35mmフルサイズの大きな撮像素子を搭載するミラーレス(フルサイズミラーレス)は、大きなボケを生かした印象的な写真や、高感度でのノイズの少ない写真など、高画質な撮影を楽しめるのが魅力だ。本特集では、“はじめてフルサイズミラーレス”の購入を検討している方に向けて、2018年以降に発売になった最新のフルサイズミラーレスの中から価格.com最安価格の安い順に4モデルをピックアップ。キヤノン「EOS RP」、キヤノン「EOS R」、ソニー「α7 III」、ニコン「Z 6」の操作性や機能、画質などの違いをレビューしよう。
左からEOS RP、EOS R、α7 III、Z 6。価格.com最安価格が安い順に並べている。ボディ単体の価格.com最安価格はEOS RPが13万円台、EOS Rが18万円台、α7 IIIが18万円台、Z 6が21万円台(2019年5月10日時点)
●ポイント
・重量は4モデルとも700g未満
・最も軽いのは約485gのEOS RP。APS-C機並みの軽量ボディ
・EOS RPは小さくて軽いレンズのほうがマッチする
今回紹介するフルサイズミラーレス4モデルはいずれも、バッテリーとメモリーカードを含めた撮影時の重量が700gを切っている。現在発売中のフルサイズ一眼レフの中で最も軽いのは約765gのキヤノン「EOS 6D Mark II」。比べると、ミラーレスは大幅な軽量化が可能なことがわかる。
●サイズ(幅×高さ×奥行)/重量(バッテリー、メモリーカード含む)
・EOS RP:約132.5×85.0×70.0mm/約485g
・EOS R:約135.8×98.3×84.4mm/約660g
・α7 III:約126.9×95.6×73.7mm/約650g
・Z 6:約134×100.5×67.5mm/約675g
4モデルの中でボディが最も軽いのはEOS RP。重量は500gを切る約485gで、フルサイズよりひとまわり小さいAPS-Cサイズの撮像素子を採用するミラーレスに匹敵する軽量ボディになっている。
ただし、EOS RPの軽量ボディは、あまり大きくて重いレンズはマッチしない印象。EOS RPとEOS Rに重量700gの標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」を付けて比較すると、EOS Rのほうが持ったときのバランスがよい印象を受けた。EOS RPには、小さくて軽いレンズのほうが合っており、レンズキットに付属する、重量305gの単焦点レンズ「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」がベストマッチだと思う。
EOS RPを除いた3モデルを比較すると、EOS RとZ 6はほぼ同じサイズ感・重量となっている。比べるとα7 IIIは幅と高さが抑えられているのがわかるだろう。なお、幅だけを見ると、EOS RP(約132.5mm)よりもα7 III(約126.9mm)のほうが短くなっている
EOS RPとEOS Rを比較。EOS Rもコンパクトだが、EOS RPはそれよりもひとまわり小さい
EOS Rは電源オフ時にシャッター幕が閉じるようになっている。レンズ交換の際、イメージセンサーにゴミが付着しにくい仕組みだ
EOS R(左)とZ 6(右)はボディ上面に各種撮影情報を表示するサブ液晶を搭載している
●ポイント
・デバイスの大きさや表示解像度はEOS RとZ 6が高い
・クオリティはZ 6が最も高い。明るくてクリアな見え方
・α7 IIIは画質設定が「標準」だとチラつきなどが目立つ
有機ELデバイスの電子ビューファインダー(EVF)を採用する点は4モデルで共通しているが、デバイスの大きさや表示解像度のスペックはEOS RとZ 6が0.5型・約369万ドットと高くなっている。
●EVFの仕様
・EOS RP:0.39型・約236万ドット、倍率約0.70倍、アイポイント約22mm
・EOS R:0.5型・約369万ドット、倍率約0.76倍、アイポイント約23mm
・α7 III:0.5型・約236万ドット、倍率約0.78倍、アイポイント約23mm
・Z 6:0.5型・約369万ドット、倍率約0.8倍、アイポイント約21mm
それぞれのファインダーを覗いてみると、好みもあるが、最も見やすいと感じるのはZ 6だ。倍率約0.8倍の大きなファインダーなうえ、ファインダーの隅々まで明るくクリアで、かつ歪みの少ない自然な見え方を実現している。同じ約369万ドットのEOS Rは、Z 6と比べるとやや暗く見える印象。EOS RPも見え方は十分にキレイだが、倍率が約0.70倍と小さいこともあり、EOS Rと比べると差を感じた。
