オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影
M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PROの描写を、先ほど登場した宮瀬七海さんのポートレート作例を元に、もう少し詳細に見てみましょう。
オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影
このレンズはボケを重視して設計されており、そのボケ方はまるで水彩画のように美しくにじむようにボケていきますので、背景が複雑であればあるほど生きてきます。折り重なる木々を美しくボカすことで、主題がクッキリと浮かび上がってくるのです。
この水彩画のようににじむボケは、大口径であることだけで作り出されるのではなく、わざとレンズの収差を利用することを設計段階で織り込んで、光学的に作り出されているのです。
オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影
全身を写しこむようなフレーミングであっても、背景は驚くほどボケていることがおわかりいただけると思います。このようなフレーミングを中望遠域の大口径レンズで行うと、モデルとのコミュニケーションが取りづらい距離まで離れてしまうことになり、野外撮影会などでは不便を感じてしまいますが、このレンズではそのようなことはありません。
オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影。絞り値はF1.2。
オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影。絞り値はF8。
このレンズの絞り開放と、常用されるであろう少し絞り込んだF8を比較してみると、F1.2のボケのスゴさがよくわかると思います。そして、絞り込んだときによくわかるのがこのレンズのシャープさです。ボケばかりが注目されるこのレンズですが、常用域の絞りではかなりシャープな写りを発揮します。これは、17mm(35mmフルサイズ換算34mm)という中広角レンズとしての実用性も兼ね備えており、ポートレートのみならずスナップ写真にも使いやすいレンズということを意味しているのです。
オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影。
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しかしながら、やはりF1.2という大口径はボケを考えて検討するレンズであるだろうということで、2,000万画素そのままの作例をご覧ください。ウエストアップのフレーミングとして、背景との距離によりボケ具合がどう変わっていくかを、街路樹の様子でわかるような作例としています。
オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影。
こちらの作例は、向かって右側の瞳にピントを合わせて、顔の周囲がどれだけの変移でボケていくかを見ていただくために撮影したものです。耳やイヤリングなどを見ていただければ、完全にボケているのがおわかりいただけると思います。
オウルテックレディの宮瀬七海さんを「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」レンズで撮影。
これまで、このレンズの背景ボケばかりをご覧いただきましたが、実は被写体の手前のボケもかなり強力なものになっているのです。手前も背景も強力にボカすことにより、主題を浮かび上がらせることのできるこのレンズは、表現を広げるという意味でもおすすめの1本になるでしょう。
今回ご紹介した、カメラグランプリを受賞した2本のレンズは、オリンパスが中心となって採用するマイクロフォーサーズフォーマットの利点が生きています。それは、これだけの性能を持ちながら非常にコンパクトであるという点です。
他社の35mmフルサイズ換算で同じ程度の画角を持つレンズと比べて、携帯性という面でも圧倒的にすぐれています。マイクロフォーサーズフォーマットも、最近では高画素化が進んでいます。今回テストしたOM-D EM1 Mark IIは、有効画素数が2,037万画素となっており、より高性能なレンズの登場は必然と言えるでしょう。
そのような状況下でラインアップされるPROシリーズは、マイクロフォーサーズフォーマットのフラッグシップであり、オリンパスのミラーレス機を最大限に生かしてくれるレンズであることは間違いありません。
裏を返せば、これらのレンズを使いたいがために、オリンパスのミラーレスカメラを買ってしまうという人がいてもおかしくはないほどの魅力を持つレンズということが、今回の取材でわかりました。みなさんは、どのように感じられたでしょうか。
自動車系フォトジャーナリスト。主にモータースポーツ分野で活動中。自動車全般を取材対象とし、カメラ、写真用品にも精通。スマートフォン、通信関連、アプリゲームやIoT家電なども取材を行う。月刊AKIBA Spec発行人編集長も兼任。