レビュー
S-Cinetone、4K/120fps、10bit 4:2:2で動画撮影ができる

ソニーの小型シネマカメラ「FX3」レビュー&「α7S III」外観比較! 

近年は写真と動画を両方撮影できるミラーレスカメラが、Vlog(ビデオブログ)やウェディングの撮影などで幅広く活用されています。また、映像にこだわるYouTuber/Instagrammerの機材としてもソニーの「α7」シリーズなどを見かけることが多くなりました。

いっぽうで、ソニーはこういったミラーレスカメラのラインアップとはまったく別に、映画やCM撮影用のプロ向け機材として「VENICE」や「FS」「FX」シリーズを展開しています。これら「シネマライン」のカメラは、動画撮影専門に設計された製品で、業務用ニーズをターゲットに販売されているカメラです。

そして、その「FX」シリーズの最廉価版として2021年3月に発売されたのが、今回実機をチェックしていく「FX3」です。メーカーの直販価格で504,900円(税込)という値段と“廉価”という言葉はマッチしない気もしますが、ソニーのシネマカメラの上位モデルには600万円超えの製品があることを考えれば「50万円は廉価」なのです。基本的に一般向けの製品ではありませんが、コンデジやミラーレスカメラとは別カテゴリーの製品であるということを念頭に置いて、読み進めていただければと思います。

手が届くシネマカメラ!
ソニー「FX3」外観フォトレビュー

フォルムは「α6600をゴツくした感じ」ですが、センサーなどはα7S IIIと同じで、より動画撮影用に特化した設計になっているカメラです。ちなみに、外装はα7シリーズとは異なる金属感が全面に感じられる設計で、小ぶりながら「業務用機材である」という主張が感じられるデザインとなっています。

ボディサイズは約129.7(幅)×77.8(高さ)×84.5(厚さ)mmで、バッテリーと記録メディア込みの重量は約715gです

ボディサイズは約129.7(幅)×77.8(高さ)×84.5(厚さ)mmで、バッテリーと記録メディア込みの重量は約715gです

レンズマウントは「α7」シリーズなどと同じEマウントです。シネマカメラが必要とされる現場にフィットする仕様かは別として、タムロンやシグマ、シルイといったサードパーティー製の豊富なレンズが使用できます

レンズマウントは「α7」シリーズなどと同じEマウントです。シネマカメラが必要とされる現場にフィットする仕様かは別として、タムロンやシグマ、シルイといったサードパーティー製の豊富なレンズが使用できます

有効画素数約1026万のフルサイズセンサーを搭載し、ボディ内手ブレ補正を備えています。この辺りの仕様は「α7S III」と同等で、後述するいくつかの点を除けば中身はほぼ同じです。

有効画素数約1026万のフルサイズセンサーを搭載し、ボディ内手ブレ補正を備えています。この辺りの仕様は「α7S III」と同等で、後述するいくつかの点を除けば中身はほぼ同じです。

左側面にはフルサイズのHDMIポート、マイク端子、ヘッドホン端子、microUSBポート、PD(Power Delivery)による急速充電に対応したUSB Type-Cポートを備えています。また、手前側、ディスプレイのすぐ下に排熱用の縦長のスリットがあることがわかります

左側面にはフルサイズのHDMIポート、マイク端子、ヘッドホン端子、microUSBポート、PD(Power Delivery)による急速充電に対応したUSB Type-Cポートを備えています。また、手前側、ディスプレイのすぐ下に排熱用の縦長のスリットがあることがわかります

ポートカバーは厚めの設計になっており、シーリング用のゴムパーツが付いています。ソニーは本機について「防塵・防滴に配慮した設計」とアナウンスしており、小雨の中や雪が降るゲレンデなどでの使用は想定内と思われます

ポートカバーは厚めの設計になっており、シーリング用のゴムパーツが付いています。ソニーは本機について「防塵・防滴に配慮した設計」とアナウンスしており、小雨の中や雪が降るゲレンデなどでの使用は想定内と思われます

グリップ側には開閉ロック機構を備えたメディアスロット2基を搭載。CFexpress Type AとSDメモリーカードに対応し、同時記録、振り分け記録ができます

グリップ側には開閉ロック機構を備えたメディアスロット2基を搭載。CFexpress Type AとSDメモリーカードに対応し、同時記録、振り分け記録ができます

記事作成時点では「CFexpress Type A」カードは80GBで約2万円と、手頃なお値段になっています。動画の圧縮規格が、AVC(H.264)と比べて約2倍の圧縮率のHEVC(H.265)を採用しているため、1時間程度の撮影では80GBでも容量には余裕がありました。一例をあげると、3分42秒の4K/24fpsで動画を撮影した際のデータは2.82GBでした。これなら1時間まわしっぱなしでも80GBに収まる計算です。

