ソニーの新型フルサイズミラーレス「α7 III」は、この春に登場する新モデルの中で特に大きな話題を集めている。「α7シリーズ」の中では「ベーシックモデル」に位置付けられているものの、上位モデルの性能・機能を数多く搭載するハイスペックが魅力だ。そんな注目モデルが本日2018年3月23日に発売になった。さっそく実機を手に入れたので、操作感などのファーストインプレッションと撮って出し作例を掲載しよう。
注目度の高いフルサイズミラーレスα7 IIIをさっそく使ってみた。装着しているレンズは高倍率ズームレンズ「FE 24-105mm F4 G OSS」
まずは、短い時間ではあるがα7 IIIを使ってみてのファーストインプレッションを紹介しよう。
α7 IIIの基本的な操作性は、ボタンレイアウトが共通している上位モデル「α7R III」と同じだ。背面にマルチセレクターが新設され、フォーカスポイントを直感的に移動できるようになったのがうれしい。操作に関する機能性もα7R IIIとほぼ同じで、好みのメニュー項目を最大30個まで登録できる「マイメニュー」が追加されたほか、カスタムキーの割り当てを静止画撮影時/動画撮影時/再生時に分けて登録できるようにもなった。画像書き込み中でもメニュー画面を表示しての設定変更できるのもα7R IIIと同じだ(※α7R IIIと同様、一部呼び出せない機能がある)。120fpsの高速表示には対応していないようだが、電子ビューファインダー(EVF)の起動時間も短くなっているようだ。シャッターフィーリングも軽快でシャッター切った感じが心地よい。従来モデル「α7 II」と比べると大幅に撮影しやすくなっていると感じた。
ボタンレイアウトは上位モデルα7R IIIと同じ。背面に、フォーカスポイントを移動できるマルチセレクターを搭載する。チルト可動式の液晶モニター(約92万ドット)はタッチパネルに対応しており、タッチフォーカスやタッチパッドといった機能を利用可能。EVFは約236万ドット表示なのは従来と同じだが、倍率が約0.71倍から約0.78倍に向上した。ボディは、従来モデルと同様、トップカバー、フロントカバー、内部フレームにマグネシウム合金を採用(※リアは高剛性プラスチック)
UHS-II対応のSDメモリーカードスロットと、SD/メモリースティックカードスロットのダブルスロットを採用するのもトピック。インターフェイスはUSB 3.1 Gen1対応のUSB Type-C端子が追加された。α7R IIIと同様、USB Type-C端子とマルチ/マイクロUSB端子のどちらからでも給電が可能。USB Type-C端子で給電もしくはPCリモート撮影中に、リモコンなどのマルチ/マイクロUSB対応アクセサリーを同時に使用できるようになった。フラッシュ連携機能も強化され、α7R IIIと同様、フラッシュ撮影時のレリーズタイムラグが短縮されたほか、最高約10コマ/秒のフラッシュ発光連写に対応。ワイヤレスフラッシュ時に後幕シンクロやスローシンクロも選択できる
上面のボタンやダイヤルのレイアウトは従来モデルと同様。グリップは形状が見直され、ホールド性が高くなっている
バッテリーは、α9やα7R IIIと同じ「NP-FZ100」。静止画撮影可能枚数は従来モデルの倍となる最大710枚(液晶モニター使用時、CIPA規格基準)に向上した
RAW+JPEG記録時のJPEG画質は、α7R IIIと同様、「エクストラファイン」を選択できるようになった(※従来モデルは「ファイン」で固定)。「エクストラファイン」「ファイン」「スタンダード」から選ぶことができる
α7R IIIと同じく、フリッカーレス撮影機能も追加された
オートフォーカス(AF)については、まだ動体で試せていないが、フラッグシップモデル「α9」と同スペックとなる693点の像面位相差AFセンサーと、25点から425点に大幅増加したコントラストAFセンサーを組み合わせたシステムは非常に高速。ワンショットで使った限りでも、低照度時の合焦速度が速くなっていることを体感できた。ワイドやゾーンを選択したときの合焦枠表示も細分化されており、上位モデルと同じ感覚で操作できることも確認できた。AF-Aや拡張フレキシブルスポットに対応するようになったのもうれしい点だ。
画質については以下に掲載する作例をご覧いただきたいが、新開発となる有効約2420万画素の裏面照射型センサーを採用したことが大きい。従来モデルから有効画素数はほぼ据え置きだが、低感度から高感度まで階調性が豊かなうえ、とても緻密な描写が得られる。高感度時の画質もよくなっているようで、ISO3200を超える高感度でもノイズを抑えつつディテールの再現性が高い。α7R IIIと同様、サイレント撮影時や連続撮影時(※非圧縮RAW時)でも14bit出力に対応するのも画質にこだわる方にとって朗報だ。また、使ってみて感じたことだが、オートホワイトバランスの精度が高いことも付け加えておきたい。夕暮れ時やミックス光の状況など、従来はマニュアルで合わせていたようなシーンでもオートでかなり正確なホワイトバランスが得られた。