見え方が気になったのはα7 IIIで、人工物を表示するとチラつきが発生したり、被写体のエッジ部付近がギラギラとした表示になることが多かった。チラつきやギラつきはほかの3モデルでも発生するが、α7 IIIはそれが最も顕著。なお、バッテリー消費は多くなるものの、設定メニューの「表示画質」を「標準」から「高画質」に変えると改善する。
Z 6のEVFは光学系にこだわり、明るくて自然な見え方を実現している。4モデルの中では最も高品位なEVFだ
EOS RはEVFの近くに新しい操作系「マルチファンクションバー」を搭載。賛否両論がある操作系だが、EVFを覗きながらタッチ操作(スライド操作と左右のタップ操作)で感度やホワイトバランスなど割り当てた機能を変更できるのが特徴だ
●ポイント
・4モデルともタッチパネル対応の可動式液晶モニター
・EOS RP/EOS Rはバリアングル液晶、α7 III/Z 6はチルト液晶
・解像度はEOS RとZ 6が約210万ドットで高い
いずれもタッチパネル対応で可動式の液晶モニターを採用している。EOS RPとEOS Rは横開きのバリアングル液晶、α7 IIIとZ 6は縦方向に動くチルト液晶だ。どちらのほうがすぐれているということはないが、それぞれにメリットがある。
●液晶モニターの仕様
・EOS RP:3.0型バリアングル液晶・約104万ドット
・EOS R:3.15型バリアングル液晶・約210万ドット
・α7 III:3.0型チルト液晶・約92.1万ドット
・Z 6:3.2型チルト液晶・約210万ドット
バリアングル液晶のメリットは、横に開いて上下方向に回転できるため、横位置だけでなく縦位置の構図で撮る場合でも見やすいようにモニターの角度を調整できること。いろいろなアングルで撮影がしやすいモニターだ。いっぽうのチルト液晶は、レンズの光軸上でモニターの角度を調整できるので、バリアングル液晶とは異なり、横位置撮影時にレンズの中心とモニターの中心にズレが生じないのがメリット。特に、近くの被写体にきちんと正対して撮りたい場合に、バリアングル液晶よりもフレーミングがしやすく、構図を追い込みやすくなっている。
バリアングル液晶は縦位置構図で撮る場合でもモニターの角度を見やすいように調整できる(画像はEOS RP)
チルト液晶のメリットは光軸とのズレがなく、被写体に正対して撮りやすいこと(画像はZ 6)
タッチパネルは、タッチ操作でフォーカス枠を自由に移動できるタッチAFや、モニターを上下左右にドラッグすることでEVFを覗きながらでもフォーカス枠を移動できるタッチパッドAF、再生画面の移動・拡大操作に対応するのは4モデルで共通。異なるのは、α7 IIIのみメニュー画面のタッチ操作には対応していないことだ。
●ポイント
・ホールド感はEOS R、EOS RP、Z 6とα7 IIIで異なる印象
・EOS R、EOS RP、Z 6は右手と左手が干渉しにくい
・比べるとα7 IIIはレンズとグリップの間が狭く、やや窮屈な印象
カメラをホールドした際のフィーリングは使い勝手に大きく影響する。レンズを装着した際のバランスやグリップの形状などが自分にフィットするかどうかは購入前にしっかりとチェックしておきたい。
EOS R、EOS RP、Z 6の3モデルは細かいところに違いはあるものの、いずれもグリップが細くて深く、比較的似たホールド感だと思う。口径が大きいこともあるのだろうが、レンズマウントが、撮影者から見てボディ中央の左側にレイアウトされているのも特徴。グリップとレンズマウントの間が広く、かつ、レンズが左手に近いところに位置するため、グリップを握る右手とレンズを持つ左手が干渉しにくくなっている印象を受けた。
α7 IIIはほかの3モデルと比べるとグリップが太く、ボディの幅が唯一130mmを切っていることもあってかレンズマウントの位置もボディの中央寄りになっている。グリップとレンズマウントの間が比較的狭く、EOS R、EOS RP、Z 6と比べるとレンズも左手から離れた位置になるため、標準ズームレンズなど全長が短めのレンズを装着した場合にやや窮屈なホールド感になる印象。レンズを持った左手がボディ下部に引っかかるような感じになる場合があるのも気になった。
標準ズームレンズを付けたボディを並べた画像。4モデルの中では、α7 IIIはレンズマウントの位置が中央寄りで、レンズとグリップの間が比較的狭くなっている。なお、この画像だとわかりにくいかもしれないが、Z 6はグリップ下部が細く深い形状になっており、実際のレンズとグリップの間は広い
キヤノンとニコンのフルサイズミラーレスでは、レンズ側にコントロールリングを搭載するのが標準となっている(画像はEOS R)。感度などあらかじめ設定した機能を左手の操作でダイレクトに変更できる