レビュー

写真にも動画にも強い! 20mmスタートのソニー「FE 20-70mm F4 G」レビュー

「FE 20-70mm F4 G」は、ソニーが「標準ズームレンズの新たなスタンダート」とうたう、Eマウント用の注目レンズ。焦点距離20mmスタートで広角に強く、小型・軽量で取り回しも良好な、フルサイズ対応の標準ズームレンズです。超広角で撮影できるメリットを含めて、本レンズの特徴と魅力を紹介します。

2023年2月10日に発売された、ソニーの標準ズームレンズ「FE 20-70mm F4 G」。開放F4通しながら小型・軽量で、ジンバルとも組み合わせやすいレンズです

2023年2月10日に発売された、ソニーの標準ズームレンズ「FE 20-70mm F4 G」。開放F4通しながら小型・軽量で、ジンバルとも組み合わせやすいレンズです

小型・軽量で使い勝手にすぐれる標準ズーム

「FE 20-70mm F4 G」は、ソニー純正のEマウント用・標準ズームレンズとして初めて、広角端の焦点距離が20mmの超広角から始まるモデルです。標準ズームレンズは24mmもしくは28mmスタートなのが一般的ですが、本レンズは、そうした一般的なものよりもひと回り広く撮ることが可能です。

さらに、本レンズの特徴として見逃せないのが、超広角20mm対応にも関わらず小型・軽量なサイズ感を実現していること。そのサイズは78.7(最大径)×99(全長)で、重量は約488g。ソニー純正品の中では、さすがに「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」よりは少し大きくて重いですが、「FE 24-105mm F4 G OSS」よりも約175g軽い筐体に仕上がっています。

ソニー純正 開放F4通しのフルサイズ対応・標準ズームレンズ(Eマウント用)
FE 20-70mm F4 G 78.7(最大径)×99(全長)/約488g
Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS 73(最大径)×94.5(全長)/約426g
FE 24-105mm F4 G OSS 83.4(最大径)×113.3(全長)/約663g

ズーム時に全長が変わるアウターズームを採用。この画像は左が広角端で、右が望遠端です。500mlのペットボトルを横に並べてみましたが、レンズのコンパクトさが伝わるでしょうか。重量は約488gで500gを切る軽さです。フィルター径は72mm

ズーム時に全長が変わるアウターズームを採用。この画像は左が広角端で、右が望遠端です。500mlのペットボトルを横に並べてみましたが、レンズのコンパクトさが伝わるでしょうか。重量は約488gで500gを切る軽さです。フィルター径は72mm

「FE 20-70mm F4 G」は、動画撮影を意識した工夫が施されているのも特徴です。ジンバルやビデオ雲台と組み合わせた際にバランスが取りやすいように、ズーム時の重量バランスの偏りが抑えられているうえ、絞りリングやフォーカスモードスイッチ、フォーカスホールドボタン(2か所)なども搭載。絞りリングのクリック感のオン/オフを切り替えられる「絞りリングクリック切り換えスイッチ」も備わっています。

フォーカス/ズーム/絞りの3つの操作リングのほかに、フォーカスホールドボタンや「絞りリングクリック切り換えスイッチ」などを搭載

フォーカス/ズーム/絞りの3つの操作リングのほかに、フォーカスホールドボタンや「絞りリングクリック切り換えスイッチ」などを搭載

広角側の焦点距離4mmの差は大きい

先述のとおり、標準ズームレンズは、広角端の焦点距離が24mmもしくは28mmのものがほとんどです。20mmから使える「FE 20-70mm F4 G」は、そうしたモデルよりも広く撮ることができます。

その違いは、「FE 20-70mm F4 G」を使って撮り比べた、以下の写真をご覧ください。同じ場所から撮っていますが、20mmでは船の全体が写っていて、24mmでは船の一部が見切れています。24mmでも下がった位置から撮影すればもちろん画角内に収まりますが、風景撮影などでカメラの位置を変えられない場合は20mm と24mmの差はとても大きいです。

焦点距離20mmで撮影

α7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F5.6、1/500秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、44.8MB)

α7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F5.6、1/500秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、44.8MB)

焦点距離24mmで撮影

α7R V、FE 20-70mm F4 G、24mm、F5.6、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、47.1MB)

α7R V、FE 20-70mm F4 G、24mm、F5.6、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、47.1MB)

超広角の特徴は、単に広い画角で写せるだけではありません。被写体に寄ることで、遠近感を強調できるのも魅力です。この写真ではローアングルで街灯を撮影することで建物の広がりを表現できましたα7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F4、1/125秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、36.4MB)

超広角の特徴は、単に広い画角で写せるだけではありません。被写体に寄ることで、遠近感を強調できるのも魅力です。この写真ではローアングルで街灯を撮影することで建物の広がりを表現できました
α7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F4、1/125秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、36.4MB)

