になり、一眼カメラらしい印象を強めている。レッドラインが施された撮影モードダイヤルも特徴的な部分だ。なお、パナソニックは、この新しいファインダー部のデザインを、レンズからファインダーに光が流れるような流線を表現した「トリプルエッジライン」と名付けている

操作性では、グリップの形状が見直されたのが大きな変化だ。GH5も大きなグリップを採用しているが、G9はそれよりも深い形状になり、さらにしっかりと握れるようになった。また、ボディ上面左側に、撮影モードダイヤルとドライブモードダイヤルを同軸に配置した2段ダイヤルを採用。右側には、各種撮影設定や残記録枚数、バッテリー残量などを確認できるサブ液晶を新たに装備する。前面右側に、設定を切り替えられるファンクションレバーが追加されたのも操作性のトピックだ。

グリップはより大きく深い形状になった。しっかりと握ることができる

グリップはより大きく深い形状になった。しっかりと握ることができる

上面左側に撮影モードとドライブモードの2段ダイヤルを配置。連写モードは2種類用意されており、各モードの連写速度・機能はメニューで割り当てることができる

各種撮影情報をひと目で確認できるサブ液晶を搭載。後ダイヤルの位置と形状もGH5から変更になった

各種撮影情報をひと目で確認できるサブ液晶を搭載。後ダイヤルの位置と形状もGH5から変更になった

設定を切り替えられるファンクションレバーを新設

設定を切り替えられるファンクションレバーを新設

左がG9で右がGH5。背面のボタンレイアウトは似ているが、細かいところでチューニングが施されており、よりダイレクトに操作しやすくなっている。ファインダーのアイアップもより大きなものに変更になった

G9とGH5を使い比べてみて違いを感じたのが電子ビューファインダー(EVF)だ。G9のEVFは、約368万ドットの高精細表示はそのままに、新開発のレンズを採用することで倍率がGH5の約1.52倍(35mm判換算約0.76倍)から約1.66倍(35mm判換算約0.83倍)に向上。マイクロフォーサーズミラーレスとしては最大クラスの倍率を実現している。実際にEVFをのぞいてみると、非常に大きな見え方で、隅のほうまで明るくクリアなのに驚かされた。細かいところまで確認できるので、静止画撮影でのフレーミングがとても心地よかった。さらに、EVFを使った静止画撮影では表示の反応の速さは重要だが、G9のEVFはパナソニックのミラーレスカメラとしては待望の120fpsの高フレームレート表示にも対応。表示タイムラグは最短約0.005秒まで短縮した。他の高性能ミラーレスに匹敵するレスポンスを実現している。

また、G9は、シャッターボタンのフィーリングがGH5とは大きく異なっている。GH5はどちらかというと押し込むようなフィーリングだったが、G9は静止画撮影にカスタマイズされており、半押しから少し力を入れるだけですぐにシャッターが切れる。そのまま使っているとクリエイティブ動画モード時にわずかにシャッターボタンに触れるだけで動画記録がスタートしてしまうことがあるくらいの反応のよさだ。好みの分かれるところかもしれないが、静止画撮影ではクイックに反応してくれたほうが連写撮影などでは使いやすいところがある。

約1.66倍(35mm判換算約0.83倍)という大きな見え方を実現したEVF。ファインダー右側面の「V.MODE」ボタンを押すことで、倍率を3段階(0.83/0.77/0.7倍)で切り替えられる

AFの性能も向上しており、G9は世界最速となる約0.04秒の合焦速度を実現(GH5は約0.05秒)。コントラストAFとは思えないほどの高速AFは健在で、レスポンスよくAF撮影が行えた。動体撮影中に一度被写体からピントが外れてしまってからの復帰がやや遅い点を除けば、AFの速度・精度にも不満を感じなかった。また、ディープラーニング技術を用いた人体認識機能によって、顔が隠れている場合や後ろを向いている場合でも人物にピントを合わせられるようにもなったのも押さえておきたい進化点だ。

天体撮影など暗闇での撮影に適した表示になる「ナイトモード」を新搭載。モニターとEVFで個別に設定できる

天体撮影など暗闇での撮影に適した表示になる「ナイトモード」を新搭載。モニターとEVFで個別に設定できる

AFエリアの位置を拡大表示する「AFポイントスコープ機能」も新たに搭載。より厳密にピントの位置を確認したい便利な機能だ

どちらのスロットもUHS-IIのSDメモリーカードに対応するダブルカードスロットを搭載。左側面には、HDMIポート(Type A)やUSBポート(USB3.0 Micro-B)などを装備。USB給電にも対応する

まとめ 静止画のフラッグシップにふさわしい画質と操作性。動画撮影の基本性能が高いのも魅力

以上、GH5と比較しながらG9の特徴をレビューした。

G9を試用する前は、正直なところ「GH5という高性能モデルを用意しながら、静止画撮影と動画撮影を分けるようなラインアップ展開はユーザーにとってわかりにくく、選びにくいのでは」と感じていたが、実際にG9とGH5を使い比べてみて、G9はGH5にない機能が多く、静止画撮影において非常によくできたミラーレスカメラだと実感した。より質感を重視した新しい絵作りや、しっかりとしたホールド感が得られるグリップ、大きい表示で見やすいEVF、軽いシャッターボタンなど、スペックではわからないところで静止画撮影にチューニングされているのがいい。AFC/AFFで約20コマ/秒という、マイクロフォーサーズ機で最速となる連写性能も大きな魅力である。

G9のもうひとつの魅力は、そうした静止画撮影に向いた画質や操作性にこだわりながら、動画撮影に強いパナソニックのミラーレスカメラらしく、4K/60p記録に対応するなど同価格帯のレンズ交換式カメラと比べて動画撮影の基本性能が高いこと。実際に動画撮影を行ってみるとわかるが、パナソニックのミラーレスはAFの動きが滑らかで、クオリティの高い映像を手軽に撮ることができる。静止画に加えて動画もハイレベルなG9は、ハイアマチュアの方にとって、マイクロフォーサーズミラーレスの中でベストチョイスとなるカメラのひとつだ。

G9とGH5のどちらを選ぶか悩んでいる方もいると思うが、その場合は、静止画撮影と動画撮影のどちらのウェイトが高いかで判断すればいいだろう。本格的な映像制作を行うなら、多彩な動画機能を持つGH5のほうができることが多く、適していると思う(※動画撮影に特化した新モデル「LUMIX GH5S」もあるが、ボディ内手ぶれ補正を搭載しないなどプロ向けに性能・機能をチューニングしているので注意)。作品作りは静止画のみに限られるなら、GH5と比べても価格面で少しお買い得なG9を選んだほうが満足度が高くなるはずだ。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。

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