3インチのディスプレイはタッチ対応の144万画素で、メニュー画面は「α7S III」と同じデザインです

3インチのディスプレイはタッチ対応の144万画素で、メニュー画面は「α7S III」と同じデザインです

ディスプレイはカメラのレンズ側にも向けられます。これは「α7S III」に採用され、世界中(のYouTuber?)から絶賛された仕様ですが、必ずしも自撮り用というわけではなく、標準モニターだけでローアングル/ハイアングルでの撮影が快適にできるので、多くの人にとって便利な機能です

ディスプレイはカメラのレンズ側にも向けられます。これは「α7S III」に採用され、世界中(のYouTuber?)から絶賛された仕様ですが、必ずしも自撮り用というわけではなく、標準モニターだけでローアングル/ハイアングルでの撮影が快適にできるので、多くの人にとって便利な機能です

底面には三脚用のネジ穴がひとつ。手前側には排熱用のスリットも確認できます。

底面には三脚用のネジ穴がひとつ。手前側には排熱用のスリットも確認できます。

本機は、アクセサリー取り付け用のネジ穴を本体上部に3つ、両サイドにひとつずつの合計5つ備えています。これは「α7」シリーズなどと異なる本機の特徴です。なお「α7」シリーズを動画用に使用する場合には、「ケージ」と呼ばれるネジ穴を増設するための金属製フレームを追加で購入して、ハンドルや外付けディスプレイ、マイクなどをマウントしているユーザーもいたことを考えると、本格的な動画撮影には非常に便利な仕様と言えます。

アクセサリー取り付け用のねじ穴が並ぶ本体上部

アクセサリー取り付け用のねじ穴が並ぶ本体上部

シャッターボタンの下にはズームレバーを備えています。レンズリングでの操作では速度にムラが出がちな低速ズームが安定して行えるようになっています。動画特有の操作として、ジワっと被写体に寄っていくような表現がありますが、そういった撮影の際に便利そうです

シャッターボタンの下にはズームレバーを備えています。レンズリングでの操作では速度にムラが出がちな低速ズームが安定して行えるようになっています。動画特有の操作として、ジワっと被写体に寄っていくような表現がありますが、そういった撮影の際に便利そうです

電源スイッチは左肩にあります。また、カメラストラップを装着するための金具も「α7」シリーズなどと比べて幅が広く、頑丈そうなつくりになっている点に注目です。「α7」の三角形の金具はストラップをつけていないと「カチャカチャ」と音がして厄介だったので、細かいところですがうれしい改善点です

電源スイッチは左肩にあります。また、カメラストラップを装着するための金具も「α7」シリーズなどと比べて幅が広く、頑丈そうなつくりになっている点に注目です。「α7」の三角形の金具はストラップをつけていないと「カチャカチャ」と音がして厄介だったので、細かいところですがうれしい改善点です

XLRハンドルユニットが付属

「FX3」には標準でXLRハンドルユニットが同梱されています。

写真ではわかりづらいかもしれませんが、実物はプラスチックの質感が少し安っぽく、本体のつくりのよさとミスマッチでした。一般的な使用の範囲では問題のない強度になっているとは思いますが「機材へのこだわり」がある層が買う製品と思われるだけに、惜しいところです。

ちなみに、ソニー製のXLRアダプターを別途購入する場合のお値段は、記事作成時点で51,000円ほどです。

ちなみに、ソニー製のXLRアダプターを別途購入する場合のお値段は、記事作成時点で51,000円ほどです。

ソニー「α7S III」とソニー「FX3」の外観比較

「FX3」と「α7S III」は、シネマラインとミラーレスカメラという立ち位置の違いはあれども、センサーや画像処理エンジンなど多くの部分が共通しています。また、ファームウェアアップデートで「α7S III」がS-Cinetoneの撮影が可能になったことから、その差はさらに小さくなっています。

ディテールを突き詰めれば、排熱ファンの有無による長時間撮影時のノイズの入り方などに違いが出る可能性はあるかもしれませんが、一般的な撮影シーンにおいて大きな差が出るとは考えにくいです。そこで今回は、撮影データの比較は行わず、ボディの外観に絞って比較していくことにします。

ボディを並べてみた様子は以下の通り。体感では横幅の差(1.2mm)の違いは感じられず、EVFの有無による高さの違いのみが明確にわかるほか、よく見るとファンの有無による厚みの違いがわかる、といったところです

ボディを並べてみた様子は以下の通り。体感では横幅の差(1.2mm)の違いは感じられず、EVFの有無による高さの違いのみが明確にわかるほか、よく見るとファンの有無による厚みの違いがわかる、といったところです

「α7S III」はディスプレイ脇に小型ジョイスティックを採用しているのに対して、「FX3」は上部に中型のジョイスティックを搭載するデザインとなっています

「α7S III」はディスプレイ脇に小型ジョイスティックを採用しているのに対して、「FX3」は上部に中型のジョイスティックを搭載するデザインとなっています

グリップの高さはほぼ同じです

グリップの高さはほぼ同じです

HDMIポートの開き方が変わったので、「FX3」のほうが、ケーブルを挿した状態のディスプレイ可動域が広くなります

HDMIポートの開き方が変わったので、「FX3」のほうが、ケーブルを挿した状態のディスプレイ可動域が広くなります

「FX3」はRECボタンが大型化しており、ジョイスティックも上部に設置されています。なお、撮影時にはRECボタンと、タリーランプと呼ばれる小型LEDライトが赤く光り、録画中かどうかがひと目でわかるようになっています。初歩的なことに思えますが「RECが押せていなかった」という凡ミスは、誰に聞いても「これまでただの一度もありません」という答えが返ってきたためしがないことなので、こうした事故を防ぐ機能が搭載されるのはすばらしいことです。