望遠側が70mmまで伸びるのも使いやすい

「FE 20-70mm F4 G」は、焦点距離70mmまでズームできるので、適度な圧縮効果を得たい際にも便利です。望遠端70mmの開放F4で撮れば背景がそれなりにボケるため、ポートレートでも使いやすいレンズだと思います。

さらに、望遠端の最短撮影距離が0.25mと短く(最大撮影倍率は0.39倍)、被写体に寄って撮影できるのもポイント。最短撮影距離付近だとワーキングディスタンスが短くなりますが、フッ素コーディングが施されているため、近接撮影時に水滴やほこりが付きにくく、また取り除きやすいので安心できます。たとえば、花のマクロ撮影時に前玉に花粉が付いても、ブロアーで手早く吹き飛ばすことができます。

望遠端の焦点距離70mm/開放F4で中華街の提灯を撮影。背景にいろいろなものが混在していますが、背景をボカすことで主題の提灯が明確になりましたα7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F4、1/100秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、32.2MB)

望遠端の焦点距離70mm/開放F4で中華街の提灯を撮影。背景にいろいろなものが混在していますが、背景をボカすことで主題の提灯が明確になりました
α7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F4、1/100秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、32.2MB)

望遠端でフルーツジュースに寄って撮影してみました。「FE 20-70mm F4 G」の最短撮影距離は、AF時が0.3m(広角端)/0.25m(望遠端)、MF時がズーム全域で0.25mですα7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F4、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、32.1MB)

望遠端でフルーツジュースに寄って撮影してみました。「FE 20-70mm F4 G」の最短撮影距離は、AF時が0.3m(広角端)/0.25m(望遠端)、MF時がズーム全域で0.25mです
α7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F4、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、32.1MB)

小型・軽量ながら高い描写性能

続いて、レンズの描写を見ていきましょう。「FE 20-70mm F4 G」は、高性能な「Gレンズ」らしく、ズーム全域で絞り開放からとてもシャープな写りをしてくれます。

焦点距離20mm/F4で撮影

広角端20mm/開放F4で撮影してみましたが、画像の周辺までディテールがシャープに写っています。以下に掲載する絞り値F5.6で撮影したものと比べてみても、周辺が流れていないことが確認できます。カメラボディ側の補正もありますが、周辺光量落ちもほとんど目立ちません。開放から安心して撮影できるのは本レンズの強みだと思いますα7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F4、1/800秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、36.7MB)

広角端20mm/開放F4で撮影してみましたが、画像の周辺までディテールがシャープに写っています。以下に掲載する絞り値F5.6で撮影したものと比べてみても、周辺が流れていないことが確認できます。カメラボディ側の補正もありますが、周辺光量落ちもほとんど目立ちません。開放から安心して撮影できるのは本レンズの強みだと思います
α7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F4、1/800秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、36.7MB)

焦点距離20mm/F5.6で撮影

こちらは広角端20mm/F5.6で撮影。絞り開放でも高い解像力のレンズですが、1段絞ることでより安定した描写が得られますα7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F5.6、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、36.4MB)

こちらは広角端20mm/F5.6で撮影。絞り開放でも高い解像力のレンズですが、1段絞ることでより安定した描写が得られます
α7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F5.6、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、36.4MB)

焦点距離70mm/F4で撮影

望遠端70mm/開放F4で撮影しました。広角側の描写と比べると周辺はやややわらかく感じますが、実用的にはまったく問題ないでしょう。風景など周辺までシャープに表現したい際は1段絞って撮影すると安心ですねα7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F4、1/800秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、41.2MB)

望遠端70mm/開放F4で撮影しました。広角側の描写と比べると周辺はやややわらかく感じますが、実用的にはまったく問題ないでしょう。風景など周辺までシャープに表現したい際は1段絞って撮影すると安心ですね
α7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F4、1/800秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、41.2MB)

焦点距離70mm/F5.6で撮影

望遠端70mm/F5.6で撮影。1段絞ることにより、周辺までシャープな写真を撮影できました。小型・軽量ながら申し分ない解像力ですα7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F5.6、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、41.8MB)

望遠端70mm/F5.6で撮影。1段絞ることにより、周辺までシャープな写真を撮影できました。小型・軽量ながら申し分ない解像力です
α7R V、FE 20-70mm F4 G、70mm、F5.6、1/400秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、41.8MB)

ビルに反射する光が印象的だったので撮影しました。このレンズの絞り羽根は9枚のため、18本の光条が出ます。また、シャッタースピードを1/20秒に設定することで、遊園地のアトラクションの動きを表現しましたα7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F22、1/20秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天撮影写真(9504×6336、36.8MB)

ビルに反射する光が印象的だったので撮影しました。このレンズの絞り羽根は9枚のため、18本の光条が出ます。また、シャッタースピードを1/20秒に設定することで、遊園地のアトラクションの動きを表現しました
α7R V、FE 20-70mm F4 G、20mm、F22、1/20秒、ISO50、ホワイトバランス:晴天
撮影写真(9504×6336、36.8MB)

