強力無比なデジタル式手ブレ補正機能「Hyper Smooth(ハイパースムーズ)」を搭載するアクションカメラ、GoPro 「HERO 8 BLACK」(以下、HERO 8)が2019年10月25日に発売されました。
前モデルの「HERO 7 BLACK」(以下、HERO 7)は完成度が高いカメラでしたが、その後継機はどれほど進化しているのでしょうか。今回の記事では、手ブレ補正と暗所耐性に注目して、GoPro 「HERO 8」と「HERO 7」を撮り比べてみることにしました。
GoPro「HERO 8」と「HERO 7」を比較
動きながら撮影することが多いアクションカメラに対して、最も気になるポイントは「手ブレ補正」の性能と言えるでしょう。「HERO 8」と「HERO 7」はどちらもGoPro独自の電子式ブレ補正「ハイパースムーズ」に対応しており、その映像の滑らかさについては高い評価を得ています。そこで、今回は「立ち・歩き・走り」の3つのシチュエーションで2台を比較しました。
なお、実際の比較動画は記事冒頭の動画からご覧いただけます。
今回のテストでは1本の棒に「HERO 7(左)」と「HERO 8(右)」を取り付けて、ほぼ同じ方向を向くようにして撮影をしました
立った状態でゆっくりとカメラを横に振る動き(パン)をしてみたところ、手ブレブレ補正に大きな差は見られませんでした。よく見るとGoPro 「HERO 8」のほうが滑らかな動きになっていますが、並べて見比べなければ気づかない程度の差です。
歩きながらの撮影では「HERO 8」のほうが明らかに縦揺れを低減できていました。上下の揺れは3軸ジンバル(スタビライザー)を使用しても打ち消すのは難しく、「ハイパースムーズ」の強みが存分に発揮されたポイントです。この滑らかさは、いいですね
走りながら撮影した動画の比較では、意外にも「HERO 8」と「HERO 7」の差はそれほど大きくありませんでした
「HERO 8」は、手ブレの原因になる動き出しの揺れや、細かい縦揺れの補正では明らかな進化が感じられましたが、いっぽうで、走りながらの撮影のように大きく上下に揺れる動きを補正するには限界があるようです。
デジタル式の手ブレ補正は広角レンズでとらえた映像を16:9などにクロップし、上下左右の余白を使って補正する仕組みのため、その範囲を超えた動きに関しては対応できません。なので、ランニングのような大きな揺れでは、一定以上の手ブレは補正できなくなるというわけです。
サーフィンやスノーボード、マウンテンバイク、モーターレーシングなどの撮影を前提につくられたアクションカメラはコンパクトでなくてはいけません。そのため、センサーサイズも小さくせざるを得なくなり、一般的に暗所での撮影ではノイズが出やすくなります。
また、デジタル式手ブレ補正の特徴として、暗い場所で撮影した映像に補正をかけると映像が乱れる「ジェリー・エフェクト」が発生することがあります。これは、映像がゼリーの表面のようにブルンッと揺れるような感じでノイズが発生することから名付けられた現象です。
今回のテストでは、こういった弱点がどこまで改善されているのかを比較して確かめてみました。
街灯などの明かりがほぼない暗い場所で撮影したところ、どちらのモデルもノイズはあまり目立ちませんでした。なお、撮影は完全オートで行っています
暗所撮影では「HERO 7」も「HERO 8」も、このサイズのカメラとしては驚くほど優秀な結果でした。映像の乱れに関しては、どちらのカメラでも昼間の撮影データより多く発生していましたが、「HERO 7」の方が被写体にゆがみを感じるようなノイズが多い印象です。
GoPro 「HERO 8」は進化したかと聞かれれば、その答えはまちがいなく「Yes」です。しかし、「画質面で大きく進歩したか?」と言われれば「No」かもしれません。前モデルのGoPro 「HERO 7」の完成度が高かったこともあり、「HERO 8」に大幅な画質の進化を期待して購入すると肩すかしになるでしょう。
しかし、裏を返せばGoPro 「HERO 8」は「何も足さない、何も引かない」ことが正解になる熟成されたウィスキーのようなカメラであるとも言えます。
GoPro「HERO 7」や、同等のクオリティのカメラを持っているなら今すぐに「HERO 8」に買い換えるべきとは思えませんが、これからアクションカメラを買おうとしている人や、数年ぶりに新しいアクションカメラを買おうと考えている人には間違いのない“鉄板”のアイテムです。
なお、今回は動画の画質、特に手ブレ補正と暗所耐性にフォーカスした比較のためGoPro 「Hero 8」と「Hero 7」の間に極端に大きな差は見出せませんでしたが、ハードウェアに注目すればGoPro 「Hero 8」はケース不要でアクセサリーが取り付け可能になるなど、大きな変化を遂げています。
その辺りの詳細は記事冒頭の動画で紹介しているので、ぜひ、チェックしてみてください。
世界50か国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。