※以下に掲載する作例は、α7 IIIを使ったJPEG形式で撮影したもの(JPEG撮って出し)です。すべてJPEG形式の最高画質(エクストラファイン)で撮影しています。
大口径の広角ズームレンズ「FE 16-35mm F2.8 GM」を使って焦点距離16mmで撮影した1枚。日没直前の時間帯にオートホワイトバランスで撮ってみたが、空や雲の微妙な色合いをうまく再現できた。ビルや建物の細かいところも緻密に表現できている
α7 III、FE 16-35mm F2.8 GM、16mm、F11、1/13秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(6000×4000、11.7MB)
「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、F1.8」を使って絞り開放で撮影した作例。ピント位置では非常にシャープな描写が得られた。赤色の花の微妙なトーンがうまく再現されている点にも注目してほしい
α7 III、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、F1.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(4000×6000、8.46MB)
外光が入る屋内で撮影。F2.8まで絞ることでコントラストの高い描写となった。ピント位置の精細感も高い
α7 III、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、F2.8、1/60秒、ISO640、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(4000×6000、11.5MB)
夜に手持ちで撮影したスナップ作例。感度はISO800だが暗部に気になるようなノイズは乗っていない。オートホワイトバランスで撮っているが、奥の観覧車と手前の街灯の色がとてもうまく再現できている
α7 III、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、F1.8、1/50秒、ISO800、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(4000×6000、16.1MB)
マクロレンズ「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」を使って曇天下で撮影したマクロ作例。かなりハイキーに振ってみたが、ハイライトはよく粘る印象を受けた
α7 III、FE 90mm F2.8 Macro G OSS、F4、1/100秒、ISO800、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(6000×4000、5.15MB)
高倍率ズームレンズ「FE 24-105mm F4 G OSS」を使って屋内にて撮影。感度はISO1600。気になるようなノイズはほとんどなく、非常にクオリティの高い描写が得られた
α7 III、FE 24-105mm F4 G OSS、24mm、F4、1/25秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(6000×4000、10.9MB)
ISO3200の高感度で撮っているが、シャドー側の情報が多い作例だが、極端につぶれることなく、暗部のトーンが出ている。ノイズ低減処理も巧みで、グラデーション部ではノイズを減らしつつ、輪郭やディテールはしっかりと残っている
α7 III、FE 24-105mm F4 G OSS、35mm、F6.3、1/40秒、ISO3200、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(4000×6000、11.1MB)
こちらはISO5000で手持ち撮影。さすがにノイズが乗っており、ノイズ低減も強めに働いているが、解像感が極端に損なわれている印象はない
α7 III、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、F1.8、1/50秒、ISO5000、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG、エクストラファイン
撮影写真(6000×4000、16.8MB)
大口径の広角ズームレンズ「FE 16-35mm F2.8 GM」を使って焦点距離16mmで撮影した4K/24p動画。α7 IIIは、4K/24p記録時にフルサイズ画角での全画素読み出しに対応しており、モアレやジャギーの少ない高画質な4K映像を記録できる。この動画では感度をISO4000まで上げているが、ノイズが少なく、キレイな色に仕上がっている。また、この動画は試しにオートホワイトバランスで撮っているが、夕暮れ時の色合いがうまく再現できている
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。