動画撮影の使い勝手をチェック

「FE 20-70mm F4 G」は動画撮影でも便利に使えるレンズです。ここからは、本レンズを使って撮影・制作した動画から代表的なシーンを抜き出し、動画撮影における本レンズの魅力を解説します。以下に掲載する動画をご覧いただいた後に、ぜひご一読ください。

「FE 20-70mm F4 G」を使って撮影・制作した4K/60p動画です(撮影場所は湘南と横浜みなとみらい)。組み合わせたカメラは「α7S III」で、ホワイトバランスは晴天に固定。仕上がり設定の「クリエイティブルック」はSTに設定しています
Music : Fragments of Sunlight by idokay

シーン1 超広角20mmは動きの中でスピード感を強調できる

犬と同じ目線の低い位置からジンバルで撮影したシーンです。カメラを砂浜に近づけることで疾走感を強調しました

犬と同じ目線の低い位置からジンバルで撮影したシーンです。カメラを砂浜に近づけることで疾走感を強調しました

普段、焦点距離24mmスタートのズームレンズで動画を撮影していると、静止画を撮影しているとき以上に「もっと広く撮りたい」と思うことがあります。今回、「FE 20-70mm F4 G」を使って動画を撮影してみて、20mmから始まるズームレンズは本当に使い勝手がよいと感じました。

特に、焦点距離20mmの超広角は、24mmに比べて写り込むものが増えるため、動きの中でスピード感を強調できるのがよかったです。こちらのシーンではローアングルで砂浜の写り込みを増やすことで、犬が歩いている疾走感を表現できました。

シーン2 フォーカスブリージングが抑制されているのでピント移動も違和感なし

ピントの位置を手前から奥に移動したシーンです

ピントの位置を手前から奥に移動したシーンです

このシーンでは、手前から奥の船にピント位置を移動させることで、船に視線を誘導することを狙いました。「FE 20-70mm F4 G」は、超広角対応の標準ズームレンズとしてはフォーカスブリージングがよく抑えられており、ピントを移動しても画角の変化が少なく、クオリティーの高い動画を撮影できます。

シーン3 動画撮影がやりやすい操作性

カメラを上から下にチルトして撮影したシーンです。リフレクションが波で揺らいでいる様子を記録しました

カメラを上から下にチルトして撮影したシーンです。リフレクションが波で揺らいでいる様子を記録しました

「FE 20-70mm F4 G」は、絞りリングに加えて、絞りリングのクリックの有無を設定できる「絞りリングクリック切り換えスイッチ」も搭載しており、動画撮影中でもシームレスに絞り値を変更できます。

このシーンでは、カメラを上から下にチルトしているため明るさが変化していますが、絞り値を滑らかに変更することで、明るさに違和感のない映像を撮影できました。

また、フォーカスホールドボタンをFn(ファンクションボタン)としても使用できるのも便利だと感じました。今回、ピントが合っているかどうかを即座に確認できるように、フォーカスホールドボタンにピント拡大表示を割り当てています。このレンズはマニュアルフォーカスの際に最短撮影距離が短くなるため、このカスタマイズは相性がよいと思います。

シーン4 被写体に寄れるのは動画撮影でも便利

桜の花に近づいて撮影したシーンです

桜の花に近づいて撮影したシーンです

「FE 20-70mm F4 G」は、先にも紹介したように望遠端の最短撮影距離が0.25m(最大撮影倍率0.39倍)で、被写体に近づいて撮影しやすい標準ズームレンズです。

動画撮影の場合、撮影後の編集でクロップ(トリミング)したものをつなげると、そのシーンだけ解像度が落ちてしまうのが気になるもの。その点、「FE 20-70mm F4 G」は、寄って撮りやすいので構図の自由度が高く、狙った画角で被写体を大きくとらえられるので便利です。編集後のクロップの頻度を減らすという意味でも、動画撮影で使いやすいレンズだと感じました。

まとめ これといった欠点が見当たらないハイクオリティーな標準ズームレンズ

「FE 20-70mm F4 G」を使用して感じたのは、欠点らしい欠点がないということ。小型・軽量で開放F4通し、最短撮影距離が短く被写体に寄れて、画質も良好。加えて、動画撮影でも操作しやすく、使っていてこれといったストレスを感じませんでした。静止画撮影でも動画撮影でもオールマイティーに使えるレンズという印象です。

また、今回、湘南と横浜を移動しながら撮影しましたが、レンズが小型・軽量で取り回しやすかった点も紹介しておきたいです。レンズを装着した状態でカメラを首からぶら下げて移動しても疲れにくく、ジンバルとの組み合わせも良好。登山やアウトドアを趣味に持つ人や、旅行が好きな人とも相性のよいレンズだと感じました。

中嶋柊太

中嶋柊太

某カメラメーカーのショールームで約3年間従事したのち、MONO GRAPHYに入社。写真、動画撮影をしながら、MONO GRAPHYではディレクターとしてコンテンツ制作にも携わる。週に1、2回はお店のスタッフとしても勤務中。

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