底面を見ると、排熱用のファンの分だけ「FX3」が厚くなっていることがよくわかります

底面を見ると、排熱用のファンの分だけ「FX3」が厚くなっていることがよくわかります

モードダイヤルの有無は大きな違いです。素早く動画撮影と写真撮影を切り替えたい場合にはダイヤルを回すだけの「α7S III」のほうがスムーズです

モードダイヤルの有無は大きな違いです。素早く動画撮影と写真撮影を切り替えたい場合にはダイヤルを回すだけの「α7S III」のほうがスムーズです

ソニー「FX3」の撮影サンプル

レビューでは「α7S III」をレビューした当時は撮影できなかった、S-Cinetoneでの撮影にフォーカスして「FX3」でテスト撮影を行いました。

S-Cinetoneとは?

S-Cinetoneはガンマカーブとカラーマトリックスの設定で、ソニーが「CineAltaカメラ、VENICEの開発を通じて得られた、映画制作の現場の知見をもとにした画作りである」とうたう設定です。一般的な動画用カメラのカラー設定がTV放送を前提としたものであるのに対して、映画作成を前提にした設定であるのが特徴です。スキントーンが美しく見え、ハイライトが穏やかであることが特徴で、筆者の乏しい語彙力で端的に説明するのであれば「ハリウッドっぽい!」ということになります。

ちなみに、「FX3」のデフォルト設定ではピクチャープロファイルを「PP11」に設定することで撮影できます。

今回はエマークスタジオさんにご協力いただき、撮影をしてきました。

エマークスタジオ

補正なし:S-Cinetone

4K/24fps、10Bitで撮影したデータを、補正せずそのままスクリーンショットで撮影した結果は以下の通りです。

暖色系の照明が多い環境でしたが、肌の色味は目で見ていた印象と近い感じで記録できていました。くたびれた中年の哀愁を感じますが、それもまたリアルということ(モデルは筆者ではなく、エマークさんです)。

補正あり:S-Cinetone

「Final Cut Pro X」のカラーホイールを使って、軽くカラーとコントラストだけを補正した結果は以下の通りです。

「シネマ的」ではないかもしれませんが、少し明るくして色を強めに出すといった修正は難なく行えます。シャドーを持ち上げてもノイズは気にならず、この辺りはダイナミックレンジの広いカメラで撮影した元データの素性のよさを感じます。

「シネマ的」ではないかもしれませんが、少し明るくして色を強めに出すといった修正は難なく行えます。シャドーを持ち上げてもノイズは気にならず、この辺りはダイナミックレンジの広いカメラで撮影した元データの素性のよさを感じます。

ほんの少しだけ健康的な感じに補正されたエマークさんです

ほんの少しだけ健康的な感じに補正されたエマークさんです

少し意外だったのは、4K/120fpsで10カット前後、10分くらい撮影をしたタイミングで温度上昇の警告サインが出た点です。録画が止まることはなかったので問題はありませんが、涼しい室内での撮影だったので排熱用のファンを備えたカメラの挙動としては予想外でした。

「FX3」で撮影した動画

ソニー「FX3」で撮影をした感想とまとめ

「FX3」のスペックは「α7S III」と共通する部分が大半で、静止画の写真を撮影することもできますが、基本的には、シネマカメラをルーツに持ち、動画に特化したカメラです。複数名のチームで撮影するような現場のメインカメラではありませんが、ひとりですべてを完結させる撮影に向くカメラで、それに必要な軽量さオートフォーカスの信頼性、拡張性などにすぐれた製品となっています。

実際に使ってみた感想としては、「FX3」は動画用カメラとしては最小のボディで最大の汎用性を備えているので「これがあればどこへ行っても、何を撮っても大丈夫」という気持ちにさせられるカメラでした。

ひとつだけ重箱の隅をつつくような話をするなら、NDフィルターが内蔵だったらもっとよかったのに、とは思いますが……コンパクトさを優先させるのであれば仕方ないのかもしれません。

月明かりの下でも強烈な太陽の下でも撮影できて、後補正の幅を持たせたデータを撮れるという意味で、心強いオールラウンダーと言えるでしょう。また、今後の展開としてソニー製のドローン「Airpeak」との連携はどうなるのか?といった点や、ソニー製のジンバルは発売されるのか?といった想像まで含めると、さらにワクワクさせられるカメラです。

Mr.TATE(Masahira TATE)

Mr.TATE(Masahira TATE)

世界50か国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。

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